シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない 作:嘉神すくすく
ディープスローター学会追放も辞さない覚悟です。
本作において「主人公最強」タグが付いていない理由が今回明らかになります。
世話ノ焼ケル主人ダナ……(殿様商売)
現代のロボット工学は直近数世代と比較して大いに発展した。それこそ超少子高齢化による労働力不足を何とか出来て
しかしそんな現代の技術力をもってしても、ドラえもんや鉄腕アトムのような夢のようなロボットは所詮夢物語であったし、一般社会のファミリーレストランではドラム缶を思わせるフォルムの猫型配膳ロボットが今なお世代と共に改良を重ね活用されており、メイドロボットがウェイターをしていることもない……らしい。
……あいにくと私────彬茅 紗音がその光景を目にしたのは映像のみで、
前世紀の人類が“来世紀の幻想”を数多く抱いたのだろうが、テクノロジー革命を経た今も昔も夢は夢のままだった。
……だったのだが
『トダーノ、スリースターズ・フライドライス無し、ビフォーヌーントレーニング、リームー! トダー居っナーイセーカツ……ナイ、ヤンケ!』
『オソレイリマス』
密着型ドキュメンタリー番組の1コーナーで、世界トッププロゲーマーである綺羅星のような少女の朝の様子が映されている。……少女の傍では、スポンサーロゴを直前に貼り付けられたと思しき鋼鉄の冷たさと重厚さを感じさせる異様な存在が給仕をしている。
その存在こそ、米軍の最新最高テクノロジーをもって開発された軍事ロボットを前身とする民間向けロボット────ポピュラータイプ“トダー”。
直線的なフォルムに剥き出しの配線、そして
民間向けとは言ったものの、このトダーシリーズは価格が高級車数台程度では効かない立派な有形固定資産であるため、個人で購入し利用している人々はごく一部のトップスだけだ。
基本的には法人がリース利用するものであり、その他では米国の一部州で警察への配備が試みられているのだとか。
さて、そんなトダーシリーズだが、私が
「
「たまには自分が介護用だということを思い返す時間を作りなさい……?」
「毎深夜ノCPU再起動ガソレニアタルヤンケ」
経口食にもいい加減慣れてきたとは言え煩わしさは否めない……ベッドに座ったまま中華粥と蒸し餃子の御膳を啄むように減らしてる私の右隣に、その鉄塊は立ってリンゴを剥いている。無機質な見た目に反して手つきが柔らかくて腹が立つ。
ザ・ロボットな見た目とカタコト口調なのは倫理的な問題から敢えて人間に寄せていないからと聞くが、にも関わらずどこか人間性を感じてしまう……というか口調に関して当初はテレビに映っている機体と同様であったのに、用事に出したある日を境に変な関西弁を喋るようになった。自己判断で学習しあまつさえ主人に悪態をつく存在をロボットと見なしていいものかと悩んでいる。
それはそうと、拙い日本語で普及型トダーを絶賛するシルヴィア・ゴールドバーグが、少なくとも四人前はあるチャーハンの山を減らしていく映像だけでも胸焼けがするというのにこのポンコツはなんてものを食べさせようとしているの……?
