神の騎士団の強ロリ枠 (本編完結)   作:ハセカズ

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最終回その1です。

最終回は2つのENDで分岐させることにしました。
「009:エルバフとニカ」のアマテラスとルフィの激突の結果でENDが分岐します。

END1は人によってはショッキングな内容になっています。
鬱とか胸糞とかそういうの嫌いな人は今話を飛ばしてEND2だけを見た方がいいです(近日中に公開)
主人公が好きという人も見るのやめてEND2に行った方が良いです。


END1:『爪痕』(胸糞・鬱展開注意)

 

エルバフで激突した2つの力。

世界トップクラスの力の奔流は偉大なる航路(グランドライン)を生きる全ての猛者達が感じ取っていた。

 

「────オオオオォォ!!」

「────ハアァァ!!」

 

“麦わら海賊団” 船長 モンキー・D・ルフィ

“神の騎士団” マーカス・アマテラス

 

その戦いには、お互い悪意も敵意もない。

アマテラスは任務遂行に全力を尽くした。そしてルフィも仲間のため、そして子供ながら任務に全力を尽くすアマテラスに応えるため死力を尽くした。

 

そんな全霊をかけた衝突がしばらく続く。

どちらが勝ってもおかしくないほどの僅差であったが……決着はついた。

 

「ぁ────」

 

アマテラスが町を覆うほどに強大化した拳に押される。

 

その後の出来事は一瞬だった。

新世界の海においても他に例を見ないほど強烈な衝撃と爆音。それらがアマテラスに炸裂して、彼女を吹き飛ばしていく。

 

現時点でアマテラスは鳳凰の獣型状態でるため体長40m以上はある。しかも莫大な覇王色を全身に纏っている状態。

 

そんな彼女が雷を凌駕する速力で飛ばされた。

そして、エルバフに滞在している者はイムを除く全ての者達がルフィとアマテラスの覇王色に押されて動けない状態だ。

つまり、吹き飛ばされたアマテラスの後ろにいる者たちも……ただでは済まない。

 

「うぎっ!?」

「ぐがァ!!」

 

撃ち合いに敗北した少女は覇王色を纏ったまま、同じ騎士団のキリンガムとソマーズ、そして悪魔化した巨人達を巻き添いにしながら遥か彼方まで吹き飛んでいった。

 

どれだけ彼方に飛ばされたのか。

エルバフの国外を進み、海を進んで……莫大な覇王色と衝撃により遠方まで飛ばされたアマテラスは、やがて召喚元であった、空中散歩中に立ち寄っていた街にまで強制送還されていた。

 

「ぁ……ぅ……」

 

意識を失い、能力も強制解除された少女は町内の建物の中で力なく床に倒れ伏していた。

そのすぐ近くには五芒星(アビス)と呼ばれる魔法陣が設置されている。

 

アマテラスにとって幸運だったのは、訪れていた場所が政府加盟国であり、”神の騎士団”によって五芒星(アビス)を設置される程に政府にとっても重要な役割を果たす国であったこと。

今回アマテラスは空中散歩中に五芒星(アビス)の気配を国から感じ取り、興味本位から、その場所に立ち寄ったところでイムに呼び出されていたのだ。

 

そのため国の監視のために滞在している、政府の諜報機関CPのメンバー達も衝撃音を聞いて直ぐに駆けつけることが出来た。

 

「アマテラス宮!?なぜ、こんなところに……」

「酷い怪我だ……!すぐに手当するぞ!!」

 

現場に到着したCPが慌てて、アマテラスの付近に駆け寄り救急道具を取り出す。

 

エルバフの命運を賭けた戦い。

アマテラスVSルフィの戦いは、こうして幕を閉じたのであった。

 

────勝者 ”モンキー・D・ルフィ”

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

結論からいうと世界政府によるエルバフ支配は失敗に終わった。

 

アマテラスが戦闘不能になった後は全ての力を使い果たしたルフィも気絶することになったので、ルフィが勝ったというよりは相打ちに近い形での決着ではある。

しかし、吹き飛ばされたアマテラスに巻き込まれて他の騎士団や悪魔化した巨人達が纏めて戦闘不能になってしまったというのが政府側にとって大きな痛手となってしまった。

 

