シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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弊ユニバースが猿に侵されている重大な設定が今回明らかになります。


番外編4 お信心見せて。魚臣慧に哀しい過去……!

 

 ビーナスファイト

 

 世界各国の様々な神話を題材にした日本が世界に誇る美少女格闘ゲームであり、元々は世界に販路を向けようとしていたがそのあまりのHENTAIぶりから各国の規制要件を満たせず国内限定販売に舵を切った哀しい過去を持つ、所謂(いわゆる)おま国ゲーである。

 

 キャラクターの八割が爆乳ナイスバディである上に脱衣KOは当たり前に全キャラ実装、能動的に脱衣する強化状態がほぼ全キャラに搭載されていることが最大の特徴で、発売から三年以上経過している現在もその人気に加え定期的にイベントや有料スキンの追加等が行われていることから一定以上のアクティブユーザー数を維持している。

 

 性欲に国境は無いという事実を明らかにするかのように、このゲームは各国のあらゆる人種の男性により愛顧されている。通常、日本国内でしかプレイ出来ないにも関わらずだ。

 

 このゲームの発売後から海外から日本への旅行客や移住者の増加、そして国内における男性の犯罪率が低下したことが統計で明らかになってるんだよね、すごくない?

 それを踏まえれば一部の訪日外国人が話す異様な日本語が、定期的に各種メディアで取り上げられる点は些細な問題ヤンケ。

 

 ……さて、そんなビーナスファイト、通称:女神(ビナ)ファには、セクシャルなグラフィック・通勤電車内で響けば車両が凍りつくキャラボイス・監視AIの自動判定によりポルノと誤解され配信がBANされること多数なストーリー等を問題としなければ、唯一にして最大の問題点がある。

 

 それはゲーム自体の出来栄えとは関係無く、それでいてその一点を以て女神ファを神ゲーとする論争に『いやちょっと待てよ』と声がかかる、完全な汚点だった。

 

 

「寒い雪の日の朝……!?」

「ですねぇ」

 

「パイバアル……”勝利の呪文”を頼む……」

「しょうがねェな……お前の推しは淫売のクソ女神!!

 

「Wasshoi!」

「アイエエエ!?」

「なんだあ、ロビーで動画配信かあ」

「ユーチューブだろ」

 

「”クソ”ッテナンダ」

「똥ッテイミダ」

「ハイッ、クズカクテイ。ブッコロシマス」

 

「君も巨尻(デカケツ)のゲブ神に憧れてるんだろ? 入信(サイン)してもらおうか? ボクぅ?」

「勘違いさせたのなら謝ります、でも……”巨乳(デカパイ)”じゃないですよね?」

「それを言ったら殺されても文句は言えねぇぞっ」

 

 

 アウトドアとはまるで無縁の危険なオーラを放ちながら延々と執着。金鉱に群がる”ゴールド・ラッシュ”ならぬ女神に群がる”ビーナス・ラッシュ”。

 バージョン毎に異なるキャラを立てるべくバランス度外視の調整をする運営ちゃんに逆環境の推しキャラで反骨する信仰心(メンタル)こそが”強さ”だと信じている狂信者達。*1

 

 ……このゲームにおける最大の問題点は、プレイヤーの七割強が猿渡哲也作品の熱狂的なファンである異常猿愛者、通称:マネモブであることだ。

 

 モンキー・インプリティングによる襲名制から猿渡哲也というレジェンド漫画家が永遠の存在となっている事実はファンだけでなく一般人にも広く知られている*2が、そんな彼あるいは彼らの著作における登場人物のセリフ等の”語録”を用いて会話をし、汚言・暴言は当たり前で何かあればすぐさま暴力(たいせん)におよぶ……ビナファにおけるマネモブとはそういったフルコンタクト野蛮人(ワイルズ)の集団である。

 

「……で、ミーム汚染されたのがこの俺……! 悪名高いタイガーにどっぷり引きずり込まれたアタリカッツォよ」

「久しぶりやん、元気しとん?」

「アタリカッツォが墓から甦る!!」

 

 久々のログインにも関わらず、似たようなマネキン顔で見知った名前のプレイヤー達から声がかかる。

 

 このゲームのプレイヤーは女神の勝利を祈る信徒という設定なのだけど、開発会社が”売り”としている部分以外は省エネを貫いたようで、プレイヤーの分身となるアバターの質が低いこともマネモブが世界を練り歩く要因の一つとなっていた。

 

