シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない 作:嘉神すくすく
おめでとう、玲ちゃん。いい夢見てね。
「あれ、斎賀さん? おはよ」
「ピ!? 陽務君!? お、おはようございます……! 偶然ですねっ!?」
「だね。ジョギングか何か?」
「は、はいっ、ジョギング中です!」
ウィンドブレーカーを羽織ると暑く、かと言って脱ぐと肌寒く感じる今日この頃。
春休みも終わりが見えてきたある日の朝。日課の走り込みの最中に予想だにしない人から声をかけられた。
足を止めると、数拍遅れて火照りが身体を巡るのを感じる。しかし、心拍はなかなか落ち着かない。
ペースを上げて走っていたから、ということはなく……彼に声をかけられたことでそうなっている。
……陽務君が定期的にジョギングをしていることは把握していたが、今日はその曜日でないため完全に意識外からの衝撃だった。
「陽務くんもジャージということは……?」
「うん、俺も途中。……さっきまで一緒だった奴が居たんだけど、置いてかれたんだよね」
汗を拭い、臭いを気にしながらおずおずと会話を繋ぐ。
……言われてみればついさっき、エクレアみたいな焦げ茶色のマスコットが背にプリントされたジャージを着た周布くんが、凄まじいスピードですれちがい彼方へと消えていくのを見かけた。
「……へ、へぇー。金曜日はいつも走ってるんですか……?」
「いや、普段は違うよ。今日は友達に誘われただけだよ」
どうしてこうなったのかはまだ飲み込めていない。しかし過程はどうあれ陽務君の方から話しかけてくれたこの
具体的にどういう流れにしようとか事前に考えていないし、そもそも話題すらも整理できていない。だが——
「——友達って、もしかして周布くんですか? ……
「……え? 斎賀さんってヒロのこと知ってるの?」
「もちろん。……実際私も、陽務君と同じ中学だったんですよ?」
とにかく会話を終わらせたくない一心で、共通の話題に出来そうな人物の名を出しただけだった。
————ついに苦労が報われる。
我武者羅という言葉が好きそうな、虎のマスクがトレードマークなあの人の声が聞こえた気がする。
「そうだったの!? えー、あー……ごめん、知らなかった」
「し、仕方ないですよ! 話したことは無かったですし……!」
……当然のこととは言え結構深く刺さる事実だった。思えばずっと話したことなかったんだよね……。
しかし今こうしてスラスラとお話しできている状況は夢のようだった。
「と、ところで、小耳に挟んだのですが……陽務君は、ゲーマーなんですよね?」
「え? うん、結構やってる。……斎賀さんもゲームとかやるの?」
「っ! はいっ!……そうは、見えませんか?」
「悪い意味じゃないけど、意外だなぁと……」
「よろしければ、いっ、一緒に走りながらお話しませんか……っ!? 普段ゲームの話ができなくって……!」
「良いけど……——っ!? いや斎賀さんっ、首まで赤くなってるよ!? 発熱とかじゃ……無理せず帰った方が「ぜんっっっぜん大丈夫ですッッッ!!!!!」へ、へい……ちょっとヒロに連絡だけするね……」
嗚呼、天におわします
「え、斎賀さん『メチャ重』買ってたの!? マジで!?」
「は、はい……シナリオは結構良かったんですけど、その……途中から進められなくなって」
「あぁ……もしかしなくても、ソロプレイだよね? あのゲームなぁ、最適化が満足に出来てない上に一部のモンスターがポップしてると動作クッソ重くなるから……」
「はい……それで、イベント進めようとしている最中に周りで……」
「ああっ!? 思い出すだけで身体が重くなってくる……ッ!! ……クリアするだけだったらマルチがいいよ。会話進める役と、その間出来る限り狩る役で」
ある日の放課後、下校途中にて。
去年の夏に占い師に扮した真奈さんから勧められたゲーム、『
