須坂市動物園日記 - 須坂市動物園飼育スタッフから情報発信!
須坂市動物園日記
投稿の詳細: トラの臥桜(オス)が亡くなりました
2025/12/07
トラの臥桜(オス)が亡くなりました
11月中旬から展示をお休みしていたトラ(ベンガル系)のオスの臥桜(がお)についておしらせです。
臥桜は12月3日に老衰のため亡くなりました。
詳しい死因は検査中ですが、腎不全の疑いがありました。
展示のお休みのおしらせで、多くの方から暖かいメッセージをいただいていましたが
再びみなさんに会っていただくことが叶わず残念です。
臥桜は今年の6月に20歳を迎え、今年8月に亡くなった双子の未桜♀とともに国内飼育中のベンガル系のトラでは最高齢でした。
未桜が亡くなった後の数か月間「国内最高齢」を背負ってトラらしく、時に猛獣のトラであることを忘れてしまいそうなくらい穏やかな表情も見せてくれました。
ずっと一緒に過ごしてきた双子の未桜が亡くなった後、臥桜を心配する声がたくさん聞かれました。
未桜が亡くなって少し経つと様子がおかしいなと感じるようになり、そのせいか少しエサを食べる量が減った時期がありました。
猛暑の影響もあったかと思いますが、エサの回数を増やしたりエサの内容を変更するなど対応していました。
夏を乗り切り、ようやく心地よく過ごせるような気候の頃にはエサを食べる量も安定して、1頭で過ごすことにも慣れたように感じました。
しかし、11月の上旬から食欲不振になることがあり、体調がすぐれない日も見られたため11月中旬から展示をお休みしていました。
来園された方にはご理解をいただき感謝しております。
また、おしらせに対して多くの暖かいメッセージをいただいたり、これまでにおいしいプレゼントもいただくことがあり食欲不振の際には大変ありがたかったです。
これまで会いに来てくださったみなさん、sns等や各方面から応援していただいたみなさん、ありがとうございました。
12月7日(日曜日)よりトラ舎寝室前に献花台とお別れノートを準備いたします。
雨や雪の心配がある日は、お別れノートは「動物園交流施設ふれんZOO」にあります。(ペンギン舎隣)
献花台の設置終了期間は12月28日(日曜日)といたします。
「トラの臥桜について」
種類:トラ(ベンガル系)
愛称:臥桜(がお)
性別:オス
生年月日:2005年6月9日
入園日:2008年3月17日
出生場所:秋吉台自然動物公園サファリランド(山口県)
第4回須坂市動物園代表動物選挙で第四代代表に任命。任期2014年4月1日~2015年3月31日
第13回須坂市動物園代表動物選挙で十三代代表に任命。任期2023年4月1日~2024年3月31日
「須坂市動物園で過ごした臥桜」
臥桜は、双子の未桜と一緒に須坂市動物園に来園しました。
もうじき3歳になる頃に来園した若い臥桜はここ数年の穏やかさとは違って勢いも見られた記憶です。
もともと好奇心旺盛で、気になるものに先に寄っていくのは臥桜でしたが、
臥桜の確認中に未桜が横取りするというような関係が見られることがありました。
若くてパワーもあるはずですが、その頃から未桜には敵わないという臥桜でした。
大概は別々の場所で休息します。
たまに近くで休息することがあっても、気分よく寝ている未桜の隣で臥桜はガッツリ寝入ることは無いようでした。
左:臥桜 右:未桜(仰向けで寝ている)
奇跡的に臥桜が未桜の近くで気を緩ませている場面に遭遇したことがあります。
臥桜が仰向けでゴロンと寝転がってる様子で、ほぼ警戒心が無い状態で、未桜も何か仕掛ける様子も無くめずらしい様子でした。
何度かトラの解説の中でお話してきたのですが、
通常、成獣のトラは単独生活をしますので動物園などでもなかなか展示場で成獣2頭を一緒に展示していることはあまりないかと思います。双子の2頭は前施設で幼少期から一緒に過ごしてきたこともあり、来園当時の緊張緩和のために同時に展示場へ出すようにしていました。特に未桜は警戒心が強く展示場へ出ることに時間がかかりましたが、臥桜が先に展示場に慣れたことで未桜も出かけられるようになりました。その後の様子次第では別々に展示することを検討しなくてはならなかったのかもしれないですが、結局2頭は老後まで一緒に過ごしていました。2頭ともきょうだい喧嘩の小傷はいくつもありましたが特に臥桜。
