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東大生が殺到する業界は、なぜ斜陽なのか?: 人気ランキングという「売りシグナル」と逆張り生存戦略

0. 筆者プロフィール:なぜ私がこれを書くのか

私は東京大学を卒業後、外資系企業でAIエンジニアとしてキャリアをスタートさせた。同級生の多くがコンサルティングファームや金融機関へ進む中、テクノロジーの現場に身を置いたことで、かつてのエリートたちが独占していた「知的生産」が、アルゴリズムによって代替されていく現実を目の当たりにしている最中である。

その危機感から、私は現在、医学部にも籍を置いており「法的な堀」の内側へとキャリアの軸足を移しつつある。これは、「攻め(AI・テクノロジー)」と「守り(医療・法規制)」の両極を知るための、私なりの生存戦略の実践でもある。
本稿では、この二つの視点から見えてきた、現代のエリートが直面する構造的な課題と、激動する2030年代を生き抜くための仮説を共有したい。

1. はじめに:エリートはなぜ「ババ」を引き続けるのか

1.1 伝説の再考:1929年のウォール街とジョセフ・ケネディ

金融史において最も著名な逸話の一つに、「靴磨きの少年」の逸話がある。
1929年、大恐慌の引き金となったウォール街大暴落の直前、ジョセフ・P・ケネディは、保有する株式を全て売却し、資産を保全することに成功した。
彼が市場からの撤退を決断した契機は、ある日ウォール街で靴を磨いてもらっていた際、その少年から「どの株を買うべきか」という投資の助言を受けたことであったとされる[1]。

この逸話が示唆する本質的な教訓は、単なる「子供が株の話をする」という特異な光景への違和感ではない。それは、本来市場のプロフェッショナルではない層、あるいは情報連鎖の最末端に位置する「一般大衆」までもが、単なる値上がり期待と熱狂のみによって市場に参加し始めた瞬間こそが、相場の「天井」であることを示す逆説的なシグナルであるという点だ[1]。

1.2 現代の「靴磨きの少年」としての東大生

一見すると、東大生は高い知能指数と情報処理能力を有し、「情報弱者」とは対極に位置する存在であるかのように思われる。しかし、キャリア形成という超長期の投資活動において、彼らの行動様式は驚くほどに「靴磨きの少年」的であり、強烈な「順張り」傾向と群集心理に支配されている[2]。

東大生がこぞって志望し、人気就職先ランキングの上位を独占する業界や企業は、往々にしてその産業サイクルの「成熟期」の極致、あるいは「衰退期」の入り口に立っている。彼らが「安定」や「社会的威信」を求めて殺到するその瞬間こそが、当該産業の成長余地が消失し、コモディティ化や構造不況が始まる転換点となっている必然性が存在する。

本稿では、就職人気ランキングと産業動向の相関を紐解き、なぜ日本の最高頭脳たちが「ババ」を引いてしまうのか、そのメカニズムと今後の展望を論じる。

2. 現在の「天井」:2025年のコンサルバブル

2020年代、東大生を惹きつけているのが、コンサルティング業界、特にアクセンチュアやBig4(デロイト、PwC、EY、KPMG)を中心とした総合系ファームである。

2.1 圧倒的な一極集中と「東大生の定位置」化

最新のデータによれば、東大生の就職先としてコンサルティングファームが完全に定着している。
東大新聞等の調査において、学部生・大学院生ともにアクセンチュアがトップ争いの常連であり、EYストラテジー・アンド・コンサルティング等のBig4系も急上昇している[3]。

かつてのマッキンゼーやBCGが年間数十名という「狭き門」であったのに対し、現在のアクセンチュア等は年間で約1,000名規模の新卒採用を行っていると推測され、もはや「選ばれし者の職」ではなく「大量採用される高級労働力」へと変質している[4]。

2.2 生成AIによる「知的労働のコモディティ化」

なぜ東大生はこれほどまでにコンサルを目指すのか。表向きの理由は「若いうちから成長できる」「汎用的なスキルが身につく」といったものである[5]。
しかし、その「汎用スキル」の賞味期限は、生成AIの登場によって劇的に短くなっている

確かに、パートナーやシニアマネージャーが担う「クライアントとの高度なコミュニケーション」や「潜在的な課題の発見」、「案件獲得」といった領域は、依然としてAIによる代替が困難である。

しかし、新卒や若手が担ってきた「情報処理」や「資料作成」という付加価値は、生成AIによって劇的にコモディティ化している。
従来、若手コンサルタントは長時間労働を通じてこれらの「修行」をこなし、スキルを磨いてきた。だが、その修行の場自体がAIに置き換わりつつある今、若手がシニアへと成長するキャリアの梯子は外されかけている[6][7]。

2.3 崩壊のシグナル:アベイラブルと採用抑制

現代の「靴磨きの少年」理論が示す通り、東大生が殺到する今、コンサル業界は明確な「天井」の兆候を示している。

  1. アベイラブルの常態化: プロジェクトにアサインされず、社内で待機状態にあるコンサルタントが増加している。業界用語で「ビーチ」とも呼ばれるこの期間は、経営視点では稼働率の低下であり、過剰採用のツケが回り始めている証左である。

  2. 採用の異変: アクセンチュアが世界で約1万9000人の人員削減を発表したこと[8]や、国内においても採用の選別色が強まっていることは、業界が「労働集約型モデル」からの転換を模索している証左である。

