シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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シャンフロ八周年、おめでとうございます、お慶び申し上げます⸜( *´꒳`*)⸝

アンチノミー関連はエキスパンションパス未読なのでガッツリオリ設定入っております、予めご了承ください。


番外編2 インカミング、ドラゴンフライ

「生徒指導室の防備を固めるのは武装した教師陣……」

「レスリング部、柔道部、相撲部が抑えている間に、野球部とバスケ部が連携して鍵を確保、そしてサッカー部と陸上部メンバーを中心に駆け込むんだ」

 

「誰か一人でも突破出来れば全て取り返せる」

没収(うばわ)れた宝が今も慟哭()いている……!」

 

一年生(イチネン)茨木先生(バラセン)石伏先生(ゴリセン)排除()ったぞっ」

「元空手と剣道の選手だったはずなんスけど……良いんスか、それ?」

 

「多勢に無勢だ! いっけぇっ」

「教師を失神K.O.しろ! 乗り遅れるな! エロブック・ラッシュだ!!」

 

 

「で、在学生が一丸となって手荷物検査やらで奪われたお宝を奪還したってわけ」

「二人の先生の安否は……?」

「防具越しに頭揺らして動けなくしただけやから問題ない。……でもさ、先んじて親に連絡入れてるとかズルくない? ハナから負け戦やん……ジム行ったらおじいちゃんにゲンコツされたし」

 

 つくづくバカだなぁと思いながら足元の雲を払い除け、レアエネミー”嗤う者の黒山羊(ラフターズ・ダークゴート)”の死体から生じた採取ポイントからアイテムを採取する。

 

 採取作業中の雑談でそれぞれの学校の話をしていたのだが、想像の数倍エネルギッシュだった。とても同じ校区の出来事とは思えないほどに。

 

 ……あった、『懺悔(ざんげ)の茨の種』。何はともあれこれで二つ目だ。

 

 私達が来ているのは”雲上流偏の雲海地”。

 最近ようやくユニークシナリオをクリアし手に入れたユニーク武器:神魔の大剣(アンチノミー)の性能を()()させる素材を採取するべく、虎人さんを引っ張って来ていた。その時駄弁っていた姉さんが去り際に膨れ顔をしていたが、戦力増強という形で最終的にクランのためになるのだから大目に見て欲しい。

 

 少し前にその漆黒の大剣を鍛治職トッププレイヤーであるイムロンさんに見せたところ眠っているようだと言われた。単純な大剣として振るうことは出来るがユニークスキル等が使えず、その真価を発揮出来ない封印状態だと。

 封印を解くには『懺悔の茨の種』『慚悔(ざんかい)の茨の種』『悔悟(かいご)の茨の種』がそれぞれ必要と言われたけど……必要アイテムの名称がアンチノミーを手に取って判明しただけで、具体的にそれがどこで手に入るどのようなアイテムなのかは分からないとのことだった。

 

 黒狼とライブラリのメンバーに聞いて回ったものの誰もその存在を知らず、途方に暮れそうになっていた……そんなタイミングでログインしてきた虎人さんにも尋ねたところ、なんと『慚悔の茨の種』を所持していたのだ。

 いつ手に入れたのかも覚えていなくて個人倉庫に入れたまま忘れていた有様だったものの、フレーバーテキストからエリアを特定出来たため私は今ここに至っていた。

 

 私のアバター(サイガー0)の股下ほどまである白雲が大地一面覆っている上に、大半のモンスターや各種アイテムの採取ポイントも雲の下にあるため、このエリアの攻略難度は高い。……より言うと実入りのいい活動をするには【アクティブソナー】がほぼ必須であり、後半エリアで遥かに効率よく稼ぎが出来るようになったこともあり全く出入りしていなかった。

 

 そんなエリアの探索にどうしていかがわしい物品を取り戻すために学年を超えて無駄な団結力を発揮していたような人を選んで、しかも姉さんから横取りする形*1でまで連れて来たのかと言うと……戦力的にも能力的にも、そして事情を知っている上に詮索してこないという都合的にも完璧な存在だからだ。

 

【アクティブソナー】を覚えている魔法職であり、それを使ってこのエリアを暇つぶしに練り歩いていた時期がある奇特なプレイヤーの一人であり、「(サイガー0が強くなるなら)なんでもいいですよ」とばかりにふたつ返事で協力を了承してくれた控えめに言ってすごくいい人…………ついさっき内心でバカにしてすみませんでした。でも撤回はしません。

 

「ワイちゃんの学校スポーツは強いんやけど進学クラス以外は偏差値低くての、体力のあるバカが多いんよ」

「虎人さんが言うと説得力ありますね」

「かなり言うやん。しゃあけどワイちゃんこれでも優等生側なんやで?*2

 

 確か前期試験で合格して早々に受験勉強からおさらばした旨を陽務くんに話していた気がする。陽務くんの志望校の情報にばかり気を取られていたため、かなり漠然とした記憶だけど。

