それこそ、風の音が聴きたい人がいればそれを音楽だってことにしていい
al.ni.coのリーダーにして、ボーカリストの上杉昇は、タバコの煙をくゆらせながら語る。
上杉さん:それをオルタナティブ・・・と呼ぶのかどうかはわかんないけど、あらゆる方法論とか
演奏形態にとらわれないで、音楽をやりたいんですよね。そういうのを柴崎は一番理解してくれてる
と思うし、実際にそんな音が出来上がりつつある。
口調そのものは実に落ち着きはらったものではあるが、言葉のひとつひとつから、強い意志が
伝わってくる。そして、この上杉のパートナーがギタリストの柴崎である。
柴崎さん:al.ni.coのモデルみたいなものは、これといってないです。
制約もないし、すごく自然なものがそのまま個性になっていけばいいなと思ってるんですけど
al.ni.coかつてWANDSに在籍したふたりからなるニュー・プロジェクト。上杉はこの名称について
「アルコールとニコチン(笑)とおどけるが、特定の意味をもつ単語ではない。
そして、両者の話からもわかる通りこのユニットの音楽性そのものも、何かにくくられるようなものは
めざしてないという。
もともと彼らはバンドを脱退してから、各々が別個に音楽に向かっていた。
上杉さん:ひとりになってどうしようとかはべつに何も考えてなかったんですけど、
とりあえず曲を作んなきゃと思って、楽曲作りに励んでましたね
柴崎さん:最初はそれぞれに曲を作ったり制作を始めようとしてたんですけど、上杉が電話してきて
俺の作った曲も聴いてみたいなあ、みたいなところから始まったんです。そうやって楽しんで
一緒に音楽を作っていく中で、今までとまったく違う中関係性が出来て来たんですよ。
自分で全部作るよりも、上杉が作ってきたメロディに和音をのっけてリズムを考えたりしたほうが
ユニークなものができるっていうか
上杉さん:音楽以外の、たとえば、メンタルな部分にしても、同じバンドのなかで同じこと
感じてきたわけですから、いちいち説明しなくてすむんですよね。コミュニケーションが
一番取りやすい存在でもあったし、自分がやりたいことも明確に理解してくれる人でもあったから
柴崎に頼むほうが、より自分のビジョンに近いものが出来るんじゃないかなというのは
ありました
熱い決意を語る上杉。そのとなりで静かにうなずく柴崎、ふたりの発言からは、新しく
音楽をクリエイトする喜びとやりがいが強く感じられる。その結晶は、おそらく春頃には形と
なって確認してもらえるはずだ。
上杉さん:音楽って、あらゆるカテゴリーだったり音楽形態だったり方法だったりに
いっさい束縛されずに、自由であるべきだと思うんです。
極端な話、それぞれの風の音が聴きたい人がいれば、それを音楽だっていうことにしたって
いいじゃないですか。al.ni.coではそれぐらい自由な発想でやっていきたいと思ってます。
再び上杉が口にした”自由”というキーワード。そんな彼は自身のルーツをパンク・ロック
だと言い切る。70年代後半、それまでの音楽の概念を粉々にしてしまいかねないほどの
圧倒感はらんで現れたパンク。上杉は、その時の衝撃を自身の表現に反映させようと新たな
スタート地点に立ったのである。そんな彼をガッチリと支える柴崎。1時間弱の会見中
この両者からは強烈な充実感が伝わってきた。
今まさに作り上げられつつあるal.ni.coの世界は一聴する限りでは実にハードなサウンドをたたえているが
その闇間を突き破ってくる上杉のボーカルの生々しさは、激しくこちらの胸を揺さぶるものだ。
エモーショナルにしてポップ。豪快にしてナイーブ。これぞ、フリーフォーム・・・まさに”自由”
な表現欲求に裏打ちされた音楽だ。このal.ni.coの歌に触れられるその時を、どうか楽しみに
待っていて欲しい。