シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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こっち更新したのいつぶりだろうか。
俺はほら、未来しか見てないから




15 前哨戦第三幕中 VS『修羅』

 そのアバターを一目見た瞬間から「キッショ、趣味合わないわ」と思ったし、そもそも性別を自由に選べるゲームにおいて何故わざわざゴリゴリ体型の男に編集(エディット)するのか理解に苦しむ。

 

 天地律(うんえい)に悲しい過去でもあるのかハードとIPアドレスといったプレイ環境を一新しようとも別アカウントを作成できないシャンフロにおいて、何十時間と付き合うことになる自らの分身(アバター)はプレイヤーの男女を問わず見栄えのいい女性にすべきだと私は思っているし、よしんば男にするとしても国内産有名RPGのような線が細く清潔感のある若者デザインにして自己投影する方が健全ではないだろうか。

 

 わざわざ年齢高めでゴツくてバタ臭い造形にする人間の気が知れない。多様性だかなんだか知らないが、二次元の女の子をわざわざブスに仕立てるような人種共々死ねばいい。

 

 外見至上主義(ルッキズム)、上等。

 自由に見た目を変えられるゲーム上なら『自分をどう見せたいか』という人間性がなおのこと顕れるものだろう。

 

 

「総員密集ッ! 隙間を作るな!! ()が来る前に壁を作れッ」

 

 

 行動不能に陥った私に代わり、もよちちゃんが防御陣形形成を指揮している。

 

 ……熱を失った身体(アバター)がだるく重い、寒さで歯が噛み合わない。へたり込んだ状態から上体を起こすのさえもしんどい。

 

 カウンター魔法『門魔法・熱血門(テルモピュライ)

 

 自らの熱量(ステータス)を代償とする奥の手であるそれは圧倒的大質量による滅びの回避に成功し、レベル50分のステータス消費とかつてない虚脱感を私にもたらしていた。

 

 相応の威力と規模のカウンター、津波のような炎の壁をアレはどう対処したのか。……少なくとも、まだ底が見えていないことだけは確かだった。

 

 隕鉄の杖を左手に、虎マスクが急接近してくる。すり鉢状のクレーターを降りるというよりは落ちるという形で、楽しげな様子で爆心地へかけて来る。

 

「【継続詠唱(コンティニアムスペル)】【火の雨】」

 

 魔法の効果・持続時間を延長する補助魔法に続いて、文字通り一帯に火の雨を降らせるユニーク魔法(スペル)を私たちの中心を指定し発動してきた。

 

(せん)の時代において(おびただ)しい自然の“開拓”に用いられていた』とフレーバーテキストに記載されているそれを、ある純魔法職のプレイヤーがニーネスヒルの王城へ向け()()()()打ってしまい、その際に民家まで延焼しプレイヤー・NPC共に多数の死者を出すという大事()があった。

 

 その愉快犯たるプレイヤーは王認勇士アルブレヒトをガチギレさせるという実績を解除すると共に程なく誅滅され、およそプレイヤーに弁済不可能な*1ペナルティを課されると共に【最大罪業】の称号を長らく保持していた。*2

 

 …………その記録を塗り替えた“泣き真似が上手な彼女”は本当になんなのかしら。

 

 当然そんなことをしでかした開拓者(プレイヤー)からは件のユニークスペルは剥奪され……次に手にしたのが、眼前に迫るあの男だ。

 

 どうもリョーザン・パークの雷牙ちゃんはその大事件を好機(チャンス)と見なしたのか少し遅れて電撃的な国盗りを決行……押っ取り刀で駆けつけたアルブレヒトを、あの男が“神槍”と“ゴリラ”を含む精鋭パーティで捕縛していた間にフォルティアンを完全制圧した。

 

 その後王国は梁山泊への正式なフォルティアン割譲と引き換えに、幸か不幸か王都復興を行ってなおもあまりあるマーニを『税の先納』という形で手にした。……一方で虜囚となったアルブレヒトの身柄の引渡しについては、あの男と雷牙ちゃんの2人が『もうウチの子だもん』と揃って拒否したため大いにモメたらしい。

 

 最終的にはアルブレヒト本人が『どうか王都に帰して貰えませんか?』と頼み込んだこと、そしてそれをアルブレヒトとの撮影会(有償)*3に参加していたことで耳にした厄介ファンとの衝突を避けるために妥協を重ね…………結果、ユニークスペル【火の雨】との引き換えになったのだという。

 

 ……前置きが長くなったけど、そんな王都を傾けかけたスペルを純魔の倍近い火力を出せるあの男が用いた場合どうなるのか? 

