シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

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ジッタンバッタン…(章管理が下手くそすぎて悶えている)

玲ちゃんの出番はありません。


11 前哨戦 VS京極 『陽務くんの外出をずっと見てたぞ、本当にすごく楽しそうだったな?』

楽郎:親愛なる妹へ

楽郎:お兄ちゃんは今フレッシュミートをバーベキューでゴチになっているよ

 

写真を送信しました。

 

瑠美:死ね

 

写真を送信しました。

 

楽郎:この味をお届け出来ないなんてなぁ……

瑠美:殺す

 

写真を送信しました。

 

 

 焼肉のタレ金色の味、塩レモン、熱したオリーブオイルに塩コショウを混ぜたもの――三種のタレで、新鮮な鹿のロース肉に舌鼓を打つ。

 

 分厚い鉄のスキレットによって高温でサッと焼いて旨味を閉じ込めたそれらは脂が少ないにも関わらずジューシーで、普段口にしている豚や牛とは一線を画す赤身の旨みが感じられる。

 

 ……これぞ肉という味覚と食感に、ここしばらく魚続きだったせいか思わず涙が出た。いやあ、持つべきものはハンターが親の友達だねぇ。

 

「ラクちゃん、ルミちゃんも今から来るって言ってるわよん」

「げっ……有言実行かよ」

「仲がいいのは結構だけど、妹にはもっと優しくしなきゃねん? それはそうと、モモ肉のローストベニソン出来上がったわよん」

「ください」

 

 瑠美からのメッセージを受信したらしいトラちゃんのおばあさんから、断面がピンク色の肉をよそってもらう。

 

「――――めちゃくちゃ美味いっス……」

「ヒロちゃんも好きなのよん、これ」

 

 薄切りにされたそのローストビー……じゃなくて、ローストベニソンときたら最高だった。しっとりとした食感はつきたての餅やモッツァレラチーズのようで、内に閉じ込められた旨味が噛むほどに溢れてくる。

 

 ……かなり昔に親戚の集まりで口にした鹿肉は水気が抜けてパサパサしており、スーパーの安い牛肉のようでなかなか減らなかったのを今でも思い出す。この味を知ってしまった以上は、あれを同じものと認めるのは度台無理な話だ。

 

「コハちゃんが新鮮なお肉を捕ってきてくれるから、作りがいがあるわん」

「へ、へぇ……昔食ったやつはもっと血の味がキツかったんですけど、やっぱハンターの腕の差なんですかね?」

「詳しくは知らないけれど、ストレスを感じさせないことと迅速で丁寧な後処理が大事らしいわねん」

 

 今この場にいない”ガンバー”……改め、トラちゃんのお母さんである虎珀(こはく)さんはリアルでも優秀な猟師(ハンター)であるらしい。鹿肉の細かい解体と掃除を済ませ着替えた後、何かの用事でまた出かけている。

 

 鯖癌においてγ(ガンマ)出身であった彼女はあらゆるサーバーを渡り歩き、その先々で華麗な歌声を披露しては邪魔な雑音(そんざい)全てに風穴を空け……聴衆(てき)が居なくなれば、場所を変え同じことを繰り返し島における音という概念を独占するという尋常でないプレイスタイルだった。

 

 夢の国プリンセスミュージカルをデスゲームに昇華させたような存在*1なあの人は、いつしか”沈黙”と称されサーバーの垣根なく畏れられていた。

 

 息子(ヒロト)いわく、『他人に歌を否応なしに聞かせるのが好きという困った性癖の射撃マニア』……だとか。

 

 マスケット銃で曲射して遮蔽(ハイド)を無意味にするわ、ジャングルに潜伏するプレイヤーを跳弾でヘッドショットするわ、「あの……木々の枝の隙間を縫って脳天に矢が刺さったんスけど……チートっスよねこれ?」などと射撃分野においてやりたい放題の技量で、特に遠距離戦ではあのアトバードでさえも不利を認める*2程だった。

 

 後にリアルで鯖癌出身者として対面した際に元射撃金メダリストであることを知ったが特に驚きも無く、むしろそのくらいであって欲しいかったと安堵するレベルだった。……だからって出来るようなことなのかは知らないが。

 

「ごちそうさまでした。……じゃあおばあさん、瑠美の奴が来る前に部屋入るね?」

「ええ、ゆっくりしていってねん」

「…………ニャオ」

「お、茶々丸。お前も来るか……って無視かーい」

 

