あなたが一番何が嫌なのかということを考え抜いて、書いたものがホラーになる|梨 インタビュー
エブリスタ小説大賞2025 河出書房新社×梨「ホラー短編賞」を開催!
『かわいそ笑』をはじめとして数々のモキュメンタリーホラー小説を発表し、「恐怖心展」「行方不明展」など話題の展示の企画なども手掛けるホラー作家の梨氏に特別審査員として入ってもらえることになりました。
今回は「身体」「感情」「記憶」にまつわるホラーの三部門、しかも文字数は下限なしの超短編から2万文字までと幅広いので、あなたの書きたい長さで応募が可能です。
募集の告知に合わせて、梨氏にホラーやモキュメンタリーについて、そして、今回の「ホラー短編賞」についてお話を伺いました。応募開始は12月1日(月)から、〆切は2026年3月2日(月)です。インタビューを読んで、あなただけのホラー作品を書いて応募してみませんか。
アマチュアの人たちがインディーズで投稿しているものが自分の中ではホラー創作だった
――小説を書きはじめたきっかけをお聞かせください
梨:私は昔から小説を読んできたという文学青年でございという感じではなくて、どちらかというとインターネット上の活動の延長線上の趣味という感じで小説を書きだしました。
2000年生まれなんですが、2006年の6歳ぐらいの頃から現「5ちゃんねる」こと「2ちゃんねる」に入り浸っていて、オカルト板のスレッドで「八尺様」を読んだりするようになりました。
当時は活字は青い鳥文庫とかなら読めるかなぐらい。でもフラッシュという文化があったんです。今でいうところのYouTube動画みたいなものがあって、「ActionScript」というコーディングでノベルゲームみたいなことができたんです。
有名なホラーフラッシュとして、「赤い部屋」という話があって、現実に浸食する演出がありました。今でいう参加型とか体験型ホラーの走りみたいなものだと私は思っているんですけど、そういう文化がずっと好きで洒落怖(「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」)とかのスレッドをフォローして書き出すようになったのが小学3年生ぐらいでした。
――かなり早い時期からホラー的なものを創作したり書き始めていたんですね
梨:私の中でホラー創作というのはプロがやるやつじゃなかったんです。アマチュアの人たちがそういう風にインディーズでやって投稿しているもの。じゃあ、自分でも作れるわみたいな気持ちでやっていたから今まで続いたところはありますね。
――お話を伺っていると時代的には『電車男』のホラーやオカルト版に近いものをユーザーとして体験していたので、受け手でもあり送り手にもなるという流れが自然だったということでしょうか
梨:はい、幼少期からインターネットに触れているから、創作することも普通のことだったわけです。あと私は夢小説のリゼとかにいたりして、リゼ出身の人たちで集まったり、同盟を組んだりしてました。
――学校で2ちゃんねるのホラーやオカルトのことや夢小説の話をする友達はいましたか
梨:いなかったです。ネットでつながっている人たちの交流ぐらいですね。あの頃はまだインターネットオタクであることがバレるイコール死みたいな概念がまだ残っていたんです。
まだ宮﨑勤事件の余波もあって、オタク気持ち悪いみたいなものは残っていたり、アニメや声優好きみたいな人は学校のクラスの中でも少数でした。その転換期みたいな時期にいたのでなんというか生粋のインターネットオタクの部分があります。
商業デビューするまでは小学3年生ぐらいからずっと書き続けていて、コミケのことを知ってから同人誌を作り始めたりしました。ホラーがかなり多かったですが、それ以外にも創作小説とか二次創作ものとか、いろんなジャンルを転々としながら書いていました。
――インターネットを中心に活動する(ウェブで執筆する)際に気を付けていることを教えてください
梨:気を付けるというか、ずっと活動しているとやらかしている人はどんどん見えてくるわけですよね。この人が界隈と喧嘩別れしたとかの話題はいくらでも入ってくる。今でも同人とかだったらありますよね。