それでも1人残されたイムは圧倒的な力で麦わらの一味や新巨兵海賊団の団員達を次々と蹂躙していったのだが……一味の者達が決死の覚悟で時間を稼ぎ、その間に大量の食料と休息を取ったルフィが再度復活を果たし、ニカの力を駆使することで何とか事なきを得られた。

 

エルバフの平和は”麦わらの一味”と巨人達の活躍によって無事に守られたのだ。

ロキ、ハイルディン、ルフィ、ゾロ等のエルバフのために戦った者達。この中の誰か1人でも欠ければ、この結果は得られなかったかもしれない。

 

何にせよ決着はついた。

 

世界政府によるエルバフ侵略の結末。

それは後に起こる戦いの戦況を決める程に大きなものとなった。

 

その戦いが起こったのは偶然だったのか。

それとも誰かの手によって人為的に引き起こされたものなのか。はたまた神が定めた運命によるものだったのかは分からない。

 

だが発生原因が何であれ……()()()は訪れた。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

政府によるエルバフ侵略から幾ばくかの月日が流れた。

 

世界は今、大混乱の最中にある。

そこらかしこで鳴り響く戦闘音。次々と死んでいく者達。

世界にとっても運命となる争いが遂に起こったのだ。

 

それは世界政府が最も恐れていた戦い。

かつて、マリンフォード頂上戦争にて今は亡き白ひげが予言して、”神の騎士団”の軍子が”麦わらの一味”達にも告げた戦い。

 

即ち……世界中を巻き込むほどの”巨大な戦い”

 

その当事者は世界政府や、政府打倒を目指す革命軍だけでは無い。名だたる海賊、国の兵士達など、文字通り世界を巻き込んだ大規模な争いが起こっていた。

 

「はぁ…はぁ……!」

 

そんな戦いの中、”神の騎士団”であるアマテラスは息切れをしながらも革命軍と対峙していた。

 

「────”火拳”!!」

「────”銀河・WINK (ギャラクシー・ンヌウィンク)”!!」

 

革命軍の参謀長であるサボと

“グランドライン軍”軍隊長のエンポリオ・イワンコフ、それに彼らの部下であるメンバー達も銃や剣などの武器を片手にアマテラスと交戦していた。

 

本来ならサボやイワンコフの力ではアマテラスには対抗できないのだが、アマテラスはここまで覚醒能力を使った上で四皇レベルの猛者達と連戦を繰り広げている。

 

その全てに勝利はしたものの体力を大きく消耗している状態だ。

不死身の力にも有効となる、覇王色を纏った攻撃によって受けたダメージも少なく無い。とはいえ、それらを考慮に入れてもアマテラスの有利には変わりない。体力を消耗した今の状態でも、時間をかければサボやイワンコフを倒すことはできる。

 

だが……それでは足りない。

世界中を巻き込む規模の戦い。当然のことながら世界政府側も甚大なダメージを負い、その余波はアマテラスの同胞達にも届いているのだから。

 

『いたぞ!天竜人だ!!』

『ひぃぃぃぃ!ご、護衛兵はどこだえ!?あの役立たず共が!!今度会ったら全員処刑してやるえ!!』

『殺してやる……!俺たちの怒りを思い知れ!!』

『ま、まて……ぎゃああああ!?』

 

現在進行形で次々と虐殺されている天竜人。

 

戦況は世界政府側が不利。

そんな状況下で天竜人達が無事で済む筈が無かった。

 

市民の奴隷化、些細な理由での殺害、政府非加盟国の人間狩り等、彼らがこれまで積み上げてきた悪行は数え切れないほどに多い。

そのため市民も、海賊も、革命軍も……天竜人を恨む人間は星の数ほど存在する。

 

世界中の嫌われ者にして恨みの対象である天竜人。

政府の後ろ盾が弱まった今の彼らに手心を加える者など何処にもいなかった。

 

天竜人達や仲間が殺されてる現状、アマテラスは一刻も早く彼らの救助に向かう必要がある。そんな状況下で時間をかけてサボ達の相手をしている暇など無いのだ。

 

「どいて……!!」

「行かせない!!」

 

だが、場を去ろうとするアマテラスをサボが食い止める。

もしも、アマテラスが革命軍の他のメンバーのところに向かった場合、どんな被害が出るか見当もつかない。サボの立場的にアマテラスを行かせるわけには行かなかった。

そんなサボの意思を読み取りイワンコフも革命軍の末端のメンバー達もサボを援護する。

 

