闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの 作:大豆万歳
【アポロン・ファミリア】による【ヘスティア・ファミリア】襲撃から3日後。この世界の何処か。
高い山の頂上のように、見渡す限り広がる雲海。長い年月を重ね、ところどころが風化していながら神聖さを損なわない、寧ろ神聖さが増している神殿のような建造物。……そして、その建造物の周囲を竜が飛び回り、内部は首から上が蛇の人間──蛇人が巡回していた。
そんな彼らは2人の客人……否、2匹の客猫の姿を捉えると、静かに一礼した。
尻尾をピンと立てながら歩く猫──アルヴィナとシャラゴアは、開けた場所に到着した。
そこには、名前の刻まれた石──墓石が置かれていた。ある者は、仲間とともに強大な敵に立ち向かい、打ち倒した。ある者は、己のため、誰かのために他者の命を奪った。そういう人間の名が、この墓石には刻まれていた。
「「…………」」
アルヴィナとシャラゴアは綺麗に並べられた墓石の名を1つ1つ見渡し、次にその場に座り、黙祷を捧げた。
そして、黙祷を捧げ終えると立ち上がり、
「……ここね」
「邪魔するわよ」
異なる色の炎から放たれる殺人的な熱気と、火の爆ぜる音と鉄を打つ音の二重奏。壁には武器屋と見紛うほど立てかけられた武器の数々。その中心に目的の人物──グレイはいた。
「……よし、こんなもんかな。さて、次は、と……」
「グレイ。報告があるから、一旦作業を止めなさい」
焼き入れを終えた武器の出来映えを確認し、次の武器強化をしようとしたところで、アルヴィナの声が聞こえた。
「ああ、アルヴィナ、シャラゴア。
「まず
「あー……それは実に面倒臭いな」
「安心なさい。ソーマ、タケミカヅチ、ヘファイストスから1人ずつ【ヘスティア・ファミリア】に移籍したし、酒場のエルフのお嬢さんも助っ人として参戦するわ」
アルヴィナから告げられた情報。おそらくリリ、命、ヴェルフ、そしてリューさんのことだろう。
「最後に、女神フレイヤとその眷属が何やらコソコソ動き回ってるわ。まあ、妨害行為の類ではないだろうから、気にする必要はないわね」
「わかった。ありがとう」
「はいはい。……念のために聞いておくけど、
部屋を出ようとしたアルヴィナとシャラゴアだが、不意にシャラゴアが振り向いて俺に訊ねた。
「そうだな、
「やめなさい。これはあくまで遊戯であって本物の戦争ではないの」
「話は最後まで聞いてくれ。そう言われるだろうから、違う役割を負うさ」
「違う役割?」
「ああ。久しぶりに、魔法オンリーでいってみようと思ってね。変質強化した武器は、今後のダンジョン攻略で使うことにするよ」
「魔法オンリー……
「構わんよ。それでファミリアの団員が増えてくれるならな」
踵を返し、激励代わりに尻尾を振るったアルヴィナとシャラゴアは、部屋から1歩出ると同時に、霧の如く霧散していた。
夕闇に満ち、空が蒼く移ろっていくオラリオ。
中心部にそびえ立つ白亜の巨塔は、魔石灯の光を灯し始める広大な街並みを今も見下ろしていた。
「失礼します。フレイヤ様、命じられていた
摩天楼施設『バベル』最上階。
ノックの後にかけられたオッタルの声にフレイヤは反応を示さず、市壁の上で今なお続けられている熾烈な
金髪金眼の剣士と大双刃を振り回す女戦士、彼女達2人を同時に相手取る白髪の少年。3つの影、3つの『輝き』が入り乱れるその光景に、フレイヤは恍惚の息をつく。
「……本当に、アポロン派の行動に目を瞑ってよろしかったのですか?」
オッタルからもう1度投げかけられた声に対し、ふざけた真似をするようなら潰すつもりだったとフレイヤは答えた。
しかし、銀の瞳を細めた彼女は続けた。
「けど、彼等ならこの程度の障害を乗り越えると確信している。だから私は、
「……」
女神の微笑みを浮かべながら、フレイヤは部屋の隅に立つ少女に声をかける。
『黒』という意味の名を体現するように漆黒のドレスの上に、漆黒の篭手、具足、胸甲といった黒ずくめの出で立ち。腰に一振りの黒刀を帯びる少女は、沈黙をもって主神の問いに答えた。
「……」
「ふふっ」
相変わらず何を考えているか理解できない、無愛想な
補足:下から灰の湖と飛竜の谷、護り竜の巣と祭祀場、古竜の頂の3段構造になったものが吹き溜まりの何処かに形成されています