自分の血を残さないと音楽やってる意味がないんじゃないかって
メタル的な様式美もあって、ジャズ的なアプローチもあって、凄くハイブリットで雑種なものですよね。
そういうビジョンはどこから出てきたんですか?
柴崎さん:まあ創造性とか破壊性っていうのは、人に言われて初めて「あ、そうかもしんないな」って感じたことで
自分らで意識してることではないけども
上杉さん:あと、柴崎はセンシティヴな人なので、そういうのが得意で、攻撃的なアプローチっていうのがあんまり
得意じゃなくて、俺は殺伐とした感じというか。だからお互いに足りないところを上手く補って、素晴らしいものが生まれて
いくんじゃないかなと思うんですけどね
●結構、WANDS後期からグランジ的な要素を入れたり、歌詞も内面的でディープな表現になりつつありましたよね
だから、地続きな部分もあると思うんですが
上杉さん:そうなんですよね、実は。だから、WANDSにおいての上杉は嘘だったっていうわけでもないし。
そこは誤解されたくないんですけど。やっぱ純粋にいい音楽作って、感動して欲しいと思ってやってたし。
でもやっぱりそういうのは捨て曲としてしか捉えてもらえなかったという感じですかねえ、スタッフの人とかに。
ちょっとガス抜きのためにこういうのもやらせておこうっていう。だって次渡された曲って、物凄い爽やかな曲でしたから。
タイアップ「ドラゴンボール」でやってくれって(笑)
●「これはもう無理だ」っていう?
柴崎さん:だから、二人でそうじゃない方向に転がそうとしてたんですけどね
上杉さん:・・・でもWANDSに於ける表現方法っていうのはやっぱり枠があって。それを壊してしまったのは僕なんですが(笑)
それで売れてた頃の印象が人々の中に残っているんだってことを凄く痛感したし、自分もWANDSっていう看板があるがために
正当な評価がされないっていう感じを凄く痛感したし、これはちょっとファンにとっても自分にとってもよくないと思って。
・・・・ちょうどその頃カートコバーンが自殺して、彼が死んだ事によって「自分は何のために歌っているんだろう?」
っていうか、そういうことを根本から考えさせられたっていう「自分の血を残さないと音楽やってる意味がないんじゃないか」
って。それで、まあ、新しいことをやるんだったら、新しい名前でやった方がよりわかりやすいかなって
●なるほどね。で、一番最初に出した”TOY$!”を聴くと、ある種原始的というか、もろグランジだったんですけど、それは自然に
出てきたものなんですか?
柴崎さん:まあ、いろいろ精神的に爆発したい状況もあったと思うし。あと上杉のデモテープがあれ以上に炸裂してたって
いうのもあるし「これほんとにデビュー曲にしていいの?みたいな(笑)」
●そうですね。WANDS後期の曲と比較しても、ちょっと音楽的には後退してるかなって気もしましたけどね
柴崎さん:でも、「全然違うことを始めますよ」っていう意思表示としては正解だったなあと思いますけどね。
2人でやって面白いと感じてたのは、混ざりっけのあるものを一緒にやってると凄く可能性を感じたから、俺は
最初からオリジナリティーを追求したものをやってもいいと思ってたんだけど、周りからの見られ方を上杉が強く
思ってて
上杉さん:要するにロックバンドじゃないのと同じにされたくないと思ったんですよ。だから極めてわかりやすいものがいいかなって
●じゃあ、大雑把に言うとう上杉さんにとってのロックってどんなもの?
上杉さん:うーん、わだかまりとか、そういう感じ。俺、ロックって泣き声だと思ってるんで。例えば怒りだったり。
怒りっていうのは・・・・傷ついてダメージを受けて、その次に出てくるものっていうか
●”TOY$!”でそれを吐き出して楽になったんですか?
上杉さん:うーん・・・WANDS辞めるって決めた時期は、一番幸せで10キロも体重太っちゃったんだけど(笑)
楽になったっていうことはなかったんですよねえ。なんか・・・「もうついていけません」みたいなファンもいるだろうし
「いろんなこと言われるんだろうな」っていうのは最初からわかってることだから、周りの声に耳を貸さない状態に
なってたんですよ。そうすると、だんだん周りに期待しなくなってくるんですよね。何ていうか・・・「自分がよけりゃ
それでいいんだ」っていう、感触的には家でゲームをクリアーしてるような感じで。それでなんか全てに於いて
「だから何なんだよ?」って思うようになってしまって。例えば「腹減った、飯食いたい」っていうときも、立ち上がって
飯を電子レンジにチンしにいこうとするんですけどね、「飯食ったから何なんだよ?」とか。こっちで
「でも生きていくためには食わなきゃ」って言ってるんだけど、「長生きしたからって何なんだよ?」っていう
そこまでなってましたからね。「何だろうなあ・・・生きるっていう事に於いての夢だったり希望だったり、
活力に繋がる事が何もなかった(柴崎に)そういえばいろいろ助けてもらったもんね。普通じゃいられなくなりそうな
時に電話した事もあったし
柴崎さん:なんか「変な夢みた」とかね、そんな事を
上杉さん:ああー、そうそう。なんか寝てたら迎えに来たんですよ、女の人が。
目をつぶってるからわかんないすけど。金縛りみたいなやつですよ。耳元で「お疲れ様でした。参りましょう」って言われて
「参りましょうってどこに連れてかれちゃうんだよ?」とか思って。そういう厳格的な感じがね。えらい恐ろしかったですね。
まあ、2~3回ほどありましたね。・・・死を考えるというか、強迫観念っていうんですかね、そういうのにつきまとわれて
ましたね。・・・たぶん、ショービジネスっていうことの何たるかがわかっちゃったからじゃないですか
●売れたら売れたで前のようになるかもしれないしっていう?
上杉さん:そうですね・・・うん。向上心っていうのも「どこに対して向上していけばいいんだろう?」みたいな
だって基準は自分なわけじゃないですか。だから”TOY$!”っていうマキシで100%に近いメンタリティーを出せたんで
「これ以上続ける事に何の意味があるんだろう?」とか、「続ける事で壊れてしまう事もあるんじゃないか」とかね、
いろいろ、考えてたんですけど
柴崎さん:なんか自閉的というか、極度のマイナス思考というか、悲観的というか、卑屈な感じっていうか
●じゃあ、その後に出した”晴れた終わり”って以前の取材でも話してたけど、やっぱり自分でも救済のイメージが
あったの?
上杉さん:それだけですね。もう、とにかく「何で自分はこんなになっとるんやろ?」っていうのをーまあこれは
性格なんですけど、頭で落ち着いて考えて「あ、こうだからこうなってこうなんだ」って自分なりに解釈できないと
先に進めないというか、納得いかないんですけど、”晴れた終わり”を作った頃っていうのはほんとにドツボの中にいたんで
「とにかく助けが欲しい」って思いだけで作ったっていう感じで
●以前、”晴れた終わり”の「the day」っていうのはパーフェクトワールドなんだっていう話をしてましたよね。
上杉さん:いや。というよりは「そんなものはいつまで経っても来ない」っていうことはわかってるんだけど、
それを「来る」って歌うことによって、生きて待つしかないっていうところがあるんですけど
●だから、あの曲自体も単に待ってるっていう悠長さよりはー最後は「leav'n tonight」だし、最後に足を踏み出す方向で
しかないんだっていう、ポジティヴな意味での諦めとか、救いの曲ですよね。
上杉さん:ああーなるほどね。でも客観的に見ちゃうから、自分の歌で癒されたことってないんですよ。
・・俺ね、これは言うべきだなあって最近思えるようになったんで言うんですけど、音楽聴いて涙が出そうになったことって
なかったんですよ。「こんな足まで鳥肌立つような事なんて音楽のほかに絶対ない!」と思って音楽の職業を選んだんですけど、
泣いたことはなかったんですよね。でも、一番沈んでる時にーCOCCOの”Raining"って曲あるじゃないですか。あれがものすごい泣けて
あれには救われましたよ。ロックがどうのこうのとかっていう問題じゃなくて、単純に歌としてダイレクトにツボに入っちゃった
というか、懐かしい感じですよね。
●だけど、”晴れた終わり”に救われた人きっといると思いますけどね。
上杉さん:ああ、そうだと嬉しいですね
●”TOY$!”から始まったっていうのもあるけど、このバンドってドン詰まりのリアリティーから始まってる
バンドじゃないですか。
上杉さん:はい
●で、そこから、「終わり」とは「果て」い向かうイマジネーションの比翼力が凄く高いバンドだと
思うんですよね。
上杉さん:ああ。逆に言えば、それだけ生命に対する執着が強いっていう事だと思うんですけど。なんか極論で
物を考えてしまうところがあって。だからかなあ?・・・・なんか、”TOY$!"から”晴れた終わり”まで凄く長い
