レオリオvsレルートのギャンブル対決を考察する。創作におけるキャラクター性。

前置き


レオリオは単純な男だ。

親友が病気になり、医療費が高額で助けられなかった時

自分が医者になってやると決意した。

ひねくれ者なら、ここで自分が金持ちになろうとする。

「金が原因で友人が死んだ」という逸話に、金の部分でしか反応できない人は

そもそもこれを悲劇として捉えることができていない。

エゴイストは「自分が友人の立場だったらどう考えるか」という

「個」の話しかできないので、金を稼いで自分だけは助かるようにしか行動できない。

レオリオは、友人というかけがえのない他人が、金という基準だけで亡くなった事実に葛藤し、カネ至上主義に中指を突き立てるために医者になって、同じ病気の子供を助けて「カネなんかいらねぇ」と言って、悲劇を吹き飛ばそうとしたのだ。

彼は決して「カネがないだけで生きることもできないなんて……所詮この世は残酷なんだ……」と、むごい事実に対してメランコリックな感情に酔う現状追認主義者でもなかった。

それは、被害者に共感しているように見えて、実際は他人の不幸を蜜の味として楽しんでいるに過ぎない。永遠に他人事である。



レオリオvsレルート


そんな単純な彼だが、ハンター試験の第三次試験のトリックタワーでは、レルートとギャンブル対決をした。

そもそも、マジタニの気絶したフリを医療の知識で看破する、というカッコイイ導入から自然とギャンブル勝負に入って行ったのだが、相手はなんと女性で、賭博などの罪で100年超の刑期となった強者だった。

マジタニ賭博では負けてしまったレオリオだが、その後はレルートの性別を当てるギャンブルをする。

しかし、レオリオのスタイルを完全に読まれ、その後は負け続きでそのまま敗退してしまった。

レオリオは負けた時の被害を最小限にするような賭け方しかしていない。


よく勘違いされることだが、人間は自分の利益を最大化するように動くわけではない。

どちらかといえば、損益を最小化しようとする傾向がある。

そして、あまりにも損が重なった時、一発逆転のために

わずかな可能性で大金持ちになるような、突飛な行動をとりやすい。

それは、貧困層が宝くじを買ったり、為替やデイトレードに手を出したりするような場面で顕著である。

ここらへんの心理を読まれると、お手上げだ。

相手を「損益を最小化する行動」に誘導して、実際は自分が有利なギャンブルだけ提案すればいい。

実際、レルートが自分の性別をギャンブルで扱ったのは、そういう理由である。

本来なら性別を当てられるかどうか、外すかどうかとチップの多寡で判断するべきなのだが

「もし男に賭けて外れた場合、好きなだけ手○○できる」というリターンで価値判断が決定的に歪んでしまう。

レオリオは単純すぎて、全部にひっかかったが、私がレオリオの代わりに参加していたらどうだろう。


ワシvsレルート


レオリオの醜態を知っているので、そう簡単には負けない、と考えそうなものだが、実際は勝てないだろう。

さきほどの性別当てギャンブルも、私が「合理的」かつ「ジェンダー的平等論者」なのは多分すぐバレるので、そこを突かれると絶対に勝てない。


背が低く、声が高く、肩幅に対して骨盤が大きめで、ツインテールでおめめぱっちり、まつげもバッサバサ(囚人が化粧できるのか?)

どう見ても女だろと、シチュエーションによっては性差別的になりうる言葉をノータイムで言える自信がない。

もちろん、生物学上の性差(sex)は歴然だ。

カブトムシのメスにツノはないし、蚊が血を吸うのはメスだけなのと同じで、レルートは人間の女性の特徴しか持っていない。

社会的性差(gender)として、化粧をする、髪型に特徴がある(長くてかわいらしくセットしがち)というのもある。

本来なら男:女=50:50の完全に運任せの勝負のはずなのに、見た目の性差で男:女=1:99くらいまで傾く。

そして、そこを「見た目が女だからといって女扱いしていいのか」「本当はニューハーフなんじゃないのか」「ちんちんがついていれば、見た目が女性的でも男扱いするべきなのか」などと、複雑化したポリコレ的発想でゆらいでしまう。

