シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

31 / 36
いつも通り解釈違いはこの首を取るつもりでご覧ください。
自分で思っていたよりも数倍モモちゃん関連に筆が乗ることに気づいたため、専用の枠組(章管理)を用意します。
タイトルそのものを分けた方が良い等があればコメントお願いします。

猿要素はありません。


モモちゃんのQOL、タイガー・ユニバースの場合 ~食事編~

 12月か1月のお話、まあ細かいことはいいよ。

 

 ……最近、モモちゃんのありとあらゆる状態が良い。

 肌のツヤ、顔色、月の日のご機嫌、声のハリ、姿勢、歩くスピードにetc(エトセトラ)……!

 

 そしてそれらは、彼女と付き合いが長いこの天音永遠サマに限った気付きでは無いらしい。

 

「……ねぇ、最近のモモちゃんメチャクチャ調子よさそうだけど何かあったの?」

「あぁ、係長ですよね。……いやね、『昇進が決まった』とか『カレシが出来た』とか噂だけで、コレと言うのは……本人に聞いても話してくれないんですよ」

 

 モモちゃんの同僚で雑誌の打ち合わせ担当の子に尋ねてはみたが、芳しい答えではなかった。

 彼女以外にもモモちゃんの関係者は皆訝しんでいるものの真相を知る者は一人としておらず、逆に私に質問が返ってくる始末だった。

 

 ……だが今回ばかりは普段とは事情が違う。モモちゃんをおちょくる為の材料探しのように遊びで終わらせる訳にはいかなかった。

 

 他の子達は気付いていないが、モモちゃんのボディラインがここ何ヶ月かで如実に美しくなった。この道の”プロ”である私には、服の上からでも全体がシェイプアップしつつ出るべき所(おしりとおっぱい)だけ成長しているのが見て取れた。

 

 元からクソみたいな食習慣でありながら美ボディを維持する理不尽の体現者であったが、最近の彼女の変化はもはや才能(ギフト)なんて陳腐な言葉で思考停止出来る領域を超えている。

 

 器量良しを売り出しているファッションモデルとしては、断じて捨て置けない。

 

 何か新しいことを始めたか、あるいは生活を改めたか……そうでないなら私の目は、彼女のことを人の形をした別の()()()である事に気付かなかった節穴であることを認めるしか無くなる。

 

「……なにか、なにか無いの? スピリチュアルな水にこだわりだしたとかっ!?」

「斎賀係長がそんなものにハマるわけないじゃないですか……。あ、でもしばらく前から週に何度かお弁当を持ってくるようになりましたね」

「……お弁当? コンビニとかじゃあないよね、オーガニック系かな……どこのお店とか分かる?」

「いや、じゃなくて、手作りのお弁当ですよ」

「はぁ!?!?!?」

 

 思わず立ち上がり、声を張り上げる。……無理からぬことだった、目の前の彼女も頷いている。

 

 ありえない。

 

 断言する、ズボラなモモちゃんに手弁当なんて出来るわけが無い。一度や二度ならいざ知らず、習慣化なんて絶対に無理だ。

 

「まさか、 あの……

 

 異

 常

 麺

 愛

 者

 

 なモモちゃんがお弁当作ってきてるって本気で言ってる!?」

「私達も最初は驚きましたよ、カップ麺マニアの係長がって! ……でもかれこれ一ヶ月と少し、続いてるので誰も気にしなくなったんですよッ」

「こ……こんなの納得できない」

 

 確かに食習慣が改善したとなれば身体に顕れるのは当然だ。……だが私の知る限り、モモちゃんにそれが出来るわけが無いのだ。

 

 味と機能性からカップ麺をこよなく愛し、ネットスーパーで定番品を箱買いしつつもコンビニやスーパーで新作や限定品もチェックする。そして週末にはそれらのレビューを書くという控えめに言って女を捨てている趣味の彼女が、ほんの数ヶ月で辞められるなら世の中に『依存症』という言葉は存在していない。

 

 一体彼女に何があったのか、謎が新たな謎を呼び深まるばかりだった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「にぼし〜、こんぶ〜、ふーふふ、ふんふーふー」

 

 あいにく手間なのでワイちゃんは顆粒出汁で済ませる主義だ、仮に高級な昆布が目の前にあってもきっと持て余すだろう。

 

 冷ました鶏ムネ肉のチャーシューを切り分け、タッパーに入れる。

 約8人前の回鍋肉をタッパーに小分けする。

 焼いた豚バラと大量のネギダレを大きめのタッパーに入れて和える。

 殻を剥いたゆで卵を、合わせ調味料と共に真空パックに入れる。

 焼き目をつけた後、弱火のオーブンでじっくりと熱を通していたローストビーフを薄切りしタッパーに詰める。

 

