シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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元々虎人をティーアスちゃんとバトらせたのは、彼の強さに説得力を持たせるためでした。
今回は虎人くんと百ちゃんの互いへの好感度に説得力をつけるための過去話です。
オリ主×原作キャラ要素が強いので、苦手な方は閲覧非推奨。


モモちゃんのお話という名の解釈違いの元
黒狼DAYS GONE


「クランを結成しようと思うんだが、クラン名をどうするかまだ決まっていない」

「ふーん」

「……なんだその生返事は、君も考えてくれと言っているんだ」

「そういうのって一緒にやるメンバーと相談するもんやろ」

「え?」

「……え、ワイちゃん勘定に入ってる感じ?」

 

 レベリング目的の釣りに飽きて魚の塩焼きを作り始めたタイミングで、フレンドにして自称一番弟子のサイガー100がそんなことを言い出した。

 モチベーション高くて実に結構な事なのだが……なんその『何言ってんだお前』って顔、こっちのセリフなのだけど。

 

「愛弟子を放っておくというのか」

「弟子じゃないよ……? というか何のクラ、あーいや、言わんでええわ。どうせ『野球のリュカオーン』絡みやろ」

「『夜襲』だ、夜に襲ってくるから『ヤシュウ』」

「そうとも言う。ほんまそればっかやな」

 

 サービス開始から一ヶ月といった程度のゲームで、同じ初心者同士に師も弟子もあるかと思う。

 

 以前ことの成り行きからフレンド登録はしたが、弟子云々は勝手に言っているだけだ。ワイちゃんは人に教えを解けるような人物ではない。彼女は将来的に強くなると見越してはいるが、この手でそうする気はなかった。

 なによりも、自分が強くなるので忙しい。

 

 今居る『神代の鐵遺跡』にしても勝手についてきたため、道中手を貸すこともせず無視していた。おそらく現実では美人さんで人気者なのか、無視されることへの耐性が明らかに薄かった。

 元はクエスト報酬で手に入れた釣り場の情報であるため、目的地をわざわざ教える義理もない。

 

 しかし死にかけながらも目的地である釣り場にまで追いすがってみせたその根性に免じ、現在はパーティ登録して共にレベリングしている。

 初めてPKのフルパーティ*1を相手に立ち回っていたのを見かけた時から思っていたが、現実でもかなり()()人なのだろう。

 

 だから人に教えを乞わずとも 自分の思うやり方で進めていけば勝手に強くなると伝えたが『尋常な強さではだめなんだ』と言って聞かなかった。

 

「装備枠潰されても知らんからな?」

「まずは潰される程度に強くしてくれ」

「知らん」

 

 つい最近ジークヴルム産のマーキングを二箇所、クッソ長いお使いクエストの末に解呪したばかりだった。

 ただでさえ出身に選んだ『苦難の道』のせいでレベルアップに必要な経験値が増えている。その上で装備に制限をかけられてたまったものでは無かった。

 

 サイガー100は出会った当初からリュカオーンにお熱であったが、ワイちゃん個人としては『七つの最強種』と呼ばれているらしいそれらを特に追求する気はなかった。

 ジークヴルムは確かに強かった、他のモンスターを遥かに凌駕するスケールにシャンフロというゲームの真髄の一端を見た。リュカオーンと出会ったことは無いが、彼女が夢中になるだけあってきっと同程度の存在なのだろう。

 

 だがどうにもギクシャクしていた……『このタイミングで本来打つのだろう』という、その存在独自の必殺技(フェイバリット)が封印されている感覚が最後まで気に入らなかった。

 最終的にジークヴルムとの戦いは負けイベが挟まり終了したが、勝てる勝てないの問題では無い。 

 元が強すぎて日和ったのかは知らないが、言ってしまえばボツ技の名残があって白けるのだ。

 

 何かのついでで戦う分には良いが、それらをメインに据える気はなかった。

 

