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仮払い申請が通ったので、ホームセンターに出かけるというサマナの車に一緒に乗せてもらうことにした。


ホームセンターに行く前に寄る所があるといって富士の道場の前を車が走り出したのだが、進行方向がいつもと逆だった。


「あれ、どこ行くの?」と聞くと、「かみく」という答え。


「かみくって?」と聞くと「山梨に印刷工場が出来たんだよね。」という答えだった。



「へ~、そうなんだ。」と思いながら、かみくの印刷工場とやらに到着してみると。


はっきり言ってそこは酷い有様だった。


普通の生活ならあるはずのライフラインがない。


かろうじて電気は発電機でなんとかしているようだったが、水道もガスもない。


トイレは工事現場にあるようなレンタルトイレが並んでいるだけ。



これじゃあ食事も作ることが出来ないなあ。


みんな飲み水はペットボトルに入れて持ってきているんだろうかと心配になった。


印刷ミスをしたかのような大量のロール紙が散乱し、まるで廃墟のようだった。



買い物から帰ってくると広瀬がやってきて、「今やっているワークがあるんだけど、手伝ってくれませんか?」と言ってきた。


これはきわめて異例のことだ。


広瀬はCSIの所属なので、よその部署の人間に協力を要請することは普通は有り得ない。


「ああ、いいよ。何やってんの?」と聞くと、秘密のワークなのでそれは言えないという。



ただ、いつもやっていることをやってもらえればいいだけだという話しだったので、それじゃあ手伝いましょうということで話がまとまったのだが、「遠藤に話しをしなきゃいけないなあ。」と言うと広瀬は答えた。


「もう麻原には許可はもらってあります。」


いったいどういうことだと思ったが、そういうことなら誰も文句を言う奴はいない。


それじゃあ、また後で呼びに来ます。ということで広瀬は帰っていった。

次の研究テーマはクロレラの培養だった。


クロレラよりも大型でタンパク質の量が多いスピルリナも候補にあがっており、印刷工場との兼ね合いも有るが大日本インキに問い合わせをする予定でいた。



実はオウムは食料について様々な研究を行っている。


一応ロータスビレッジ計画の一環ということになっているが、いかにしてサマナの食事の出費を抑えるかという意味もあったように思う。


このときも気が早いもので、クロレラを分離する遠心分離はすでに購入済だった。


遠心分離機といってもよく見かける試験管を入れる小型のものではなく、ネジなどの工業品から加工のときに使う油を取り除く大型のもので、目の細かいフィルターを使用するものだった。


培養に使う大型のガラス瓶はあったのだが、培養液を循環させるためのポンプ、温度を一定に保つためのヒーターとそのセンサー。


そしてポンプを一定の間隔で作動させるための24時間タイマー。


クロレラの栄養源として、とりあえずメタン発酵の液肥を使うことにした。



オウムでは仮払い申請をして経理の許可が出ると買い物が出来る。


ようするに石井の許可がないと何も買えないということなのだが、申請書(とはいってもただの紙切れ)を書き上長のハンコをもらおうと思ったのだが、遠藤は出かけていたらしく留守だった。