 ……ワイちゃんが料理とか出来ない前時代的な男だと思う連中は多いが、出来るんだなこれが。身体を作るトレーニー料理ばかりでレパートリーは少ないけども。

 

 昔から何にでも興味を持つ子だったワイは、おばあちゃんとお父さんから時々料理を教わってきたのだ。

 

「わう、わ!」

「ミャー! ミャー! ミャ!」

「……ニャウ」

 

『自分味見いけますっ、やれますッ』とばかりに、キッチンへの侵入を防止する柵越しに自己主張している三匹に、ほぐし冷ましておいたササミの蒸し肉を小皿に与えてやる。

 

 我が家はみんな何かと忙しいため、お小遣いをご飯代含め多く貰っているのだが……家にあるもので自炊するのであれば、浮いた分のご飯代はそのままお小遣いに回していいことになっている。

 

 ワイちゃんは減量期間を除いて食事量が多い上に舌がグルメなため、コンビニ弁当や外食ばかりでは栄養が偏る上に満足出来ない。そこに実質お小遣い増額にも繋がる条件も重ねられた以上やらないという選択肢はなかった。

 

 日曜日の朝、今こうして作り置きしている理由の半分は後日なるべく楽をするため……特に平日昼のお弁当に詰めることを想定したものだ。

 残念ながらワイちゃんは、お弁当を作る前日や当日早朝にササッと調理出来るほど器用では無いため、基本的に作り置きと冷凍食品を詰め込むだけのラインナップになる。

 

 

 

 で、もう半分の理由はと言うと、モモさんの(エサ)だ。

 

 ……忘れはしない、ワイちゃんがモモさんのマンションに初めてお邪魔したのは、シャンフロサービス開始から半年……第二回大月輪終了後の事だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 数ヶ月前。

 元々勝った方の奢りと約束していたシュラスコ食べ放題で、モモさんはそれはそれは酒を飲んだ。普段周りで誰もお酒を飲まないから知らなかったが、アルコール飲み放題というシステムがどれほどお財布に優しいのかを知った……通常料金だとファイトマネーが数回の飲み食いで飛びかねない。

 

 最初はヤケ酒だと勘違いしていたが、どうもモモさんはシラフだとワイちゃんと面と向かって長時間話せないらしい。可愛らしくて惚れ直しそうな一面だった。

 ワイちゃんの顔がよほど好みなのか……というのは冗談として、本人とペンシルゴンから聞いた話から察するに、単に異性とのコミュニケーションの経験が薄いのだと思われる。

 

 仮にモモさんが軽薄ナンパ野郎に声を掛けられたとして、まず第一に『私は貴方に一ミリも興味が無いし価値も感じていませんが??』という絶対零度の目線に大抵の男は耐えられずその場を去るらしい。

 

 第二にその目線に耐え切れた場合、『今貴方とこうしている時間は私にとって無駄以外の何物でもありませんが??』という内容をそれはそれは分かりやすく伝えられ心をへし折られるのだと。

 

 

 そしてそれでもなお、強硬手段に出たり『舐めるなっメスブタァッ』と逆上するような男*1は、漏れなく地獄を見ることになる。

 ……この段階に限っては伝聞ではなく実際に居合わせたことがあり、後から来た警察が推定犯人(それが出来そう)なワイを真っ先にパトカーへ引きずり込むほどの惨状だった。

 

 一応の被害者が心得があると言えど女性だからギリギリもギリで正当防衛が成立したが、ワイちゃんであれば完全に過剰防衛で留置所だったと言うのだから笑えない。

 ……かろうじて救助に成功した実際の被疑者から、命の恩人だと庇われ無ければ危なかったかもしれない。

 

 総じて『あしらい方が雑だしやりすぎ。一線超えるとシンプルに凶暴』とはペンシルゴンの言だ。

 大学まで同じで社会人となった現在も交流が続いているらしい友人にそう言われるのも納得する程度には免疫()()で、保健の教科書で見た気がする思春期における性的関心うんぬんと適切に向き合わないまま大人になるとそうなるのだと理解した。

 

 一緒に居る時はやれ顔をジロジロ見るな、だからって胸を見るな、なに他の女を見ているんだシバくぞ、と……サイガー100という友達(フレンド)でなかったなら距離を置いているくらいにはめんどくさかった。

 

「まだ寝ないの……ちょお、お部屋の番号は?」

「んんあ、まぁだ帰あない。ネカフェ連れってぇ……リュカオーンやれ、今なぁーっ!」

「あーっ? 何言ってるかわかんねぇよ。……こんなベロベロでVRとか無理に決まっとるやろ、機器に拒絶(リジェクト)されるわ」

 

 今なおシャンフロをプレイしようとするとは、呆れが一周回って感服する。

 

 モモさんからして異性(ワイ)との食事は酒に頼るレベルの大事(おおごと)なのかもしれないが、かと言って浴びるように飲んで安全に帰宅できなくなるのは本末転倒では?

