シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない   作:嘉神すくすく

7 / 36
例によって後日後書きやら追記します。

章管理やお話並べ方など、「こうしたら読みやすい、追いやすい」というものがあればコメントで教えていただけるとありがたいです。


7 VS超越速、ティーアス 決着編 『殺人許可証って顔写真とか要る?』

 現地の観客たちの目には結果だけが残った。

 

 配信映像を見ていた視聴者には瞬きの攻防の軌跡が映った。

 

 その瞬間を三分の一倍速で見ていたある配信者は奇跡に(まみ)え、聡明の対価として誰よりも早く世界に広めた。

 

 五回、斬られたと。

 

 右前腕を一回、右上腕を一回、右脇腹を一回、左前腕を二回。

 

 ティーアスが右から来ることを虎人は読み切っていた。

 対面して話すまで知らなかった彼女の年相応な負けん気を根拠とした、『負けたままではいられまい』という予想。そして虎人本人でも言語化が難しい、第六感とでも言うべき感覚によって。

 

 その感覚の中で最も確かなのは肌に相手の視線が刺さるというもの。それ以外にも相手の思考が匂う時があれば、危機的予感が無臭でありながら女の汗のように脳髄を刺激するなど多種多様で一言にこれとは言い表せない。

 それらを他のゲームで感じる場面は非常に限定的で、現実(リアル)以外ではこのゲームでのみ確かに感じられた。

 

 ただ一人を除いて理解されなかった、虎人にとっては(あき)らかなもの。

 龍宮院富嶽という、老齢の剣豪のみが彼の理解者足りえた。

 

 彼が放ったのは右拳。

 

 最短のモーションで最速の、角度とタイミングを重視した()()()()ような右ストレート。

 

 それは確かにティーアスを捉えていた。

 確かな軌道だった、回避が及ばぬタイミングであった。

 

 尋常であるならば。

 

 彼女はこの世界の秩序の代行者であり、罰であり、尋常ならざる者である。

 絶対無比の速度とそれに随する視界をもって半分、そして残る半分を剣による切り払いにて、頬を掠めるかどうかの直前でかわしきった。

 そのまま右上腕を右逆袈裟に切り飛ばし、右腕が無くなり()()()空間へと踏み込まんとする

 

 拳を放つ動き(モーション)の起こりが見て取れなかった。

 捉えられていた、姿ではなく自身の認識を。

 身体が動いたのは、目前に迫る拳が見えてからだった。

 

 正面から虚を()かれる。

 それは至近距離で高速のパンチが行き交うことが日常なボクサーの虎人には馴染みあるものであったが、彼女にとっては初めてのものだった。

 

 紛れも無く本命。

 避けたはずの本人が直撃を錯覚した、真に迫る一突きだった。

 だから、だからこそ

 

 

 

 左のショートフックが、ティーアスの視界と意識の外から側頭部に突き刺さった。

 

 

 

 あまりの体格差から打ち下ろし気味に繰り出された、それは次善の手ですらなかった。

 

 ”守、無頼”の効果による操作感の修正により生じた無思考(そうさ)かつ無意識の手。

 虎人ではなく周布虎斗が、何万回、何十万回と繰り返してきた特別でもなんでもないありふれた組み合わせ(ワン・ツー)

 

 血肉に等しい当然の基本動作が、この世界(シャンフロ)の究極たる一つを打ち抜いた。

 

「ーーっ、ーー、ーーッ」

 

 それら三度の剣閃は、きっと打たれる前に脳(あるいはサーバー)から発せられていた命令だったのだろう。

 

 斜めになった体制のまま右脇腹を深々と割き、地面とほぼ平行の体制で左前腕をガントレットごと切り飛ばし、ついでティーアスの小さな身体がゴムボールのようにバウンドする。

 

 だが、虎人はそこで止まらない、止まるわけにはいかない。

 

 幸運(LUC)とスキルによる『食いしばり』が無くなった今、次に何か当てられれば虎人の敗北(デス)が確定する。

 再び動かれる前に、ティーアスを無力化しなければならない。

 

「ーーーー!? 〜〜〜〜っ?」

 

 何をされたのかも分からぬまま、ティーアスは宙を浮いている。

 

