シャンフロプレイヤーワイ、フレが奥手すぎて夜しか眠れない 作:嘉神すくすく
毎度感想等ありがとうございます、定期的にチェックしてはニヨニヨして励みになっています。
またコメント頂いた一部の内容についてはあとがきや今後の本文へ積極的に記載していくつもりです。
コメント内容に対しテキトーな返信をした際は、つまりそういうこと。
サバイバアルは荼毘に付したよ、遺品はその辺に捨ててある。
「まさかルティアさんの太ももにそんな秘密が……賞金狩人すげぇ!!」
「そう、私たちはすごい」
「ワイちゃんなら初見だと死んどるかもわからん……」
「ふふん」
棒叩き30回の刑を終えた後、全国配信でSM生中継という実績を解除した変態の出所を待つ形で試合中断が続いていた。
『なにか食べるものちょうだい』というティーアスちゃんのリクエストに応えて『ゴールデンポテトの薄切り揚げ』を開封しつつ、暇つぶしにティーアスちゃんから賞金狩人の話を聞いていたのだが……世のため人のために暗躍する秘密組織ってかっけぇなぁ。
一緒になってバカを
それはそれとしてワイちゃんの
また話のついでに
『国との? なんそれ』
『……フォルティアンのセカンドオーナー、有名』
と呆れられて初めて納得した。
ワイちゃんマーニの使い道無さすぎて闘技場所有したりあちこちに投資したりしていた結果、『闘技場派閥』とやらの最高責任者的な立場になっている。金だけ置いて『あとは頑張れ!』しかしていないから実の所よく分かっていないが。
『フォルティアンの住民は向こう十年無税だって話は本当?』
『ブフッ……!』
『……どうしたの?』
『いや……思い出し笑いというか……』
直前にプレイしていた極道レトロゲームの受け売りで札束で満杯になったリアカーを四台引き、『ウス! 税金の前納ッス!』とニーネスヒルの王様に謁見した際のNPC達の反応が面白かったことはつい昨日の事のように覚えている。
だがそれよりも動画万バズとゴキゲンを通り越してウハウハだった雷牙の姐さんと、ワザワザ会いに来てゲラゲラ下品に笑いながら感想を聞かせてきたペンシルゴンのキチガイじみた様子を思い出すと今でも笑いが込み上げてくるのだ。
それはさておき、元を辿ればトーナメントで貰った賞金を
現実もこのくらいチョロければなぁ、そんなことを思いながら来週末予定の簿記2級のネット試験の事を考えるワイちゃんなのだった。
『虎人くん、ティーアスちゃん……そろそろ変態が戻ってくるから準備して?』
「「えー」」
『仲良しか! 打ち合わせでもしたの!?』
「というかそのサバちゃんやけど、向こうで着せ替え隊の連中とスクショ見てニヤついとるぞ」
『だぁ! どいつもこいつも……!』
雷牙の姐さんの呼び掛けに対し、ティーアスちゃんの反応は芳しくない。
ワイちゃんとしては闘いたいのは確かであるが、『もうメシにでも行って後日再試合で良くない?』くらいのテンションになっていた。
特にティーアスちゃんは
食べられるならなんでもいいらしいが、それはそれとして美味しいと嬉しいらしい。
『虎人くん一生のお願い……! このままだと撮れ高が変態マゾ野郎だけで終わっちゃうから……!』
「今月二回目やぞー。しゃあない……ティーアスちゃん、これサドタロさん店の場所な」
「……”覇者”の紹介だって言えば何か貰える?」
「いや何もあらへんよ?」
「……………………」
「……なにそのウルウルした瞳!? そういうサービスは着せ替え隊にしてやれや……!」
結局いたいけな幼女のキラキラ視線ビームに耐えかねて『勝てたらツケで奢り』という約束をするハメになった。存外したたかなんだよね、すごくない?