 昼寝から目を覚ましたらしい太々(ふてぶて)しい顔つきのキジトラ猫と入れ替わる形で庭先から家に上がり、冷蔵庫に入れておいたライオットブラッドを取り出してから2階にあるゲーム部屋その1へと向かう。

 完全同居型の二世帯住宅ということで広い家だが、我が家の次に勝手を知っているため特に迷うことはない。

 

『入らないでプリーズ』という看板が提げられた虎斗の部屋を通り過ぎ、目当ての部屋の鍵を開けて入る。ペットの侵入防止のために内外から鍵の開閉が出来るようになっているらしい。

 

「……相変わらず究極のゲーマー部屋だよなぁ。春休みになったらまた何日か泊めてもらお」

 

 壁一面に世代ごとのゲームソフトが棚に収まり、それらをプレイするためのハードもモニターと併せて設置された光景はこの部屋の主であるおじいさんの几帳面さそのもののように整列していた。

 

 さながら博物館であり、仮にプレイできずとも歴史の流れと共に実物の大半が消失したそれらを、実際に手に取れるだけで閲覧料が取れる気さえする。

 

()()()なんて忘れてプレイしてぇなぁ……————と、カッツォか」

 

 まるで俺の心中を察したかのようなタイミングで、カッツォからメールが飛んできた。

 

 えーと……「もうはじまりそうだよ^^」

 ……マジか、気付くのはまだ後だと思ってたが……第一段階の賭けはカッツォの一人勝ちっぽいな、クソ。

 

 とりあえずスマホでペンシルゴンから送られてきた生配信のURLを開き、虎斗から借りたタブレットPCでネット会議アプリを起動する。……あらかじめ作成してあったルームには、既に”鉛筆”と”鰹”の二名が着席済みだった。

 

『遅いよサンラクくぅ~ん?』

『ウィ~~wwwww』

「早すぎだろ、まだ昼前だぞ。……つか、そのテンションなに?」

『いやぁキミたちが彼のことぜんぜん分かってないっぽくて、これは俺の一人勝ちかなって』

『まだ一つ目でしょォ!?』

「まぁ待て。俺はあいつのリア友だぞ? そんな俺が予想を外す辺り、おそらく鉛筆の()()()とやらがお粗末なのだと思われるが……」

『それは一理あるね』

『いやぁ、お姉さんは文明人だからねぇ。君達と違ってフルコンタクト野蛮人の思考が読めないというのは確かに否めないかなぁ』

「蛮族の女王がぬかしおる」

 

 いつものバカ二人の声が低品質の内臓スピーカーから響く。

 今回俺とカッツォは、鉛筆からの頼みで、神ゲーと名高いシャングリラ・フロンティアの生配信を観ることになった。

 梁山泊とかいうゲーム内のプレイヤーギルドだかクランだかが主催する、PvPイベントの配信であるそれは()公式配信として扱われていて、その最初のエキシビジョンマッチに鉛筆——アーサー・ペンシルゴンは出演するらしい。

 

 その対戦相手は俺の幼馴染であり、シャンフロ内で御大層にも無敗のチャンピオンともてはやされているトラちゃん——虎人であった。

 

『チッ、今は無駄話してる暇は無いね……二人とも、配信は観れてる?』

「ああ、シャンフロの配信なんて初めてだから何もわかんねぇけど。てか虎人は?」

『あ、出てきた。……うわ、いつ見ても男臭いアバター。こっちの帯刀してる和装の子が、キョ……なんだっけ?』

(キョウ)ティメット」

『それ二文字しか略せてないよね? キョウゴクちゃんでいいでしょ』

【キョウゴクじゃない、キョウ・アルティメットだッッッ!!!!】

『長くて呼びづらいね、キョウゴクちゃん』

 

 タイミングよく京(なにがし)がゲーム内カメラを回しているらしいプレイヤーにツッコミを入れた。

 

 ビジュアルだけで言えば虎人と比較して善玉(ベビー)寄りなその女剣客が初戦の相手らしいが……

 

「で、この京ティメがトラちゃんの相手なんだよな。率直に聞くが、()()()のか?」

 

 強いのか、とは聞かない。ましてや勝てるのか、とも聞かない。

 俺とカッツォは、これからトラちゃんが強いられる()()の相手が皆、強いが勝てないという前提でこの場に呼ばれている。

 

 音声のみの通話だから顔は見えないが、きっと渋い顔をしているのであろう鉛筆は答えた。

 