 ダメージは軽微、意識の混濁もない、ただ困惑だけがあった。

 地面がない、星が広がっている、突如として夜空に放り出された気分だった。

 

 あるいはそれが無ければ、彼女が勝利していたかもしれない。

 

「シャっ!!!!」

「ッ!」

 

 落ちてくるティーアスの身体を全身で包み込むように受け、首を左上腕で捕え、細い両腕を巻き込む形で胴に両脚を回し固定する。

 

 ネイキッド・チョーク、あるいは裸絞めと呼ばれる絞め技。

 だが形だけである。

 

 右腕がなく、左前腕も失った虎人ではティーアスを窒息に至らしめることは出来ない。

 

 あくまでも()()を密着させ、身動きを取れなくしているだけで何ら脅威にはならない……通常であれば。

 彼は、彼方の逸脱者の寵愛を受けている。

 

「――〜〜〜ッッッ!?!?!? ギッ、イっ……はな、し、離して……っ!」

 

 小さな身体を揺すり動かそうとするが、微動だにしない。

 

 もはや虎人はまともな攻撃はおろか、システムに攻撃と判断される動作を何一つとしてさせる訳にはいかなかった。頭突きや噛みつきどころか指先で突かれるだけでも死にかねない。

 

 ……シャングリラ・フロンティアのサービス開始から約4ヶ月弱が経過したある日、『聖女ちゃん気絶騒動』と呼ばれる事件が起きた。

 

『刻傷』という、リュカオーンやジークヴルムによる『呪い』の上位とされる状態異常を身体に刻んだ、第一回大月輪優勝プレイヤーが聖女イリステラに面会し助力を願った。

 

 曰く『一時的に無力化出来るらしいやん』と。他の女性NPC達とは異なり、刻傷を受けた彼の姿を見ても特に怯えた様子を見せなかったイリステラは当然のように彼の手を取り、そうあれとした。

 

 だがそうはならなかった。注がれるマナを拒絶するように、見えざる者の力がイリステラを襲ったのだ。

 

 虎人はシャンフロの設定に明るいとは言えない。だがそれでも、『聖女ちゃんはめちゃくちゃすごいらしい』という程度の認識はあった。

 過去に一度ケンカを売ろうとして未遂に終わったこともあったが、それはまた別のお話。

 

 つまりーー

 

「お前がどんだけスゲェのか納得させてみろォッ!!」

 

 現状、それに抗える女性NPCは存在しないということになる。

 

「やだ……やだ……! もど、もどりたく……いや……」

 

 イリステラはそれを、本人の最悪の可能性を体験させるものだと言った。

 

(だがそれにしては、目を覚ました聖女ちゃんは涙を流して()()()()()……。何にしても、それ以降誰かに試したことも無いからよく分かっとらんのやけど……)

 

 ティーアスは明確に怯えていた、虎人以外の何か……最悪の可能性とやらに。

 

「あ……う……」

「いやアカンこれヤバイ!!」

 

 命に届くという予感、それがした瞬間に虎人は拘束を解いて離れた。

 

 無力化が出来たかは定かでは無い。

 たかがNPC、所詮はデータでしか無いと理屈ではわかっている。

 

(でも無理! シンプルいや!)

 

 勝敗云々ではない、理由などは無い。

 ただそれはダメだと己が言っている。

 

「おい止めんの遅ェぞ!! 何をやっーーあ?」

 

 世界が止まっていた。

 ……いや、周りの誰もが遅くなっていた。

 

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッ」

 

 

 理由は後回しにした。

 声にならない声を上げながら左腕の先端部……肘の辺りでインベントリを操作し、使えそうなアイテムを端から端まで全て取り出す。

 

 再誕の涙珠、ハイエストポーション、聖女の祈りし聖水、エトセトラエトセトラ

 

 果たしてこの戦いに、勝者はあるのか。

 

 

 


 

 

 

『覇者VS幼女ちゃん』を振り返る枠

ライガーch. Raiga_Shiden 

配信者:紫電ライガ ゲスト:”覇者”虎人

 

「というわけでね、どっかのおバカさんのせいで始ったシャンフロ緊急サーバーメンテが終わる気配がないのでね、今日は最後まで続けていきたいと思います」

「ぼくわるくないもん、あんな仕様にした制作側の落ち度だもん」

 

:#詫びチケよこせ虎人

 

:それはそう

 

バイバアル:いや使わせる側が悪い、幼女ちゃん無罪

 

:ログイン出来てなくて普通に困ってるのが俺なんだよね、ひどくない?