ーー後に、モフモフに群がられる幼女ちゃんのスクショをめぐって着せ替え隊と動物園との間で一波乱が発生するのだが、今現在虎人は知る由もなかったし後日知らぬふりを通した。
……完全に味をしめられた事実を一旦忘れ、左手装備の杖をインベントリに収納し代わりに『最後の竜狩りの籠手』を装備する。
アクセサリ『竜狩りのタリスマン』と併用することで魔法触媒としても使用可能な優れモノであるが、今回は完全に武器としてのみ使用する。
あらゆる攻撃魔法が
魔法攻撃は使えず、物理攻撃も通りが最悪……だがまあ、勝ち筋はある。問題は無い。
余談だがワイちゃんに袖の下を通して水属性攻撃を使わせようとしたゴンブトリオンは姐さんの手によりサバイバアルの後を追った。
サバイバアルの時といい他の賞金狩人が来ない上にペナルティ無しなのはイベント中だからだろうか?
「……今度は杖じゃないんだ」
「処刑で耐久度が……というのは冗談で、実は
「一撃の質を高める」
「ええやん」
やや短く片刃の片手剣を装備したティーアスちゃんから伝わる脅威度が、先程までの双剣装備時よりも格段に強くなっている。
ピリついた視線と圧力に一瞬で
『このっ、ちゃちゃっと来なさいマゾロリコン……ッ! ……えー皆様、水入りとなっておりましたが試合再開となります。……サイガー0ちゃーん?』
「……はい? 呼びましたか?」
『お待たせしててホントにごめんね……再開するからコールお願い!』
インベントリの整理をしていたらしいサイガー0の意識が戻ってきて、ワイちゃんとティーアスちゃんの間に移動してきた。
あ、ワイちゃんも覇者ムーブしとかないと。もう口調だけでええかな、頭の中までやってると疲れるし。
「えー、食べ物しまってもらって……準備はいいですか?」
「いいよ」
「始めよう」
両腕のガードを上げ左足を前にしたボクシングのオーソドックススタイルで構えるワイちゃんに対し、ティーアスちゃんは右半身で腰を落とし片手剣を両手で持ち切っ先を突きつけるように構える。
「始め!!」
直前までの弛んだ空気が嘘のように、張り詰めた
ギッ、ガッ、ガッ
瞬きの間に三度。
片手剣と鋼鉄製の籠手が擦れぶつかり合う冷たい音がけたたましく鳴り響き、火打ち石を叩いて火を入れたように、冷めたギャラリーを再び熱狂させた。
(杖じゃないからリーチがない……けど、切り込める隙がなくなった)
(目は追いつく……しゃあけど、振りが速すぎて見てからやと
先手はティーアス。
正面から首へ向けての突き・胴から腹への左袈裟斬りのコンビネーション、次いで左側面に位置取っての右の逆袈裟、そして時計回りに回転しつつ背の側から水平斬り。
「お、おい……今の見えた?」
「……正面からぶつかったと思った幼女ちゃんが次の瞬間タイガーマスクの背に回ってたんだけど」
「ティーアスの戦闘ナマで初めて見るけど、バフ無しであの速度なのかよ……!」
『最速のNPCの面目躍如か! なんっと言うスピードなのでしょうか!! 配信カメラは動きを追いきれているのかぁ!?』
『だからなンであの野郎は当然のように全部受け切ってんだよ……というか見ないで防いでたろ!?』
その場にいるほとんどの者がティーアスの攻め手、その全てを目で追い切ることは出来ていなかった。
だからこそ、動きを目で
虎人は順に、突きを捌き、右半身を引きつつ正面から受け、右側面への斬撃を左の籠手で殴るように弾き……そして背からの斬撃に対しティーアスの剣の持ち手を右腕で受け止めた。
「……〜〜〜ッッッ!?」
その悪寒にティーアスの全神経が後退を強制したのは、虎人の腕が触れた直後だった。
『なんだ!? ティーアスたんのあの怯えようは!?』
『あれは刻傷の効果です! 女性NPCが刻傷の刻まれた部位に触れた場合、例外なくああなります!』
『あァー! いつだかの聖女ちゃん気絶騒動はあれが原因か!?』
「……【デンジャラス・インファイト】」
超至近距離での格闘行動およびダメージに特大補正を加える代わりに被ダメージが上昇する【インファイト】派生魔法を使用しつつ、後方へ飛び退いたティーアスに虎人は反撃を加えようと距離を詰める。
(左肩)
(……”覇者”の
ティーアスは接近を拒むように片手剣を振るう。だがしかし
『覇者の左手がティーアス選手の剣の振り始めを捉えている! 今日も覇者の
『どんな攻撃も勢いがつく前に潰されたら意味はねェ……言うのは簡単だが、ティーアスたんを相手にできるもんじゃァねぇぞフツー』
(左脚)
左の籠手で攻撃を抑え右で打つ、言ってしまえばシンプルな戦術。
一方のティーアスは有効打でもダメージにはならないということを踏まえた上で、
(ガントレットが無い左側に……出来ない……!)