上の世代の失敗をリアルに感じられるので、その中で身の振り方をうまいこと覚えていきながらそこ行ったら危ないとか、あそこの足場はぬかるんでそうだなって避けるとかができるかどうかがデカかった部分があると思います。
――梨さんはデジタルネイティブと呼ばれる世代に入ると思うのですが、インターネットが生まれた時から身近だったことで感じることはありますか
梨:そうですね、今の若い世代の人ってワンミスしたら終わりの環境でずっと生きているじゃないですか。ジオシティーズやFLASHなどサービスがなくなったことで胸を撫でおろしている大人はいっぱいいると思うんです。
だから、今のSNSをやっている学生の人たちは本当にすごいと思います。ちゃんと文法をわかっています。上の世代の人はそういうのを見てちゃんとしすぎて怖いとかキレイすぎるという印象を持たれるみたいですが、ダメな部分を出したり何かで失敗すると全世界に弱みを握られてしまうという恐怖があるので仕方ないかなと思います。
取材した情報を躊躇なく捨てられる人は書くことに向いている
――作品に民俗学的なエッセンスなども取り入れられていますね
梨:もともと民俗学が好きで、国際日本文化研究センターの名誉教授の小松和彦先生という方がいらっしゃるんですが、高知県物部村(現:香美市物部町)で陰陽道の要素をふくむ民間宗教いざなぎ流を40年以上研究し続けた人です。そういうものをずっと読んだりするのが好きだったので、参考資料を調べる時も基本的には国会図書館で複写を申請したり、レファレンスサービスとかを使ったりしています。
――資料をたくさん読んだり、取材をする際に気をつけたほうがいいことはありますか
梨:全員じゃないですけど、取材をしちゃうとそれを書いてしまう。例えば、ホラーでいうと貴志祐介さんはめちゃくちゃ取材大好きタイプだからこそ『天使の囀り』みたいな大傑作が生み出せるわけですけど、自分の足で稼いだ知識をもとに小説を書く人に向いているのは、その取材の情報を捨てることに躊躇がない人だと私は思っています。
つまりどういうことかというと、取材したらせっかくだからって書きたくなるんです。あれだけ調べたんだから、あの苦しみがわかってほしいと全部書いてしまう。ここいっぱい調べたんだねって思われて終わりということがよくあります。
自分の苦労をおくびにも出さずにどれだけさらっと流せるか、うまいところだけつまめるか、つまり自分の苦労を捨てられるか。そこの躊躇がなければないほど、書くのに向いていると思っています。
――モキュメンタリーホラー作品がブームとなり、若い世代だけでなく幅広い世代から支持されています。ひと昔前のホラーブームやモキュメンタリ―作品との違いはどういうところでしょうか
梨:閉塞感みたいなものはこの数年のワードだと思うんですけど、この4、5年でかなり不条理なものに対するリテラシーというか、参入障壁はかなり低くなったと思います。
Jホラーブームの時期のモキュメンタリー系のホラーは『ほんとにあった! 呪いのビデオ』なんですね。それが一世を風靡してからちょっとして2007、08年から2012、13年ぐらいまで芸人さんたちの怪談師ブームというのが起きたんです。『やりすぎ都市伝説』とかも人気が出てきて、実話ものが増えていきました。ずっとホラーって実録実話ものが多かったんです。
――芸人さんや元芸人さんたちによる実話怪談のイベントやYouTubeチャンネルやイベントなども増えて、今では定着している印象があります
梨:今ブームになっているモキュメンタリーというのはフェイクだと言ってしまうんです。これは10年前だとわりとありえない。昔は隠して最後だったり、言わなくて「あれはなんだったんだろう」みたいな、真偽がわからないようにしていた。でも、今は「これはフィクションです」という言葉がある種のクリシェになってるぐらい。
その嘘が前提として受け入れる体制ができたので、障壁が下がっているわけです。実話の怖いものではなく、みんなでお化け屋敷的に楽しむものになった。だから、ホラーがエンタメになったんです。
2000年代後半ぐらいの芸人さんが怪談話をしてるもののコメント欄は、7割ぐらいはそんなのあるわけねーじゃん、わらわらっていうコメントで、あら探しでした。でもフェイクだって言っちゃうと、そのあら探しを全部切り捨てられるんです。
『バトル・ロワイアル』や山田悠介作品の系譜に今あるものとは?
