培養開始から丸二日たったころ、もう一度遠藤がやってきた。
ひととおりデータを確認した後、今度は何も言わずに出て行った。
そしてしばらく経った後、今度は村井がコンテナの入り口から顔を出した。
このときの村井はなんだか嬉しそうな顔をしていたように思う。
テレビの再現ドラマでは村井は暗くおどろおどろしいイメージで登場しているが、実際の村井はまったくそんなところはなく、明るく朗らかな話し方をする。
おまけに、声がいい。
よく通る澄んだ声である。
村井が一般の人と違っていたところがあるとすればただひとつ、それは村井が狂人であったということだけだろう。
そして、その後ろには石井の肩に手を置いた麻原の姿があった。
その後に遠藤が続く。
この後、僕はコンテナの外にいたので中で何が話されたのかは分からない。
これは推測に過ぎないのだが、このときから麻原はそして教団は生物テロに本気になったのではないだろうか。
最初はうまくいくかどうか半信半疑で始めたものが、あまりにもいいデータが取れてしまった。
そこでこれならいけると判断してしまった。
そういうことだったのではないかと思う。
麻原が帰っていった後、遠藤がこちらのワークはもう終わったので村井のワークを手伝ってくれと言った。
村井はまだもう少し準備があるので待機していてくれということだった。
その時、村井は僕にこう言った。
「これでクンダリニー・ヨーガの成就は確実やな。」
それがどういう意味なのか、僕には分からなかった。