触れることはおろか、近づくことさえも恐ろしい。
ティーアスは虎人の右腕との接触を恐れる身体の衝動に逆らうことが出来ていなかった。
この場において、その刻傷の正体を知る者は虎人しかいない。
その傷を付けた『彼女』については、虎人本人と彼に協力を求められたキョージュ個人以外の
それはこの
それは彼らの頭上に浮かぶものとは別な彼方の月を頂く、『まほろば』にひとり佇む逸脱者により刻まれた。
そしてそれはーーーー
(ただの
彼方の逸脱者の伴侶たる者の、世界にただ一つの証である。
(正面……にしても回避速すぎ、右拳に布が触れた直後に動いたやん今)
虎人は技術で受け、ティーアスは速度で避ける攻防が続く。
(向こうの武器の耐久がこっちの籠手より低い、なんて都合よくはないやろな……NPCの装備やし)
周囲の人々が目で追い切れない高速戦闘の最中で、虎人はジリ貧の状況を破る算段を付けようとしている。
”覇者”虎人ーー
中学時代アマチュアボクシングで全戦全勝という輝かしい戦績で鳴り物入りのプロデビュー、*1直近の12月にスーパーミドル級全日本新人王決定戦で優勝を果たし、現役高校生で16歳という若さを感じさせない完成度の高い万能型ボクサーとして注目を集めている。
『
『近距離への魔法攻撃に補正がかかる竜狩りシリーズで全身を固めて魔法を撃ちながら殴りかかる”魔修羅格闘ビルド”だなァ。大月輪の後に刻傷が付けられて「虎人ナーフ」と騒がれたのは今でも笑えるぜ』
(こっちは当時を思い出すだけでムカ着火ファイヤーなんやけど? てか片手やと抑えんのキツい……!)
本来であれば両手に籠手兼魔法触媒というのが虎人のメイン装備であったのだが、右腕の武器装備枠が事実上塞がれて以降は戦術の刷新を強いられた。
長杖の魔法触媒で杖術を織り交ぜた魔法戦というのもその一つである。
しかしながら、初戦の攻防から自身の杖術の練度ではティーアスの相手には不足と判断し今回武装を変更した。
受け手に使えるのは左のみ、にも関わらずティーアスの速度に対応出来ているのはボクサーとしてのセンスに依るものか?
それは否だ。
(……アバターやなくて
シャンフロというゲームがどれだけリアルであってもVRゲームである以上は思考による『操作』が必要になり、考えるよりも先に反射で身体が動く現実よりどうしても
また虎人のステータスは耐久面を完全に捨て
では、なぜ虎人はティーアスの速度に対応出来ているのか?