天竜人だけで無い。

アマテラスと同じ”神の騎士団”の団員達も追い込まれている。他に類を見ないほどに大きな規模の戦い。覇王色を扱える者も少なくは無い。

 

政府がここまで押される要因の1つは、やはりエルバフの侵略が失敗した事だろう。巨人という戦力を味方に付けられていれば戦いは政府が有利になっていたかも知れなかった。

 

せめて戦いの発生が、もう1週間ほど遅ければ、アマテラスが”悪魔の実”の覚醒を身体に馴染ませて、この事態を打開していたかもしれない。

 

しかし、時間は都合良く待ってくれない。

天竜人も政府側の戦力も次々と減らされていく。そしてまた1人……アマテラスの身内に革命軍のメンバーが接近しようとしていた。

 

その男はアマテラスが物心つく頃から、彼女の側近SPとして仕えていたガネリエであった。

革命軍のメンバーは天竜人のSPであるガネリエを見た途端、彼に向かって銃を構えていた。

 

『その格好……お前も天竜人の狗だな!?』

『ヒィィィ!?ち、違う!!私はアマテラス宮に……いや、()()()に無理矢理従わされていたんだ!そうでなければ誰があんな悪魔の下につくか!!』

『アマテラスって新聞に出てた天竜人か……そいつに脅されていたのか?』

『そ、そうだ!家族を人質に取られて私は従うほか無かったのだ!新聞に書かれたアマテラスの活動は全部嘘っぱち!奴は裏で市民達を苦しめ虐殺していたのだ!!あの小娘は……人の皮を被った悪魔だぁぁぁ!!そして私はそんな悪魔に脅された哀れな被害者なんだぁぁぁ!!!』

 

涙を流しながら、ありもしない事実をでっち上げるガネリエ。

これまでアマテラスから甘い汁を吸い続け、更に難病を治してもらい命を救ってもらったこともあるガネリエだが自己保身の塊である男が、そんなことを恩に感じる筈も無い。そのため政府が劣勢の今、革命軍側に寝返ることへの躊躇いも全く無かった。

 

ガネリエの迫真の演技と、その話が「()()()()()()()使()()()」であった事も相まって革命軍は彼の言葉を信用した。

過去に天竜人に虐げられた過去を持つが故に、「天竜人が人助けをする筈が無い。いや、そうなってほしく無い」という心理が働いたのも大きいだろう。

 

そんなガネリエと革命軍のやり取りを見聞色で見ていたアマテラスは……ホッと息をついていた。

 

「よかった……」

 

ポツリと呟くアマテラスと、その言葉に首を傾げるサボ。

あの様子ならガネリエが殺されることはないだろう、とアマテラスは安心していた。

 

「(ガネリエ……元気でね)」

 

見聞色越しにガネリエを見るアマテラスの視線は優しいものだった。

恐らく奴隷達もガネリエ同様に「アマテラスの被害者」として革命軍に保護されるだろう。奴隷達については顔も人数も覚えておらず無関心ではあるが、それでも死なずに済むなら、それに越したことはないというのがアマテラスの考えだ。

 

だが、ガネリエと奴隷達は助かっても、他の天竜人達はそうは行かない。革命軍も、海賊も、天竜人に振り下ろす手が止まることはないのだから。

 

そして……遂にその時が訪れた。

 

「(イムさま……)」

 

世界政府の頂点。

イムの気配が────消えた。

 

誰に倒されたかは不明だが、イムの敗北は政府にとっても致命的だった。

 

既に五老星も全滅状態。

更に政府側の戦力が殆どやられた今、この戦いは世界政府の敗北で決定づけられた。

 

「ハァハァ……!!」

 

押されながらも格上であるアマテラスの足を何とか止め続けるサボ。そんなサボを援護しようと他の場所からも次々と革命軍のメンバー達が集結する。

 

もう政府側に逆転の目は無い。

後は天竜人達がこれまで犯してきた非道の報いを受けて死んでいくだけだろう。それは不死身である筈の”神の騎士団”とて同じことだ。

 

「(みんな……いま助けるよ)」

 