――ご自身の作風に影響を与えたと思われる作家や、他ジャンルの作品がありましたら教えてください
梨:活字や紙書籍のホラーでいうと大家というと京極夏彦さんだとか、もう少し時代をさかのぼって岡本綺堂さんだったり、幻想文学系だと泉鏡花さんでしょうか。私は純文学も好きだったので中村文則さんであったり、綿矢りささんなんかがめちゃくちゃ好きですね。
基本的にはインターネット上で活動していたので、アングラホラー界隈ではかなり有名な狂気太郎さん。原稿用紙1500枚ぐらいの小説を全部ウェブにあげているのを全部読んでいます。
――狂気太郎さんのサイトのトップページを見ると赤と青のビビッドさと黒塗りでどこか懐かしいネットの感じがします。ネットの闇に、中に入っていくような世界観があります
梨:ノワール小説とかに近く、不条理ものとか。『青少年倫理道徳復興委員会』『お父さん』という作品が有名ですかね。『青少年倫理道徳復興委員会』は犯罪を犯した青少年を見せしめに殺戮する、拷問して殺害する国営放送が人気を博したという内容でした。
――『バトル・ロワイアル』やスティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で書いた『バトルランナー』を彷彿させる内容ですね
梨:狂気太郎さんは1998年ぐらいからネット上で活動しているので『バトル・ロワイアル』より先駆けてやっていたという印象です。
ちょっと逆に聞きたいんですけど先ほど『バトル・ロワイアル』とおっしゃったんですが、私が小学校ぐらいの頃に山田悠介さんが出てきて、その次ぐらいには『王様ゲーム』が書店の本棚に平積みされていたんです。この流れで今の子たちにおける山田悠介さんのポジションって誰なんでしょうか?
――エブリスタでいうとウェルザードさんの『カラダ探し』もそのラインに入ると思うのですが、10代の思春期に入るころから大学生ぐらいの世代の時期に人が殺されたり、破壊されるみたいなものやホラー作品の大ヒット作は周期的に出ていました。例えば、映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』もそういう需要でヒットしたように思います。
ただ、今そのラインのものってパッと浮かばないんですが、それの代わりにモキュメンタリーホラーが位置しているのかもしれないですし、あるいは『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』がそういうものになっているのかもしれません
梨:『バトル・ロワイアル』が新人賞の最終候補に残ったけど、選考委員から不評を買ってしまい、他社の太田出版から出版したら大ヒットして映画化して社会現象になってしまったみたいなことがかつてはあったわけですよね。
――そういうものも今はメジャーである「ジャンプ+」みたいなものが取っているみたいなことはあるんじゃないでしょうか
梨:なるほど、「ジャンプ+」みたいな大きなマスが、昔ならほかの大手ではない出版社から出ていたような作品すらも包括しているようなことが起きているのかもしれないですね。
得意ジャンルにホラーの文法を引き込んで、自分だけのホラーを作ってほしい
――今回の河出書房新社×梨「ホラー短編賞」でどんな作品を期待しますか
梨:ホラーを書きたくて、これをやりたいんだというのがある人は全然心配はないです。ただ応募したいけど、どうだろうとか思っている人に対しては二点あります。
一点目は完全に私の嗜好の問題なんですけど、置きに行ったものはそんなに読まなくていいかなと思います。流行を念頭にして手堅くまとめましたみたいなものはあってもいいけど、三ジャンル全部がそれじゃなくてもいいです。
どちらかというと加減もなく、あなたがおもしろいって思うものであれば、モキュメンタリーであろうが純文学やエンタメであろうとなんであれ、あなたがホラーだと思うのであればそれでいい。今人気のジャンルだから、こういう風に作ったほうがいいのかなっていうのは一旦全部捨ててもらっていいのかなと思っています。
