シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない 作:嘉神すくすく
サイガー0の気持ちがより読者の皆様にも伝わるよう投稿時間に配慮しました。
人は生きていると……誰しも必ずやってくる……!
揚げナスの美味さに気付いて……眠れなくなる夜……!
「えっ……そんなクッッッソしょーもない衝動に駆られてワイちゃん呼んだん?? いやマジで……?」
というわけで暑い日も多くなってきた晴れた春の日の金曜日。思い立ったが吉日とジム上がりの虎斗を呼んだ。マンション管理人たる老夫妻の信用をいつの間にやら得ていたらしく、エントランスの自動ドアを私が開ける手間が省けた。
「……切って揚げるだけやん、自分でおやりよモモちゃんさん」
「お前には炊事ができない社会人の苦悩など分かるまい。仕事終わりにてんぷら油を鍋に張るというファーストステップを思うだけでカップ麺に手が伸びるんだぞ。その上に食材と薬味を切ったりタレを用意したり……出来るわけないだろう?」
「ちったぁ悪びれろ」
普段から早くに起きて自分の弁当を早朝に支度出来る、エナドリ無しで翼を授かっている
……呼んでおいてなんだが、こいつはこいつで日夜体力を使い切るような生活をしているはずなのに、疲労感を全く見せずに人の世話を焼けるものだと正直思う。口にしたら間違いなく『早寝しろ』と返ってくるから言わないが。
「あと洗い物多くなるから自分でやりたくなくてだな……あ、タラの芽と菜の花も買ってあるからそれも適当に頼む」
「ちょお甘やかしすぎたかな……なー、モモさんってば仕事でもこんな感じなん?」
「そんなわけがないだろう、こう緩く何でも任せるのはお前だけだ」
(……なんかラクのクソゲーに付き合ってる時と同じ気分やなぁ)
グチグチ言いつつも手を動かせるのは間違いなく美徳だな、社会に出てから得するだろう。
だからこそ就職するタイミングになったら青田刈りする予定でいるが。最近簿記2級合格したと言っていたし、使い方が
というか私は副菜なしにカップ麺をすすっていたあの頃にもう戻れないんだぞ、しっかり責任を感じて欲しい。
去年の今頃なんて旬のものを積極的に食べようとする意識自体がすっかり消え失せていたし、それこそ外食のフェアメニューで時たまにしか口にしていなかった気がする。
「にしてもさ、なんでこんな時期にナスの素揚げなん?」
「事の発端はお前の作り置きだ。……ほら、あの輪切りにしたナスの揚げ浸し」
「ああ、冷食の揚げ茄子を麺つゆ漬けにしたあれな。ネットで見たのを真似したんよ」
「美味しかったからまた頼む。……あれを口にしてから私史上初のナスブームが到来してな。ランチで天ぷらに炒め物、お新香等とあらかた口にしてナスの美味しさに目覚めたんだ!」
「どうせなら夏か秋に目覚めて欲しかったやつやん」
ハウス栽培技術の進歩は目覚しいものだと感動したものだ。農家の皆様にはどうにか頑張って水茄子も一年中美味しく供給出来るようにして欲しい。実家を出て以来口にしていないが漬物とお刺身が美味しいんだ。
「その流れで揚げナスもいったら良かったのではとワイちゃん思うわけだけど……」
「そうはいかなかったから呼んだんじゃないか。ナスの天ぷらを扱う店ならいくらでも見つかったが、それが素揚げとなった途端に一店舗しか見つけられなかったんだ」
「あー、確かにナスの素揚げが食べられるお店なんてパッとせんわ。むしろよく見つけたわな……ランチ営業してる居酒屋とか?」
「……
「
そうして揚げナス3切れをカレーと共に摂取したのが一昨日のこと。やはり欲求を中途半端に解消したのが良くなかったようで私の内なるナス欲が燻ってしまい、昨日の夜はなかなか寝付けず夢の中で外カリ中フワの揚げたてナスを口の中でハフハフする夢まで見る始末だった。
だがそんな不完全燃焼との付き合いも今日までだ。それはそうと素麺と揚げ物……いいじゃないか。
「上の棚の1番右に素麺の箱があったはずだ」
「ワイちゃんってばまーじで余計なこと言うよなぁ……うわっ!? 贈答用の
「私はいつもお前のおかげで気付きを得ているから自信を持て」
その感性は物事をいい方向に運ぶもので間違いないのだからな。米も炊いていないしちょうど良かった。
虎斗の要望でコンロも大きいやつに取り替えたのだからしっかり活用してもらわないとな?
◇ ◇ ◇
「ーーーーで、一番美味いナスの食べ方に目覚めたってわけ」
「……姉さんのことを聞きたかったんじゃないんですか?」
「…………せやった、食い物の話ししたせいで忘れとった」
「こんな夜中に揚げ物の食レポを聞かされる方の身にもなってくれます……?」
週末の24時過ぎに春の幸のかき揚げとか、菜の花のおひたしに温度卵乗せた話とか……! あれですか、女子に食べ盛りが無いとか思っているタイプの男子なんですか!?