 ……今の時代、インターネット・ゲームオタクをしていれば大なり小なり脳に猿魔(エンマ)を打ち込まれるものだし、格ゲープレイヤーともなれば嫌でも接することになる。

 

 猿先生の作品は日本が世界に誇る格闘漫画の金字塔だからね、みんなで布教するから尊いんだ、絆が深まるんだ。

 

 そしてそれらも、ビナファをプレイしそのプレイヤー達との交流を通じて受ける悪影響と比べたら可愛いものだ。オンラインプレイだと脳に猿を宿すことは避けられないんだ、くやしいだろうが仕方ないんだ。

 

 思えば俺がそんな異常猿愛者の仲間入りを果たすきっかけとなったのは、2年前の寒い雪の日のトーナメント……仕事でビナファの全国大会にプロゲスト枠で出場した時だ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 このゲームのプレイヤーのレベルは、低ランク層を除いて非常に高い水準にある。

 大会前日までランクマに潜っていたのだが、試合数を重ねるほどそれを肌で感じて驚き、呆れ……そして変なクスリでもやっているのかと戦慄したものだ。ランカーに位置するプレイヤーに関してはほぼ全員がプロ水準で、ビナファというフィールドに限れば大半のプロを下すだろう。

 

 その技術をプロゲーマーとして発揮しないなんてあまりに勿体ない……なんて考えたこともあったが、仮に彼らがそう志した場合はプロの舞台にすごい数のマネモブを放つことになると気付き震えた。もうそのまま出てこないでくれって思ったね。

 

 そんな集団のなかでも選りすぐりの異常者を超えた異常者24名と、ガチ枠4人・アイドル枠4人のプロ8人、トータル32人がひしめき合う”超乳闘技(ハイパー・バトル)”の当日……『プレイヤーが主役の大会でゲストが優勝もってくとか不味くない?』などと控室で他のプロと談笑していたものだが、屈辱にも杞憂となった。

 始まってみれば1回戦を勝ち抜いたのは不戦勝を含む4人で、続く2回戦で俺を除く3人も敗退させられた。

 

 その段階になって理解したね、()()()()()()8人も呼ばれたんだって。

 

 ついでに、プレイヤー24人の大半がどいつもこいつも愛とは無縁な顔付きと格闘家じみた体型をしていた。

 見た目通りに乱暴者揃いだったのか、試合前に素手喧嘩(ステゴロ)で0回戦を開始した6名のうち1名が病院に搬送され2名が失格にされたり、一回戦を欠場したプレイヤーが会場外でプロレスラーを相手に暴力沙汰を起こしていた事実が明らかになった際も『ふぅん、ああそう……』とゲスト以外の全員がスルーして何事もなくリザーバーで穴埋めし続行された光景は今も忘れられない。……ゲームの大会だよね?

 

『よろしゅうお願いします! ……全米一位との試合見ました。二戦目のフェイントで釣ってカウンターに溶鉄弾合わせたん、超カッコよかったです』

『よ、よろしく』

 

 今この瞬間にゴングを鳴らされたら10割殺される確信に手汗が滲む。試合前の握手だけで生きた心地がしなかった。

 

 他の七人の期待を一身に受け準決勝まで勝ち進んだ、そんな俺の対戦相手がPN:虎丸(トラマル) (ショウ)、マッチングネーム:虎人。当時14歳のタイガーだった。

 

 そのまま格ゲーに参戦できそうな肉食(動物)系のビジュアルと風格、そして多国籍(ワールドワイド)修羅が跋扈するビナファにおける全一プレイヤーとして最も注目を浴びていた彼は……その場の誰と比べても圧倒的だった。

 

 端的に彼は、誰もが目先の勝利のみを考え(場外乱闘まで駆使して)戦っていた中でただ一人()()()まで考えていたのだ。

 

 第一試合、第二試合、準々決勝と……彼の試合はどれもが接戦で、1ラウンド取っては1ラウンド取られ、最終ラウンドは両プレイヤーがレッドラインまで追い込まれどちらが勝利するか最後まで目が離せない試合展開になる。彼の試合は全て見ごたえがあり、観客も実況席も配信コメント欄も、あまつさえ次の試合が目前の競技者さえも時間ギリギリまで食い入るように観戦する。

 

 当時連敗を喫していたあのシルヴィア・ゴールドバーグほどの衝撃はなかったが、それでも彼の試合は互いが操作するキャラクターの魅力が最大限発揮されるためか、見ていてとても気分がいい。

 

 

 ……はたから見たら、そうだった。

 