 

 これまで何度か一緒にメシに行っているものの、ここまで酒に溺れている姿は初めてだ。

 

 そう思いつつ彼女を背負って、なんとか部屋までたどり着いた。

 途中まで肩を貸していただけだったのだがあっちこっちへ行こうとするわ、面倒になっておぶった後もちょいちょい暴れるわ……酔っ払いの介抱など初めてで、近いからとタクシー代をケチったことを素直に後悔した。

 

 酒癖には気をつけろとサイガー0にも今度教えてあげなきゃ……お気に入りのジャンパーを酒臭いゲロまみれにされると、百年の恋も覚めうる。

 

「もっとマシな流れで招待されたかったなぁ……」

 

 もともと住んでいるマンションの場所だけは知っていたが、部屋までは知らなかったし必要ない限りは聞き出す気もなかった。……出来れば迎え入れて欲しかったのだが、想像もしないシチュエーションで入口のセキュリティを突破していた。

 

 ……少し話は変わるが、リアルで会った当初は正直モモさんに対し不信感バリバリであったが、何度か会って交流を重ねる内に少なくとも悪意は無さそうだとガードを下げ、更に少し経ったタイミングで気付いたことがある。

 

『この人……メチャクチャ好み(タイプ)や』と。

 

 リアルで会ってから一ヶ月後という遅すぎる気付きだった。我ながら、相当ビビっていたらしい。

 

 とまあ元はそんなわかりやすい下心から好感度アップを狙って紳士的に介抱していたのだが……今はもう一刻も早く上着を脱いでシャワーを借りたい、そんな一心でお部屋にお邪魔した。

 

 

 ――――さて、残念ながらワイちゃんは、シャワーを浴びてハイサヨナラとは出来なかった。

 

 

 寝息を立てているモモさんをベッドに寝かせ、涎と吐瀉物に濡れた上着を脱ぐと……特に了承も得ずに掃除を始めた。

 

 ……モモさんの部屋を見た最初の感想は『生活感がすごい』だった。

 足の踏み場が無いとまでは言わないが、空のペットボトルや脱ぎ散らかされた衣類、潰して積まれたダンボールや雑誌などによって床が狭く見えた。

 

 家でペットを飼っているせいか部屋が散らかっているとどうにも落ち着かない。物陰に隠れているところを踏んでしまうと危ないし、下手なものを拾い食いをされると大変だからだ。

 そこまで考えた段階で……そもそも『散らかっている部屋』という状況そのものが未経験であることと、部屋はそもそも散らかさないという家族からの教えが気付かぬうちに骨身に染みている事実に感嘆したものだ。

 

「うわデッッッカ……! 帽子に出来そうやん……」

 

 圧巻なサイズのブラジャーと、普段自宅で見ているのと大差ないショーツ等を可能な限り心を無にして手に洗濯機を探すと……五人+α家族な我が家の二日分相当の洗濯物が溜まっていたため、自分の上着もまとめて洗濯機を回した。……今更だが現在は日曜夜、夜が明ければ平日というタイミングだ。

 

 ここまでは、『社会人の一人暮らしって大変なんだろうなぁ』で済ませた。大人のお姉さんの私生活に対する男子高校生の幻想は完膚なきまで粉々になったが、勝手なイメージを押し付けるものでは無いと気持ちを切り替えた。

 

 お急ぎモードで回したとはいえ脱水まで時間がかかるため、ついでにゴミの分別も始めた。……下着や肌着類のタグや梱包ビニールの量が溜まっていた洗濯物と正比例していたことを『洗濯が面倒で? まさかね……』とスルーしつつ、中でも大きな割合を占めるものが見えてきた。

 

「……カップ麺と割り箸ばっか」

 

 食に関係するゴミがそればかりで、野菜くずのような生ごみはおろかスーパーやコンビニ弁当の空き容器すら少ししかない。

 

 ……猛烈に嫌な予感がしてきたため、失礼を重ねることを理解した上で冷蔵庫を改めた。

 

 するとどうだ、絶望すら満足に詰まっていなかった。

 