(左肩、腹、鼠径部)
(……私の動きを全部読んでる、もしかしたら私よりも先に)
攻撃がトップスピードに乗るよりも前に抑えられる、あるいは
ティーアスは虎人の行動一つ一つの判断があまりにも
虎人が勝っているのは速さではなく
相手が動き出すよりも先に動く。
あらゆる武術の究極、その一つとされている技術だった。
それを可能としたのは物心つく前からゲーム内外で闘争に身を置き続けた
他の大抵のゲームでは発揮されないそれらは、シャンフロという世界において
虎人はプロ故に強いのではない、強い故にプロなのだ。
機先を制するのに一手、思考からアバターが動き出すまでの遅れを考慮し一手、ティーアスの速度への対応に一手。
感覚としては計三手先。だが……
「……上げてくるか」
最速はまだ速くなる、そちらはそれで全速なのかと嘲笑うように。
『ティーアス選手の速度がさらに上がる!! 覇者、攻め手を繰り出せない、防戦一方だァ!』
徐々に虎人の手が追いつかなくなる。
『スキル無しでここまでの速度を出すティーアスたんは俺も初めてみる、虎人はそこまでの相手と言うことだろうな』
「いや
『うっせェッ! 外野は黙ってろ!! 今は薄皮一枚で済んでるが、このまま行けばティーアスたんの剣が虎人に届く』
振り始めを抑えることはもはや出来ず、捌く手も追いつかず受けが増える。
「ーーーー!」
『覇者の左腕が大きく振り払われたァ!』
『虎人の脚腰の装備は布製、守りの手はねぇ!』
『返す刃で無防備な胴体を狙う! これは決まったァ!』
その場の誰もが、ティーアスの目にも
だがそうはならなかった。
「「「『『ーーーーハァ!?』』」」」
信じ難いものを見た。
受けの手は無いと誰もが確信した。
次の瞬間には
ティーアスが外したのか!? 否!
【
なんらかのスキルで耐えたのか!? 否!
「〜〜〜っ!?」
「見せすぎたな」
『は、覇者のて、右手が……テ、ティーアス選手の、剣を……?』
『す、素手で弾きやがったァ!?』
覇者はそれらの予想を事も無げに超えた。
……それは、シャンフロ外のとあるゲームの上位プレイヤーの中でも極一部が可能とした絶技であった。
それを知る者は虎人を除いてこの場にーーただ一人いた。
(『辻斬・狂想曲:オンライン』の素手パリィ……!)
その人物とは、試合という体裁を取るために申し訳程度の審判役を任されたサイガー0。
想い人との話題作りの為にと通称『幕末』に挑戦するも、殺伐したゲームの環境に適応しきれずあえなく断念した彼女だったが、知識としてそれを知っていた。
竹刀や木刀のような非殺傷武器では無い、触れるだけで肉を裂く刀剣を素手で無力化する。凡百のゲームであれば、あるいは可能だろう。
……だがこのゲームはシャングリラ・フロンティア、リアリティは他のゲームの追随を許さない。
ゆえに
(そんなの無刀取りと変わらない机上の空論でしかない……!)
数多の武術を履修した上で剣道の心得もあるサイガー0は理屈だけでなく身体で理解している。
(ゲームエンジンが違うから同じ挙動で出来る訳が無い、はず……じゃあ!?)
つまり虎人はシステムアシストやスキルの補正も無しに、それをやってのけたという事実にサイガー0は遅れて戦慄した。
……虎人は猛攻をしのぎつつ、そのタイミングを計っていたのだ。
(あのゲーム雑魚狩りのポイント効率高くて好かんかったけど……やっぱ嫌いにはなれんわ)
虎人は一人の修羅を想う。
ユラという、全知全能を『幕末』という箱庭の内で人を斬殺することに特化した刀の修羅。
武器という邪魔な物を握っていてはどう足掻いても敵わなかった、だが集団戦では武器が無ければ火力が足りず生き残れなかった。
だから自分が無手で、なおかつ一対一という限定的な状況を作り……その上で三度に一度しか勝てなかった強き男を想う。
(アイツなら、こんなに素直なテンポで来んかったやろ……ッ!)