 

「かく言うサイガー0は最近どうなん? なんかこう……フった男の数が百人超えたとか、逆に高嶺の花子さん扱いで神聖視されるあまり男が寄り付かんとか、そういう話ないん?」

「……私のことを何だと思っているんですか?」

「サイガー100の妹」

「ね、姉さんほど気難しくないので、そんな漫画みたいなエピソードはありません!」

 

 ……この人が現実(リアル)の私のことを知らないという事実が時々信じられなくなるなぁ。本当にたまたまなのだろうけど、 実は知ってましたと言われる方がまだ腑に落ちる的中率だった。

 

「そ、そんなことより虎人さんの学校はどの部活が特に強いんですか? やっぱりボクシングですか……!? ちなみにうちの高校はバスケが強いです!!」

「あからさまに話題変えてくるやんけ。んー、割となんでも強いけど、イチオシは陸上かなぁ? 顧問兼コーチのモチベーションが高くて……あっ」

「? どうかしましたか?」

「あーいや……ワイちゃんの従姉妹に陸上の中体連で優勝したって子がおってな、なんかウチの高校のスカウトが来たとかで今度の春休みに見学に来るらしいんよ。……来るんよなあ」

「……仲が悪かったり?」

「いや全然、特別良くも悪くもない。……節目にしか合わん親戚との距離感なぞそんなもんやろ」

「たしかにそうですね。……しかしそれにしては珍しく気が重そうですが?」

 

 嫌いな相手以外には基本友好的な虎人さんにしては珍しく、天を仰いでウーンウーンと唸っている。

 なんというか、その人自体は嫌いじゃないけど不利益を被るから嫌がっているような感じだろうか。

 

 ……あ、何か既視感を感じると思ったら、あれだ。ティーアスちゃんと闘った後、三億マーニの負債を返済するのにコレクションの武器をシワシワな顔*3で売って回っていた時の哀愁を感じさせられた姿だ。

 

 レア物の剣を二本買うのに姉さんがマーニをかき集めていたのと、味を占めたのか視界の端に時々映る幼女ちゃんの姿と合わせて印象に残っている。

 

「全国優勝のお祝いにシャンフロ買えってうるさくってなぁ……冬休みに()うた時はパケ版売り切れとったから難を逃れたんやけど……」

「……存外少額ですね? てっきりVRデバイス一式おねだりされてるとばかり考えてましたが……」

お前(じぶん)やっぱりお嬢様(かねもち)やね……? 一万は一般的に大金やぞ!?」

「す、すいません……」

 

 ……直近で目上二人を暴力で行動不能に陥れているおよそ一般的でない人に常識を説かれてしまった。

 

「ロックロールはぜってぇ限界(いっぱい)まで仕入れるはずやし年貢のなんとやらか……」

「はは……岩巻さんは売り時を見逃しませんよね」

「ん? あー、そらご近所さんよなワイちゃんら。……その内モモさんとも予定合わせてオフ会とかする? タイミングが合えば前から話しとる友達も紹介したいし」

「いっ!?!?」

 

 ハイよろこんでっっっ!!!! 

 ……と言いたい所ではあるけど、仮に今紹介されてもまともにお話出来なくて変な子だと思われちゃうよね……。

 

「ちょ、っと、心の準備が……すいません」

「……自分で言うとってあれやけど、たしかにネットの知り合いに会うのって勇気いるわな。……思えばワイちゃんもサイガー100とはたまたま会っただけやったし」

 

 ……そこは本当に偶然なのですかね?

 

「まー、気が変わったらいつでも言うてな? そいつにサイガー0のこともちょいちょい話しとるんやけどな、機会があれば話してみたいって言うとるよ」

「ほ、本当ですか!?」

「おう。アレもアレで同好の士(クソゲーマニア)に飢えとるようでの、きっと気が合うはずやから前向きに考えたってな」

「ハイ!!!! 頑張ります!!!!」

「今日イチ元気やん」

 

 やっぱり虎人さんはいい人だ、もう二度と足を向けて眠れない……ログアウトしたら布団の向きと位置を変えなきゃ。

 

 ありとあらゆる気分と運気が前向きになり、追い風が吹いているのを感じる。

 

 アンチノミーの開花素材の最後の一つを求め進む足取りも軽く、不思議と雲海が晴れ渡っているように見えた……。

 

 

 

「やっぱ広範囲の雲を晴らすなら【風ヲ凪ギ、嵐ヲ払ウ】が一番コスパええな」

*1
「ちょっと借りてくね」くらいのノリ

*2
全教科を平均した場合、楽郎のサポートを受けた瑠美ちゃんと同水準。得意不得意で差があるタイプ

*3
( ᷄ᾥ ᷅ )





秋津茜確定演出です。
筆者はスポーツマンなのでね、フェアプレー精神を遵守しているのよ。

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
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