 

 実際に闘ってみてわかった。彼の試合はきらびやかな、それこそネット上の魅せプレイPVのような展開になるが……接戦故にそうなるのではなく、彼がそう仕向け演出した結果なのだと。

 

『毘沙門ちゃんのコンボが炸裂ゥ! 第二ラウンドはK(ケイ)が制したぁ!』

『第一ラウンドの虎人選手のラーちゃんによる完封から一転して、K選手の堅実なプレイが光りました。……それにしても、ガードの隙間を差し込むあの荒業、全米一位のようでしたね?』

『確かに! これまでの三戦と比較しても、今日一番Kの動きが冴えているようです!!』

 

 違う、違う。

 今の俺は調子が()()()()

 

 1ラウンド目を完封されてキレて調子が出たのかと途中まで思っていた……だが、今のラウンドの俺はまるでシルヴィのようだった。本来のスタイルとはかけ離れているにも関わらず精神がそれに()()()()()()()

 

 

 気づけば彼の見世物の一部に組み込まれていた。

 

 

 ……最終ラウンドのことは鮮明に覚えている。120パーセントのポテンシャルを維持したまま一進一退の攻防が続いていた。シルヴィ相手とは違い俺の攻めも通っている()()()()()、だが実際にはコンボに繋がらない技を受けられているだけで()()()いない。

 

 相手の攻撃を避けるという選択を許されないプロレスラーが目突きや金的等の危険な急所攻撃を()()()()()()というのは聞いたことがある。

 

 それをほんの数(フレーム)の世界であるVR格闘ゲームで可能なのかと言うと、実際のところプロならシルヴィや俺をはじめ何人か出来る選手はいるだろうし、たぶんサンラクも出来る。

 

 ……だがそれは、一試合(マッチ)の内で『そうする』と予め決めておいたごく短時間に限った話である上に、何より精神的負荷に反して割に合わない。そんな真似が出来るなら普通に受けるなり捌くなりして反撃するか、先んじて行動を潰す方がずっと楽に勝てるため『勝つことが仕事』であるプロならそもそもしないんだ。

 

「お行儀のええ振りそろそろやめん?」

「はぁ!? 何を……!」

「まだ盛り上げられるやろ」

 

 高身長褐色爆乳の打撃投げキャラであるラーちゃんを操作する彼は、第一試合からずっとそれをやってきた。……それは何故か?

 このゲームの全国対戦にはレギュレーションが二種類ある。一つが通常の格闘ゲームと同様に単に闘って勝利する本大会でも採用されてるスタンダードスタイル、もう一つはキャラごとに設定されたパラメータに準じて『より美しく闘った側が勝利する』というスコア制だ。

 

 後者の場合は例えマッチの勝敗が1:2で負け越したとしても対戦中に稼いだスコア合計が高ければ最終的な勝者となる。……彼は異常者ひしめく女神ファにおいても異常者(スコアラー)を超えた異常者(ハイスコアラー)だけが上位ランク入り出来るとされるこのレギュレーションにおいて、今大会の出場権をトップで獲得していた。

 

 彼は女神ファで最も強く、同時に最も魅せプレイが上手いプレイヤーである。彼にとってはこれが平常運転なのだろう。

 

(だからって観衆の前で……(プロ)を相手にこんな舐めプじみた真似を!?)

 

『観客を楽しませて勝つ』ことが当然とばかりに、そのスタンスを自然体としているような彼にシルヴィとは異なる怪物性を見た。

 

(…………考え事? あ……? 試合中に、俺が……?)

 

 攻防が続く最中にふと、試合中にも関わらず集中が切れているのが自分でもわかった。

 緊張の糸が切れるというよりホロリとほつれるように、さもそれが自然であるようですぐには気付けなかった。

 

 自分の身についていない規格外な戦闘スタイルを維持するため、無理をしていた頭が限界を迎えてその機能を止めたようだった。真っ白な思考が、どこか気持ちいいとさえ思えた。

 

 

 当然、見逃しては貰えなかった。

 

 

「しゃあっ、ムーン・ダウナー!」

『ゲージ投げが決まったァ! 御来光*3だぁっ』

『毘沙門ちゃんがナゾ・フラッシュに包まれる!!』

 

 やっぱり下品なゲームだなぁ……なんて思いながら、俺は地面に頭から突き刺さり敗北した。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「……で、この後当然のように優勝したんだよね」

 

 当時の俺とタイガーの試合は大会ベストバウトに選出され、現在もゲーム内でリプレイが視聴可能になっている。事務所は所属選手の恥が晒され続けている事実に何か言わないのかと困惑しているのが俺なんだよね、酷くない?