攻撃の勢いをそらされわずかに、ほんのわずかにティーアスの体勢が崩れ一瞬攻撃が止まる。
そしてその一瞬を覇者は逃さない。
「……っ、ッ! 〜〜〜ッッッ!!」
虎人は左手で剣の持ち手を掴み、ティーアスの小さな身体を力任せで乱雑に引きながら脚をかけ仰向けに倒し……流れのまま右手を左膝で、下半身を右膝で抑えるように体格差でマウントポジションに持ち込み左手でティーアスの首を絞めている。
手足をジタバタさせるティーアスだったが、脱出にはまるで至らない。特に拘束されていない左手は、虎人の右腕に阻まれて振るうことすら出来ていなかった。
虎人は今回実際にティーアスと闘う以前から着せ替え隊との戦闘(あるいは蹂躙)を観察し、彼女が他の賞金狩人よりも劣る数少ない点を看破していた。
それは未熟であること。圧倒的な速度故に、工夫や小細工も不要……あるいは不純であるがため読みやすいこと。
仮に彼と闘っているのがルティアであれば、避けられていたかもしれない状況だった。
『ティーアス選手苦しい! あの最速の賞金狩人も、こうなってしまってはただの子供でしかないのか!?』
「幼女ちゃんのリョナもっとくだs」
「サバさんっ、コイツ殺っときました!!」
『名前控えとけェ! ……おい審判! まだ止めねぇのか!?』
シャンフロには他のVRゲームでは倫理的な問題から実装が敬遠されがちな窒息という概念が当然のように存在する。
勝利条件は対戦相手の無力化。これが虎人に残された二つある勝ち筋、その一つだった。
(命は押さえた……せやけど)
サイガー0が両者に近づいて状況を確認する。
もはやティーアスに逆転の目は無い……そう判断した瞬間だった。
「勝負あーーえ?」
『このまま決着が……って、え? 覇者、マウントを解き、距離を取りました。腕を組み、まるでティーアス選手が立ち上がるのを待っているようです! ……まさかまた中断じゃないよね?』
「ゲホッゲホッ……フーッ、フーッ…………情けを、かけたの?」
「違う、これは
耐久度が減った左手の籠手を、耐久度最大で同じ種類のものと交換しながら虎人は言う。
「えぇ加減、お試しプレイは終わりにしようや。……”
ティーアスの
……そんなケチが付けられるものを、覇者は勝利とは呼ばないのだと。
「……なんで? なんで確実な勝ちを捨ててまでそんなことしたがるの?」
「ワイちゃん欲張りでな、ただ勝つだけじゃ満足出来ん、より強くなれる勝利やないとあかんのや。それにただ相手を負かすんやない……上回り、勝つ。観客が、相手が、自分が、世界の誰もが認めるそれこそが
虎人本人としてはかなり分かりやすく伝えたつもりであったが、ティーアスには理解し難い内容だった。
言っていることがわからないのではなく、理解ができない。
同じ形をした生き物の行動理論だとは思えなかった。
強さは単なる手段であり、任務遂行あるいは勝利という結果が目的であるティーアス。
強さと勝利の両方が目的であり手段でもある虎人。
「……やっぱりよく分からない」
「気にしなや。男のロマンの類や、わからんやつにわからん」
「ただ勝つだけじゃ足りないの?」
「せや、ワイは勝ち方まで選ぶ!! ……でないとこの
身体に刻まれた傷を愛おしむように、誇るように、右腕を広げ左手でゆっくりとなぞってみせる。
「微妙に他の部分と感触ちゃうのすごない?」
「……『逸脱者』はどれくらい強いの?」
「無視せんでも……ああ、他の何者よりも強い、断言できる。ワイより、賞金狩人より、
「アルブレヒト……」
「あ、お仲間に話す時は『虎人はアルブレヒトに負けてる』的な内容で頼むな」
当代無双たる第一王国騎士団長。
大精霊の剣と不破の盾を持つ表社会で最強と名高い男の名を事も無げに出され一瞬疑ったが……そのツーショット写真に写る、手でハートマークを作ろうとする半裸の虎頭に対しピースサインで拒否している、金髪碧眼の均整な顔立ちが台無しな左右非対称の笑みを浮かべる青年は紛れもなくアルブレヒトであった。
おそらくは負けていない、だが勝ってもいない様子に見えた。
「それと、実物と戦ったことは無いがリュカオーンやジークヴルム、そんでクターニッドよりも」
「……なんでわかるの?」
「再現体と闘える神代のオモチャがあるんや」
それは虎人の左手首と一体化している【格納鍵インベントリア】、その格納空間の内にある。
【有像戦闘シミュレーター・孫武】
それは七つの最強種の内の一つを除く、あらゆる
その上で、虎人は断言したのだ。
「彼女は世界を思うがままに変えられるといった。……それがどんだけやばい設定なんかは知らんが、ハッキリしとるんはありとあらゆる魔法やスキルを