……初めて話しかけられたあの日から私たちは、こうして登下校中にゲームの話をするようになった。最初はクリアも出来ていないゲームを話題に出すことは躊躇ったものだが、ある程度交流を重ねるうちに、それもまた会話の種になることを体感した。
陽務君はゲームをクリアできないからといって幻滅するような人ではなかったし、むしろ一緒になって苦労した点などに共感してくれた。
もっとお話しできればいいんだけど、校内だと周りの目があってなかなか話せない。
陽務君と私が下手に話そうとすると、他の男子生徒の手により陽務君が連行等されてしまうからだった。
……放課後に密会しているようでドキドキするけど、やっぱりより多くの時間を共有したい。
「もしマルチやるんだったら付き合うから遠慮なく言ってよ、だいぶ前だけどクリアしたから」
「は、はいっ! ぜひよしなにお願い致しますッ!」
「オッケー。……あ、斎賀さん、俺今日こっちだから」
「あえっ……? な、なにか用事ですか……!?」
「いや、そんな大したことじゃなくて。ちょっとゲーショ寄りたいんだよね」
「ゲーショ……もしかして、ロックロールですか?」
「あ、知ってた? まあこの辺りだとそうだよね。……実はつい昨日、かなりやばいクソゲーを乗り越えたからさ、ちょっと次どうしようかと」
そういえば、陽務君が今何のゲームをプレイしているのか先週真奈さんに聞いたが知らないと言っていた。なんでも友達……おそらくは周布くんから借りたゲームをプレイしているというだけで。
「何というタイトルのゲームなんですか? わ、私も興味が「やめたほうがいいっ! 覚悟なしに手を出していい代物じゃない……!」ひゅいっ!?」
「フェアクソ……『フェアリア・クロニクル・オンライン』は、まずい。俺は耐性があるから連休明けでも登校できた……けど、耐性が薄い俺の友達は、ストレスで二日学校を休んだ。そのレベルだから……!」
「体調を崩すレベルなんですか!?」
「やばい、やばすぎた……今はどんなクソゲーをプレイしても、無の心で淡々と処理できる気がする」
確かに先週、虎人さんをクエストに誘おうとしたものの、体調不良を理由に数日間ログインすらしていない期間があった。……まさかそんな理由だとはまるで想像が及ばなかった。
「————陽務君、ご提案があるのですが」
◇ ◇ ◇
サイガー0:という夢を見たのですが、どうにかなりませんか?
虎人:どうにかできると思ってらっしゃる??
朝のロードワーク中にスマホが続々とチャットを受信し、通知音のせいでミュージックが聞けない状態が続いたためやむを得ず確認したところ……固有名詞が伏せられた怪文書がこれでもかとばかりに送られてきていた。
二度と見たくないゲームタイトルがチラッと見えたこともあり、怒りが恐怖に転じたワイちゃんは率直な気持ちを返信しすぐに通知をOFFにした。
「ヴォエッ……」
邪心のカエル顔が脳裏に浮かび、あまりのショックから酸っぱく渋いサラサラの胃液が逆流する……え、なぜワイちゃんに? そもそも、どうして
……疑念なぞ振り切ってしまおうと、直前までよりも数段ペースを上げロードワークを再開する。なるべく何も考えたくなかった。
私にとってのオリ主とは、原作と異なるアプローチで物語を進めたり、時期や関係性などから繋がらないキャラや舞台を繋げたりする手段と考えている面があったりします。
つまり虎人くん次第でサイガー0が鳥の人と熱い夏を過ごせる可能性が生じるということだ。
まあサイガー0に限った話やないんやけどなブへへへへ。
フェアクソ:皆様ご存知。虎斗くんがお正月に買ったVRゲーム福袋に含まれていた。彼はゲームのプレイにおいて攻略情報やレビューは見ない主義なため、自分で買ったゲームで地雷を踏むことが多いぞ!
モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?
-
あ、いっすよ(快諾)
-
頭湧いてるんですか?
-
そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも