三重・松阪市民病院の背任事件 元職員に有罪判決 名古屋地裁
三重県の松阪市民病院の物品発注を巡り、自身が実質的に運営する業者を仲介させて、水増し請求し病院に計約669万円の損害を与えたとして、背任罪に問われた元病院職員の岡本貴江(きえ)被告(40)=松阪市=に対し、名古屋地裁(久礼博一裁判長)は8日、「正規の手続きを大きく逸脱し、無意味にするお手盛りを繰り返し行っており、悪質性が高い」などとして、懲役2年執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。
弁護側は「業者の介在で的確な物品を低コストで調達でき、病院側に財産上の損害が発生していない」などとして無罪を主張していた。これに対し、判決は「不適切な取引の下で支払いが行われ、病院が知れば許容される余地はない」と指摘。「不正な方法で業者を介在させて利益を得た以上、病院に損害が生じたのは明らかだ」として、弁護側の主張を退けた。
判決によると、岡本被告は松阪市民病院で医師秘書として勤務していた2021~22年、呼吸器センターの広報活動などで必要な物品の発注にあたり、自身が実質的に運営するデザイン業者を介在させ、この業者から物品の調達を依頼した外注先への支払額に被告らの利益分を上乗せして病院に請求し、計約669万円の損害を与えた。
判決は「規定違反の手続きを、病院側が被告の言う通り追認する不適切な経理処理をし、犯行が容易になったところもある」などと指摘。酌むべき事情に挙げ、執行猶予を付けた。