「……もしかして、
「スニークスキルやスペルが初見ではなかったから。……まあ、賞金狩人とやるまでは他人様の専用やとは知らんかったけど」
ティーアスは合点が行った。
虎人が強いことと実際に闘ってわかった。だがそれでも初見で他の賞金狩人を相手に圧倒出来るのかと言えば、
ルティアとは交戦していないはずなのに、
彼にとっては既知だったのだ。
「ほんで毎月遊んどるんやけど先月な、”超越速”を使われてな、抵抗すら出来ず派手に負けたわ。……25倍の速度差と種明かしされたとてどうしたもんかと考えた、悩んで悩んで考えて……一つ結論を出した矢先に、この機会に恵まれたっちゅうわけや」
「負けた話なのに楽しそう」
「一度も勝てとらん最ッッッ高に強ぇやつとの闘いの話やぞ? 楽しいに決まっとるやろ」
暗に自分が通過点でしかないと言う虎人に、ティーアスはムッとする。
「わかった……あなたの強さに敬意を表する。だからあなたも……『覇者』のスキルを見せて」
「……そっちもそっちでワイのことどこまで知っとるん? 頭領さんとやらには本格的に詳しい話を聞かなアカンな……まーそりゃそうと、言われなくとも使うわ。でなきゃ勝てん」
虎人は人前でジョブ”覇者”のスキルの大半を使えたことがない。使わないのではなく、使えない……それは覇者スキルの仕様によるものだ。
シャンフロ非公式wikiにジョブとしての情報は考察クランを通して掲載しているが、ゲーム内でわざわざひけらかす真似をした覚えもない。
にも関わらずNPCが覇者というジョブとそのスキルの存在を把握していることに驚かされた。
「『頂きを見るは我一人』……”守、無頼”」
そのスキルを使った瞬間、【デンジャラス・インファイト】の効果が終了し、虎人というアバターから
「なあ、ティーアスちゃん。”覇者”のジョブについてはどこまで知っとる?」
「……頭領は何か知ってるみたいだったけど、私はあまり」
「ほな、仇討人について教えてくれたお返しにワイも教えたろ。……このジョブはな、メインに設定しとると覇者以外の魔法やスキルが使用不可能になる」
虎人はインベントリを開き習得したスキルや魔法を確認するが覇者の欄を除く全て……汎用・ジョブ専用・自己流派からインベントリアのような装備専用魔法に至る全てが使用不可能の状態になっている。
加えてステータスを確認すると、スキル使用前は『JOB:魔修羅 SUB:覇者』であったものが現在は『JOB:覇者 SUB:覇者』に変更された。
「覇者のスキルを使うと、戦闘終了までメインジョブが強制的に覇者になる。覇者には覇者の闘いしか許されないっちゅうことやな。……さっきの”無頼”は最初から使えるスキルで、それ以外のスキルは専用の『死闘ゲージ』が溜まるまで使用不可能なんや」
覇者スキル”守、無頼”の効果は『HPが0になる時、HP1で耐える状態を付与(一回)』『下位覇者スキルの解放』『覇者以外のバフを解除・無効』そして『操作性・各種感覚の
このスキルにより虎人というアバターは、その戦闘においてのみ周布虎斗という最高の性能を誇るプレイヤーに
「この『死闘ゲージ』がまーメンドくってなぁ……シャンフロの変態技術は枚挙にナントカが無いけど、強ぇやつを相手にスリルある闘いをせんと全然溜まらないんや。雑魚が相手やとピクリともせん……”守、瞬神”、”守、星辰”」
”守、瞬神”、効果は『
”守、星辰”、効果は『
それらの効果により、左手の篭手を除く全ての装備が強制解除され、マスクに隠された顔も露になる。
「……マスク無い方が良いと思う、私と話すときは外して」
「男前に産んでくれた両親には感謝しか無いけども。隠しとかんとサイガー100がうるさいんや……というか、ワイちゃんのイケメンぶりはどうでもええねん」
マスクを付けるようになったきっかけを思い出しつつ、虎人は”超越速”攻略のために最低限必要なスキル、その最後の一つを唱える心の準備をする。
(
人前で使うのは初めてだから、きっと観客の度肝を抜いて楽しくて仕方が無くなる。
(まだ委ねない)
それを使えるほどの強者に、すぐ飛びかからないよう、自分を抑えるよう身構える。
「強ぇやつ相手にしか溜まらんゲージが、今は52%も溜まっとる……ティーアスちゃんが遊んでくれへんかったら”超越速”で負け確やった。お膳立てしてもろておーきにな?」
「勝ってから言って」
「せやな……”破、天威無法”」
その変化を、その場にいる全ての人物が肌で感じた。
(リュカオーン……!?)(ウェザエモンッ!?)