「まあワイちゃんはクラン入っとらんし数合わせくらいはええけども。……今のところメンバー何人?」

「二人だ、頑張っていこう」

「そんな有様でよぉ切り出せたな!?」

「仕方がないだろう!? なにもかも初めてで右も左も分からないんだぞこっちは……!!」

「ぐおっ!? 返せ! ワイちゃんのタイガーマスク……!」

 

 モンスターとの戦い(PvN)よりも、プレイヤーとの闘い(PvP)の方がいい。……そうは思うけども、こういうのを望んでいる訳では無いんだよなぁ。

 

 少子高齢化で介護は撤退戦だとテレビで言っていたが、少なくともシャンフロにおけるワイちゃんの領分ではなくない?

 

「わぁったわーった! 任されたるから! ワイちゃんのチャームポイントから手ぇ離せ!」

「フッ、これからよろしく頼む、師匠」

「師匠ちゃうよ?」

 

 ボサボサにされた『招福の虎面』の毛皮をブラシで整えながら、もう何度目かも分からない根負けにため息をついた。

 

 

 


 

 

 

 サイガー100とクラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)を結成してから少し経った。

 ワイちゃんの案である『リュカオーンぶちのめし隊』『虎人会』『サイガー100ちゃんファンクラブ』は完全にボツにされ、『狼虎組*2』と提案したところ『狼』の文字を入れる方向になった。

 

 そうして素直にリュカオーンの印象から『深い夜のように黒い狼』、縮めて『黒狼』となり、『こくろう』では響きが物足りないということで『ヴォルフ・シュバルツ』になった。どこの何語かは知らないがカッコいい。

 

 また例のワンちゃんとドラゴンは結構人懐っこいようで、シャンフロ公式掲示板(BBS)にて被害者の会には結構な人数が所属していることがわかった。

 だがその上で、マーキングを付けられたプレイヤーはワイちゃん以外には獅子十六(ししじゅうろく)という男性の槍使いを含む三人だけだった。マーキングフレンズとして意気投合したよ。

 

 そんな獅子十六こと十六さんを含め、黒狼には何人かメンバーが増えたのだが、残念なことに誰も彼もこういったゲームのコミュニティを運営した経験が無く何をしたらいいか分からなかった。

 

「引き続きメンバー集めつつ、リュカオーンの情報を集めよう」

「メンバー同士の親睦を深めるためのトーナメントとかしない?」

「しない」

「クゥーン」

 

 十六さん以外は驚くほど乗ってこなかった。

 今後どうしていくかは各自持ち帰りとなり、サイガー100は知り合いにそういうことが上手な人が居るらしく、その人に話を聞くことにしたようだった。

 すごく不本意な……嫌そうな顔をしていたのが印象に残った。

 

「ところで募集するメンバーについてやけど、やっぱり選りすぐる感じ? ご新規さんとか何人か興味を持ってくれとるんやけど」

 

 ありがたいことに、攻略を手伝ったりした初心者プレイヤーの一部に関心を示されることがある。

 とはいえリュカオーンと遭遇はおろか存在自体知らないプレイヤーをメンバーとして引き込むのはどうなのかということでまとめて保留にしているところだった。

 

「一人を除いてみんな普通に良いプレイヤーやけど、ワイちゃんとして人が増えるとメンドん"ん”、目的がブレるんやないかなーとか考えとる」

「……いや、せっかくだから会おうと思う」

「わかった、取り付いどく。……あーそれと、ヒイラギとかいう女プレイヤーが来てもそいつはやめとけ、アレは入れたらアカンタイプや」

「わ、わかった。……()()が他人のことをそこまで明確に悪くいうのは珍しいじゃないか」

「ワイちゃんにも嫌いなやつくらいおる」

 

 一回きりと、嫌悪感を無視してモグラ攻略を手伝ったのが運の尽きだった。本人に明確な落ち度があったが、男として見て見ぬふりは出来なかった。

 

『「ほっとけないわー」で動くそれ、もう少し考えた方がいいぞ』とラクのやつにちょいちょい言われているためわかっている気ではあった、しかしワイちゃんは痛い目を見ないと学べないらしい。

