藤田淑子 『ははうえさま』 (1975年) 宇野誠一郎研究① | 昭和レトロサウンド考房

昭和レトロサウンド考房

昭和レトロサウンド、昔の歌謡曲・和製ポップス、70年代アイドル歌手についての独断と偏見。 音楽理論研究&音楽心理学研究など

藤田淑子 『ははうえさま』 (1975年) 宇野誠一郎研究①
作詞:山元護久 作曲・編曲:宇野誠一郎

昨今、南無サンダーなる必殺技で妙なブレイクをしたアニメ「一休さん」(テレビ朝日系)のエンディングテーマ。
手紙の文章がそのまま歌詞になっていることを覚えている人は多いと思う。音楽の構成も「手紙の構成」を模したものとなっている。

 頭語 「母上様~お元気ですか?~」  4小節
 本文1 昨日あった日常の出来事前半  6小節
 本文2 昨日あった日常の出来事後半  6小節
 本文3 一休さんの決意または心情   10小節
 結語 「それではまたお便りします~」 8小節
     (※小節数はBPM=140として換算)

まず、リズム楽器の無い伴奏で 「母上様~」と静かに始まる。

次に “昨日あった日常の出来事” の部分のコード進行は、優しくほのぼのとした雰囲気。
C → Em → C7 → F → Fm6 → C→ F → C  を2回繰り返す。

ここで Fm6 は、私の好きな借用和音、同主短調のⅣmである。(サブドミ・マイナーとも呼ばれる)
上記コード接続により耳は、ド → シ → シb  と ラ → ラb → ソ  という心地よい流れを知覚する。
途中からさりげなくスイング伴奏になるのも心憎い。


それに対して“一休の決意または心情”の部分は
Am → Em → Am → Em → Am → Em  → Am → G → BbM7
 
と、マイナー基調のやや深刻な和音が続く。一休さんの強い意志、感情が表現されている。しかし、最後の「いつかたぶん~」では、希望を予感させる響き BbM7 (同主短調のⅦ)で締めくくる。

この一連の、 
静かな出だし → 優しくほのぼの → 深刻(真剣) → 希望の予感 → 静かに結語
という心理的構成は見事である。

後日書く予定の「さるとびエっちゃん」にも通じることだが、宇野誠一郎さんの曲は、流行スタイルにこだわることなく、子供にも伝わる心情表現に徹していて、それが上手だと思う。

私の大好きな藤田淑子さんの優しい声と相まって切なさ倍増である。

youtube動画  一休さん「ははうえさま」
AD

K_Sadaさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

SNSアカウント