イムの敗北、残り少ない体力、覇王色によるダメージが蓄積した身体、そして次々と殺されていく天竜人。そんな追い詰められた状況下で更に進化したアマテラスは……新たな技を生み出そうとする。

かつてエラバフで戦ったニカの空想具現化能力。「やりたかった事」を現実化する力を参考にして、この状況で最も必要になる力を彼女は土壇場で生み出した。

 

「────”ひのとり”!!」

 

その瞬間、アマテラスの背中から炎でできた鳥が飛び出した。

その数は1羽だけで無い。何千という数の鳥がアマテラスから生み出され……敵を押さえ込んでいく。

 

「なっ……!!」

「ちょっと、何なのコレ!?」

 

身体が炎で出来てる鳥には物理的攻撃も武装色の覇気も通用しない。しかも”ひのとり”自体が覇気を使えるため、自然(ロギア)の能力者が相手でも対抗が可能だ。そんな厄介極まりない力を持つ鳥に無数に群がられて、そのまま押さえ込まれてしまう、サボとイワンコフの2人。

 

炎で出来た鳥だが対象を燃やすことはなく、押さえつける事だけに専念していた。

 

「な、何だよこれ!?」

「サボさんとイワさんが……!!」

 

サボとイワンコフが無力化されて慌てふためく革命軍のメンバー達。

彼らもサボの援護として先ほどまで戦っていたのだが、戦闘力がそれほど高くない彼らに鳥は襲い掛からなかった。

 

そしてアマテラスがこの技を生み出したのは当然、サボ達を押さえる為だけではない。

 

「お、おい!あれを見ろ!」

「まさか、あの鳥共……天竜人を逃してるのか!?」

 

空を指差す革命軍の目に映ったのは、無数の鳥が天竜人達を炎の身体で包み込んで、そのまま空を飛んでいく光景だった。

 

「ヒョエエエエ!?わちし、空を飛んでるんだえー!!」

「怖いんだえぇぇ!誰かわちしを助けるんだえ!!」

 

そして、燃やしたいものだけを燃やす鳳凰の炎に包まれた天竜人達は燃えることなく鳥と一緒に空を駆け抜けていった。

 

「天竜人が逃げるぞ!!」

「逃すな!撃ち落とせ!!」

 

革命軍や天竜人に恨みを持つ人々が彼らに向かって発砲するが、鳳凰の炎に包み込まれた天竜人達には傷一つつかない。

そして、炎の守りを突破できるような強者達には、サボやイワンコフ同様、無数の鳥が群がり動きを妨害していた。

 

既に何千と生み出された”ひのとり”だが、尚もその勢いは止まらない。アマテラスの背中から次々と新しい”ひのとり”が飛び出していく。

 

「ハァアアアアアアア!!」

 

残りの覇気も、体力も、能力も、そしてイムとの契約で得られた不死身の力ですら、燃料に変えながら”ひのとり”を生み出していくアマテラス。

 

最終的に1万以上の数に達した鳥達は、生存している全ての天竜人や”神の騎士団”などの仲間を遠方に逃し、それを防ごうとする強者達を1人残らず押さこみ無力化した。

 

「ぁ……ぁ…………」

 

そして……全ての力を使い切ったアマテラスはその場に倒れ込んだ。

もはや指一本動かすことができないほどに消耗したアマテラス。それでも、生き残った仲間達が全員、鳥に運ばれていく様子を見て微笑んだ。

 

「────ふざけるな!!」

 

だが、当然それに納得しない者もいる。

戦闘力が高くないため、”ひのとり”による押さえ込みの対象外になっていた革命軍の1人が動けないアマテラスを蹴り飛ばした。

革命軍は「世界を変えてみせる」という崇高な志を持った組織だ。しかし、サボやイワンコフ等、幹部クラスのメンバーのように革命軍全員がそれだけを目的に動いているわけでは無い。

 

過去に天竜人や政府に迫害されて革命軍に参入した者達の中には「世界を変える」ことだけでは無く、復讐を目的とする者も大勢いる。

そして、先ほどまでサボと一緒にアマテラスと戦い”ヒノトリ”の対象外となったメンバーは、その殆どが天竜人への恨みを持つ者達だ。

 