 

 下手に気に入られたせいで今も固定の拠点を構える気になれない。

 

「あーそれと、ワイちゃん今度の大型トナメ終わるまではフォルティアンに滞在するからよろしゅうな」

「わかった。私は本戦出場が適わなかったからな……私たちの、黒狼の名を上げてきてくれ」

「任せろ」

 

 何はともあれ装備に回復アイテムにスクロール、強敵に挑むとなれば最低でもこれらに金がかかる。

 具体的にどうと言うのは分からないが、マーニがあって出来ることが増えはすれど減ることは無い。

 

 打倒リュカオーンに燃えるサイガー100を応援する気持ちだけで今ここにいるのが正直なところで、相変わらずリュカオーンへの関心は薄い。

 だがそれはそれとして、頑張るやつは報われるべきだ。神様仏様が見ていなくとも、友達としてそれに応えてやれる男でありたいとワイちゃんは思っている。

 

 

 


 

 

 

 メンバーが増えた、すごく増えた。

 

 大月輪で優勝した際にクランをPRしてみたら、溜まり場としていたカフェにえらく反響があった。

 

 しかもそれは加入希望のプレイヤーだけに留まらず、どこぞの商会であったりのNPCが取引を目当てに訪問してきたり、あるいはユニークシナリオを引っさげてやってきたりと様々だった。

 

 ゲームとはまるで思えない、社会が巡り、世界が息づいている。……個人的に、ジークヴルムを相手にした時よりもこのゲームのことを恐ろしく感じた瞬間だった。

 

「大したもんやなぁ、マーキング付きが3人もおる。リュカオーンと遭遇した経験のあるやつだけでも16人来たんか」

「それだけじゃない、NPCの商会やギルドのいくつかが提携を申し出ている……ありがとう虎人、全部お前のおかげだ」

「よせやい」

 

 なんにせよ考えることが急に増えすぎた。……戦うこと以外はパッとしないワイちゃんでそれなのだ、頭のいいサイガー100はきっとそれより頭が忙しなくなっていることだろう。

 

 サイガー100は人を使うのが上手い。

 人を上手にコントロールするのが上手いのではなく、多数の人に指示を出して最大の成果を出すことが上手い。

 一人で殴るしか脳のないワイちゃんには真似しようと思っても出来ないことだった。

 黒狼が組織として機能しているのは、一重に彼女の能力によって立つところだった。

 

 社会人だとは聞いているが、もしかしたら人を使う立場にある結構偉い人なのかもしれない。

 仮にそうだとして、リアルの方も忙しいことは想像に難くない。故に皆が彼女を尊敬に値するリーダーだと認めていた。

 

 ゲーマーとしても強くなった。順当に実力を伸ばしていけば次の大月輪では入賞も夢ではないほどに。

 戦うことに関してはワイちゃんの方が確実に上だが、ゲーム全体の理解度は彼女の方が現時点で勝っているかもしれない。

 

 きっと彼女は、ワイちゃんの想像が遠く及ばない超人なのだろう。

 ……だがそれでも、最近加入したメンバーに話しても信じて貰えないであろう、クラン設立時に右往左往していた姿がいつもチラ付く。

 

「これから忙しくなるぞ……! 虎人も頼む!」

「おー、任せろ」

 

 ……そうは言ったが何をすべきなのか、何が出来るのか分からなかった。

 だから人を頼った、自分よりも遥かに物事をわかっているであろう人たちを。

 

 

 


 

 

 

 シャンフロにおける強さの価値は高い。

 だからこそ、最も強いプレイヤーであるという事実は頼み事をする際にも大きく役に立った。

 

 まず最初に、午後十時軍というクランを訪ねた。そこを選んだ理由は、規模が拡大し続けている社会人クランということから、何か得られないかとリーダーのカローシスUQに教えを乞うた。

 その末にクラン運営というものを、たかがゲーム内のコミュニティコンテンツと甘く見ていたことを理解した。

 