 

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ”!? 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……!」

「二列目ェ! 盾を上に向け……ヒイィィィ!? 耐久がゴリゴリ減ってる……!!」

 

 

 想像にかたくない、きっと国が滅び()()だろう。

 

 あの男へのメタ装備で身を固めたメンバーであるため火属性の魔法では速やかに死には至らないが、それでも急いで攻撃範囲外へ退避しなければ全滅は避けら

 

「【瞬間転移(アポート)】」

 

 左手に深紅の円盾を装備し傘代わりとしているあの男が、防御陣形から見捨て()()()私の目の前に現れた。

 指揮系統の破壊、対多数における基本を当然に実行しにきたのだろう。

 

 既に戦力外である私に向かってきたのは幸運だ、わずかながらも時間が────

 

「……………………え?」

 

 

 浮遊感。大穴を俯瞰……そして、落下による僅かな衝撃。

 

 

退()()させた!?)

 

 クレーターの上の平地へ……滅びの雨の範囲外まで、左手で掴まれ放り投げられたことを遅れて把握した。だが、放置しておけば死ぬ相手を……理解できない。

 

 地を這って穴の下を覗き込むと、そこでは蹂躙が行われていた。

 

 火の雨に気を取られ混乱している14人の中に迷わず素手で飛び込んだアレは、集団を()避けにしつつ私以外の惹き付け(ヘイト)担当……ウパシチリちゃんともよちちゃんを真っ先にキルした。執拗に、丁寧に、殴られ蹴られ殺された。

 

「『ぼうふうちゅういほう』」

 

 直後にスキルかスペルか判別できないが、アレを中心に暴風が逆巻き、雨を煽り赤い竜巻が生じる。……もはや目も当てられない。死ぬか、殺されるか、あの子たちには選ぶ権利も与えられなかった。

 

 雨と竜巻が収まり視界が晴れる……同士討ちをさせられたのであろう3人を、かろうじて生還していた足元の数名へ向け打ち捨てとどめを刺した。誰かが意地を見せたのかアレの右脇腹にダメージエフェクトが生じている……その一箇所を除き、有効打は認められなかった。

 

「連中が腹を決めるんがもーちょい早かったら、ワンチャンあったかもしれんの」

 

 それは私に向けられた言葉だった。

 

 淀みなく、重量感のある歩を進め登ってくる。

 

「────まず、ワイちゃんがどーやって、最初の反撃を凌いだのか教えたる。……まー、単純に【セルフ・バーニング】を使(つこ)ーて火属性ダメージを無効化しつつ、【衝撃減衰(ショックアブソーバー)】で衝撃をいなすことに集中した」

 

 聞いてもいないことを、通りのいい声で。

 

「【セルフ・バーニング】の使用にはアホほど高い火属性適性が必要での……ぶっちゃけこれ使えるんやったら『そもそも火属性無効要らないよね?』ってなるくらい。何とか生き延びたものの効果は切れたもんでなー、それで火の雨による最低保証ダメを無視出来んくなって……傘が()()()()必要になったワケ」

 

 登り切った穴の底を一瞥した後しゃがみこんで、地面に這いつくばっている私の顔を覗き込んで来た。

 

「以上、ワイちゃんがやったことでした。いやー、実際死ぬかと思ったわ。うん、うん」

 

 なんとも無邪気に、楽しげな様子のまま

 

「じゃ、立って」

 

 それはゾッとするほど普段と変わらぬ調子で告げられる。

 

 ただ一点、その目の色だけが違う。

 

 青黒い、昏い星空のような。

 

 この男が時折彼女────聖女イリステラへと向けている、根源的恐怖を呼び起こすおぞましいものに変容している。

 

 

 

「さもないと、あの聖女を殺す」

 

 

 

 逃げることはできない。

 

*1
上位存在の怒りを感じさせる

*2
オリジナル設定。あのゲームこういう事するやつ居る。

*3
「カネ取るって言うのですかな!? クソッタレ!」





虎はいい子だよ、でもいい子なだけじゃないよ。

“ゴリラ”:一体何ラ何ラなんだ……

アルブレヒト撮影会:後日、女性アバタープレイヤー多数と虎一頭の急死・変死が目撃される。原因は不明。

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