 

ビタミンX:1000JPE 兄貴の好きなケジメです

 

「ビタミンXさん、スパチャありがとうございます! 虎人くん、男見せてください」

お前たちのコメントをずっと見てたぞ、本当に好き放題言ってくれたな? ……ゲホゲホ」

 

:ゴールドタイガーたすかる

 

:めちゃくちゃ喉に負担かけてるwwww

 

佐渡ぽんぽこch.:ゴールドタイガーさんのおかげで夢だったタヌキ喫茶をシャンフロ内にオープン出来ました

 

:巨万の富を得た人おって草

 

「さてさて、次は今なお有志達による詳細確認が進んでいるティーアスちゃんの”超越速”の詳細を行きましょうか虎人くん! …………虎人くん?」

「ワンワンワン!」

「おーよしよし」

「コラァ!!」

「あーはいはい……リュウ、他の部屋行っててね」

「クゥーン……」

 

:飼い犬と遊んでるっぽくて草

 

:ワンちゃんに対する声が優しすぎてちょっと夢女子になる

 

:リュウくんかわいそう

 

:かわいそう

 

:なかないで

 

「なんでワンちゃん優勢なの? ここライガーチャンネルぞ?」

「気を取り直して”超越速”についてやけど、ワイちゃん元々あのスキルの存在とか知ってたんよ。情報の出所は伏せるけど、『自分の速度を五倍にして、相手の速度を五分の一にする』もんだと思っとった」

「前回の枠のおかげで詳細がわかりましたが、後半だけ違ったようです。映像で見るとわかりやすいですが……ほら、闘ってる二人に比べて周りのギャラリーだけでなく、雲や星の流れまで遅くなっています。ちなみに虎人くんはバフでどのくらいの速度になってたの?」

「ざっくり7倍前後。それでも向こうのが速すぎるんよ」

「こっちもこっちで大概だなぁ……まだ確定ではないですが、規模に関しては最低でもエリア全体、対象は幼女ちゃん以外の全て、それらの速度を五分の一程度にするようですね」

 

:細カイコトハ気ニスルナ

 

:ぶっ壊れすぎて草も生えない

 

:こんなんサーバーに負荷かかりまくりだわ

 

:タイガーマスクはこのスキル発動中の幼女ちゃんを拘束し続けとったんや、その時間……約7秒

 

:シャンフロ内時間で30~40秒じゃね?

 

:もっとやばいんだよなぁ……

 

:ユートピア社「ハーッ 虎人よ! 死ねっ」

 

:#虎人ケジメ案件

 

:男見せてください

 

「どいつもこいつもひどくない?」

「映像ではわかりませんが、現場にいた私たちがみんな気づいた時には決着がついていたんですよね。ティーアスちゃんが速すぎて実況も何もあったもんじゃない……」

 

:情報の出所についてkwsk

 

:映像で見るとティーアスちゃん五倍速でも現地民からした25倍差だもんな

 

バイバアル:マジで何があったのかわからないまま終わってたんだよな

 

:それに勝ったこの人おかしいよ……

 

:勝った側が五体不満足なのグロイ

 

「出所は吐かないって言ったろも。どうしても知りたきゃワイちゃんと闘って勝つんやな」

「覇者挑戦剣オークション、フォルティアン西端の”タイガー・コロッセオ”にて定期開催中、次回は三月一日夜を予定しております♪」

 

:それができたら苦労はしねぇ……!

 

:挑戦するだけで経験値とユニークアクセサリー手に入るのは良い……けど毎回高いんだよォ!

 

:勝ったら使ったマーニも戻ってくるぞ

 

:これにケンカで勝てますか……?

 

:イヤーキツイッス

 

:でも勝ったらタイガーマスクが隠してるユニークから聖女ちゃん謁見フリーパスまで思うがままなの夢がある……夢があるくない?