トンネルの中を歩いていたって感じがして、やっと今出口から出て煌煌とした陽を浴びて、なんか心身ともに満たされたって
いうか。なんですけど、またそのうちトンネルが来るのかなあって(笑)
そう思ってやってますけど
●でも、その光っていうのは現実に想像力が勝利したんだと僕は思うんですよ。
上杉さん:ああー、でも・・・作っては壊し、作っては壊しっていう感じなんじゃないかなあと。基本的な気質って
いうのは変わんないから。いや、何かね、生きるとか人生をテーマに歌ってきて、ちょっとこれか出来た事で完結した
ところはあるから、次は自分の中のほんとのメンタルな部分を出していこうと思ってる。
もっとパーソナルな俺の中にしかないような葛藤というか。うみがある事によって困惑してる感じとかはいっぱい
出してるんですけど、ウミ自体は出してないから。やっぱそこを出せてこそ、俺の中ではアートかなって感じがあるので
●じゃあ、この後にパッと光に満ちた世界が出てくるとは限らないんだ
上杉さん:そうですねえ、難しい。倦怠期ですねえ(笑)・・・やっぱりねえ、俺も柴崎も前のバンドを辞めた時点で
パーソナルなものを作りたいという気持ちが強くあるので、まあお互い噛み合ってる時はいいんですけど、
噛み合わなくなるとパーソナルなものはできなくなるから、本末転倒というか。難しいですよ、これからの方が。
俺、昨日スタジオから帰る時、「長い間ありがとうございました」とか言って帰ってきたし
柴崎さん:それが明けて今日インタビューだから「どうなっちゃうんだろう?」って思ってたんだけど。
だから、行方不明になるかもしんないです、al.ni.co(笑)
●でも、二人いてこそのハイブリットだろって気はしますけどね
上杉さん:うん、今はほんとにパーフェクトに近い形で自分のメンタリティーを反映させる事ができてるんで
だから自分が世の中からいなくなる時の「やり残した事」っていうのを消化してる感覚がありますよね
●後悔はない分、逆に「じゃあ明日何をやるんだろう?」という恐怖もあるという
上杉さん:うーん、そうだなあ、だから”TOY$!"の後はほんとにそんな事ばっか考えてたし
●で、それをまた音楽にすることで生きる事と契約更新する感じ?
上杉さん:ええ。それはすごい強いかもしれない
●なるほどね。あと凄く興味があるのが以前「現在進行形のロックをやりたい」っていう話をしていたんですけど
具体的に説明するとすればどういうもの?
上杉さん:具体的にですか?・・・例えばクイーンがロックにオペラを取り入れたように、ワールドミュージック
に非常に興味があるので、そこらへんの様相をロックっていうフィルターを通してやったら面白いなっていうビジョンは
持ってますけど。だから、チベットに修行いn行こうかなあと思っていたんですけど(笑)
●でも、何でチベットなの?
上杉さん:・・・ガキの頃の環境がそうだったからかもしれないっすね。うちの父親が木で出来た横笛あるじゃないすか。
あれで新聞に載るほど上手かったんですよ。いつもでんつくピーひゃラピーひゃラっていう演奏やってて。だから、何か
自然とそういうのを求めてるところもあるのかもしんないかなあ
●だから、やっぱり内面的なものだと思うんですよ。単にグランジ聴いて「あ、これ流行ってんだ」じゃなくて
例えば自分の破壊衝動を発見したりとか、まず自分ありきの音楽って感じがしたんですよ
柴崎さん:うん。自分の感覚を頼りに、忠実にやってるっていう感じがあるんですよね
上杉さん:うん。自分の中の価値観だったり、生きる事の意味を探したり表現したりする場所っていうか。
あくまでも自分ありき
●だから、みんなドン詰まりで、そこで何とか建設的にやりたいと思ったり、でも自暴自棄になって破壊衝動を
持ったりしてると思うんだけど、そういうのと同時進行の「現在進行形のロック」になってると思うんですよ。
だからリアルだっていう
柴崎さん:うん。そういう意味では自分らの独自の音楽だって言えるんですけど、新しいことをやりたいって言った時に
「これは過去存在なくして本当に新しいもんだ」って言い切れる自信はないんですよ。やっぱ。「○○っぽいね」とか言われ
たりするし。だからそのビジョンを達成するのは、ほんとにチャレンジっていうか。ハードルは高い気がしますけどね
●うん。WANDS後期って歌謡曲的なポジジョンでオルタナを取り入れていくっていう戦いをしてたと思うんですけど
今度は逆にディープでメンタルなものをやる、尚且つチャートにも勝負を仕掛けるっていう戦いをすべきっていうか
それを、期待してますんで。
上杉さん:うん。オルタナティヴって本来ジャンルじゃないじゃないですか、オルタナティヴっていう邦楽シーンに
於いてちゃんとした形でやって、ちゃんと正当な評価を得たバンドってないと思うんですよ。俺の中ではオルタナティヴって
凄くフリーダムなものっていうか、そういう感覚が強いんですけどほんとの意味でのオルタナティヴっていうのを出して
いきたいかなと思ってる
柴崎さん:そうですね。行方不明になりそうなんで、なんないようにしないと(笑)