『やれなければ他にやれそうな子は知り合いに二人しかいないかなぁ。一人は今回完全に向こうの味方だから打診すら出来なかったし、もう一人は連絡したけど返ってこないし……まあ、確実にやれる方だから、やって貰わないと本当に困るというのが正直なところだね』

 

 とりあえずかなり強い方ではあるんだな。

 

 ……なんか覚えがあると思ったら、あれだ。『幕末』で”レイドボス”討伐のチーミングに”勇者”を巻き込むのに失敗した時の感覚だ。

 

「当ててやろうか? 京ティメ、協調性無いだろ」

『だろうね。そうでなきゃ適当な肉壁か、ある程度使えるプレイヤーと一緒にあてがう方が良いでしょ』

『……正解。ホントは別のタイミングでぶつけたかったんだけど、最初(サラ)最後(トリ)のタイマン以外は認めないって……』

 

 つまり鉛筆の苦手なタイプということだった。

 

『だからまぁ、阿修羅会(ウチ)では一番虎人くんと仲良しだから、呼び出し含め一番手になったわけ』

『ふぅん……ちなみにさ、鉛筆はタイガーとどのくらい仲良いの?』

『彼、たぶんゲイだよ。愚弟とも仲良いし』

『京極って人は女の子だよね?』

「手玉に取れなかったんですね、わかります」

 

 美人を鼻にかけて『相手にされて当然』という態度で言い寄ってくる女は基本的に嫌いなんだよアイツ。鉛筆は言動からそういうとこが滲んでるし、第一印象は悪かったはずだ。

 その上でフレンド登録されている辺り上手くやれている方だろう、SNSで生理的に無理な異性を割と容赦なくブロックする奴だし。

 

 NGワードにまで登録されてるらしい『ヒイラギ』とかいう誰かは何をやらかしたんだろうな。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 シャンフロにおいて通常、修行僧(モンク)派生職以外の徒手格闘はリスクに対し()()()()()()行動だ。

 反動ダメージの存在、間合い(リーチ)が短い、防御手段に乏しい、そもそも単発火力が出ないなど枚挙に遑がない。

 

 逆にメリットを挙げると素手による攻撃のスタミナ消費はあらゆる攻撃行動の中で最小であること、そして武器分の重量が無いことからスタミナ回復速度は速い……が、実戦闘においてはそのリーチの無さを埋める各種移動行動にスタミナを消費しがちであり、あってないようなものだ。他の武器と比較して絶対的な優位はモーションが最速であること、そして掴みモーションへ即座に移行できる2点だけだ。

 

 多くの近接プレイヤーが一度はその分野に手を伸ばすが、大半は武器を用いる方が遥かに()であることを理解し早々に見切りを付ける。

 

 より軽く斬れる方が、より長く鋭い方が、より重く硬い武器を振るう方が合理的であることを、誰もが当然に気付くのだ。

 

 

 ……だが、それでも。

 

 

 ただ一人のプレイヤーの存在が、あらゆる武器の源たる(それ)への関心を、興味を、憧れを、捨て去ることを許さない。

 

 この世界(シャンフロ)における最強の覇者(オトコ)は魔法使いを出自(ルーツ)とする魔法職でありながら、素手のデメリットの大半をあらゆる手段と技量で無にし『近接最強』の呼び名を欲しいままとしている。

 

(笑っちゃうよね、ガチ近接のPL()らを差し置いてさ?)

 

 数世代前の流行が一周してきたかのように、虎覆面のレスラーじみた巨漢アバターが目の前に立っている。

 

 左腕には希少金属とドラゴン素材でユニーク派生された『竜狩りの篭手』、腰にはコロシアムにて認められた統一王者にのみ与えられる『英雄(チャンピオン)ベルト』、それら以外は布装備で固めた超軽装。

 魔力・筋力・敏捷に偏重し、それ以外のステータスは必要最小限で、体力に至っては初期値というピーキーな構成(ビルド)は、まともに攻撃を受ければそれだけで瀕死か即死する。

 

 ゲーム開始直後の初心者ですらレベルシンクやダメージシンク無しで打倒し得る紙装甲だが、ログイン・アウト直後のタイミングを狙って寝首を掻く以外の手段でPKをなし得たプレイヤーは現状居ない。

 何故か? それがわかってどうにかなっていれば、彼は出禁なんて受けずに今も楽しくコロシアム(PvP)を満喫している。

 