 勉強中の簿記3級の知識を実践する機会はまだまだ先だと思っていた。組織図の勉強をすることになるとは想像すらしていなかった。

 その二つに関しては学校で学んだ、あるいはそれに即した内容だったから良かったが、それ以外にも必要……とまでは言わずも、役に立つ知識が多すぎることを思い知らされた。

 

 自分や既にいるメンバーが学習するのでは追いつかない、既にそれを持っているプレイヤーがメンバーに欲しい。

 

 もはやゲームのそれとは思えない、総務の職業体験でもしている気分だった。

 ハッキリ言って面白くない。最近右手と胴体の装備が不可になった際にも思ったが、このゲームはもしかしたらクソゲーなのではと思い始めていた。

 

 ……サイガー100は出会った当初、何もかもが初めてだと言っていた。もしかしたら、彼女もこうだったのかもしれない。

 

 それはそうと、カローシスUQにはご自愛くださいと切実にお願いした。必要なら何時でも力になるとも。社会人になるのが怖くなった一幕で、サイガー100にはああなって欲しくないものだった。

 

 

 


 

 

 

 多くの人たちに頼り、知見を得た。

 世界には見たことがない強者がいるだけでなく、見知らぬ類の強さがあることを知った。

 

 最終的に、とにかく人を集めてそれぞれの得意分野を割り当てるというのが、遠回りに見えて確実な方法なのだとわかった。

 クラン結成当初のワイちゃんは、人は力という事実に行き着かなかった。サイガー100がそこまで考え至っていたかは知らないが、少なくとも肌でそれを理解していたのだろう。

 

「マッシブダイナマイトさんは虎人の紹介だと言っていたが、何があったんだ?」

「おー。キョージュに相談事した時に流れでの」

「そうか。……ライブラリも、ウチと同じく人が増えつつあるらしい」

 

 人が増えてクラン内外問わずメンバー同士の交流が盛んになった。……それにより、プレイヤーの成長が促されるという気付きを得た。

 

 担任の小牧先生も『友達同士で教え合うと覚えがいい』と言っていた、つまりそういう事なのだろう。サイガー100の誘いを蹴っていたら、その本質に気づくのが数年先……下手をするとずっと、気づかなかったかもしれない。

 一人は気楽だ、だが一人で強くなっても高が知れているのだと悟った。

 

 ……だからなのか、最近は黒狼に所属している意味を考えることが増えた。

 

 シャンフロサービス開始からまだ三〜四ヶ月と日が浅いとはいえ、黒狼はトップクランの仲間入りをしつつあった。

 そんな中で、相変わらずクランの趣旨に価値を見出せない自分のことが気になる。引け目と言ってもいい。

 

 今のワイちゃんのゲーム内の目標およびモチベーションの源は『逸脱者』を倒すこと。

 クランの一員として何も見ていなかった少し前までと違い、今は完全に別なものを見ている。

 

 多くのクランを頼った際に、クランを通したプレイヤー活動についても聞いたのだが、中でもある二人の言葉が印象的だった。

 

 SF-ZOOのAnimalia(アニマリア)は「愛」と、阿修羅会のアーサー・ペンシルゴンは「ロマン」とそれぞれ嘯いた。

 

「今度、ライブラリと提携を結ぼうと考えているんだ。……その時は任せてもいいか?」

「……ああ、任せろ」

 

 サイガー100を初めとするメンバー達は黒狼という組織により強くなった。サイガー100には黒狼が必要だ。

 だがワイちゃんにとっては?