政府と天竜人に虐げられ、復讐を誓った彼らはこれまで革命軍のメンバーとして命懸けで政府と戦ってきた。

そして、ようやく積年の恨みを晴らせるというタイミングで天竜人達を逃がされたのだ。そんな彼らの怒りの矛先が残った唯一の天竜人であり、自らの獲物を逃したアマテラスに向くのは自明の理であった。

 

「こいつも天竜人なんだ……殺してやる!!」

「で、でもよ。マーカス・アマテラスは非加盟国を救助してたんだろ?新聞に書いてあった事が事実だって連絡も来てたしよ……」

 

怒りに顔を歪ませながらアマテラスに近づく男に、革命軍の別のメンバーがおずおずと確認する。

 

この少女は本当に自分達が復讐するべき相手なのか、と。

 

しかし、今の彼らはそれでは止まらない。

アマテラスにとって不運だったのは、()()()()()()()()()を得てしまったメンバーの一部が、サボやイワンコフを援護するべく、この場に合流していたことだった。

 

「違う、騙されるな!コイツの側近SPのガネリエって男が言ってたんだ……新聞に書かれたことは全部デタラメだって!!このガキも裏では散々市民を虐げて、殺戮の限りを尽くしていたんだ!!」

「その通りだ!こんなの政府がよく使う手だろ!?性根から腐ってるんだよ、コイツらは!」

「そ、そうだよな……この悪魔共が人助けなんて、やるわけないんだ。また、コイツらに騙されるところだった……!!」

 

“ひのとり”による押さえ込みの対象外だった者達がアマテラスの周りに次々と集まり熱を帯びていく。

アマテラスが非加盟国を救助していた事実は革命軍の幹部クラスが確認して、他のメンバー達にも伝えられているのだが、素直にそれを信じた者は多くない。

 

というよりも「信じたく無かった」と言う方が正確かも知れない。

そしてガネリエの言葉で、アマテラスの行いが「嘘だった」と確信して、復讐しても良いという大義名分を得た今の彼らは止まらない。

 

「ハンマーで全身の骨を折ってやれ!」

「切り刻んでから犬の餌にしてやる!!」

「俺たちはずっと苦しめられてきたんだ────コイツらを族滅しろ!!」

 

周囲の人間が武器を持ちながら「族滅しろ!」と沸き立つ。

復讐心に飲まれた彼らとて、元は天竜人に虐げられた善良な人々。せめてアマテラスが過去に助けた人達が近くにいれば、また違う結果になったのかも知れないが、そんな都合の良い事が起こる筈も無かった。

 

「────俺たちの怒りを思い知れ!!」

 

1人の男がアマテラスに向かって刀を振り下ろしたのをきっかけに他の者達も、次々と怒りや憎しみといった感情をアマテラスにぶつけていく。

 

今のアマテラスは不死身の力も燃料にして、一時的に使えなくなっている状態なので、覇王色が籠っていない普通の攻撃ですら致命傷となる。

そして不死身の力だけでなく、覇気や能力なども使い果たした現状、覇気も込められてない筈の刃や銃弾がアマテラスの身体を容易く貫いていった。

 

「ぅ……ぁぁ……」

 

耳を落とされ、指がバラバラになり、手足を引き裂かれ、骨は砕かれ、臓物を潰されて……もう虫の息だった。

 

全身を襲う激痛を他人事のように感じながらアマテラスは仲間や同胞達のことを考えていた。

 

「(みんな逃げられたかな……)」

 

世界政府の後ろ盾がなくなった今、”神の騎士団”のメンバーはまだしも天竜人達が助かる見込みは薄い。

この場は逃げられても、彼らを恨む人間達に追われて殺される可能性が高いだろう。世界中から恨みを買ってる天竜人を受け入れる場所など何処にも無いのだから。

 

それ以前に彼らには生活能力がない。

一応、出来るだけの”鳳凰の羽”を“ひのとり”に込めているので暫くは持つかもしれないがそれが尽きれば、そのまま餓死する可能性すらある。

 

だが、これ以上はどうしようもない。

助けたいという気持ちはあってもアマテラスには、もう何も出来ない。

 

「くたばれ、悪魔!!」

 

やがてアマテラスを嬲っていた1人が怒りのまま、剣を振り下ろした。

それは、そのまま彼女の頭を捉えようとしていた。

 

「何やってんだ、お前らァ!!」

「やめなさいっチャブル!!」

 