3. 構造的欠陥:「偏差値エリート」の脆弱性

なぜ、日本で最も知的に優秀とされる層が、この構造的な罠に気づかず、自ら市場崩壊の先行指標となってしまうのか。

3.1 減点主義と「正解」への依存

日本の教育システムは、与えられた問題をミスなく解く能力を測定する減点主義に基づいている。このゲームの勝者である東大生は、キャリア選択においても「正解」を求め、「失敗」を極端に恐れる。
「人気ランキング1位の企業」は、集団内での合意形成がなされた「正解」に見える。逆に、無名なスタートアップや、ニッチな妙味がある業界を選ぶことは、偏差値ヒエラルキーから降りることを意味し、彼らにとって心理的なコストが極めて高い。

3.2 「ブランド」という名の麻薬

「世間体」や「ブランド」を基準にキャリアを選ぶことは、終わりのない承認欲求ゲームに参加するようなものだ。
「すごい会社に入ったね」という賞賛から得られる快感は、ほんの一瞬で消え失せる。しかし、一度その味を知ってしまうと、次もまた他人の称賛を得るために、興味のない仕事や理不尽な激務に耐え続けるしかなくなる。それはまるで、喉の渇きを癒やすために海水を飲み続けるような、破滅的なサイクルである

産業が黎明期の混沌を抜け、急成長を経て莫大な利益を上げ、社会的インフラとして定着し、親世代や親戚までもがその企業名を認知するまでには、通常20年〜30年の歳月を要する。
東大生の親が「そこなら安心だ」と太鼓判を押し、ランキングで1位になる頃には、その企業はすでに成長のS字カーブの頂点に達しており、あとは緩やかな、あるいは急激な坂を下るだけの状態にあることが多い。

4. 生存戦略:AI時代の「城」と「堀」

ジョセフ・ケネディが靴磨きの少年の助言を逆手に取ったように、人気就職先ランキングは「売り」のシグナルとして活用すべきである。
では、真に賢明な人材はどこへ向かうべきか。

4.1 市場の独占という城:グローバルニッチトップ

派手さはないが、グローバル市場で圧倒的なシェアを持ち、高い技術力と参入障壁によって守られた「グローバルニッチトップ」企業群である。
これらの企業は、AIが台頭しても代替不可能な物理的な「モノ」や「素材」を扱っており、その利益率は極めて高い。
具体的な社名は伏せるが、超ニッチな市場を独占的に支配し、平均年収が1500万円を超えるような知られざる優良企業も存在する(興味がある方はXのDMで聞いてほしい)。
ここには、偏差値競争とは無縁の、しかし極めて合理的で豊かな「ブルーオーシャン」が広がっている。

4.2 法的な独占という堀:規制産業(医師・弁護士等)

AI時代におけるもう一つの安全地帯は、国家資格による独占業務権限に守られた領域である。
医師、弁護士、公認会計士といった古典的な専門職は、AI技術の進化とは無関係に、「法規制」という最強の堀によって守られている。

例えば、医師法第17条は、医師以外の医業を禁じている。
画像診断AIが熟練医以上の精度でガンを発見できるようになったとしても、最終的な「診断」を下し、治療方針を決定し、処方箋を出す権限は人間にしか認められていない。

したがって、これからの規制産業で勝者となるのは、AIを徹底的に使いこなし、業務効率を劇的に高めた「AIという強化外装で武装した有資格者」である。

5. おわりに:沈みゆく船から飛び降りる勇気

「東大を出て人気企業に入れば安泰」「コンサルに行けば市場価値が上がる」という過去の成功法則は、令和のAI時代において完全に賞味期限切れとなった。
しかし、これは悲観すべきことではない。むしろ、偏差値や人気ランキングといった「他人の物差し」から解放され、真に自分自身の価値を問うことができる時代の到来を意味する。

圧倒的なシェアによる「市場の独占」か、国家権力による「法的な独占」か。

あるいは、まだ誰も見つけていない荒野に、自分だけの旗を立てるのか。

人気ランキングの1位が入れ替わるたびに、産業の新陳代謝と、逃げ遅れる人々の悲喜こもごもが繰り返される。
我々は、そのサイクルをただ冷徹に観察するだけの傍観者であってはならない。
次はあなたが、そのサイクルの外側で、誰にも脅かされない自由を手にする番なのだから。

私は、堀の内側に築かれた城で、待っている。


引用文献

[1]: 投資における靴磨きの少年とは?意味や暴落を回避する方法を徹底解説 - HFM, https://www.hfm.com/int/jp/blog/shoeshine-boy/
[2]: Herding, social influence and economic decision-making: socio-psychological and neuroscientific analyses - PMC - NIH, https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2827453/
[3]: 【24卒東大生就職状況】学部生でEYストラテジー・アンド・コンサルティングが前年度11位→首位 院生トップは3年連続アクセンチュア, https://www.todaishimbun.org/2023ranking_20240823/
[4]: アクセンチュアの採用大学・学歴フィルター・就職難易度・採用人数を解説 - タレントスクエア, https://talentsquare.co.jp/career/accenture-university/
[5]: なぜ東大生はコンサルを目指すのか?キャリア選択の真実を暴露 - KOTORA JOURNAL, https://www.kotora.jp/c/76624-2/
[6]: Generative AI is rapidly reshaping the workforce, with executives planning to replace entry-level jobs within five years. - AlphaSense, https://www.alpha-sense.com/blog/trends/generative-ai-entry-level-jobs/
[7]: Generative AI & the consulting industry, are we about to witness a huge change - Reddit, https://www.reddit.com/r/consulting/comments/1gez4kz/generative_ai_the_consulting_industry_are_we/
[8]: 約1000人の人員削減計画を発表 - アクセンチュア(戦略グループ) 転職情報 - ムービン, https://www.movin.co.jp/gyoukai/firmlist/strategy/ac/lineup.php?id=404

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