「ろ、ろくなもん入っとらんやん……! なんこのシワシワなニンジン……? 袋に入ったムラサキ色のこれは漬物……? ————いやちゃうっ、ただのナス()()()()()や……!」

 

 せめて野菜ジュースくらい入っていて欲しかったが、まともな代物は牛乳とスライスチーズだけだった。『パンドラの箱』の詳しい話の内容は知らないが、開けた後に希望が残されたと言われても一度目がこれでは二度に期待できるわけがない。

 

「——————」

「んぁ……」

 

 ……キッチンから移動して、モモさんの上気した頬を指の背で撫でて肌の質感を確認すると、くすぐったそうに身をよじる。

 

「いやなんで? なんで、こんな生活でお肌つやつやなのん……?」

 

 もはやこの身をつき動かすものは性欲等ではなかった。

 

 スマホを取り出し、マップアプリで近場のスーパーを検索する。

 ワイちゃんは激怒した。必ず、この食習慣だけでも正さねばならぬと決意した。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 許せなかった……シャンフロにおける最大の強者(ライバル)の私生活が、いつ病気するか分かったものでないことが……!

 

 社会の苦労も知らない高校生ごときが、他人様の勝手に何をと思われているかもしれないが……モモさんはシャンフロで最も大事な遊び相手だ。つまらない理由で辞められるような事があっては張合いがなくなる。

 

 ……思えばモモさんのダメダメな私生活を目の当たりにしたのは数ヶ月前で、今日も今日とて甲斐甲斐しく糖質と塩分以外の栄養を補える作り置きを持参している。

 

「虎斗、このササミの和え物もっと食べたい」

「自分で取りにいらっしゃい」

「……寒い。あと味付き卵とセロリの漬物(ピクルス)も」

 

 カップ麺と副菜(つけあわせ)各種という遅めの朝食を摂っているモモさんは、意地でもひざ掛けの電気毛布から離れる気が無いらしい。ウチのペットたちよりも催促の態度が悪くて呆れているのがワイなんだよね。

 

 初めてこの部屋を訪れた翌日の夜、栄養指導二時間コースを経てカップ麺中心の生活を辞めさせようとしたのだが……

 

『我が心の友(カップ麺)を奪うなら死を選ぶ……!』

『お、お前変な添加物(クスリ)でもやってるのか……!?』

 

 ヒロイックにも山積みのカップ麺を庇いながらのたまい、涙ながらも抵抗する姿勢を崩さなかった。……最終的に折衷案として、カップ麺趣味は肯定した上で不足している栄養————主にビタミンと食物繊維とタンパク質を補う方針となった。

 

 食材分の現金は受け取っているが、特に見返りはないし求めてもいない。勝手にやるからおとなしく今後の変化を嚙み締めろというスタンスだ。

 強いて言うなら、普段他人に弱みを見せないタイプであるモモさんに頼り甘えられているという優越感と、『他人の面倒を見れるワイちゃん偉いぞ、頑張り次第でご褒美買ってよし』という自己満足だけが報酬だった。

 

 まず労力に見合うだけの経済的・健康的価値がある事実を思い知らせる必要があり、本人に自炊(やら)せるのはまだ先になる。

 

 不幸中の幸いと言っていいものか、彼女の食習慣は基本三食カップ麺のみで、合間にコーヒーとお菓子を挟む程度という粗食の偏食……つまり過食よりマシ程度ではあった。野菜と肉等を薄味で食わせてやれば大体解消するのだから。

 モノグサちゃんに合わせて再加熱等も必要ない、レンジでの温めはお好みで済ませられるように取り揃えてきてある。

 

 ……ちなみに、わざわざ我が家で作ってから来ているのは、モモさん宅のコンロは一基だけで、それ以外の調理家電は湯沸かしポットが二つ(!?)と電子レンジしかなく調理が捗らないためだ。

 汁物用の鍋一つ置くだけでなにも出来なくなるというのがここまでストレスになるとは思いもしなかった。

 

 きっと自炊への関心がシンプル低いのだろう。今でこそ少しはマシになったが、当初は炊飯器と一部の食器が若干埃を被っていた有様で、フライパンが綺麗で卵が焼きやすいことが唯一の美点だった。

 いや良くない、あるならもっと使え。

 

「なあ虎斗……それ、まだダメか?」

「全然煮えとらんし、まだ味噌も入れられんわ」

 

 人任せを諦めて自分でおかわりを取りに来たらしいモモさんが、流しにカップ麺の残り汁を捨てつつ根菜が湯がかれているだけの鍋を見て肩を落とす。

 これは、数日前にリクエストを受けた豚汁のタネだった。

 