――「あなたがホラーだと思うのものでいい」となると迷っている人も応募してみようかなとなってくれそうです。二点目を教えてください
梨:はい、二点目は私はずっとホラーを作り続けているので、ホラーの勘所みたいなものはわかるんです。でも、青春小説を作ってくださいと言われたとすると、図書館で高校生の男女が出会って、女の子の方が余命3ヶ月ぐらいでってやつがいいのかなと多分思ってしまいます。でも、青春小説をずっと書き続けている人からすると「なに言ってるんだよ」とおそらくなります。
ホラーも同じで書きなれていないとどうしてもマスの方向に行ってしまう。これは仕方ないんです。経験値がないからそれがニュートラルなものだと思う。じゃあ、その中でどう守破離みたいなことをするかという話になります。
ホラーがすごいなと思うのは、スプラッターものとか映画『ソウ』も京極夏彦さんの「百鬼夜行シリーズ」も、ホラーとまとめてしまえる。許容範囲がめちゃくちゃ広いんです。
――そこにモキュメンタリーホラーもフェイクドキュメンタリーも入っていますね
梨:そうなんです。今YouTubeチャンネルで「MOCKTALE-モクテル-」という私が好きなものがあるんですが、最近そこが「デスゲーム制作者密着ドキュメンタリー」をホラーモキュメンタリーで作るというのを出したんです。
内容は見てもらいたいんですが、施工も全部込み込みで一括これぐらいの予算できますとプレゼンしてたり、タクシーで移動していたら、デスゲームで亡くなった人の遺族が後をつけてきているとか、本当にすべてが飲み込まれていきます。
――ある時期からヒット作を出している出版社の編集者やテレビ局のプロデューサーが顔を出して裏側を見せたり、語るというコンテンツが仕事術という部分も含めて人気になっているからこそ、それをモキュメンタリーホラーに取り込んでしまっているんですね
梨:フジテレビの『世にも奇妙な物語’24 冬の特別編』で放送されたSFドラマ『City Lives』という作品があるんですが、もともとは深夜枠で三回にわたって放送されたモキュメンタリー番組でした。
――timeleszの佐藤勝利さんが出演されてXのトレンドにも入ったりして話題になっていました
梨:この作品はビルとかが全部生き物になっていて、街の機嫌を損ねると椅子だけが三百脚ぐらいある家が生成されてしまって住めなくなってしまうという世界なんですね。住人もシティの範疇に入っているので街の一部だから、シティによって生成された人間もいるんじゃないかというところからドラマが進んでいきます。
――モキュメンタリー×SFという組み合わせですね
梨:ええ、ジャンルはもう混ざってます。こんな風に私は飲み込んでいけばいい、現実とか物語とか、物語じゃなくても創作として飲み込んでしまえばいいと思うんです。もちろん無難なホラーも作れたほうがいいんですが、だからといって得意分野をないがしろにする必要はないと私は声を大にしたいんです。
ホラーを書いたことがなくても、自分の得意分野にホラーの文法を引き込んでしまうことで全部のジャンルを飲み込んだ自分だけのホラーを作ることができるんです。私はそういうものが読みたいです。
最大出力でエブリスタさんのプラットホームを使って怖がらせてください
――梨さんにとってのホラーの定義というのはどういうものなんでしょうか
梨:私の中ではすわりの悪さをエンタメにしているものがホラーなんです。恐怖とか血みどろではなくて、なんとなくそぐわない感じみたいなもの。私はよくこれを異化効果と呼んでいます。そこにあることが怖い、気持ち悪いというもの全般をホラーと呼んでいます。
ダウナーな感情全般というイメージを持っていただけるといいかなと思います。
――小説で最終的にハッピーエンドになるけど、そのスパイスとして仲たがいのシーンを入れるとかではないということですね
