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「未来がわからない時代を生きる」 ユルゲン・クロップに訊くRB大宮、新たな仕事、現代サッカーの課題と今後【独占インタビュー】

2025.07.22

インタビューに応じたクロップ [写真]=須田康暉

 2025年1月、ユルゲン・クロップ氏が監督業を離れ、新しい仕事をスタート。レッドブルグループのグローバルフットボール責任者に就任し、ヨーロッパ、北米、南米、そしてアジアと世界を駆け回る生活をしている。

 クロップ氏の管轄には、もちろん今年からレッドブルグループ入りしたRB大宮アルディージャも含まれる。2月の明治安田J2リーグ開幕戦を現地観戦し、初来日を果たすと、7月5日には2度目の来日でRB大宮の試合を再び観戦。その前後で、クラブスタッフなどともコミュニケーションを図っている。

 今回、クロップ氏の来日に合わせ、『サッカーキング』でインタビューを実施。レッドブルグループでの自身の活動や、RB大宮の評価や現状、FIFAクラブワールドカップ開催に疑義を示したことに対する現在のサッカーカレンダーとの向き合い方や、サッカーの変容などを語ってもらった。

取材日=7月6日
インタビュー=小松春生
写真=須田康暉、Getty Images

■予想不能だからこそ、みんなが試合を愛している

ユルゲン・クロップ

[写真]=須田暉輝

―――2度目の来日となりました。改めて、日本の印象はいかがですか?

クロップ 今回もすごくポジティブなものでした。もちろんこれまで約25年間、別の仕事をしていたこともあり、日本での経験を得ることはできませんでした。前回が初来日で、今回が2度目になりましたが、素晴らしいものになっています。私たちはすでにいくつかの変化を加え、多くのものを改善しました。昨日はアカデミーを視察しましたが、少しのものを変えただけで大きなインパクトがあり、雰囲気も本当に変わり、素晴らしいと思っています。でも、これはほんの始まりに過ぎず、大きな夢を描いています。

―――開幕戦のモンテディオ山形戦(○2-1)と今回のいわきFC戦(●1-2)2試合を実際に見たことを含め、RB大宮についての印象はいかがですか?

クロップ 私にとっての2試合目でしたが、全般的に素晴らしい進展があったと思います。結果としては、開幕戦は勝利して、今回は敗戦という真逆のものでしたが、それがフットボールですし、問題ではありません。今日、何人かの選手とは立ち話をしました。監督とは少しミーティングをしましたが、それは私がいるときは普通のことですし、いろいろな話をすることができました。フットボールの観点で言えば、素晴らしい発展だと思います。3位から昇格できることが普通のことと考えてはいけません。J3からJ2に昇格し、J2ですぐにトップチームになるのは極めて珍しいケースです。私たちはいいチームを持っていますが、少し難しい時間だったとも言えるでしょう。5試合連続で引き分けていましたが、おそらくすべて勝てる可能性もあっただろうし、3勝はすべきでした。昨夜の試合は普段であれば負ける試合ではなかったと思いますが、負けてしまった。これがフットボールです。予想不能だからこそ、みんなが試合を愛しているのです。全体的にはポジティブな進展なので満足していますよ。

■誰よりもオープンに、隠し事無しでシェアしている

ユルゲン・クロップ

F1のオーストリアGPを訪れた際のクロップ [写真]=Getty Images

―――2025年から新しい仕事を始められましたが、これまでと違う仕事をする中での驚きや喜びはどういったところにありますか?

クロップ エキサイティングなことばかりですね。フットボールにおいて、私が指揮した3つのクラブを比べることはできませんし、RB大宮とも比較しなければいけないのでしょうか? サッカーはサッカーですし、選手がいて、監督がいる。(その環境は)私とってはすごく身近なものです。何かを始めるということを、すごく大切にしているんです。マインツでは新しいものを見出す必要がありました。ドルトムントではクラブを軌道に乗せる必要がありましたし、それはリヴァプールでも同様でした。そしてここではエキサイティングな旅をするクラブをパートナーにできます。レッドブルが関わることはRB大宮にとっても、レッドブルにとっても大きなチャンスです。そして、スーパーエキサイティングな地域、スーパーエキサイティングな国、スーパーエキサイティングな大陸で、特別なプロジェクトに関わることができるんです。アジアの人たちがヨーロッパについてどの程度ことを知っているのかはわかりませんが、ヨーロッパの人たちは距離が遠いこともあって、アジアのことをあまり知りません。でも私は毎日学ぶことができるので、ハッピーなんです。そのことにすごく熱量を持っています。私たちは物事を変えることを望んではいません。物事を理解し、それを生かしていきたいのです。そして、改善の手助けになるのであれば、喜んでそうしたい。今はすごくオープンで、まだ毎日学んでいるところですし、より理解して、サポートしようとしている最中なんです。