“ひのとり”から、ようやく解放されたサボとイワンコフが止めようとするが少し遅い。

自分の末路を悟ったアマテラスは……運命を静かに受け入れた。

 

アマテラスの表情には怒りや憎しみなどの負の感情が全く宿っていない。

もちろん、数多の同胞や仲間が死んだことに対する悲しみの感情はある。彼らを守れなくて悔しいという気持ちもある。

 

それでも、アマテラスが誰かを恨むことは無かった。

どんな結果になろうと、何が起ころうと、自分の責任として全て受け入れなければならない。今回、守りたかった人達が殺されたのはアマテラス自身の力不足が招いたこと。

 

自分にとっての不利益は全て自分自身が受け入れる。

 

それがアマテラスの考えだ。

だから、彼女はこれまで他人に怒りを見せたことが一度も無かった。

 

多くの人達が復讐のために天竜人を殺そうとして、アマテラスはそれを止めるために行動した。

お互いにやりたい事のために全力を尽くして今回はアマテラスに力が足りなかっただけのこと。

 

もちろん心残りはある。

出来ることなら残った仲間や身内の事を守ってあげたかった。仲間ともっと時間を過ごしたかった。ガネリエやマーズ等、お世話になった人達に恩を返したかった。

 

もしかすると、この後は助けた天竜人や”神の騎士団”が全員殺されて、アマテラスの行いが無駄になってしまうのかも知れない。

 

それでも……全力を尽くしたのであれば、その結果を受け入れなければならない。

だからアマテラスは天竜人に虐げられた人達の怒りや復讐心も、そして今自分がされていることも否定することは無かった。

 

剣が目先にまで迫った時、アマテラスはこれまでの人生を走馬灯のように振り返っていた。

 

『見ろよ、アマテラス。こいつは睡眠と最高にマッチしていると噂のアロマだ』

『そうなのー?』

『快眠王国と名高い”ネムール”の限定品だからな。使い心地を確かめたら、お前にも貸してやるよ』

『ありがとー、キリンガム』

 

そして最後に思い浮かんだのは、ある騎士団との日常におけるやり取り。アマテラスにとっては、それも心残りの一つだった。

 

「(アロマ……借りたかったな……)」

 

そしてアマテラスの頭に剣が突き刺さり……彼女の目から光が消えた。

 

「やめろ─────ッ!!」

 

それと同時にサボが割り込んだ。

アマテラスを攻撃する手を急いで止めさせるが、その惨状を見て間に合わなかった、と悲痛な表情を浮かべる。

 

「何やってんのよ、ヴァナタ達!?いくら敵とはいえ、これが無抵抗の子供相手にやることかァ!!恥を知りなさい!!!」

「何言ってるんですか!こいつは天竜人ですよ!?」

「そうだ!このガキの死体を引き摺り回した後で晒しあげて、俺たちの怒りを思い知らせるべきだ!!」

 

そうだ、そうだ!とイワンコフの言葉も届かずにヒートアップする者達を見たサボの表情に怒りがこもった。

 

「お前達はッ……!!」

 

怒りの形相で彼らを睨め付けるサボだったが、すんでのところで踏みとどまり「いや……」と言いながら目を伏せた。

 

「お前らは、あそこの建物に集まった負傷者の手当てに向かってくれ。戦いは終わったんだ。敵でも味方でも、これ以上……死者を出すべきじゃ無い」

「で、ですが」

「────いいから行けッ!!」

 

サボの有無を言わさない怒号を受けて彼らも納得のいかない顔のまま渋々と引き下がる。

場に残ったサボとイワンコフはやりきれない顔でアマテラスのことを見ていた。

 

「サボ……どうやら残った天竜人と”神の騎士団”は、この娘が全員逃したみたい」

「そうか……」

 

サボがアマテラスの側で片膝をつく。

 

自分の身を守ろうと思えば守ることが出来た。

サボ達に勝とうと思えば勝つことも出来た。

そして……逃げる事だって。

 

アマテラスが自分の命を優先していれば、或いは同胞のことを僅かでも見捨てていれば死なずに済んだ筈だった。

 

「仲間を逃すために力を使い果たした、か。マーカス・アマテラス……大したやつだったよ、お嬢ちゃんは」

 

サボが優しい笑みを浮かべながら光を失ったアマテラスの目を優しく閉じさせた。

 