梨:はい、それは味付けのための不快だと思うんですけど、本当に不快それ自体を楽しんでほしい、メインディッシュですというのがホラーになりやすい。
世界最凶のホラーは一対一で拷問することなんです。でも、それはエンタメにならない。この前開催した「恐怖心展」という展示でも本当に恐怖を与えたいのであれば、ゴキブリの裏側の画像を8Kで壁一面に展示すれば、もう終わりなんです。でもそれでは意味がない。
それはなぜかというと、みんな怖いけどおもしろかったよね、というものを求めているから。私が一言言っておくといいかなと思っているのは、最終的な着地点はおもしろいを目指した方がいいということです。
――今回のコンテストは梨さんに読んでもらえるということで、作品の中に画像をつけたりなどの工夫をする人も多いのではないかなと思います
梨:エブリスタさんは横書きですよね。規格やフォーマットは決まっているので、そこでどのくらい遊ぶことができるのかを見てみたいと思っています。何度か出版関係のコンテストもやっていますが、私は媒体によりますが、画像を入れられるレギュレーションにしてくださいと言ってきました。
個人で梨主催として行ったホラーコンテストを過去に三回ほどしましたが、画像も動画もHTMLコーディングも全部OKという形でやりました。
――では、今回は画像とかもエブリスタのガイドラインを読んでもらって、権利侵害などなければ使ってくださいということで大丈夫でしょうか
梨:はい、権利侵害などしない範囲でご自身が責任を取れるものなら画像は使用してもらって大丈夫です。あとはスマホでスワイプして読んだときに画像も含めておもしろいかどうかでちゃんと勝負してください。最大出力でエブリスタさんのプラットホームを使って怖がらせてください。ただし、当然、画像がないと減点になるというわけではないです。
――コンテストで募集する三部門(「身体」「感情」「記憶」)でそれぞれに怖さを感じさせるためにどんなことを気を付けるといいでしょうか
梨:みんなわりと応募しやすいレギュレーションになっていると思います。短くていいわけですから、下限一切なしでジャンルもそんなに固定せず、「身体」「感情」「記憶」というレギュレーションは翻訳するとなんでもいいよ、ノンジャンルと言っているのに等しいわけです。
――この三部門はカテゴライズしているだけだから、誰でも書きやすいものになっているということですね
梨:ええ、その中でも傾向は生まれると思います。いわゆるボディホラーやスプラッターものだったら身体は描きやすいかもしれません。
最近だとデミ・ムーア主演の映画『サブスタンス』だったり、車と官能的な関係を持つ女性を描いたサスペンスホラー映画『TITANE/チタン』など、血まみれのスプラッターものに違う要素が入っていたり、身体が破壊されたり合体したりみたいなものは観る人によっては怖いし、わかりやすく表現しやすい。
感情と記憶の怖さを描くのはより文学寄りになると思うんです。内面の内省的な話になるので、身体はエンタメがやりやすいのかなと思うんですよね。
――梨さんが一つ書くならどのジャンルにしますか
梨:私が応募するのであれば、記憶が一番書きやすいです。身体は一番書きにくいですね。スプラッターやボディホラーに書きなじみがないのもそうですし、身体となると競合するモチーフがかなり限定されてくる。ホラー的には指とか髪とかは描きやすいですよね。
でも、ふくらはぎのホラーって書けないだろうし、難しいと思うんです。人面瘡とか付け足さないと怖さはなかなか出ないでしょうね。
逆にいうと、全制覇はけっこう難しいゲームバランスにできていると思っています。だから、どう割り切るかっていうのが大事になってくる。
なんでもいいし何行でもいいから完成させてください
――続いてホラー小説のクオリティをあげるためにはどんなことを気をつければいいでしょうか、ということを聞こうと思ったんですが、今までおっしゃっていることを踏まえると自分がおもしろいと思うものをぶつけてくれということになりますね
