闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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原作8巻にあたる内容の話では、グレイと神々の関係をメインに扱っていく予定です


第49話

摩天楼(バベル)30階。普段は神会(デナトゥス)のために使用される大広間は、神アレスが率いる国家系【ファミリア】、【アレス・ファミリア】ことラキア王国軍の侵攻に備えた会議が行われていた。

 

「ほな、アレスのアホが率いるラキア王国との戦争(ドンパチ)に備えての会議はこれにて終了──の前に、グレイ(おとん)のことについて少し話し合うで。まずは『自分の知り合い且つ下界に降臨している神が、オラリオにグレイ(父上)がいることを知ったらどんな行動を起こすか』や」

 

ロキの言葉を皮切りに、出席している神々がそれぞれの知り合いの神についての情報を提示していく。そして集まった情報は以下の通り。

 

女神カーリー:オラリオ側の応対次第では抗争に発展する可能性あり。要注意

女神アマテラス、ツクヨミ:社の運営でそれどころではない。放置しても問題なし

男神ゼウス:たまにオラリオに来ては父上と平和に酒を酌み交わす程度と予想。こちらも特に問題なし

女神ヘラ:父上と定期的な文通を求める程度と予想。こちらも問題なし

男神アレス:「俺の【ファミリア】は最強なんだ!」と言って侵攻を仕掛けてくる。いつものことなので放置して良し

男神アポロン:【ヘスティア・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)に負け、オラリオの土を2度と踏めなくなったので問題なし。ただし、万が一都市外でばったり再会した場合は父上を地の果てまで追いかけ回す可能性あり。要注意

男神テスカトリポカ、女神ケツアルコアトル:オラリオに来て興行を行い、そのついでに親父殿と神の力(アルカナム)が発動しない程度に(はげし)抱擁(なぐりあい)を交わす可能性あり。特に危険視するほどではない

 

中でも危険視されている女神カーリーについてはヘスティアと、彼女の補佐にガネーシャとソーマがついて対処することに。男神アポロンについては都市を自由に出入りできる【ヘルメス・ファミリア】が随時監視することになった。

 

「次は闇派閥(イヴィルス)の連中や。ディオニュソス、確か闇派閥(イヴィルス)の主神で唯一オラリオに残っとるタナトスは、自分のご近所さんやったな。アイツはどう動くと思うてる?」

「案外、今まで通り何処かに身を隠し続けていると思う。ただ、タナトスを始めとした死を司る神は親父殿を愛するあまり心を病んでいる。それがどれだけ凄まじいことか、皆もわかるだろう?」

『……うん……』

「だから、彼の親父殿への愛が爆発し、暴走した時の備えを怠らないよう眷属(こども)達にも伝えておいてほしい」

「……わかった。それじゃあ、ラキアとの戦争(ドンパチ)やけど、グレイ(おとん)も参加せざるをえん状況になってもうた」

 

そう言ったロキは足元に置いていた鞄から分厚い羊皮紙の束を取り出し、円卓に置く。

 

「これはな、ラキアとの戦争にグレイを出陣させることを要求する署名の書かれた紙の束や。うちのリヴェリアを筆頭に、純血混血関係なく、オラリオ在住の全てのエルフの名前と似顔絵、住所がこれには載っとる」

『マジで!?』

 

オラリオに在住するエルフの数を把握しているわけではないが、たった1人の人間を出陣させる要求を出すために、これだけの人数が動いたという事実に神々は度肝を抜いた。

 

「それでや。グレイがオラリオにいることをどのタイミングで知らせるか決めてなかったやろ?」

「言われてみれば」

「下手に隠し続けるのも危ないからな。かなり慎重に決めないと」

「そこで。うちはアレスを利用しようと思ってる」

『詳しく』

 

ニヤリとロキが黒い笑みを浮かべると、他の神々は期待に目を輝かせる。

 

「まず、この要求に応じてグレイを出陣させる。そしてラキア軍を程々に叩き、アレスのアホを誘き出す」

 

今回のラキアとの戦争は、自軍(ラキア)の士気が下がる程度にダメージを与え、眷属達を奮い立たせようと前線にアレスが出てきたところを捕縛するための編成を組む予定であった。