 買い置きしてあるお湯を注ぐだけのレトルトではいけないのかと聞いたのだが

 

『あれもたまに口にする分にはいいが、赤味噌の主張が強くてな……しっかり煮込まれた根菜の甘みが感じられる白味噌のやつが飲みたい。具材は大根とレンコンと人参とゴボウ……あ、サトイモは絶対に入れないでくれ。根菜は全部食感が楽しめる程度の角切りがいい、それから豚肉も厚めの短冊にして――——以下略————』

 

 などと。

 

 なんなら今まだじっくりコトコト煮込んでいるのも本人が具材の切り方まで希望を出してきたせいで、自分で作らないくせに細部までこだわりがあるらしい。根菜がイチョウ切りされて歯ごたえが薄いものはチェーン店で食べ飽きたとかなんとか。

 

 普段からカップ麺ばかりだと言うのに恐ろしく舌が肥えている面があるのが不思議でならない。

 

 ……何年か前にテレビで由緒正しい歴史を持つ五ツ星日本料理店の跡取り息子に密着するドキュメンタリーを見たことがあるが、そんな彼の好物もカップ麺だった。大人になって自由に出来るようになってからドハマりしたとか何とか。

 

 流石にそのレベルってわけじゃないよね……?

 

「……お昼に食べたい。あとおにぎりと卵焼きも」

「わぁった、わぁったから」

 

 いけしゃあしゃあと昼食のリクエストまで済ませるとご機嫌な足取りで居間に戻っていく。

 そしてお皿にとった各種副菜を傍らにビジネス向けの折りたたみPCを開き、カタカタと小さな打鍵音だけを立て始める。在宅ワークの布陣だ。

 

 何をどうやれば独身の社会人が仕事とシャンフロに10:10のパワーを注げるのかと、かつては尊敬すると同時に不思議に思っていたものだが……こういう事だった。

 平日と休日の区別もなくセルフネグレクトじみた生活の上で無理やり成立……いいや、強行していただけという。重ね重ね本人の勝手であるが、そうと知った瞬間に敬意は失せ頭痛だけが残ったものだ。

 

「……卵、焼けないやん」

 

 視線を手元に落とすと、また新たな頭痛の種が。

 今すぐにでもホームセンターに駆け込みたくなったが自制する。……今度中古の複合コンロか、最低でもガスコンロを買わせよう、そうしよう。

 

 あと蒸篭(せいろ)も。自炊ビギナーに蒸しがいかにお手軽かを叩き込まなければ。

 肉や野菜を切って炒めるよりも、蒸して適当なタレに付けて食べる方が遥かに手間がかからないし失敗もしない。

 

 インスタント食品以外にも楽をする方法はいくらでもあることを、たんと覚えさせることが今後の課題だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 自炊のことで思い出した余談になるが、周りからの勧めで高校卒業後の進路に進学という選択肢が生じつつあることをラクに話したところ、話半分ではあるが『上京してルームシェアしようぜ』という流れになった。実際にそうなるかはさておいて。

 

 将来的にワイちゃん自身が家を出る時を考えるが、どう考えてもコンロは二基以上の物がマストだ。出来れば三基。あと優先度は下がるにしても、やっぱりオーブンも欲しい。

 

 またシャンフロにてサイガー0から進路の話題を振られた際に、彼女も楽浪と同じ来鷹志望であることに驚かされ、話のはずみで色々話したのだが……

 

『進学するんやったら躰日(タイニチ)大かなぁ……よー知らんけど来鷹から遠すぎることもなし、そうなったらたぶん、ルームシェアやな』

『ルームシェアぁ!?!? ふ、不埒ですよ……っ!』

『何度でも言うけどそいつ同性なんですけど?』

『同棲ッッッ!?!?』

『しばくぞ』

 

 一人で勝手にキレたり怯えたり悶えたり、シンプルきしょかった。

 

 頼むから死んでくれって思ったね。

 

*1
二次創作特有の猿治安





モルドとルストもこんな感じだといいなと考えながら書きました。あの二人はきっと公式でこんなだと思います(ファイティングポーズをとりながら)

モモちゃんを描く機会が多くなったのは、実は虎人くんを女から男に変更した際の意図せぬ流れ弾でしかありません。
書いてて楽しいからハッピーハッピーやんけ。

シャン・フロ原作はタイガー・ユニバースほど猿治安ではありません、そこだけは誤解しないでいただきたい。
真澄ちゃんや玲楽外泊回のチンピラ? 悪いな…俺はほら、”未来”しか見てないから、過去にはこだわらないから。

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。