―――一人の人間としても新たな成長、学びがあるということですね。

クロップ 今は新しい仕事をしていますが、その前に23年間やってきたことについては、何ができるかを、最後にはわかるようになりました。振り返ってみれば、驚くべきキャリアを歩むことができました。そのキャリアを積む中で、自分が何をしてきたかを理解できたのだと思います。私は常に学ぶ人間なので、新しい何かをしたかったんです。人生において、誰もが学んでいきますが、今、私は“真の学習者”ですね。新しい仕事を始めてまだ6カ月ほどですが、すごく濃密なものになっています。同時に他の大陸でも同じような仕事をしているからですね。でも、この挑戦は大好きですし、この仕事を始める前には力になれるか、100パーセントの確信を持てていなかったんですが、半年が経過して、今は自分が力になれると確信を持っていますし、それがすごくうれしいんです。私の経験を誰よりもオープンに、隠し事無しでシェアしています。サッカーの質問や人生の質問についてですね。58歳になりましたけど、もし質問があるようなら答えられるかもしれませんね。

■カウンタープレスは提案ではなく、規範

ユルゲン・クロップ

[写真]=須田康暉

―――選手をスカウティング、評価などをするときに大事にしていることは何でしょうか?

クロップ 一つのクラブをスカウティングするだけでも難しいことですが、それが6つのクラブともなれば不可能なので、専門家たちの助けが必要です。ただ、やはり明確なアイデンティティと、明確なフィロソフィーは作り上げないといけません。レッドブルグループにいるのであれば、同じようなやり方でやらないといけません。そうでなければ、影響力を持つことができず、世界のいろいろな場所にクラブを持っている“だけ”になってしまいます。「勝ったね!素晴らしい」「負けてしまったね」というだけになる。そうなってしまっては残念なことです。だから一つの道を進むんです。そのために、レッドブルはいくつかの方針を持っていて、それをすべてのクラブに持ち込み、壁に掲げました。一つは強度であり、それが私たちのアイデンティティですし、カウンタープレスは提案としてあるものではなく、規範なんです。それがなぜそうなのかについて説明にするには時間が短すぎますね。でも、もっと頻繁に足を運ぶことになるでしょうし、それについて話すこともできると思います。

私は何かを作り出したいし、安定したものを作り出す手助けをしたいと思っています。もし安定した場所にいれば、そこからジャンプできる可能性があるからです。すべてに取り組むことができれば、頑張ることができます。少しでももろいところがあると、向上も成長もできません。だからこそ、安定を作りたい。フットボールにおける安定をここで作り、そこからここにいる人たちにそれぞれの仕事を遂行してもらいます。みんな才能があり、優秀で、いいチームであり、素晴らしいコーチがいて、すべてがそろっています。次のステップに進む準備ができていますし、それは私たちが人生において、常にしなければいけないことです。だから本当にエキサイティングなんです。サポートすることも、彼らを助けることも、すべてが好きです。だから、どうなるか見てみましょう。何度も何度も時間があるわけではありません。10年、15年と待つことはできません。でも急ぐこともできない。だからこそ、正しいタイミングで、正しいステップを踏もうとしているのです。まだ若く、まだ早い。予定よりは早く進んでいるかもしれません。でも、昇格するために全力を尽くすことを望んでいないということは、決してありません。それが実現しても、改善しなければいけませんし、実現しなくても、改善しなければいけません。そういうものであり、それは変わらないものです。私たちはすごくエキサイティングなものだと思っていますし、ポジティブですし、楽観的でもあります。

■プロ選手は教育、練習、両親など環境の賜物

ユルゲン・クロップ

[写真]=須田康暉

―――現代サッカーではよりチームでの戦術が大事とされていますが、個人の才能とのバランスについてはどう考えていますか?

クロップ 今、私たちが目にする世界最高のリーグでプレーしているプロの選手たちは、教育の賜物であり、トレーニングの賜物であり、両親や友人といった環境の賜物です。現在の彼らが優れていることは、よりよい教育を受け、よりよい指導を受け、よりよいトレーニングを積んでいるからです。だからフットボールクラブの主な責任というものはそこにあるのです。私たちはアカデミーに重点を置き、情熱や愛情、創造性を注いでいきたいと考えています。もし埼玉や東京に住んでいないのであれば、どこでプレーしてもいいのですが、もし住んでいるのであれば、ここが両親にとって子どもを通わせる一流の場所として簡単に選んでもらえるクラブにしたいと考えています。そうすれば、私たちも責任を持って、最高のトレーニングをすることができます。

サッカー選手として、と考えるときには、理想的な世界で言えば、技術的に完璧でなくてはなりません。それはボールが来て、それをコントロールする必要があるとき、考えることなく、本能で動くことです。それは誰の責任になるのか? 子どもなのか、女の子なのか、男の子なのか、コーチなのか。おそらくそのすべてでしょう。では、私たちができることは? 戦術やフィジカルなどその他のことは、成長して大人になっていくことで、筋肉や持久力がついていくように、あらゆることが良くなります。でもテクニックについては、一番深く学ばなければいけません。皆さんもご存じの通り、歩けるようになるのは1歳か2歳くらいのときです。それは練習を重ねるほどに完璧なものになっていきます。フィジカルもそうです。そういったことを練習すれば、ついてきます。