 

「誘き出されたアレスのアホをとっ捕まえて、グレイの前に突き出す。それで心身ともにボロボロのアレスから賠償金と稼いだ経験値(エクセリア)を巻き上げて本国に還す。そしてそのタイミングで世に知らしめるんや」

 

神々(われら)の父はオラリオにあり

 

「ってな」

『大賛成だ』

 

ロキの提案に神々は目を輝かせ、口を揃えて賛成した。

いつもどおりオラリオ側の勝利という代わり映えのない結果しか見えない先の侵攻に、父上(グレイ)の参戦とそれを見たアレスの反応が加わる。娯楽に飢えた神々にとって、これに反対する(もの)はいなかった。

 

 

 

 

そして当日。

 

「『酸の霧』」

「おい!装備がボロボロになったぞ!?」

「嘘だろ!?」

「整備したばっかなのに!!」

 

ラキア軍の兵士の武具をボロボロにしたり。

 

「『放つフォース』」

『グワーッ!!』

 

吹き飛ばしたり。

 

「狼狽えるんじゃない!ラキア軍人は、狼狽えるんじゃ──」

「『暗月の矢雨』」

「撤退!!」

『イエッサー!!』

 

追い払ったりと、グレイはそれなりに忙しかった。

 

「相手を極力傷つけないというのも、中々面倒だな」

「すいません。商業系【ファミリア】の方々に『金づるを殺すな』って言われてるので」

 

杖で肩を叩きながら愚痴を零すグレイの服装は、【黒い鳥】の伝承に因んで黒一色。杖と聖鈴もそれに合ったものを選んで装備していた。

 

「あちらを追う時は、できるかぎり風上のほうに行くよう伝えておいてくれ。時間が経てば霧は消えるが、今風下を通るとこっちにも被害がでる」

「了解です」

「エルフ達の様子はどうだ?」

「皆さん張り切って応戦してるっす。ただ、何名か興奮のあまり鼻血が止まらなくて使い物にならないっす」

「……」

 

1週間という期間限定で、この戦争に参戦するという冒険者依頼(クエスト)を請けたのはいいが、これで大丈夫なのか不安になってきたグレイは、額に手を当てて首を振る。

 

「じゃ、じゃあ、俺は伝令に行ってきます」

「ああ」

 

敬礼をとったラウルは回れ右をし、本営の方へと駆け出していった。

 

 

 

 

「……やはり、リリ達後衛の力不足が弱点ですね。専門の治療師(ヒーラー)魔道士(ウィザード)が欲しいです」

 

ダンジョン14階層の人気のない安全地帯。春姫の魔法《ウチデノコヅチ》をパーティーの一人一人に試し終えると、リリが口にした。

パーティーの構成は、前衛にヴェルフとベル、ネロの3人。中衛に命。後衛にリリと春姫。リリもそうであるが、Lv.1下位の能力(ステイタス)の春姫がモンスターに襲撃されれば一溜まりもない。

 

「というか、後衛に関してはグレイさんに頼りっぱなしだったね……」

「言われてみれば、そうだな」

「ベル様のおっしゃる通りです。だからこそ、グレイ様には此度のラキアとの戦争で大いに活躍していただかなければなりません!いえ、グレイ様だけではありません。リリ達も【ファミリア】の団員を増やすために動かなければならないのです!」

 

拳を力強く握りしめ、リリが力説する。たとえ『2億の借金と、全裸でダンジョンを走り回ったガチムチの変態を抱えるファミリア』と言われていようとも、入団希望者は現れてくれると。全員の胸中にある不安を消し飛ばすつもりで言い放った。

 

「リリ殿。非常に申し上げにくいのですが、今の声に気づいたモンスターがこちらに向かってきています!」

「ええ!?」

「良い話で終わると思ったらこれかよ畜生!」

「げ、迎撃用意!」

「は、はい!」

「了解」




補足1:テスカトリポカとケツアルコアトルの率いるファミリアは、観客を楽しませる格闘技を世界各地で行って収入を得るファミリア。本拠地はオラリオから南東に海を越えた大陸にある
補足2:死を司る神はヤンデレしかいない
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