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生活班でも不思議なことが行われていた。



夜遅く僕がワークをしていると、バタバタと足音がして村井と遠藤が圧力鍋を持ってやってきた。


そして、それを火にかけた。


圧力鍋は全部で3つあったと思う。



村井が残り、遠藤がもうひとつを取りに行って戻ってきた後、しばらくして石井の肩に手を置いた麻原がのそりと姿を現した。


麻原の巨体が音もなく動いているのは、いつもの事ながらなんだか不思議な気がする。


村井が何か説明していたようだった。



麻原は最後に「しっかり、頼んだぞ!」と言い残してサティアンへ戻っていった。


遠藤もサティアンへ戻り、一人残った村井は圧力鍋をまるで守るかのようにそばに立っていたが、やがてシュウシュウと蒸気の漏れる音が聞こえてきた。


しばらくの間時計を見ていた村井が、「よしっ」と言って火を止めた。



背もたれのない丸いパイプ椅子の上で蓮華座を組み、僕に「寝てたら起こしてくれるか。」と言って村井は瞑想を始めた。


20分ほどした頃だろうか、ふと村井を見ると舟をこいでいたので声をかけた。


目を覚まし、時計を見た村井は「そろそろええな」と言って、生活班から借りた台車に圧力鍋を3つ乗せてサティアンへと運んでいった。

もう20年以上も前のことなのでどういう順番だったのかは定かではないが、道場の中にも動きがあった。


ある時、道場の2階に上がるとそこには奇妙なものがあった。



天井から床までビニールが張り巡らされていた。


イメージとしては蚊帳のような感じ。


四角い箱型にビニールをつなぎ合わせて天井から吊り下げ、床の部分のビニールはかなり余って広がっている。



遠藤の実験室で見たビニールと同じだなと思いながら、道場全体に目をやるともうひとつ不思議なものが目に飛び込んできた。


外気を取り込むためのダクトに、これまた仰々しいまでの分厚いフィルターが取り付けられている。


これはいったいなんなんだとサマナに聞いてみると、核シェルターという答えが返ってきてびっくりした。


いろんな意味で驚きでしたね。


核シェルターだなんて、そんな突拍子もないことを誰が言っているんだ。


それを君は信じているのか。



他にも色々考えましたね。


核シェルターって事はどこかで核戦争でも起こるのか?


しかも、その放射能から身を守る核シェルターがビニール1枚って。



2階の道場の畳の上で突っ立ったまま、しばらくぼぉ~としてしまいましたね。


しかし、どれほど考えても理解不能。


こういうとき僕だけでなく他のサマナでも同じだと思うんだけど、ジョジョに登場する敵キャラのカーズみたいになってしまう。


「考えても答えが出ないので、そのうちサマナは、考えるのをやめた。」



これがオウムのマインドコントロールの怖さなのだと思う。

オウムが何かやり始める場合、最初に動くのはCBIである。


建物がなければ、CSIもCMIも動きようがない。


そして、そのCBIの動きの前兆になるのが測量である。



道場の裏手の空き地で測量をやっていたので、何をやっているのか聞いてみると馬小屋を建てるらしいことが分かった。


本気で馬を飼う気なのかと思ってびっくりしたが、これとは別にもうひとつの動きがあった。



それまでの人生経験では見たことがない、大量の鉄板と鉄骨。


ビルでも建てるのか?と思うほどの鉄の塊を使って、朝から晩までぶっ通しで溶接作業が行われ始めた。


夜、作業を終えたCBIのサマナに話を聞いてみると、目をつぶるとずっと火花が見え続けて眠ることが出来ないと言って嘆いていた。



時間の経過とともに、その鉄の塊の正体が明らかになっていく。


いったい何に使うのか分からないが、とてつもなく巨大なタンクだった。


そのタンクをいくつも作り、10トントラックに乗せてどこかへ運んでいく。


馬小屋のほうは、軽トラに山盛りに積んだ藁をテレビでしか見たことがなかった先が3つに分かれたでかいフォークのようなもので地面に下ろしているのを見ると、いよいよだなという気がしてきた。



おそらくだけど、僕も含めてその時富士の道場にいた普通のサマナたちは、馬小屋と巨大タンクの意味を知らなかったのだろうと思う。

面接で中川は不思議な質問をしてきた。


最初は「何か他のワークをしたいと思っていますか?」


続いて、「動物は好きですか?」


そして、「動物の世話をするのは好きですか?」



僕はいったいどういうことなんだと思いながら乗り気のしない返事を繰り返していた。


遠藤は少しは離れたところで、黙ってこのやりとりを聞いていた。



質問は続く、「馬は好きですか?」


「競馬はやったことはありますけどね。」


「馬を飼うのは好きですか?」


「はい~?」



馬券を買うんじゃなくて、馬を飼うってどういう意味だ?


知っている人は知っていると思うが、オウムには厳しい戒律があり動物と触れ合うことは禁止されている。


さらに「馬の世話をしてみる気はありませんか?」と聞いてくるので、「いったいどういうことですか?」とこちらが逆に質問をすると、「馬を布施される方がいまして。」という返事。



なんだそれは、馬って布施するもんじゃないだろう。


そう思いながら面接は終了したが、この後直ぐに僕の代わりに馬の世話を押し付けられる哀れな犠牲者が決定する。

なぜ広瀬が僕に協力を求めたのかは分からない。


色々調べてみると、麻原はこの25人で行くと言ったらしいのだが、その中に僕は入っていない。


そして、僕がこの後行うワークは基本的には、村井、広瀬、僕ともう一人。


別の場所で中川、遠藤ともう一人。


後はチラッと林(小池) 泰男が登場するぐらいで25人もいない。


CBIの連中がいるにはいるんだけど、彼らは自分たちが何を作っているのか分かっていないだろう。



広瀬はもう外に出ることは出来ないから、謎は謎のままかも知れない。


まあ、どうせたいした理由じゃないだろうから聞いても仕方ないかもしれないが。



村井、広瀬とはまた別のところでも動きがあった。


サティアンにいるサマナを相手に、中川の面接が行われたのだ。


場所は遠藤の実験室。



中川はサティアンの部外者なので、なぜサティアンへの立ち入りが許可されたのか不思議な気がした。


まだ当時はAHI(後の治療省)も発足しておらず、麻原の主治医と呼べるのは平田だった頃なので、中川がサティアンにいるということは何か特別な理由があるということなのだろうと思った。


噂で聞いた中川はとても霊性が高く、たくさん神秘体験をしているということだったが、実際に会ってみるととても柔和な若い先生という雰囲気だった。


が、しかし、何か違和感があった。


上手く説明できないが、何か奥に怖いものがある。


そんな気がした。