そこへ村井が通りかかったのでハンコをもらうことにした。


村井はいつもハンコを持ち歩いており、ほとんど盲判だった。



遠藤はCMI(後の第一厚生省)で村井のCSI(後の科学技術省)とは部署が違うのだが、おなじサティアン内ということで村井のハンコでもいいことになっていた。


申請書に一通り目を通してから村井が、「君もやってるんか。」と言ってにやりと笑った。


「同じワークやな。」そう言って一人で納得し、去っていった。



このとき、僕にはまだ、村井の言葉の意味が理解できないでいた。

これも当たり前のことなのだが、糞尿を投入してメタンガスを発生させたからといって、 投入した糞尿が消えてなくなるわけではない。


そのまま溜まり続けるので外に出してやらなければいけない。



メタン発酵の場合も堆肥の発酵と同じように完全に発酵が終わればいい肥料になる。


堆肥の場合のように好気性発酵で発熱して殺菌するのとは違うが、メタン細菌の場合は嫌気性発酵で酸素のない状態で雑菌は死滅する。


問題はどこから取り出すのかということだが、この発酵槽には取り出し口がない。


本来なら投入口の対角線上の反対側に取り出し口をつけるべきなのだが、今更遅い。


投入口から取り出すしかないのだが、それでは投入したばかりの未発酵の糞尿が出てきてしまうことになる。


さらに言うならオウムは殺生になるからという理由で農業はやらない。


肥料があってもどこにも使う場所はなかったのだ。



そしてさらに冬場対策が絶望的だった。


ある程度の温度がなければ発酵しないのだが、冬は外は地面が凍りつく寒さとなる。


温めるための熱源もなければ、ヒーターやポンプを使うための電源もない。


オウムというのはいつもそうなのだが、これでもかというぐらい杜撰な計画で見切り発車してしまう。



それでメタン発酵のワークはこれにて終了ということになるのだが、このころあるサマナからボツリヌスという言葉を聞いた。


初めて聞く言葉であったのだけど、なんでもからしレンコンで食中毒を起こしたことがあったらしい。


ボツリヌス菌は嫌気性細菌だから普通の雑菌が生きていけない環境でも増殖できるという話を聞いて、なんだメタン細菌と同じだなと思って聞き流し、その場は終わった。



ちなみにこのサマナは温熱で死亡し、今はもういない。

CBI(後の建設省)っていうのは凄いもので、何でも作ってしまう。


この時もメタンガスの発酵タンクはすでに完成していた。



道場の裏手に深さがおよそ3メートル、横3メートル、奥行き5メートルほどのコンクリート製の水槽があり、その脇から上に向かって斜めに水路が伸び地上の投入部につながっていた。


水槽の上には内側にぴったりはまるように四角いおわんのような鉄製の蓋が乗っていた。


腐食を防ぐためのコーティングがされ、水槽の上部の引っかかりの上に乗るようになっていた。



それと同時にバキュームカーを購入し、汲み取り作業用の作業着とでも言うべきものやゴム手袋も用意した。


まさか出家して汲み取りをやることになるとは思ってもみなかったが、バキュームカーの操作は以外に簡単だった。


完全にではないけれど一応秘密裏のワークなので夜になるまで待って、正面からではなく裏手のサティアン側から車をまわす。


ぐるぐる巻きになっているホースの先を引っ張り出し、一本背負いのような体勢で歩きながらホースを伸ばしてゆく。


汲み取り口の蓋を開けてホースを入れたら一旦車に戻って汲み取り用のレバーを引く。


後は便槽の中を覗きながら吸い残しがないようにホースを動かして、ホースを引き上げるときにバケツに用意しておいた水をかけて洗う。



次に発酵タンクまで車を移動させて、投入口から放出。


これはもうビックリするような勢いで糞尿が飛び出していた。


そこへすでに発酵が進んでいたドラム缶の中身を投入、こちらでも同じようにガスの発生が確認されたがまだ問題は残っていた。

次の問題は水分量。


当たり前のことだけど、水からはメタンガスは発生しない。


動物の尿は単独でもガスの生成に十分な濃度が有るそうなのだが、人間の尿は水分が多く発酵には向いていない。


おまけにガージャカラニーで吐き出した水までトイレに捨てている奴までいる。


もちろん、塩分もよろしくない。



それで思い出したけど、未解決事件 オウム真理教秘録の記者は歳が若いせいもあるんだろうけど、やはり情報量が不足しているように思える。


ガージャカラニーも知らないんだなあと思いながら読んでいたんだけど、これは法律の条文を知らずに法律の記事を書いているようなものだと思う。


オウムの教義は1年や2年でその全体像を把握することは不可能だとは思うが、情報量が不足したままで個人の意見を事実の様に書いてしまうのは避けてもらいたいものだ。



それで、水分量を調整できればいいんだけど、つまりうんことおしっこは別々にためておいて後で適切な濃度になるように混ぜ合わせるってことですが、不可能だよねそんなことは。


まあ、始めっから無理だろうこんな計画、と個人的には思うんだけどそれでも突き進んでしまうのがオウムの恐ろしいところ。


実は着々と計画は進んでいるのでした。