勝利の女神:NIKKE<名も無き傭兵> 作:100日後に死ぬ傭兵
「……きてく……い!」
「起……ださい!」
「起きてください!」
女性の必死な叫び声で男の目が覚める。
周りは廃ビルや瓦礫の山ができているゴーストタウン。
目の前には銃を持った長い黒髪の女性が居た。
「どうしてこんなところに一般の方が………」
思い返せば何年前かは分からないがコールドスリープをされた。しかし、起こすとしてもこんな場所で起こす必要はないだろと内心不機嫌になりながらも、思うように動かない身体を動かし、立ち上がる。
周りを見ても廃ビルと瓦礫。目覚めた時に見た景色と何ら変わりは無い、つまらない景色。そう思った。
そう思ったのもつかの間。頬を鉛玉が掠る。
その弾を撃ったのは、かつて戦った人類の敵、機械生命体《ラプチャー》だった。
「ありゃ…例の未確認兵器か?」
「早く姿勢を低くして、安全な場所に逃げてください!」
女性は今もそう呼びかける。
しかし、男は以前として動こうとはしない。
何かを探すように周りを見ながら、ラプチャーの動きを見ていた。
すると、何かを見つけたのか走り出し、地面に落ちている物を取る。
それは少し大きめの
男は無言のまま片膝を着き、ストックを肩の付け根に押し当て、右目でスコープを覗いた。
「待ってください!ニケ用の銃は人間には───!」
女性は男に向かって何か言おうとしたが、男は聞く耳を持たず、ラプチャーの中心部にある赤く光る球体───コアに狙いを定め、引き金を引いた。
アサルトライフルから放たれた弾丸はラプチャーのコアへと真っ直ぐに飛び、ヒビを入れた。
それと同時に、男は後ろへ吹っ飛び、手から離れたアサルトライフルは明後日の方向へと飛んで行った。
「大丈夫ですか!?」
「腕と肩が死ぬほど痛い。折れてないだろうが死ぬほど痛い」
ぶつくさといいながらもむくりと立ち上がり、服に着いた土をパッパと払う。
「そういやあんた、名ま───こういう時は自分から名乗んのが礼儀だったか?俺は……《レイヴン》だ。よろしく頼む。よし、それじゃあ、ロブスターだったか?あいつらの掃討するか。いや、今ACねぇのか……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
男───《レイヴン》は勝手に話を進め、小走りで吹っ飛んだアサルトライフルをまた手に取り、ラプチャーの方を見る。
しかし、女性はそれに着いて行けず、困り果てていた。
「あなたはレイヴンという方でいいんですね?」
「あぁ、傭兵名だけどな。本名はわからん」
適当でぶっきらぼうで行動原理がよく分からないな人。それが女性がレイヴンに向けて持った第一印象だった。
「傭兵?どこかの傭兵部隊の出なんですか?」
「俺は独立傭兵。どこにも属してない」
レイヴンはどさくさに紛れ、またアサルトライフルを構え、ラプチャーに向けて撃った。
また吹っ飛ぶかと思ったが、レイヴンはまるで使い方がわかったとでも言わんばかりにアサルトライフルの衝撃を全身で受け、逃がし、多少の軸のブレで済ませていた。
「それで、ざっとの自己紹介は終わった。あんたは?」
「え?わ、私は《マリアン》。シルバーガン分隊所属、兵科は機関銃射手です」
「シルバーガン分隊のマリアン、ねぇ。にしても、そのぶら下げてんのが機関銃か。機関銃を携帯なんて、人間とは思えないな」
フッと鼻で笑いながらアサルトライフルを撃ちながら、進む。
ラプチャーも10機程居り、弾をレイヴンに向けて撃つが、レイヴンはそれを少しだけ体をずらし、ギリギリで避けていた。
マリアンから見れば非現実的な光景でしかなかった。
「それに人間って……私は「ぶつくさ言う前に手伝ってくれ。また増えやがった」
「は、はい!エンカウンター!」
マリアンは急いで戦闘状態へと切り替え、機関銃を持ち、掛け声と共にラプチャーとの交戦を開始した。
──────
─────
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───
──
─
「クリア!非戦闘状態へ転換します!」
ラプチャーの掃討が終わり、レイヴンは一息つく。マリアンはその場から動こうとすると、右足がまるで糸の切れたかのように力が抜け、倒れそうになる。
レイヴンは反射的に片手でマリアンを支える。
しかし、体幹100kg以上はあろう重さに支えたレイヴンもふらつくが何とか持ち堪えた。
「あっ…足が………」
「なんだ、負傷か?」
「負傷、というより故障でしょうか。でも、移動には問題ありません」
足を見ると、弾痕があった。おそらく、先程の戦闘で弾が当たったのかとレイヴンは考え、懐を探り始めた。
そして取り出したのは包帯で、その包帯をマリアンの傷口に巻いた。
「あの、レイヴンさん……、こういうのは全然効果がない……」
「ん?なんか言ったか?」
「……いえ、なんでもありません。おかげでもう治ったみたいです」
「そうか」
レイヴンはそう言い、包帯をポケットに入れ、立ち上がる。
そしてマリアンは思い出したのか、レイヴンに尋ねた。
「その、1つ質問をしてもいいでしょうか?」
「ん?なんだ?」
「あなたは一体、何者なんですか?」
その質問にレイヴンは少し悩んでから、口を開く。
「No.009独立傭兵レイヴン。年齢は多分20後半程度。無所属の浪人だ」
「すみません、質問が抽象的すぎました。何故、あなたはニケ用の小銃が使え、ラプチャーと戦えるのですか?」
マリアンの質問にレイヴンは再び頭を悩ませる。
悩んで20秒程度。レイヴンはスっと顔を上げ、マリアンの方を向いた。
「ニケってなんだ?」
「え?ニケを…知らないのですか?」
「全く」
その言葉にマリアンは目を見開き、驚いていた。
現代の人間は子供でも知っていて当然だった。しかし、レイヴンはそれを知らなかったからだ。
しかし、ニケは知らずともラプチャーの存在は知っていた。それがマリアンの気がかりになりながらも、レイヴンにニケとは何かを教えた。
「なるほど。人間の脳を人型の機械にぶち込んでラプチャーと戦わせる兵器に仕立てあげたのがあんたらか。随分とまぁ、すごいもんだな」
感覚的には170cm程度のACか。そう笑いながら呟き、アサルトライフルのストックを握り、肩にかけた。
「それで、俺が誰なのかだよな」
「はい。何故ニケを知らずラプチャーを知っているのか。あなたが何者なのか教えて欲しいです」
「俺はAC。ARMORED COREに乗って依頼をこなす傭兵だ」
「ARMORED CORE……。確かフェアリーテイルモデルが生まれる前に使用されていた人型機動兵器、でしたか?」
「おそらくな。そこまでは知らないが」
ARMORED COREが運用されていたのは最初のニケとなるフェアリーテイルモデルが生まれる10年、数年程度前の旧型の兵器。そしてフェアリーテイルモデルが生まれたのは100年と数年前。
そう考えるとレイヴンは101歳以上という事になるが、見た目は老いぼれてもおらず、若かった。
「確かラプチャー戦線に投下された傭兵の7割は死亡。残りはコールドスリープによる延命措置……という事は」
「そう。俺はコールドスリープを選んで、今まで寝てきた。まぁ、目覚めは最悪だったけどな」
レイヴンは少し不機嫌そうな顔になりながら周りを見回す。
そして自身の服である黒いパイロットスーツを見ていると、1つのタグが目に入った。
「んだこれ?」
レイヴンはそのタグを取り、見つめる。
《COMMANDER[RAVEN]》という文字列とバーコード。それを見たマリアンは驚いた。
「指揮官登録が既に行われている?士官学校を卒業しているんですか?」
「士官学校?悪いが学校とかは行ったことがないもんでな。さっぱりだ。まぁ、ACに限ったはなしだが、数回程度は指揮をしたことがある」
レイヴンはそう言い、タグをポケットの中にしまった。
「それで、俺はどうすりゃいいんだ?あいつらの相手くらいならできるが」
「無茶せず隠れててください!今は近くのランデブーポイントに移動しましょう」
「わかった」
そして2人はランデブーポイントへと移動を始めた。