 

:人の夢と書いて儚い

 

:寝たふりした幼女ちゃんに慌てふためいてたの草生えた

 

「そうそう! 虎人くんったら幼女ちゃんが起きないからキルしたと勘違いしてたもんね! では試合後の様子をもう一度見てみましょう!」

「や! いや!! いや!!」

 

:や、じゃない!

 

:再上映助かる

 

『誰かぁ! 誰か大人の人呼んでええええ!!』

『虎人さん!? 落ち着いて!! 落ち着いてください!!』

『うるせぇ恋愛クソザコレジギガスッ!!!!』

『フンッッッッッ!!!!!』

『あっぶねぇ!? ……落ち着いた。ごめんね、サイガー0』

『次は許しませんよ』

 

:草

 

:直撃コースで笑う

 

:身内ネタなんだろうけどガチギレしてる黒狼の人すき

 

:レジギガスってなんなの?

 

:かなり昔の伝説のポケモン、ステータス高いけどスロースターターなのが特徴。VRリメイク頼むぞ

 

:この子が奥手ってことはわかった

 

『いや落ち着いとる場合やない! ティーアスちゃんが目ぇ覚まさんのや! 救急車呼んで!』

『えっ……眠ってるだけでは?』

『そうね、眠ってるだけ』

『いやいくら揺すってもポーションかけても起きな……エロ大根!?』

『イヤーッ!』

『トンファーキック!?』

 

:救急車なんてシャンフロにはないんだよなぁ

 

:ルティアさん来た! これで勝つる!

 

:なんだこのドスケベお姉さん!?

 

:エッッッッッ

 

:wwwwwwwwwwww

 

:www

 

:こんなん草生えるに決まっとるやん

 

:天丼は基本

 

:ワザマエなブリッジ回避……オヌシさてはソーカイヤのニンジャ

 

:アイエエエ!?

 

:というか童貞を〇すセーターとかきわどすぎて配信BANされない?

 

:ニンジャもいます

 

『うん、ふむ……よし、そう言えばええんやな、わかった! ……「ティーアスちゃん三日間食べ放題休暇、代金はワイ持ち」!!』

『…………約束だからね』

『ウワーッ! 生き返った……!?』

 

「まんまと嵌められてるの笑っちゃう」

「だってNPCの死にざまとか知らんし! ワイちゃん殺さんし殺させんし……!」

 

バイバアル:ヌッッッッッッッッッッ

 

:wwwwwwwwwwww

 

:したり顔(?)幼女ちゃんすき

 

:俺もルティアさんに耳元でささやかれたい

 

:この子めちゃくちゃ食うみたいだけから三日間でどれくらいかかったのか今度公開してほしい

 

:なんにせよ勝ったよ、やったね虎人ちゃん!

 

:手に入ったの名誉だけなのに支出の方がデカそう、復活アイテムとかバカ高いもの無駄にしてたし、装備一つロストしてるし

 

「おいやめろ。……あ、それはそうと、勝利者報酬が無かったわけでもないんよ。帰り際に幼女ちゃんから渡されたものがある」

「へぇ? 何をもらったの?」

「殺人許可証」

「なんて?」

「マーダーライセンス」

 

:えっ

 

:なんて?

 

:なにっ

 

:さつ……ごめんなんて?

 

:サツバツ!

 

:アカンやつ?

 

「なんかそれ持ってると開拓者……プレイヤーなら殺してもカルマ値上がらんくなるのと、ワイちゃんを殺したやつのカルマ値も上がらんらしい。賞金狩人の外注的なアレらしくて、ロクでもないやつを選んで必要に応じて殺せってよ」

「えぇ……」

「これでフィールドでもケンカし放題やね? ……とはいえ、必要以上に殺すなと念を押しとったし、殺しすぎるとなんかありそう、知らんけど。ワイちゃんカルマ関連詳しくないからの、これでロクでもないPKとか予備軍とかキルしやすくなったんはええな」

 

:(アカン)

 

:こんなやばいやつにそんなもん渡すな

 

:一番やばいから効果があるんだよなぁ

 

:核抑止かな?

 

:覇者は一人しかおらんから当てはまらないぞ

 

:悪いことすると覇者が来るぞってことか、これには世のおかあさん方もニッコリ

 

:虎来来!