死闘ゲージ50%以上から使用可能な覇者スキル”破、天威無法”。
効果は『全ステータス超絶強化』『HPが0になる時、HP1で耐える状態を付与(三回)』『上位スキル解放』『アクセサリー装備不可』
ごく一部の
「ガッハハハハハ!!!!」
視線の中心で虎人だけが、イタズラに成功した子供のような笑みを浮かべながら高らかに笑う。
今の虎人のステータスの合計値は、七つの最強種と呼ばれるユニークモンスター達に準ずる程度まで強化されていた。
「……それが結論?」
「せや、すまんのわざわざ待ってもろて。……『速度を上げてぶん殴る』、何事もシンプルなのが一番や」
「”超越速”が終わるまで耐える方が確実だと思うけど」
「あー? そんなザコい真似せんわ。効果中の、最高のティーアスをいてこますのがカッコええんやろが」
仮にこの時、虎人が耐久策を取っていた場合は確実に敗れていただろう。
虎人は”超越速”の効果時間を『彼女』から教わった情報から『空腹度十割につき最大一秒』であることを把握しており、つまりは通常一秒前後、高級チョコを食した状態でも三・四秒が限度であると想定していた。
しかしティーアスには『食い溜め』という専用スキルがあり、食事による空腹度を100%以上溜め込むことが出来る事実は知らなかった。
この時、ティーアスの空腹度はおよそ
虎人はその勝ち方へのこだわりから偶然にも絶対の負け筋と、シャンフロサーバーが
「姐さん、待たせた! 『しょー・ますと・ごーおん』や!!」
『もー、ロールプレイ完全に忘れてるし……皆様、これが”覇者”の本領です。200勝無敗のままトーナメント殿堂入りとなった末に得た、タイガーマスクの代名詞たるジョブの圧力です!』
『七つの最強種並だなァ、プレイヤー個人が発していいオーラじゃねェよ』
「しゃあっ。ティーアスの綺麗な顔面ぶち抜いてやるで!!」
『顔は止めろつったろがよ!?!?』
「ハハハハハハハアハハハハハハッッハ!!!!」
速度は通常時と比較して約7倍、”超越速”使用後のティーアスには不足と言っていい。
”守、無頼”の効果により、身体を動かす感覚と反応速度は現実の周布虎斗に迫るものとなった。だがそれ以外に動体視力強化等の認識拡張は一切作用しておらず、ティーアスの動きを目で追いきることは適わないだろう。
(三人目なんやーーーー問題、ねぇ!! 打つ!! 当てる!! 殴る!! 殴る!!!! 殴るッ!!!! 殴るッッッ!!!!!)
圧倒的なまでの
(今なお届かん彼方の『彼女』……
その二人に続く圧倒的な強者を前に大きく、獰猛な笑みを浮かべる。
(……お前はどうだ?)
虎人はガードを下げ右足を前にーーサウスポースタイルで、重心を前に傾け攻撃のみを考えた構えをとる。
「……私が勝ったら、いくらまで食べられるの?」
「手持ち全額の、七億ってとこやな」
「ごちそうさま」
「勝ってから言えや」
「これでおあいこ」
(正気は保っている……保ったまま、この眼ができる?)