 ありとあらゆる机上論(たいさく)を無為に伏して勝利を重ね、不敗神話が崩れる前に舞台から退場させられたのが彼なのだ。

 

「……はやく、その暑苦しい虎柄マント脱ぎなよ。邪魔くさいったらない」

「あ? 前座相手にそうもいかんわ」

「まだ言うか……!」

 

 名高い”刻傷”が刻まれた右半身を隠すマントは、まだ羽織られたままだ。

 彼がそれを脱ぐという行為は、覇者の対戦相手に相応しいことを主に観客(NPC)へ示すものとして浸透している。

 

 安っぽい盤外戦術(ちょうはつ)か、それとも場を盛り上げる演出なのかははっきりしないが……侮られているということは紛れもない事実だった。

 

 仕方がないから相手をしてやる、そんな態度に腸が煮えくり返るようだ。

 

「コロシアムやないから楽隊もおらんし銅羅も無い……面倒やし、お前(じぶん)が抜くか、なんかやったら初めでええやろ。レディ・ファーストや、先手はくれたる」

「吠え面かかせてやる……ッ!」

「すまんの、聞き飽きとる」

 

 ……開始位置の取り決めすら無く、左半身の猫足立ちでその場から動かない。本当に僕が抜いた瞬間を開始とするつもりらしい。

 

 目の前の虎マスクは闘いにおいて人の心が読める――——わけではない。

 相手の構えや間合い、呼吸や視線、それまでの行動などの情報を足し引きした上で、相手の『見てから対応できる行動』と『無視できる行動』を思考から排して瞬時の判断が可能な状態を維持し続ける……僕と同じタイプだ。

 

 相違点は、彼はどこまでも格闘家であるということ。

 瞬きの間に交差する一太刀で決着がつく剣士のフィールドに立つ僕に対し、彼は一撃必殺を至上命題としつつも()()()()()()()

 

 優劣ではなくそのメンタリティの違いから、瞬間風速においては僕の方が上だ。

 

 故に初手は最高最速の斬撃を選択した。

 

 刀の間合い。

 

 半歩ではこちらの斬撃をかわし切れない、向こうの蹴りがわずかに胴に届かない距離を取り、腰を落とし構える。

 

 オーソドックスな居合の構え、そこから龍宮院流(ぼくじしん)のものへと変えていく。腰の高さ、脚の開き、刀の角度、重心の位置……ありとあらゆる要素を微調整する。

 

 抜刀術の基本は引き算だ。

 十から1、0.5、0.1と引いていき極限まで無駄を削り、最小の動作で最高速を発揮する……非戦闘体制から即座に攻撃を行う奇襲の技術だ。

 

 

「シャッ」

 

 

 骨身に染みた呼吸法と共に抜刀、一閃。

 それら一連の動作にかかるタイムは、およそ0.2秒。リアルにおける多数の流派、それらの一般的なものよりも速い。

 

 リアルの模造刀で培った技術をゲーム内に落とし込んだ、その上でMobやプレイヤーを相手に繰り返した感覚的な秒数ではあるが、おそらくその程度だと思う。

 

 さておき、大仰に構えを整えた結果————一連の動作の感覚は、理想通りだ。

 

 馬鹿正直にも本当に僕が抜くまで動かなかった彼の胴体を

 

 

 

 抵抗 金属の感覚

 

 

 

 けたたましい金属音が遅れて耳に届く。

 

 防がれた。最高速に到達する前に、薄い刀の真芯を、左拳で正確に打ち抜かれた。

 

(止まるな、迷うな、距離を取れ、間合いを維持しろ――――ッッッ)

 

 パリィスキルではない……圧倒的なアバターの重量と、筋力(STR)ステータスの差によって体制が左後方へと流れるのに身をゆだねる。そうしなければ刀が手から離れ、追撃への対処が不可能になる。

 

 何をされたのかはわかった、その上で信じがたい。

 

(あらかじめ動いていたわけじゃない……見てから、拳を合わせた)

 

 

 京極(キョウ・アルティメット)の見立て通り、虎人は抜刀の瞬間まで確かに動かなかった。

 人間の反応速度は一般人の平均が約0.2~0.25秒、プロゲーマーを含むアスリートの平均が約0.1~0.15秒というのが現代医学における定説である。

 また例外ではあるが、全米一位と名高いプロゲーマーのシルヴィア・ゴールドバーグが、アメリカ本国においてヤラセ企画で有名なTV番組において真偽不確かながら平均0.05秒という驚異的な数値を叩き出したことも知られている。