 

:張遼は草

 

:まあこいつは悪用しないだろ

 

:マーニも装備も有り余ってるしな、ブルジョワがよ……!

 

:されたら誰も止められないんだよね、こわくない?

 

:う あ あ あ あ あ 賞金狩人もどきがフィールドを練り歩いている!

 

バイバアル:ウチに来ればカルマ関連はバッチリだぞ

 

:俺たちはいつでも待ってるぜ!

 

「着せ替え隊、ステイ。虎人くんはずっとリョーザン・パークでやってくのっ!」

「いやぁ、今こうして睡眠時間削らされてるとちょっと考えたくなる」

「ちょっとォ!? ダメ! 虎人くんは私達のシンボルなんだから!」

「神輿は姐さんだけでも良くない?」

「キミが抜けたら()()含め幹部全員一蓮托生なんだからね? それでキミの行く先がリョーザン・パークになるんだからね? アンダスタン!?」

「前身は姐さんのメン限ファンクラブやん、ワイちゃんメンバーどころかチャンネル登録もしとらんかったし」

「恨むなら何も知らずウチの身内トーナメントに参加した自分を恨んで? 年貢の納め時だったってことよライガ親衛隊隊長くん……!」

 

:草

 

バイバアル:押せばワンチャンあるぞこれ

 

:なんてこったもう助からないゾ♡

 

:wwwww

 

:今明かされる梁山泊創設秘話

 

:トップクランの前身がV豚の身内クランだったとか知りたくなかった

 

:ゲーム関連が跳ねたのは虎人くん捕まえてからだったね

 

:その前は歌とASMRばかり伸びてた(古参アピ)

 

「最初からガチゲーマー配信者だし! そっちもある程度数字出てたし!」

「どーどーどー」

 

:ということはこの虎さん昔からやばかったのん……?

 

:はい! すごくやばかったですよ!(ニコニコ)

 

:右手も空いてた時期なんかチート疑われてたレベル

 

:人によっては優勝系ジョブの転職条件達成にはまずこのバケモンの予定を抑えて参加を阻止する必要があった

 

バイバアル:当時の阿修羅会も優勝狙うやつのローテ組んでそれ以外の全員でつぶしにかかったもんだ

 

「それに関してホント聞いて! このおイカれタイガーってば同じクランの私たちが頼んでも参加辞退してくれなかったの!! ひどくない!?」

「クラン単位で遊び相手がいたあの頃ホンマ楽しかったなぁ……」

 

:キチガイすぎて草

 

:最悪なやつの手に許可証が渡ったんスけど……良いんスかこれ

 

:大丈夫じゃない、大問題だ

 

:基本夜しか居ないのが不幸中の幸いだった

 

:それでもやられる側はたまったもんじゃなかったんだよなぁ

 

:サービス開始半年でこいつ出禁にした運営の英断よ

 

:遅すぎ定期

 

:もともと黒狼にも居たんだっけ?

 

:N.M.M.*1の創立メンバーて話も聞いたことある

 

:キョージュと一緒になってライブラリ設立したってのホント?

 

「あー、元々おったのは黒狼だけやな。他二つは創立前からリーダーとお友達やっただけ、クラン結成前の活動とか手伝ったりしとったから、その辺やろな」

「黒狼でサイガー100という昔の女と袂を分かったあと、私の親衛隊長に就任したってわけ」

「誤解を招く言い方やめて? 黒狼の創設に付き()うてしばらく所属しとったけど、例のワンちゃんに執着とか無いから邪魔になる前に離れたんや。ちょうどやりたいことも見つかったタイミングやったし」

そう! それのやりたいことこそが! 情報共有ビルドのリョーザン・パークってわけ! だからずっと居るんだから! 着せ替え隊、シッシッ!」

「語るに落とされたなぁ」

 

 夜は更けていく。休日を返上させられたフロンティア社員の安息と引き換えに、今日もシャングリラ・フロンティアはサービスを続けていく。

 

(やばいやばいやばいやばいやばい!! マジで幼女ちゃん倒しちゃったよ、彼……!)