 

 大会終了後、(K)を相手に勝利したことからプロゲーマー界に名を轟かせた彼は数多のスカウトを受けたものの、驚くことにその一切を断っていた。

 

 スカウト連中を出し抜く気とかは毛頭無かったけど……研究対戦の相手として彼との繋がりを絶対に持ちたかった俺は結果としてただ一人連絡先を交換し、彼がリアル格闘家としての栄光を優先したこと、そして二足のわらじを履けるほど要領が良くないという真意を聞き出した。

 

(サンラクといい、自分の能力を過小評価しがちだよね。……というかあの二人、お互い身近なせいで基準がバグってるんじゃない?)

 

 俺はプロゲーマーとして一定以上の自負がある。そんな俺から見てもあの二人はアマチュアであるにも関わらず異彩を放っていて目を離せない存在だ。

 

 タイガーはサンラクのことを『ムラが酷いが上振れた時が怖い』と、本当にアイツのリア友なのか疑わしいほど素直に賞賛していた。

 一方のサンラクはタイガーのことを褒めることはしないけど……まあ、多分俺と同じように捉えてると思う。

 

(……過小評価、ね。彼には俺がどう見えてるのかな)

 

 しばらく前にサンラクを含む三人で便Pで遊んでる際に、話の流れで『俺とサンラク、ゲーマーとしてどっちが強いと思う?』と聞いたことがある。

 

 タイガーは俺たち二人の強みと弱みを時に反論する俺らを凄んで黙らせつつそれぞれ語り、『あー、ケースバイケースって結論に持ち込むつもりね』と若干白けかけたタイミングで断言したんだ……()()()()()()と。

 

 そしてギャースカと騒ぎ出したサンラクを無視して、『何故縮こまっているのか分からない』と付け加えてきた。

 

 俺にはその真意がまだ掴めていない。

 

「カッツォくーん、おまたせー。いやー、別ゲーの知り合いとそこで会っちゃってさー」

「十分遅刻だから両手ケジメね」

「器ちっさ……そこは『今来たとこ』でしょ?」

「マネキンの分際でチヤホヤしてもらえると思ってんの?」

「しょうがないでしょ!? このゲームのアバタークソ以下なんだから……!」

 

 と、考え事にふけっていたところに”鉛筆女神”というPNのおこがましい女に声をかけられた。意地でもアバターをリアルの自分に近づけようという努力の跡が伺えるのがむしろ痛々しいね。

 

「まあ過ぎたことはいいよ」

「遅刻してきた側がよく言えたね? 時間もないしまた今度にしてあげるけどさ……」

 

 あの日、公のステージで敗北したことは一日として忘れたことは無い。

 

 だが彼との出会いはプロとしてこの上ない幸運だったと思っている。シルヴィとは違ったタイプの天才を超えた天才である彼と対戦し続けたおかげで、俺は間違いなくゲーマーとして一つ上のステージに登れたのだから。

 

 あと、いつもの二人と違って捻くれてないから素直に高めあえる点も仕事で疲れてる時はメンタルに良い。単に罵倒(ディス)りの語彙に乏しいだけかもしれないけど。

 

「……頼んでおいてあれなんだけど、()()()ゲームの研究までするのはやりすぎじゃない?」

「必要ないって? そのエビデンスは? ……タイガーに勝ちたいなら、むしろこのゲームの彼を知ることは必要最低限だよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだから、鉛筆だとガチンコじゃどうやっても無理でしょ。で、ある程度彼への理解度を高めたらとりあえず便Pでサンラクと二人で揉んでやるからね」

「またあのクソゲーかぁ、人生の悲哀を感じるね……」

 

 だがそれでも、綺羅星に手は届いていない。

 

*1
野蛮人とも

*2
チート転生マネモブ(故人)によるレガシー。こいつが色々やったおかげでシャンフロ原作に存在しないゲームや漫画が存在するという弊作最重要人物。今後特に出番は無いんやけどなブヘヘヘヘ

*3
ビナファにおける脱衣KOの通称




弊ユニバースで猿語録は現実でいう淫夢語録くらい世界を蝕んでいます。

パイバアル:女神ファにおけるロリキャラ使い達の希望の星。カッツォが出場した全国大会にも出場しており、結果は0回戦で対戦相手を病院送りにし失格。
「いけーっ、淫売の信徒!!」

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