高性能と言えど所詮はロボット、少し前まで点滴生活だった人間の身体の状態は把握していても気持ちに関しては理解し得ないということなのだろう……お粥の上に浮かぶお
────彬茅コーポレーションの財力をもって数多の機能改修を施された普及型介護ロボット、ハイエンドモデル”トダー”。
識別名は彬茅 戸田亞。無機質そのものな見た目と声からは想像も出来ないが性別は女性として設定されているらしいそれは、明らかに人間一人の小間使いとして使うには無用の長物であり、この部屋や
……この場の全てを揃えた父の頭には、『過ぎたるは及ばざるがごとし』という言葉が存在していないらしい。
「……そんなことより、第9回“タイガー・ラッシュ”の報告をしてちょうだい」
「承知シタヤンケ、コノ映像ヲ御覧ニナルヤンケ」
『続いてのコーナー、今回笹原エイトが挑むのはライオn』
そう言ってトダーは無線操作でテレビをOFFにし、家庭用のシアタースクリーンを天井から下ろして照明を落とした。
彼女はこの家の電気系統の一切を掌握しており、一声かけるだけで空調の微調整にはじまり家への来客に対し一切居留守を決め込むゲーム集中モードへの切り替えまでなんでもありだ。父が訪れてきた際も私に忖度した柔軟な対応をしてみせるため便利なもので……『こいつ本当に機械か?』と思わされたことは一度や二度ではなかった。
準備が整うと本人(……?)のモノアイからプロジェクターよろしく映像が出力され……
『うんこ……うんこ……』
『痛きしょい……』
『死ぬ……死ぬ……』
「おおっ」
その男の顔はもはや原型を留めておらず、身を固めてひたすらに許しを乞うている。……これは、今回こそ期待できそうだ。
タイガー・ラッシュ。
それはトラロックあるいは虎人のプレイヤーである“あの男”に対し、裏格闘界の名ブローカー“キャプテン・マッスル”を仲介し多数の野蛮人をけしかける非殺傷の私的制裁……率直に言うと暴力によるリンチだ。
単に私が
サンラクくんの隣に立っていて当然という姿勢、そして彼に当たり前に受け入れられている事実が気に食わない。
……スペル・クリエイション・オンラインでは陣営のメンバーをけしかけて引退にまで追い込むことに成功したが、その後も彼がアレの愛用していた杖を片手に戦っている姿を見る度に全身を掻きむしりたい衝動に駆られたものだ。
サンラクくんのことを抜きにしても、私はアレの
どんなものでも自分で、他にいくらでも手に入れられるのに、私の
私にはもう持つ事が出来ない全てを持っている、太陽を飲み込む日蝕がごときあの異常者の心が折れる瞬間を私は切実に望んでいる。
『
『まだ気を失うなよ? 私を物として扱ってもいい男は──ヴッヴン!! …………ただ、ただ、愚行の報いを思い知れ』
(…………あれ? このボロボロにされてる男……なんだかアレにしては小さくなぁい?)
というか色気の無いジャージ姿と高い身長のせいで男だと勘違いしていたが、現在進行形で関節技をかけ相手に苦痛を与えている側の人物は女性だった。
服の下ではよほど強く押さえつけられているのか、一瞥して無駄に大きいと感じる胸周りは動作に対して揺れが少なく恰幅のいい成人男性のそれに近い。……かなり小さく見せてこれなのかと驚異的だった。*1
これまでタイガー・ラッシュに女格闘家が参加したことは無かったはずだが────
『ちょちょちょちょ……ッ!! なん、や、やりすぎ……! いくつ関節外しとるん!? タコみたいになっとるやんその人……!』
『みゅいっ!?!? ひ、ヒロ……!? みっ、みみみ耳元に息がかかっ、熱……うしっ、うしろ……! 抱きッ!? こんなに強……!?』
『ちょっと……ちょっとズレてるかな(骨格)』
『ああいけません! (応急処置)』
「やられてるの参加者じゃないのよえーっ」
「ヤンケェッ!?」
手元の木製トレーでポンコツロボの頭部を殴りつけると、ライフル弾をも跳ね返す耐久力を前に粉々に砕けてしまった。元の身体ではとてもでは無いが発揮できない速度と威力に困惑しているのが私なのよね……。
映像においてシルヴィア・ゴールドバーグのそれよりもずっと支離滅裂な日本語を発声しているのは深手を負った裏格闘家で、その場に乱入し爆乳女を羽交い締めにし引き剥がした大男……それこそがタイガー・ラッシュの標的である“あの男”だった。