 

 また、プロボクサーのパンチの速度は個人の能力やパンチの種類・距離等により様々ではあるが、一般的に時速30~50㎞程度とされている。中近距離(ミドルレンジ)であれば約0.13秒、至近距離(クロスレンジ)においては約0.10秒が対戦相手への到達秒数の目安となる。

 初撃に虎人が放った拳は打ち下ろし気味の左ストレート。遅くとも0.15弱秒で目標に到達する速度であった。

 

 ……さて、彼の反応速度がアスリートの平均を大きく上回る――――米国トッププロゲーマーと同水準であるのなら。

 

 果たして、達人の抜刀術に拳を合わせることは可能であるのか?

 

「……そら、ティーアスちゃんには及ばんわな」

 

 

 ――――可能である。

 

 

(ヒロくんはこのタイミングでは魔法(スペル)を――)

「しゃあっ」

「選ばないよねっ……!」

 

 崩れた体勢でたたらを踏むように距離を取ろうとするが、万全の体勢で敏捷(AGI)においても勝っている彼がそれを許すわけがない。

 

 酔っ払いのような太刀筋で接近を阻もうとするが、速度を緩めさせるだけで足止めは叶わない。

 中段への前蹴りを、全身を捻じるような苦し紛れの跳躍でかろうじて直撃を避ける。蹴りが腰を掠め、バランスを大きく崩された。

 

「グゥッ……」

 

 着地に失敗し、うつ伏せに落下する。

 ……文字通り踊らされている屈辱を噛み締め動こうとしたが、間に合わなかった。

 

「そのまま寝ていろ」

 

 左腕を取られ、片手と片脚で動きを抑え込まれる。

 

(斎賀流護身術……!? いや違うッ)

 

 おそらくは一般的な合気道の技術。テコの原理で動きを封じられ、身体を揺すった程度ではビクともしない。このままでは死ぬ、故に――

 

「シィ……ッ!」

「っ!」

 

 関節可動域の限界超えによる自傷ダメージを承知の上で、右手の刀を振るって拘束を解く。

 

 シャンフロに痛覚は実装されていない。そのためリアルでは痛みによる反射で実行出来ない反撃も出来る。

 

(悪あがきの繰り返しだ、お爺様に見せられないような闘いをさせてくれるね……!?)

 

 ……ヒロくんには『確定食いしばり』効果のユニークアクセサリーがあるため、仮に攻撃が1回命中したところで殺し切ることは出来ず、『魔修羅』の補正により平均的な威力が片手武器のそれに等しい格闘攻撃の連打によりこちらがキルされる。

 

 平時であれば。

 

「……食いしばりを温存しようだなんて、マジで舐めてるね」

「それがペンシルゴンの狙いやろ。やらせんわ、全霊の虎人くんをコロシアムにお届けしたる」

 

 今の彼には()が控えている。アクセサリーによる食いしばりには最低でも1時間、恐らくは2時間以上のクールタイムが存在するはずであり、まだその択は切りたくないだろうと踏んでの反攻だった。

 

(絶対に後悔させてやる……!)

 

 間合いが開き、仕切り直しとなる。

 睨み合いながら刀を両手で構え――――違和感。

 

「まさかタダで離してやったとでも?」

 

 シャンフロに痛覚は実装されていない。

 

 痛みによる差し障りがないことは幸いだが、目視しなければ正しい状態が把握できないというのは不便に感じた。

 

 

 刀の持ち手……左手の小指と薬指が折れている。

 

 

 指の感覚はあり動きもするが、実際の挙動が一致しない。はっきり言って邪魔になる……欠損よりも、悪い。

 感覚を研ぎ澄まして相手と斬り結ぶ僕に対し、この上なく有効な一手だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

『あの……完全に乗せられてるんスけど……いいんスか、これ』

「煽りはルール無用だろ」

『あんなあからさまなのに引っかかるかな普通!?』

 

*1
ルール:黙って聴け、でなければ殺す

*2
戦闘を避けるとは言っていない。




サイガ―?「アンケート、まだ逆転できます」

虎人くんの嫌いな女の子はヒイラギ(殿堂入り)とディープスローター。仮に彼女らのリアル外見が百ちゃん(ドストライク)であっても絶対にチェンジする、なんなら試合放棄(引越し)だってします。

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
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