 

 ある者は、自らの計画を成就させるための存在の、想像の遥か上をゆく戦力に震えた。

 

「……じゃあ二人とも、()は完全に我々の側に引き込む方向でいいね? 幸いにも彼はゲーム外でもある程度著名だ、役員や株主らをなんとか納得させられるだろう」

「……いいやまだだ。今後どうするかは、一度実際に合ってからにすべきだ」

「はぁ? なに言ってんの!? 彼は私の世界に相応しい”覇者”なの!! 組み込むのは確定! なんなら遅すぎるくらいよ!!」

「ざっけんな!! あんなイカれたバケモンを基準に調整なんてさせられたらたまったもんじゃないんだよ!!」

「二人とも落ち着いてくれ! どのみち彼を放置していたら運営に支障が出ると今回で確定しただろう!? 形はどうあれまずは話をしなきゃいけないんだ!! というか今回のサーバーダウンは君たち二人がやりすぎたせいだろう!?」

 

 ある者たちは、一人の強者の扱いに激論を交わしていた。

 

「「「ハーッ、ティーアスよ! 死ねっ」」」

「「「ハーッ、虎人よ! 死ねっ」」」

 

 そしてある者たちは、二人の強者に対し深い恨みを抱いていた。

 

 勝者は、”覇者”虎人。

 

*1
未踏エリアへいの一番に飛び込み、その全貌を明かすことに熱意を傾ける、開拓者の鑑のようなクラン。大人気キャラクターのトットリくんも所属している。




次回、ペンシルゴンの計画頓挫。

百ちゃんは虎人くんが離脱した頃の話になるとすごく不機嫌になります、かわいいね。

後日届いた請求書を見た虎人くん「十ッ!?!?!?」

・覇者:隠しジョブ。覇者関連以外の魔法やスキル、各種装備枠やアイテム使用などのプレイヤーとしてのシステムを代償に、プレイヤーの範疇を逸脱する倍率のバフや専用スキルが使用可能。もちろんオリジナル設定。

・ティーアスちゃんの最悪の可能性:飢餓に支配されていた無力な自分に戻ること。虎人くんは10億マーニと引き換えに彼女の好感度を獲得し、トラウマを克服させた。

・紫電ライガ:現在は個人で活動中のバーチャルライバー。当初からネットアイドルとしてかなりの評価を得ていたが、ゲーマーとしてはそれほどでもなかった。黒狼を離脱してブラブラしていた虎人くんの捕獲に成功したことで、ゲーム内外で幸運を掴んだラッキーウーマン。具体的には元から結構な稼ぎだった配信収益が倍になった。人物としては外道寄りで、強酸性のペンシルゴンに対し強アルカリ性。
 他のプレイヤーを強くしたいという目的だった虎人くんを言いくるめた上で、クランをトップクラスにまで成長させた手腕は見事に尽きる。タイガーマスクの効かないブレーキとして有名。

・リョーザン・パーク:主にライガのファンな情報配信派閥と、虎人のファンなPvPガチ勢派閥で構成されている。当の二人が互いをリスペクトしているのと派閥間で互助の関係にあるため、仲良くしていないと恩恵を受けられなくなることから結果として一枚岩の組織になっている。
 仮に虎人くんが黒狼に残っていた場合も似たような形でまとまるはずだった、梁山泊の現状を見て悟ったサイガー100は拗ねた。

・殺人許可証:譲渡、破棄不可。ティーアスちゃんへの必死の救命活動(笑)から善良認定を勝ち取ったため交付された。「彷徨う剣」の印が押されている。レッドネーム以外のプレイヤーを殺してもカルマは上昇しないが、殺した事実がなくなるということは無い。
 彼が何をするかではなく、彼がこれを持たされていることが重要。そんな政治的なあれこれを彼が知るわけが無く、そのうちインベントリの肥やしになって忘れられる。

・周布リュウ:周布家の子犬、黒と白の毛並みがキュートな雑種犬。血統書等は無いのだが、旅行先で話しかけてきたアレルギー持ちのお姉さん曰く「親はシバ系雑種とハスキー」らしい。なんで分かるんだよ、キッショ。
 好きな物はおイモと鶏肉ジャーキー、趣味は散歩中に拾ったいい感じの木の棒コレクション。

モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?

  • あ、いっすよ(快諾)
  • 頭湧いてるんですか?
  • そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。