本来なら男:女=1:99まで来た判断基準が、男:女=20:80くらいまで歪む。

ここらへんまで読まれれば、レルート側がその期待値を下回らないようなギャンブルを考えたり、ベットするチップを調節したりすれば、勝手にレルート側が圧勝してしまう。


クラピカならどうか


クラピカもぜんぜんダメである。

彼はゴリゴリの合理主義者のように振舞うが、実際はクルタ族の血がさわいですぐ煽る悪癖がある。

彼の目的も、友人の仇に復讐するために行動していて、実際は感情100%の動機である。

彼は一見すると合理主義者のようだが、実際は感情で突っ走るタイプなのだ。

そこを感づかれると、絶対に勝てないだろう。

ちょっと煽ればすぐ乗ってくるし、それを隠すため、あくまで冷静かつ合理的に振舞おうとする。


キルアならどうか


彼も合理主義者である。

中二病なところや、妙に達観したところもあるが

それらはすべて「暗殺者として過保護に育てられた」という経験がベースにある。

暗殺のために身に付けた合理性、アサシンというかっこいい職業に自己陶酔するナルシシズム、生まれた時から拷問耐性や毒に免疫をつける訓練を受け続けたという、壮絶な過去からくる世間一般への冷めた視点。

身に付けた常識すらも暗殺のための擬態であって、実際は大した理由もなく人を殺す快楽殺人者の操り人形として育てられた。

そして、そんな暗殺者としてのアイデンティティしか身に付けてこなかったことに対する強いコンプレックスが、キルアを形作るすべてである。

だから、彼にはやりたいことが一個もなく、ただ暗殺者にだけはなりたくない。

勉強だけ頑張ってきたがサラリーマンにはなりたくない、みたいなものだ。

彼は結果的に、ゴンがキルアにそうしたように、アルカをゾルディック家から解放した。

これも彼の必然である。

彼自身は暗殺者として身に付けたすべてが嫌っちゃ嫌なので、それによって得たあらゆる技能の恩恵を受けつつも、やはりアルカを暗殺一家から解放する、という行動に出たのだ。

構造主義的に言って、彼の動きはすべてが典型的である。

ただ、ハンターハンターの描写の細かさや演出の巧みさによって、それらが自然かつ感動的に仕上がっている。

レルートとのギャンブル勝負だが、そもそも彼は典型的な破滅型ギャンブラーである。

それはヨークシン編やグリードアイランド編でも描写されており、所詮は子供でしかない。

そもそも、暗殺者はギャンブルしない職業だ。

そういった意味で、彼は決定的にギャンブルが下手である。

ギャンブルに対するスタイルが、暗殺者として鉄板の育てられ方、生き方をしてきたことへの反抗心から来ているので

やたらリスクテイク型のベットしかできず、結果的には必ず破滅するタイプである。


ゴンならどうか


ゴンならやれそうだろうか。

彼も子供すぎる。

リスクとリターンの基準がぶっこわれており、ゲンスルー相手に一発顔面に入れるためだけに両腕を犠牲にした。

右手だけかろうじて動いたが、右手もダメになっていたらそこでゲームオーバーだった。しかし彼は、そんなこと一瞬たりとも考えていないだろう。

性別当てギャンブルでも「レルートさんは見た目が女っぽいから、ぜったいに女だよ!」と、一切の逡巡をせず言ってのけるだろう。

リスクとリターンの感覚が機能していないだけなら、ある意味ギャンブルに向いていたかもしれないが、その損得勘定ができない原因が「野生児」であったことや、あのジンの息子である血によるもの、元々の性格が強情すぎるところからも来ているので、それだけでレルートに勝てるイメージが浮かばない。


ギャンブルに向いた性格


結局、ギャンブルに向いた性格などない。

相手のギャンブルに対する姿勢に対して逆張りするだけである。

ポーカーのテーブルでいうと、周りがリスクを取っている時、自分はリスクをとらない。

それで周りが勝っても、多数派がリスクを取っているせいで、リターンが分散する。

逆に、周りがリスクを取らない時、自分だけリスクを取ればよい。

自分だけ沈む可能性もあるが、勝つ時には圧倒的に勝つ。

「自分らしさ」ではギャンブルに勝てない。

もちろん、これらは「人を騙して人から奪う」ために必要なパーソナリティの素質の話である。

最初っから、味方側にレルートに勝てるやつなんていないのだ。

勝てるとしたら、ずっと人を騙して生きてきたトンパくらいだ。

ぶつける人選を間違えたね。


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