「……チナミアノ人体ガ原型ヲ留メテイナイ野蛮人類『ケ・ツーピン』ハ中国ノ裏格闘団体『F・C・O・H』ノランカーヤンケ。“アイアンマン”ノ異名ヲ冠スルタフガイデ、今参加者随一ノ強人類ヤンケ」
「それがなんで
「
一般オッパイに半殺しにされた挙句ターゲットである“あの男”から手当を受けている、ペンギンじみた顔付きの裏ファイターの情けない姿に頭痛を覚えた。
「……というかいつも通り無傷じゃないの、アレ。失敗ならそうとだけ言いなさい……?」
「虎人ガ家ヲ出テコノ場ニ着クマデニ8人ノ野蛮人類ヲ無傷デ失神KOシタヤンケ、シャアケド最後マデ無傷デハナ済マナカッタヤンケ」
その8人も裏とは言えプロの格闘家なのよね……? なんで当然のようにノーダメージで無力化してるの……シャンフロのアバターより理不尽の塊じゃない。
『怖かった、怖かったね……もう大丈夫やからね』
『ああ……優しさ感じちゃう……ねえ
『抱き寄せ慰める
『ぐえー……いひゃい』
『やだ怖い……やめてください……!』
『んぎぎぎぎ!!』
「……ゴ覧ノ通リ、両頬充血ガ今回ノ顛末ヤンケ」
「イチャついてるだけでしょうがァ!」
「他者ノ幸福ヲ嫌悪スルノハ不健全ヤンケ。……ソレヨリ、ゲンコツハNGヤンケ、オジョー様ノ
人間は感情を置いて理屈を優先できるほど出来た存在ではないことを機械にわかるわけが無かった……!
私とてこっちの世界に関心も未練もありはしないが、盛りのついた犬みたいにデカパイ女がアレの気を引くべく両頬をつねり引っ張り回す光景と向き合うのに時間を浪費するほどのヤケは起こしていない。
いっそ自傷行為の方がまだ建設的に思え、制裁がてらトダーへ拳を振るうが……アームで衝撃を雲散しつつ受けられ、ポスッ、ポスッ……と、合金の硬さに似つかわしくない柔らかな感触が返ってくる。
その感触には覚えがあった。
それはシャンフロにおいて【
打撃格闘におけるディフェンス技術の一つであると言い、アレはシャンフロにおいてスキルやステータスに依らないプレイスキルのみで現実そのままに再現していた。……私の杖攻撃スキルを回避せずに受け、全てのダメージを2以下に抑えるという離れ業を実演されたことから、『シャンフロではそれが出来る、正直ゲームとしてはダメな仕様だとワイちゃん思うわけ』という豪語を否定出来なかった苦い思い出が頭をよぎる。
仮に【マギテリアル・ブレード】*2未使用の状態で近接戦闘に持ち込まれた場合、こっちが苦労して2ダメージしか出せない間に向こうはスタミナ消費最小の素手攻撃ワンアクションで30とか50ダメージ出してくるのだからたまったものではない。
────ところで、この
……つまり、このトダーがアレと同等以上の技量までも搭載しているなら
「…………ねぇ。もしかしなくても、貴女ならアレを死ぬ寸前まで痛め付けたりは余裕で出来るんじゃないの……?」
「流石ハオジョー様、慈悲ガナイヤンケ。……確カニ
つまり暴漢がこの部屋まで押し入るような事態がない限りは、映像において現在進行形で“死神医療チーム”*3のお世話になっているケツピンよりも無惨な肉塊が生じることはないということらしい。……変なところだけ融通が利かないわね。
「…………待って、9割満たないの? 軍事用より高性能だっていう貴女が……!?」
「
いかに強いとはいえ一般人を銃持ちの米軍以上と評価している
「ソモソモオジョー様ハ虎人ヲ甘ク見スギヤンケ。毎度タイガー・ラッシュヲ手配スル“キャプ・マス”モ『生かしたまま無力化は無理です、全て返り討ちにされるか逃げられる』ト評価シトルヤンケ」
「アレって確かプロボクサー1年目だったはずじゃ……」
「トップアスリートノサラブレッドデアル上ニ物心ツク前カラ格闘技ニ触レテル“エリートヲ超エタエリート”ヤンケ、実質15年以上ノキャリアヤンケ」
「よく調べているわねぇ……参考までに情報源を教えてもらえる?」
「本人カラ聞イタヤンケ。週末ハ一緒ニ『劇場版“TOUGH VS 範馬刃牙”』観ニ行クヤンケ、朝カラ半日留守ニスルヤンケ」
「なに仲良くやってるのよぉっ!?」
やっぱりコレは機械の形をした別のナニかだ……主人に対し事後承諾で外出予定を組むロボットが居るわけないもの……! そもそも映像を記録できる二足歩行ロボットが鑑賞チケット取れるの!?