試合での戦術的な部分は後で教えることができるし、指導もできます。だから何よりもまずやらないといけないことはこれ(テクニック)です。そうやって選手が生まれるんです。男の子も女の子も関係なく、同じです。そして私たちは彼らが最高の選手になるために最高のスキルセットを与えられるよう、そこにフォーカスしているんです。

そこに私はいつも喜びを感じていましたし、若い選手に輝く機会を与えることにいつも興奮していました。そして、いつかRB大宮がJ1でもっとも若いチームになる日が来るかもしれません。明日すぐなるものではなくて、将来的なことです。もっと言えば、RB大宮の試合を見逃したくなくて、スタジアムに来られなくても、テレビで見たくなるようなチームになる日が来るかもしれませんね。

■私たちは未来がどうなるかわからない時代を生きている

ユルゲン・クロップ

[写真]=須田康暉

―――先日、インタビューでFIFAクラブワールドカップの開催に異を唱えていらっしゃいました。現代サッカーでは過密日程、選手の疲労問題があります。

クロップ 報道を読まれたのですね。何度も言う必要はないですし、私の意見は誰もが知っています。私が信じていることは、全員がベストを尽くせるため、いい準備が必要だし、フィジカルスポーツをするということはトレーニングが必要で、誰もが回復する時間が必要だということです。日常生活が激しいものになるほど、回復の時間が必要ですし、そうでなければどんどんすり減っていく。人間とはそうできているものです。意思の強さで決められるものではありません。1度、2度、3度できても、4度目は体がもたない。だから私は選手たちが十分な休養を取れるように戦いましたし、その一方でコーチとしては十分なトレーニング時間が必要でもあります。1週間、フルでトレーニングできるのであれば問題ありません。ただ、屋外で、この暑さや湿度の中でトレーニングしなければいけないと考えるだけで大変ですし、とても楽しめるようなものではありません。1日1、2時間やるなら問題はないですが、その後に回復をしなければなりません。そういうことです。それでいいのであれば、私はそれでいいと思っています。選手は絶対にすべてを捧げなければいけませんし、それを私は望んでいます。そのために高い給料をもらっているなどはありますが、ある程度の休養は必要です。そのことだけを言っています。23年間、この仕事をしてきましたが、その差は明らかです。ただ、15年ほどは、私たちは3日に1回、試合をするような状況でした。回復の時間は本当にありませんでしたし、だから折を見て、この話をするんです。今、この仕事においては、この問題があるわけではないので、深く考える必要はない状況ではあります。

―――休息の話もありましたが、現代サッカーは出場選手全員がさらにアグレッシブに戦うことを求められています。ここからの将来、サッカーはどういった変容を遂げていくと思いますか?

クロップ もし試合数を減らさないのであれば、チームの選手数を増やす必要があります。それは簡単な解決策です。何もなければ…、例えばすぐに回復できる飲み物のようなものが発明されなければ、ベストの状態に戻すことに努めるしかありません。だから、選手がさらに必要なのは確かです。でも、それ以外の本当の意味での変化がないことも願っています。最近の変更で言えば、交代枠を5人にしたことは非常に役立ったし、正しい方向へのアイデアだと思います。私たちはそのために必死になって戦い、懸命に声を挙げ、張り続けなければいけませんでした。そしてようやく誰もが「本当に必要なのでは?」と思うようになりました。試合経験がなかったり、20年以上も試合から遠ざかってしまうと、その激しさを忘れてしまうものですから。でも、もういいんです。他にもちょっとした変化がありますしね。フットボールのどこを変えた方がいいのか、考えたこともなかったんです。今のゲームに満足しているので。できる限りのいいプレーがあれば、それが私にとっては最もスペクタクルな試合になるんです。見ていて、私にとって最も激しく、最も楽しい試合です。だから、今のままで満足ですよ。

―――レッドブルグループ全体としては、どのような未来を創っていきたいですか?

クロップ エキサイティング。エキサイティングな未来、楽しい未来、一緒に楽しめる未来です。私たちは未来がどうなるかわからない時代を生きていると思っています。いくつかの部分において、スポーツとはシリアスなことから少し離れることができるものだと思っています。「OK, Come on」と言えるもので、自分にとっても、体にとっても、いろいろなことにいいことがあって、簡単に楽しめるものです。私はその一部になりたい。RB大宮のファンベースの一部になりたいですし、初めての試合を見に行くこともそうですし、そういったいろいろなことがあるので、私たちは光り輝く展望を示したいと思っています。レッドブルは他のスポーツについても、その象徴です。何をするにしてもレッドブルのヘルメットを被ればスーパーエキサイティングですしね。私には危険すぎることがほとんどなので、フットボール部門でハッピーですし、飛行機から飛び降りる必要はありませんが、私たちもエキサイティングでありたいです。地域全体の一部でありたい。私たちは人々が望む、よりよい場所になりたいと考えています。

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By 小松春生

Web『サッカーキング』編集長

1984年東京都生まれ。2012年よりWeb『サッカーキング』で編集者として勤務。2019年7月よりWeb『サッカーキング』編集長に就任。イギリスと⚽️サッカーと🎤音楽と🤼‍♂️プロレスが好き

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