 

 ……ワイはもっと強くなりたい。それにはまず他のプレイヤーに強くなってもらう必要がある。

 

 

 


 

 

 

 明らかに働きすぎなサイガー100を、ユニーククエストを名目にフィフティシアのクラン拠点から引きずり出し、神話の大森林に来た。

 

 午後十字軍との提携とカローシスUQのご厚意から、 今の黒狼はクランリーダー不在でもクランとして動けるシステムが構築されているのだが……どうにも彼女は現場主義のきらいがあるというか、メンバーを戦力として数える一方で、一部のメンバー以外を本当の意味で信用していないように思えた。

 そのための人的・組織的システムらしいのだが……リアルでよほど嫌な経験でもあるのか、自分で睨みを効かせておかないと安心できないようだった。

 

「ほらぁまたウトウトして。疲れとるんよ」

「そういうのじゃない、人目がなくてオフになっているだけだ」

「そんなこと言って、また圧縮睡眠がどーのと……なんやねんその顔」

「……べつに」

 

 攻撃的な、それでいて好意的でもある視線が刺さるが、サイガー100はなにを言わんや。どうでもいいけど、その超拗ねてますな「むっすぅぅぅぅ」顔おもろい。

 モノのついでにレアエネミーとエリアボスまで撃破し、現在は諸々手に入った戦利品の確認をしている。

 

「お、この剣ええやん。ほら、自分の取り分や」

「……ふふっ」

「あ”? 今ワイちゃんの『厄払いの虎相(トレードマーク)』を笑ったか?」

「ちがうちがう! 虎人と出会ってからまだ四ヶ月程度でしかないのに、ずいぶん懐かしくなってな」

「へー、もうそんなもんなんか。てか何を思い出し笑いしたん?」

「お前、初めて会った時もさっきと同じことを言っていたぞ?」

「マジぃ?」

 

 サイガー100との馴れ初めは、サービス開始当初に彼女の四人パーティがフィールドでPKのフルパーティに襲われていたのを見かけて、加勢してPK側を皆殺しにしたことだった。

 

 助けた、という意識は無かった。気兼ねなく殴れる連中を相手にしている彼女らが劣勢だったため、獲物を横取りしただけだった。

 

 ワイちゃんが殺したのは8人、サイガー100らが殺したのは7人。最終的に立っていたのはサイガー100との二人だけだった。

 彼女は、その場でワイちゃんの次に強い奴だった。

 

『ワイちゃんともやる?』

 

 そう誘ってみたものの普通に断られたのはシンプル残念で……そしてその場でフレンド登録をし、戦利品を分けーー

 

「あー、せやった! 良さげな剣を手渡そうとしたらワイちゃんの手を掴んで『弟子にしてくれ』やった!」

「忘れていたのか……? 私はつい昨日の事のように覚えているぞ」

「いや、その後しばらくストーカーされたんが怖くて忘れようとしたっちゅうか」

「スト……っ!? ひ、人聞きの悪いことを言うな!!」

「はえひへー」

 

 顔を真っ赤にしたサイガー100にワイちゃんのタイガーマスクを奪われホッペを引っ張られる。お互いに環境やら何やら変わったものだが、怒った時のこれはずっと変わらない。

 

「ボサボサ……あー、ちょっとマジメな話しするんやけど、クラン内でワイちゃんを担ごうとする連中が増えとる」

「……ああ。まだ先の事だと思っていたのだがな」

 

 どうもワイちゃんは勝ちすぎた、結果を出しすぎたようだった。

 それにより人が集まったのは良いのだが、クランの大目的を忘れ虎人をクランリーダーに据えるべきだの、トップクランになるべく活動すべきだのとする風潮が一部メンバー間で生じつつある。

 そいつらは秘密裏に接近してきたが、だからと言ってワイちゃんがリーダーへの義理を欠いてまで秘密にするとでも思っているのだろうか?

 

「『やだ』ってんのに、しつこいんよ。野心があるのはええけど、自分でやれやって話」

「お前の真似を他のやつに出来るわけないだろう」

「それがサイガー100にも当てはまる、っちゅーことを分かっとらんからくだらんのや」

 

 連中はワイの認めた強者を侮った。その時点から問答無用で敵なんだよ。

 

 加えて先日、看過できない出来事があった。

 ワイちゃんの『刻傷』が、黒狼の活動の妨げになることが明らかになったのだ。

 普段リュカオーン捜索隊への参加に消極的なワイちゃんが、他にやることがなかったため珍しく参加したところ、エンカウントに成功した。

 