スキル獲得を目的にクワで畑を耕しながら虎人さんの話を聞いていたのだが、この人は途中から完全に当初の目的を忘れていた。
姉さんのワガママに付き合った話から一転して、ナスの味付けにばかり言及しだした段階で怪しいと思った……。
「いや実際のところ、モモさんの実家の食生活について聞いてみたかったんよ。良いとこのお嬢様やったことは察しとるけど、そもそもお嬢様の食生活なぞ想像もつかんくて。……本人に聞いたら水茄子の漬物しか思い浮かばんとかいう体たらくでなぁ」
「ええ……? 別に普通ですよ……今日の夕ご飯も白米と味噌汁に
「あ、そいや尾頭付きの焼き魚の食べ方も忘れたとか言うとった」
「嘘でしょ……!?」
「あれ? これ結構深刻なこと……?」
姉さんの生活に関する情報は他ならぬ姉さん本人からの要望もあり、虎人さんとで積極的に共有することになっている。
姉さん及び虎人さんから聞いた内容を、家族から尋ねられた際に適宜伝えるのだ。
と言うのも、あまりにも酷い私生活をしている事実が斎賀家の長女たる仙姉さんを初めとした一部に知られると、最悪百姉さんが実家に強制的に送還させられ自由にシャンフロをプレイ出来なくなりかねないためだ。
……そしてそうなった場合は同じVRゲームをプレイしているという点から、私にまで累が及ぶ可能性がある。つまるところ口裏合わせが目的だ。
「ワイちゃんとしては気にならんから何ともする気は無かったけど……」
「……たまにで良いので、出してあげて貰えませんか? 実家に戻った時にボロを出されると困るんです、主に私が」
「自分でやらせるという選択肢はございませんの?」
「姉自身の女子力よりは虎人さんの良心の方が遥かに期待も信用もできます」
「ククク、酷い言われようだな……」
事実だからしょうがないでしょう。
従来の生活より数段改善して体調面の心配は無くなったとは言え、一回り年下の……私と同学年の男子に身の回りの世話を焼かれている事を知られればそれが最後となるのは疑いようもない。
問題の焦点が変わっただけで、私と姉さんは依然として予断を許さない状態にあるのだ。
そもそも姉さんだって斎賀家の教育を受けており各種作法の他に自炊等の能力は養われている。出来ると認められる程度に能力はあるのだ、そうでなければ一人暮らし自体を許されていない。
だが出来るからと言ってやるとは限らない。『出来る』と『してる』は完全に別物なのだ。
一人暮らしをするという話が姉さんの口から出た際に、家族一同から懸念されたのがその点だ。
斎賀家の人間は皆、熱中したり心奪われるような物事が出来ると大なり小なり
釣り用の漁船を相談無しに衝動買いして『なにしてんのアンタ』と詰められたお爺様ほどの派手さは無いものの、百姉さんは異性観も加わってその気質が強く見られる側だった。
(虎人さん逃がしたら、結婚とか無理じゃないかなぁ……?)
最終的に本人の自由意志が尊重されたものの、特に仙姉さんは『そんな子じゃないだろう? あーん?』と現在も心配半分疑念半分の姿勢を崩していない。
実際問題、シャンフロにおける精力的なギルド活動を知られるだけでも召還されかねないため、要らぬ心配は減らしておくに越したことはないのだ。
「魚一つでそんな大袈裟な……」
「前言を翻すようで恐縮ですけど、作法一つで
「やっぱ良家はちゃうなぁ」
「そうは言いますけど虎人さんだって……ーーッ!? な、何か出てきました!」
虎人さんも結構良い育ちでは、という率直な気持ちを吐露する直前にそのユニークモンスターは地中から現れた。
お爺様が船を買った数日後に持ち帰ってきた、剣のように長く鋭く伸びた上顎が特徴のーーーー
「コイツやッ! このカジキみたいな
「なんで畑を耕していたらカジキマグロが釣れるんですかぁ!!」
「知らん、運営に聞けや。……あ、ところで友達のお父さんがカジキ釣りが趣味の人からお裾分け貰って、そこからさらにお裾分けして貰った話ししたっけ? 切り身をバター焼きしたのが美味かったんよ。また食いたいなぁ……」
「だからこんな時間帯にそんな高カロリーな話しはしないでください……ッ!」
何点か引っかかるワードがあった気がするがそれどころでは無い。
虎人さんは過剰火力でエネミーを瞬殺しかねないため手を出さないよう事前にお願いしてある。確実にスキルを獲得するため、このレアエネミーは私一人で狩らなければならないのだ。
のびのびと一人暮らしをしている姉、そんな姉をダメにしているノンデリなフレンド……そして今日の入浴後に乗った無駄に正確で高性能な体脂肪計への怒りを刃に乗せーーいざ、カジキ狩りへと臨んだ。
虎斗くん:麺類を茹でる前には、どこのご家庭にもあるだろうとは思い込まずに必ずザルの有無を確認しましょう。ご近所さんを頼ることになります(1敗)
百ちゃん:第一次ナスブーム終了、夏〜秋頃にまたお会いしましょう。
玲ちゃん:恋する乙女はたとえ数%でも、数百gの変化でも見過ごしてはいけない(戒め)
モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?
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あ、いっすよ(快諾)
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頭湧いてるんですか?
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そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも