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京大と松沢元霊長類研所長 和解 松沢氏が解決金3300万支払いで

2025.11.01

旧霊長類研究所の不正支出問題とその処分をめぐる一連の訴訟について、10月7日、京大と松沢哲郎・元霊長類研所長の和解が京都地裁で成立した。和解条項に基づき、松沢氏は京大に解決金約3300万円を2028年4月までに分割で支払う。

和解に向けた話し合いは今年4月に裁判所の勧めで始まった。今回の和解では、双方が訴訟を取り下げることを基本合意として、松沢氏が、16年に受け取った退職金の範囲内で解決金を支払うことが決められた。本紙が閲覧した松沢氏側の書面によれば、裁判所は▼これ以上訴訟を長引かせるのはやめ、研究に専念した方がよい▼仮差押さえされている家を失う可能性があることを理由として挙げて和解を勧めていた。

和解条項案は、まず8月に京大側が作成した。京大は解決金を支払えなかった場合の物的担保を求め、これに対し松沢氏は松沢氏の妻を連帯保証人にすることを提案した。しかし、京大は最初の和解案で物的担保を提示したため、松沢氏側が抗議した。また、解決金の支払期間についても京大が一括払いを求めるのに対して、松沢氏は7年間を要求。これについては双方が歩み寄り3年半と和解調書で定められた。

9月に裁判所が案を作成し双方が修正を加えて和解が成立した。和解条項では、解決金支払いの担保として松沢氏の妻が所有する物件の抵当権が京大に設定され、双方が訴訟を取り下げることが明記された。

京大は本紙の取材に対し、「和解は事実だが詳細については回答を差し控える」とした。

霊長類研の不正支出問題は、18年に京大監査室に情報が寄せられ、その後大学の調査で20年6月に発覚。松沢氏ら4教員による架空取引や入札不正など計5億円の不正を京大が公表・謝罪した。この問題を受けて京大は、松沢氏に懲戒解雇処分を行った。松沢氏はこの処分を違法かつ無効だとして、特別教授としての地位確認などを求め、21年に京大を相手に京都地裁に提訴した。また、京大も16年に支払った退職金の返還を求めて21年に松沢氏を提訴し、22年には、不正入札の発覚により京大が補助金を返還した研究事業について、松沢氏に責任があるとして、2億円の賠償を求め松沢氏を提訴していた。なお、霊長類研は21年事実上解体され、現在はヒト行動進化研究センターに組織改編されている。