 だが戦闘自体起こらなかった。

『一部のモンスターと遭遇した場合、戦闘状態が強制終了する』という刻傷の記述を、その時初めて目を通した。

 

 もちろん数少ない挑戦機会を潰されたサイガー100は怒りに狂い、マスクを奪った上にヘッドロックからのキャメルクラッチという極悪コンボをかましてきた。

 

 ……問題なのはその後だ。

 創設メンバーとはいえそのような者が、リュカオーン討伐を大目的とするクランに所属していると分かった以上は弾劾(?)あるいは活動参加を制限されるのが当然だと、少なくともワイちゃんは考えた。示しはつけるべきだと言った。

 リュカオーン討伐のモチベーションが高いメンバーらも、ワイちゃん個人への好感はさておいて『黒狼においては許すべきでない』と理屈で判断していた。

 

 だが、許された。許されてしまった。

 より正しくは、許さざるを得なかった。それまでの実績と培ってきたメンバーからの信頼が、黒狼という組織において悪い方向に作用した結果だった。

 

 その時真に理解した、ここに居るべきではないと。

 

「サイガー100。ワイちゃんな、やってみたいことが出来たんや」

「……その話、今じゃないとだめか?」

「ダメだ」

 

 聞きたくないと言うが、それはいけない。

 黒狼が大所帯となった今、二人だけで話せる機会もそうそう作れない。

 下手なタイミングで話せば混乱を招くが、かと言って遅くなればなるほど、いつか取り返しがつかなくなる。

 

「ワイちゃんもっと強くなりたいねん。だからまずは、プレイヤー全体のレベルを上げる、そのためのクランを作ろうと思っとる」

「……新たにクランを作る必要もない、手間だろう? 黒狼を、その組織力を利用すればいい」

「それをやったらいつか黒狼じゃ無くなる。せやから、別でやる」

「お前が抜けたら、お前に続いて抜けるメンバーが必ず——……ッ! すまないっ、忘れてくれ……」

「気にすんな、わかっとる。きっと十六さんとか付いてくるやろな。……迷惑かけるがの、キョージュや天首領(ドン)さんやカローシスUQらに、力になって欲しいと頼んである。だから……むぎゅぅ」

 

 マスクを両手で掴まれ形が歪み、視界がふさがってしまった。

 震える手から感情が伝わってくる。

 

「……愛弟子を放っておくというのか」

「強くなったやん。今じゃマーキングも二つ付けられるようになって、なぁ?」

「次は、倒せるくらい強くしてくれ」

「それは自分でやらなアカン、守破離の『離』や。……別にゲームを辞めるわけでもなし、いつでも相手したる」

「……私達の黒狼じゃないか」

「お前たちの黒狼や」

 

 マスクがさらに険しく歪められる。

 

 怒りと、悲しみ。

 

 それがどうしようもなく、嬉しかった。

 

「頼むよ」

 

 我ながら薄情だと思うが、黒狼にあまり未練はなかった。

 最後まで、サイガー100ら友達のことが全てだった。

 

 いつか愛弟子が大願を成す瞬間に立ち会えるよう、今は離れて強くなる。

 

*1
シャンフロのパーティー上限人数はNPCも含め15人、つまり15人のハリキリバッドボーイズ。

*2
狼虎:残忍なものや、欲深いもののたとえ。PKクランでもないのにこんな名前つけるな。




※まだリアルで面識はありません。

原作キャラ達のゲーム開始時期等に矛盾が生じた場合、オリジナル設定として乗り切る所存です。親(原作者)の教えに倣いガバ転び八起き。

・守破離:日本の古武道などにおける修行の段階、および師弟のありかたを表す考え方。
 守:師の教えを守る、基本を身に着ける段階。
 破:師の教えを破る、他の師や流派の教えも取り入れ発展させる段階。
 離:独自の新しいものを生み出し確立させ、師を離れる。

・獅子十六:本作オリジナルキャラ、強い。現在はリョーザン・パーク所属。4×4=16。

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