〝クジラの胃腸〟廃棄部位に「可能性ある」 試行錯誤の末に製品化 魅力あふれる鯨革の工芸展・長崎県大村市
▶顕微鏡で見ると表面がキラキラと光り…
全国でも珍しい、クジラの皮や内臓を加工した革工芸に取り組む中山智介さん(45)=長崎県大村市水主町=の個展が、大村市本町の地域拠点施設「coto」で開かれた。 【写真】〝クジラの胃腸〟を利用した工芸品はコチラ 食肉需要が少なく廃棄されることもある部分を活用。中山さんは「クジラには捨てるところはないぐらい可能性がある。新たなエキゾチックレザーとして魅力を伝えたい」と話す。 江戸時代、大村藩には「鯨組」という捕鯨組織があった。鯨組をつくった深澤儀太夫は堤や人造湖造成などに利益を投じ、郷土の偉人として語り伝えられる。 鯨革はかつては使われていた歴史があるが、現在ではほとんど見かけないという。大村に縁の深いクジラを工芸品にしたいと考えた中山さんは、廃棄される部分に注目。「タケリ」と呼ばれるオスの生殖器を革素材にすることに成功した。 さらに2年の試行錯誤を重ねて今年、ヒャクヒロ(腸)、ヒャクジョウ(胃)をなめして製品化した。生のヒャクヒロには大型の寄生虫が入っていて取り除くのに苦労したそうだが、なめしたものを顕微鏡で見ると表面がキラキラと光り、細かい模様が浮いている。 「鯨革は今まで扱ったどんな革とも違う。クジラだけに水に強く、引っ張りに対する強度が強い」と中山さん。ヒャクヒロは厚みが0・6~0・8ミリと薄いが、強度は問題ないという。 捕鯨については賛否両方の考えがあるが、中山さんは「革工芸にすることで何十年も使い続けることができる」と考える。クジラのほかにも牛、カバなどさまざまな革を使っており、加工の際にでた削りくずを固めた「盛革(もりかわ)」という技法も考案。素材の約98%を活用できており、「100%にまで高めたい」という。
中山さんの工房「銀職庵水主(かこ)」=090(1975)7478。(今井知可子)
西日本新聞