中国が日本を非難する宣伝戦を繰り広げる中、外務省は交流サイト(SNS)で反論する取り組みを始めた。中国による「日本の治安が悪化」「軍事行動を取る権利がある」との主張に対し、事実関係に基づく説明を相次ぎ投稿。一方、応酬による対立激化を避けるため抑制的な表現にとどめる。宣伝への対抗措置は効果をもたらすのか。
外交は基本的には口による言い争いだ。暴力的手段ではないのでまだいい。口げんかしているときはまだいいが、口もきかなくなり、暴力に走ったらおしまいだ。その意味では、大いに宣伝合戦するのがいい。何しろ相手はウソも百回言えば真実になるという国だからだ。
それにしても、中国は手詰まりだ。「日本の治安が悪化」というのは、他の外国人訪問客が増えていることからも分かるが、外務省は日本国内における被害者が中国人の凶悪犯罪(殺人、強盗、放火)の件数の推移を公表し、数字による反証を行った。
「軍事行動を取る権利がある」というのは、国連憲章の敵国条項を適用するというものだが、外務省は1995年の国連総会において既に死文化したとの決議が圧倒的多数の賛成で採択され、中国も賛成票を投じたと反論した。そもそも国連憲章では、国連の中国代表が台湾にいまだになっているが、中華人民共和国だと認めたのも71年の国連総会決議である。
そのうちに、中国は51年のサンフランシスコ平和条約を違法、無効と言い出した。細かい法律戦は別として、サンフランシスコ平和条約が無効なら、それで放棄した台湾は日本領になってしまう。
しかし、国際法にはいろいろな抜け穴があり、中国は歴史戦を仕掛けている。サンフランシスコ平和条約には、中国とソ連が署名していないという点を突いている。中国は、こうした歴史戦を通じて、台湾、沖縄などについて自らの政策を正当化しようとしている。
要するに、今の中国は台湾のみならず、強欲にも沖縄まで自国のものと言っているのだ。多くの西側諸国はサンフランシスコ平和条約に署名していることから、この中国の主張はなかなか認められないだろう。
いずれにしても、日本は中国の主張に対して有効に反論しながら、自らの立場を世界に伝え、台湾のみならず沖縄まで自国領土としたい中国の覇権主義に警報を鳴らす必要がある。これこそが外交である。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)