今年の夏、未桜が体調不良で展示場に出られなくなり臥桜だけで展示場に出る日が続き、2頭のお別れの準備期間のような日々がありました。そして、未桜が亡くなり寝室へ戻っても隣に誰もいないという状況が始まりました。亡くなったばかりの頃は匂いもあったせいなのかそれほど気にしている様子は見られず、展示場でも怖い思いをせずにのんびり過ごせることに安心感すら見えたくらいでした。
しかし、やはり何か変だと感じ始めたようで食欲があまり無い日が見られるようになり、
こんな代役を頼みました。
ほぼ等身大のトラのぬいぐるみを未桜の寝室に置きました。
臥桜の寝室から見るとこんな感じです。
表情は未桜とは違うかなと思ったので顔は見えないように後ろ姿です。
ぬいぐるみを置いて初めて寝室に戻ってきた臥桜は、隣の寝室に向かってトラの挨拶「鼻鳴らし」をしました。
気づいてくれたようです。しかもトラとして認識してくれたようで
このぬいぐるみ、なかなかリアルで自分で置いたのにしばらくは獣舎に入るたびに「わッ!」と驚いたくらいです。
常に同じポーズでは?と思い、臥桜が展示場へ出かけている間に向きやポーズを変えたりしていました。
臥桜がいつまで信じてくれていたのか分からなかったのですが、少しは食欲不振奪回になったのではないかと思っています。
11月展示お休み中のようす
寝室内で穏やかに過ごす日々が続きました。
徐々にできなくなることはありましたが、心地よさそうな寝顔はよく見られました
臥桜はみなさんにとても愛され、須坂市動物園代表動物選挙で2度も代表に選ばれました。
2回目の代表になった時には、須坂技術学園さんの協力で臥桜と未桜の「しっぽと肉球」をイメージしたパンを作っていただき、その年の2頭の誕生日会や動物園まつりなどで販売し、多くの方に喜んでいただきました
臥桜の特徴
「目の上のマル模様」
臥桜と未桜の見分け方は?と聞かれたときは顔をみてくださいとお伝えしていました。
「しっぽには【の】の字が隠れていた」
トラのしま模様は体のどの部分もみんな個体ごとに違います。
「ちょっととぼけた表情が多い」
そんなつもりは無かったのだろうけど、トラとしての威厳はどこ行った?と思わせてしまうような表情の多いトラでした。
口半開きの脱力
「早食い」
肉食動物は口に入ればおよそ丸呑みする動物なので良いのですが、未桜に比べるとものすごい速さでガイドをしていてもすぐに終わってしまうときはちょっと困ったくらいです。
今年の春くらいまで臥桜は鶏頭が大好きで、まるでスナック菓子を食べるように止まらず食べていました。
ちなみにこちらは鹿の肋骨を食べているところですが、しっかり前足で抑えて食べています。未桜に取られないようにというのもあると思います
「好きなこと:日光浴」
狭いところでちょっと隠れて心地よい陽を浴びる
11月の上旬、小春日和を楽しんだ臥桜
臥桜と未桜の愛称は公募で決まりました。たくさんの応募の中から飼育員がいくつかチョイスして最後は来園者の方々に投票していただきました。「臥桜」の愛称を考えてくださった方は「臥竜公園の桜」とトラの鳴き声のイメージの「ガオー」と連想して命名されました。皆納得の素敵な愛称で、来園者の方からも「カッコいい名前」と好評でした。
毎日展示場へ出かけることは楽しそうでしたが、未桜の機嫌を伺う大変な日々でもあったかもしれません。撮影カメラが苦手だった未桜の代わりにテレビに出演する回数の多かった臥桜。トラのカッコよさも見せつつ、穏やかな表情が魅力的なトラでした。
これまで臥桜に関わってきた主担当飼育員は6名です。副担当として携わった飼育員も多くいます。
私がトラを担当した時、既に2頭は高齢期に入っておりこれから何が起きるだろうと不安なことも多かったです。
しかし、ありがたいことに2頭は高齢であることを忘れそうなくらい健康に過ごしてくれました。
来園者の皆さんからも「毛艶がいいね」とお声をかけられることも多く、自慢のトラでした。
臥桜の死亡により須坂市動物園で飼育しているトラはいなくなりました。
今後のトラの飼育については、飼育環境などをふまえ園内で検討していく予定です。
トラの魅力についてまた違った形で皆さんにお伝えしていくことも考えていきたいと思います。
ありがとう、臥桜