ティーアスが”頭領”から受けた命令は大きく二つ。
一つがその持てる力を確かめること。
そしてもう一つが、世界に仇なす存在であるか否かを見極めること。
その眼光に世界の全てを喰らいつくす獣性を見た。……一方でそのひょうきん振りは、最初から今まで変わらない。
ティーアスにはどちらが彼なのか、あるいはどちらもそうなのか、分からなかった。
(…………斬ってから、考える)
獣のごとき者の眼前には全霊最速のティーアス。
片手剣を両手で右肩に担ぐように持ち、脚を前後に大きく開き前傾にーー完全な突撃姿勢を取った。
「…………”超越速”」
「強いッ!! お前をッ!! ブンッ!!!! 殴るッッッ!!!!」
その決着は、瞬きの直後だった。
こいつまたお話畳み切れませんでしたよ?
・虎人くんとシャンフロワールドのパワーバランス
原作に存在しないおバカのせいでだいぶ乱れている。特に交友関係があるとある三人と無関係な一人への影響が凄まじく、とあるポテトイーターが真相を知った場合は虎人くんの命が危ないとかそうでもないとか。
・フォルティアンと虎人くん
原作に存在しない大バカが追加されたことでシャンフロ内の国家バランスも乱れております。
特にフォルティアンという街は顕著で原作よりも栄えている上に、虎人くんかリョーザン・パークが望めば国盗りすら始めるレベルで信奉されている。
本人にその気は無いがエインヴルス王国中枢を戦々恐々とさせており、札束リアカーのパフォーマンスも国への恭順を示す以上に、当代無双くんが出張らないと止まらないレベルのバケモノを物欲でコントロール出来ないという事実を知らしめる結果となった。
・アルブレヒト:原作に存在しないどうしようも無いバカは彼のことが大好きで定期的に遊びに行っている。そのせいで戦力がえらいことに。
・ぽんぽこサド太郎
こんな名前の男性アバターだが女性。本作オリジナルのSFーZOO所属で料理系ジョブのプレイヤー。タヌキっぽい毛並みの犬猫をテイムしてカフェを経営しており、そんな人物を1番ヤバいあの人が放っておくわけがなかった。
結構強いためゴールドタイガーから気に入られ莫大な富(開業資金)を得た。彼はこういうことをあちこちでやっている。
・竜狩りシリーズ
本作オリジナル装備、軽装寄りの皮鎧。ドラゴンのブレスをはじめとした広域攻撃への耐性を高める効果がある。『最後の〜』と名がついたものは一部が金属製、竜鋼と呼ばれる素材とユニーク産の製法書が必要。
・【デンジャラス・インファイト】
本作オリジナル魔法。素手パリィの成功率に寄与していないことも無いが、同じことをするより素直にバックラーなりを装備した方がいい。鍋の蓋でもなんでも、素手よりは遥かにマシだから真似してはいけない(1敗)
・【格納鍵インベントリア】
謎の行商人NPC、買取を拒否。
・【有像戦闘シミュレーター・孫武】
虎人が持つインベントリアには神代の兵器等は無い代わりにこの機械が設置されていた。あくまでもモンスターとの戦闘を再現するもので、シナリオを再現するものではない。
例えばクターニッドの場合は途中の探索や謎解きやNPCイベントは無しに、聖杯が全部揃った状態のクターニッドとソロで対決することになる。
一部のネームドモンスターに勝利した場合、情報アイテムを除く本物に勝利した場合と同様の確定報酬が手に入る(ウェザエモン戦で言うインベントリアなど)
一方でシナリオ上特別な追加報酬は絶対に手に入らない(ペンシルゴンが手に入れた髪飾りなど)
虎人くんはバカだがマヌケではなかった。なぜそのような高待遇を一個人に許すのかは分からないが、少なくとも世に出していい情報で無い事だけはハッキリ理解していた。……今回でバカなマヌケにランクダウンした。
・虎人くんとクターニッドくん(0歳)
最終形態は漫画版準拠。
クターニッドは虎人が最も得意とする武器であるガントレットを奪い……結果として虎人くんのモチベーションをぶち上げ一生顔面を殴られ続け完封された。
その健闘を称えられるように虎人くんは一度の挑戦で全ての聖杯を手に入れた。
つまりは「もう来んな」
モモちゃんがヒロトくんとスーパー銭湯に行く話を投稿していいすか?
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あ、いっすよ(快諾)
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頭湧いてるんですか?
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そんな姉さんの話より私と陽務君の絡みをも