梨:もう、私がガチギレする作品を送ってきてほしいなという気持ちもあります。私は直木賞とかでも選評が好きでずっと読んでいるんですが、たまに選考委員が激怒したり、意見が真っ二つに分かれる作品とかっていいなって思うんです。選考委員同士が喧嘩するような作品ってなんだかんだ残っていくんですよね。
――いろんな編集者さんが言われていることですが、小説賞の選評は読んでおくほうがいいですね。他人事ではなく、自分事として受け止めて考える人はやっぱり伸びたり、結果が出ている印象があります
梨:応募する際の基本的なことだと誤字脱字は気を付けてほしいです。でも、モキュメンタリーホラーで多いのは、素人の書いた投稿文章を抜粋しましたという章があったときに、女子中学生が完璧に全角ビックリマークのあとに全角スペースをちゃんと入れたりしている。それは違うよねって。そこがぐちゃぐちゃになっていないと違和感ないし、漢字変換がバラバラで統一感ない怖さとかもあったりはするんですけどね。
――さきほどの定義でいうとダウナーな感情全般がホラーということになると、今までホラーを書いたことがない人はそこを意識したほうがいいでしょうか
梨:自分が一番何が嫌なのかということを考えてみるのがいいかもしれない。自分が嫌なことをリストアップして考えたうえで話を書いたほうがいいと思います。
上司の口調が嫌いとかなんでもいいと思います。優れたホラー作家さんは日常の嫌なところをすごく上手に描いている。まずは自分が嫌いなものを考えてみてもらうと書きたいものが浮かんでくるんじゃないでしょうか。
――最後に、「ホラー短編賞」応募者に、そしてプロの作家をめざす書き手に向けてのメッセージをお願いします
梨:今回のコンテストはとことん簡単に応募できるようなレギュレーションを組ませていただいたんですけれども、特に象徴的なところとしては下限がないんです。上限はあるけど下限はないというのは、なんでもいいし何行でもいいから完成させてくださいというメッセージでもあるんです。
どうしても推敲はいくらでもできちゃうし、なにが自分の完成稿なのかどうしてもわからなくなる。でも、プロになる人は絶対落としどころを見つけてこれでいいや、「南無三」って言って入稿してる。とりあえず完成させることが一番。
コンペでもこれからプロになるとしても、それが原稿の〆切を守るうえでも一番大事なところかなと思います。とりあえず、数行のホラーでもいいし、ホラー掌編や短編を一作でも多く作ってもらって完成させてもらえたら、個人的にはそれが初めてのホラー作品になったら一番うれしいです。そういうものを完成するというのを第一目標にしていただければいいかなと思っております。
(インタビュー・構成:monokaki編集部)
エブリスタ小説大賞2025 河出書房新社×梨「ホラー短編賞」
ジャンル:「身体」「感情」「記憶」にまつわるホラーの三部門
応募枚数:下限なし~20,000文字まで(完結必須)
応募受付:2025年12月1日(月)12:00:00 ~ 2026年3月2日(月) 27:59:59
発表:中間発表:2026年5~6月予定、最終結果発表:2026年7~8月予定
賞:①河出書房新社での書籍化検討。②梨氏からの選評。③受賞1作品につき2万円(最大20万円)。④梨氏ピックアップ賞(3部門全てに作品を応募した方が対象。梨氏による一言コメントをいただきます)。
佳作は河出書房新社編集部からの選評(賞金はありません)。エブリスタ編集部コメント(最終候補作およびエブリスタ編集部が選んだ「ピックアップ作品」の中よりランダムでエブリスタ編集部から作品の感想が届きます)
詳細:https://estar.jp/official_contests/159849
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