存廃揺れる「日本最短私鉄」 わずか2.7km――赤字を“広告費”として支える企業は存在するのか?
引き受け手には、まず負担できる「体力」が必要。
気になるのは、紀州鉄道が交渉中とされる譲渡先企業である。2025年12月5日時点で、企業名は明らかにされていない。 譲渡先の決定は当該企業の経営判断によるものであり、筆者(銀河鉄道世代、フリーライター)がとやかくいうものではない。ここから先はあくまで筆者の推測である。 「赤字の鉄道やバス」の引き受け先としてまず考えられるのは、和歌山電鐵を再生した両備グループや、みちのりHDなど、再生に実績のある企業である。しかし両備グループもみちのりHDも、基本的には交通事業そのものを再生する企業である。鉄道事業の赤字を「宣伝広告費」として捉えてきた紀州鉄道を引き受ける可能性は低い。 では、引き受け手として合理性のある企業とはどのような企業か。 紀州鉄道の赤字額は、2021年時点で年間7000万円とされている。引き受け手の条件は、この金額を「宣伝広告費」の一部として負担できる体力があることである。 売上に対して「宣伝広告費」にどれだけ割けるかは、業界や企業によって異なる。例えば不動産業界では4%前後とされる。単純に計算すると、売上1000億円の不動産会社であれば、「宣伝広告費」は40億円となる。40億円のうち7000万円を紀州鉄道に投じることは可能である。 しかし、売上1000億円以上の不動産会社の多くは、すでに一定の信用やブランド力を持つ企業である。信用力やブランド力を付加的に得るために、あえて紀州鉄道を引き受ける可能性は低い。
経営者の「鉄道に対する想い」にも期待。
となると、年間7000万円を「宣伝広告費」の一部として負担でき、なおかつ信用力やブランド力を求める企業はどのような企業か。逆にいえば、現在の紀州鉄道に近い業態の企業である。 売上規模は1000億円には届かないが、不動産やホテル事業を一定規模で展開している。知名度はそれほど高くないが、将来的に紀州鉄道のポジションを活用できる「伸び盛り」の企業である。 不動産・ホテル事業以外の企業も可能性はあるが、該当する企業はかなり限られるだろう。かつての電鉄資本隆盛期とは異なり、鉄道会社の看板が今後どれだけ信用力やブランドイメージを高めるかは未知数である。 そのため、あくまで「宣伝広告費の一部」としての経営判断とは別に、経営者の鉄道への思いといったヒューマンな要素に頼らざるを得ない部分も出てくる。 そもそも紀州鉄道を残すべきか否かという根本的な議論はさておき、どのような引き受け手が現れるのかには注目が集まる。
銀河鉄道世代(フリーライター)