「虎人ノ戦闘力ヲ
「黒木!? 前に依頼を断った上にタイガー・ラッシュを台無しにした……抜き手で岩を貫いてた
「コイツラマジヤバイヤンケ、サイバネ換装無シデ人類辞メテルヤンケ」
トダーがタブレットを操作して私に差し出してくる。その画面には……
・「公式戦記録8238勝6敗。氏のトロフィーの重さで床が抜ける」という記事と、“短髪で生意気そうなドヤ顔を浮かべてるの”と“何も考えてなさそうにポケっとしている”幼い女の子二人に挟まれた老人の写真。
・「逮捕術指南役として史上初の叙勲、天皇陛下への拝謁に臨む斎賀流護身術宗家ご夫妻」という新聞の切り抜き画像。
・「ホワイトハウス屈辱、銃火器の時代に槍を再興した男」という米国トップシークレットのクラッキングデータ(!?)
・「盈月の
・「直近で“あの男”が苦戦を強いられていた違法改造トダー*5を素手で破壊せしめた黒木の映像」
「…………なんなのこの人間卒業リスト!? アレがこれらに近い存在なら他の誰が敵うって言うの……!」
「ソンナ変人類ドモガ逆立チシテモ敵ワナイ戦力ヲ誇ルノガコノ当機、性悪ゲーマー・オジョー様ニ仕エル彬茅 戸田亞ヤンケ」
「黙らっしゃい。……というか遂に率直な言葉を口にしたわね? 改造してアレにぶつけるわよ」
「
なんてこと、初耳ですよお父様。
私の知らないところであの
「ソレヨリ……コノ変人類ドモ以外デ将来的ニ虎人ヲ失神K.O.出来ル見込ミガ高イ人類ガ一人ダケ居ルヤンケ」
「……聞かせなさい」
……可能性の話で一人だけなの? ま、まあこの際よしとしておこう……。
なおも
そんなタイミングと重なったこともあり、期待できそうな報告に前のめりになっているのを感じていた。
────この瞬間、なぜ私は目の前の存在がイカレポンコツであることを失念していたのだろうか。
「虎人ヲ打破出来ル
……………………。
…………。
……。
『狂いそう……! (静かなる義憤)』
『(罪を)
…………。
……映像において、身体が真っすぐ前を向いていない状態のケツピンが決死の様子でアレの無罪を警察に訴えている。
────あいつもこいつも、何を言っているの!?!?
本作最強キャラ“ハイエンド・トダー”を今後ともよろしくお願いします。
このシリーズが猿世界化した最初の理由は“機械のような人間”ディプスロと“人間のような機械”トダーの組み合わせ受信したからです。嫌でもディプトダてぇてぇさせてやりますよ……
ディプスロ:八つ当たり出来る身近な相手と宿敵がポップした。
ハイエンドトダー:ディプスロの面倒を見れる程度に高性能。
ディプスロのパパ:なんか原作より遥かにヤバい奴になった気がするけど別にいいよね、パパ
スペクリのサンラクくん:弊ユニバースでは虎が萎え落ちして以降は彼の引退品であるメイン杖を用いた二刀流でブイブイ言わせました。これによってディプスロのSAN値は死に、キャプテン・マッスルが生えた。
モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?
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あ、いっすよ(快諾)
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頭湧いてるんですか?
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そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも