週刊エコノミスト Online サンデー毎日
いま「ふりかけ」が熱い!
安価で手軽な食卓の味方。市場での売り上げは過去最高を記録
▼外食から手作り弁当という節約志向も追い風
▼唐揚げに「ゆかり」など、調味料としての使い方も啓蒙中
▼減塩タイプ、おかずタイプなどカスタム化も進む
かけて、ごはんがおいしくなるふりかけが、じわじわと売れ続けている。コメ高騰で米食の機会が減るなか、なぜ? 調味料としての活用や、開発の苦心も……。
ひろし、しげきも登場 楽しいふりかけ
かけるだけで、ごはんがおいしくなるふりかけ。食卓の脇役だが、ここ何年もの間、静かに人気が高まり続けている。
「昨年の売上高は前年比110%でした。2020年以降、売れ行きは好調です」
そう話すのは、赤しそを使ったふりかけ「ゆかり」でおなじみの食品メーカー三島食品の広報担当、長井友美さん。ほかに、青じそふりかけの「かおり」、ピリ辛たらこの「あかり」などの商品があり、20年にカリカリ梅の「うめこ」を発売したところ、名前に「こ」がつく〝妹〟が誕生したと話題になった。
「『ひろし』『しげき』も生まれました。人の名前のような商品名で、店頭ではシリーズで並べていただけることが多いのが好調の要因です」(長井さん)
人の名前がずらりと並ぶ売り場の前を通ると、つい立ち止まって眺めてしまう。味も、広島菜の「ひろし」、わさびの「しげき」などシンプルだから、いくつか買いたくなるのだ。
節約志向でふりかけ市場が活況
「のりたま」でおなじみの食品メーカー丸美屋は、なんと「10年以上過去最高記録の売り上げを更新中」とのこと。教えてくれたのは、同社広報宣伝室室長、青木勇人さん。好調の要因はいくつかあると分析しているが、直近の環境要因としては「節約志向」があるという。
「物価高騰や節約志向により、米食が促進されています。外食から手作り弁当への切り替えでは米が活躍。その際にもふりかけが利用されています。家庭でおかずの皿数が減っても、ふりかけがあれば、ごはんをおいしく調味できます」(青木さん、以下同)
ふりかけ市場全体としても、昨年の売り上げは過去最高記録を更新した。裏を返せば、節約志向はかなりの上昇か。その点はさみしいが、ふりかけはパワフルだ。
「ふりかけは、安価で手軽、即食可能、比較的賞味期限が長いので、管理のストレスも小さい。種類が豊富で、家族全員の好みを揃(そろ)えられます。毎日登場するお米を飽きずに食べられます。唯一無二の価値がふりかけにはあります」
ふりかけへの厚い信頼と愛情が、青木さんの話からこぼれてくる。コメの高騰ゆえに、食卓にごはんがのぼる回数が減少している傾向については、
「ごはんは今後も日本人の主食ですので、ふりかけの売れ行きはそれほど大きくは減らないと考えます。また、長い年月で見ると、米食からパン食に徐々にシフトをしてきていますが、それでもふりかけ市場は大きくは縮小しなかった事実もあります」
ごはんがあれば、お供のふりかけも永遠だ。
唐揚げに「ゆかり」 〝ふりかけは調味料〟
ふりかけが力を発揮するのは、ごはんという舞台だけではない。ほかの料理の味つけに使える強みも。
「〝ふりかけは調味料である〟ことの啓蒙(けいもう)活動にも力を入れてきました。とくに『ゆかり』は便利で、切ったキュウリや白菜にあえるだけで1品できあがります。唐揚げなどの揚げものにかけると、さっぱりとした味わいに。パスタなどの麺類、肉や魚料理、デザートにもお使いいただけます」(三島食品・長井さん)
応用レシピの情報が功を奏して、ふりかけの売り上げを支えている。
さらに、塩分に配慮した新商品も。
「通常の『ゆかり』と比べてナトリウムを30%減らした『減塩 ゆかり』は、毎年売り上げを伸ばしています。原料の赤しそは生食には向かないため、収穫後の加工は、すぐに洗浄、次いで塩でアク抜き、さらに塩と梅酢に漬け込んだ塩蔵赤しそをつくり、『ゆかり』に仕上げます。このため塩を減らした商品の開発は大変でしたが、赤しその香りや風味をしっかりと感じられるものに仕上がっています」(同)
ごはん1杯分の使用量にあたる1㌘の「減塩ゆかり」の食塩相当量は0・33㌘となっている。血圧が気になる中高年だけでなく、小さな子どものいる家庭でも好まれているという。
ジュワッと染み出る おかずタイプも人気
食卓の定番となるべく、ふりかけの開発は山あり谷ありだ。丸美屋ではいま、おかずになるタイプの「のっけるふりかけ」シリーズが人気上昇中だが、一番人気の「鮭明太」は、16年の発売当初の売り上げは芳しくなかった。踏ん張り続けた3回目のリニューアルでV字回復となった。
「誰もが『おいしくなった!』と思うリニューアルが必要でした。18年、21年とリニューアルを繰り返しましたが低迷。商品開発部とマーケティング部で協力して、理想形をすり合わせることにもっとも苦労しました」(青木さん)
100件以上の購入者インタビューやさまざまな関連商品の試食を実施し、「鮭明太」の「価値」や「ベネフィット」を明確化したという。
「22年のリニューアルでついに〝ジュワッと食感〟の鮭明太に辿(たど)り着くことができました。既存品にはない中身の設計にする必要があり、前例にとらわれることなく構築して、生まれ変わりました」(同)
詳しいレシピは〝企業秘密〟。食べたときにジュワッと味が染み出るような食感は、ドライのふりかけとは違う味わいとなっている。
じわじわと広がるふりかけの世界。好みの味を見つけてごはんを楽しみたい。
(ライター 三村路子)
みむら・みちこ
1973年生まれ。食や健康などライフスタイル全般の記事を取材&執筆。脚本家としても活動中で、映像制作も行う
丸美屋の人気ふりかけ商品ランキング
1位…のりたま
2位…味道楽
3位…混ぜ込みわかめ〈鮭〉
三島食品の人気ふりかけ商品ランキング
1位…ゆかり
2位…炊き込みわかめ
3位…ひろし/しげき