数多の人間による憎悪を感じさせる傷だらけの身体とは対照的に、その顔には負の感情というものが全く宿っていなかった。

 

 

 

□◆□◆□◆

 

 

 

アマテラスが天竜人達を逃した事がきっかけとなり、各地で鳴り響いていた戦闘音も少しずつ収まっていく。

 

────こうして戦いは終結した

 

世界を巻き込む戦争は世界政府の敗北という結末で幕を閉じる。政府が敗北したことや戦いにより起こった事は良くも悪くも世界を騒がせる事になった。

 

多くの命が失われた。

多くの国が崩壊した。

 

そして……多くの人達に影響を残していった。

その中にはアマテラスが生み出したものも確かにあった。

 

戦いから幾許かの月日が流れた後に、ある科学者が過去に提供された”鳳凰の羽”を元に、これまで治せなかった難病を完治させる薬を完成させたのだ。

それによって多くの人が救われ、薬の特集記事には開発貢献者として、アマテラスの名前が添えられていた。

 

そして、戦闘の余波で大きく損傷した聖地マリージョアの付近には、小さくも立派な墓が建っていた。

マーカス・アマテラスの名前が刻まれたその墓を建てたのは革命軍参謀長のサボか、彼女の元奴隷達か、はたまたアマテラスが過去に救った人達なのかは分からない。

 

だが、その墓には毎年多くの人々が花を添えに訪れていた。

 

毎年毎年……必ず。

 

かつて、ある男が問いを投げた。

「人はいつ死ぬと思う?」と。

 

その問いに対して男はこう答えた。

 

─────人に忘れられた時さ

 

アマテラスの訃報を聞いて、泣き崩れる元奴隷の者がいた。

過去彼女に救われた人の中で、その衝動を地面にぶつけ、涙をこぼす者がいた。

そして……彼女を殺した革命軍の中には薬の記事を読んで「自分のやったことは本当に正しかったのか」と後悔する者もいた。

 

アマテラスの死は多くの人たちの心に爪痕を残していった。

だから彼女が()()()()を迎えるのは、もうしばらく先の事になりそうだった。

 

─────マーカス・アマテラス

 

享年7歳。

彼女は最後まで政府と仲間のために戦い、誰かを憎むことも恨むことも無いまま……幼い命を散らせた。




完。
END1は「世界政府敗北END」でした。


・ガネリエ
ガネリエ→ネガエリ→寝返り。
やっと名前を回収できた……。
彼の言葉がなければ、新聞に記載されたアマテラスの活躍から、革命軍側は殺すのを少しは躊躇い、結果的にサボが殺しを止めるのが間に合っていた可能性が極めて高い。
つまり、ガネリエがいなければ今回の話は書けなかったので間違いなく今話におけるMVP。

・アマテラス
16歳ぐらいで四皇総がかりでも抑えられないぐらいの強さになるので、生まれて来たのが遅すぎたとも言える。

・アマテラスと戦った四皇レベルの猛者
候補として考えられるのは黒ひげ、ルフィ、ミホーク、シャンクス、カイドウ+ビッグ・マム(復活してれば)あたりだと思われる。
誰と対峙したかは不明だがアマテラスは対峙した全員に勝って体力を酷く消耗した模様。

・イム+五老星
どうなったか不明。
生きていればアマテラスに回収されるので原作の展開次第。

・神の騎士団
何人かは死んでる想定(物語の都合上、殺す手段はあると思うので)。アマテラスに救助された者は、ずる賢く生き残れる気がする。

・一般だえだえ天竜人
アマテラスに救助された者達の生き残りは、政府の後ろ盾が無くなった今、かなり難しいと思われる。
仮に迫害されなくても、そもそも生活力が皆無なので餓死する可能性大(アマテラスの羽で暫くは待つかもだけど)。
何人かはドフラミンゴ化して生き残るかも。

・世界政府
原作での革命軍の描写を見た感じ、世界政府自体は無くならず、頭のすげ替えだけされたと思われる。
世界がこの後、どうなったとかは不明。
原作だと海に沈むとか言われてたけど市民は生活できるのだろうか……?

※今後について
END2は近日中に載せます。
それで本編は完全に終わりです。

IFとかは余力とやる気があれば書くかもです。
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