闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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お待たせしました。
対黒ゴライアス戦を書き上げたのは良かったのですが、ものすごく長くなってしまったので、前後で分けることにしました。それと、33話でグレイが篝火に刺していた剣ですが「よくよく考えたら長すぎじゃね?」となったので、後で変更します。


第35話

「ふん!」

 

戦場である大草原、そこで冒険者達を蹂躙する黒いゴライアスの膝を、リューさんの後に続いて攻撃する。

 

「おおおおおおっ!」

「はあああああっ!」

 

俺が『ドランの双槌』で叩いたあとに桜花の斧が、命の刀が打ち込まれる。

だが、強固な金属鎧を上回る階層主の体皮に俺の手は強烈な手応えを感じた。桜花の戦斧の刃は欠け、命の刀の刀身が折れた。

 

「早く離脱しなさい!」

 

振り向くと、俺達をゴライアスの視線は追尾し、怒りの形相で睨みつけていた。巨人は腰をひねり、その極腕を大薙ぎに振るう。

巻くように放たれた右腕の攻撃(スイング)。ゴライアスの周囲を半回転した拳の風圧をかいくぐり、ゴライアスの足元に戻る。

 

「【燃えつきろ、外法の業】【ウィル・オ・ウィスプ】」

 

瞬間、ゴライアスを大爆発が襲った。

ヴェルフが魔法で妨害した『咆哮(ハウル)』は、通常のゴライアスが放つ威嚇ではなく、魔力を込めて純粋な衝撃として放出される飛び道具だ。

更に厄介なことに、コイツはこの階層にいるモンスター達を雄叫びで召喚する。俺がいまいる地帯から南東に100Mほどの場所では、ベルがモンスターの群れを相手に戦っている。

こういうデカブツを相手にする時、下手に距離を取るよりも足元に貼り付いたほうがいいのは身を以て知っている。故に、俺はゴライアスの踏みつけ(ストンプ)やハンマーナックルといった足元への攻撃を警戒しつつ、ゴライアスの足を攻撃する。

 

「しかし、硬いな。『ドランの双槌(こいつ)』で叩いても埒が明かない。……コイツ(・・・)にするか。ついでに『太陽の光の剣』」

 

俺は『ドランの双槌』を収納し、柄の付いた石像──『王の特大剣』を取り出す。ダメ押しとばかりに、左手に『太陽のタリスマン』を持って付与魔法(エンチャント)をかけ、『刃の指輪』と『騎士の指輪』を装備する。

 

「ぬん!」

 

俺は『王の特大剣』を両手で持ち、ひたすら足首あたりを狙う。硬い敵は斬らず、叩いて粉砕!この手に限る。

 

疾風(リオン)!説明は不要だと思いますが、今から来る援軍が一斉射撃の準備を行います。貴方はゴライアスの注意を引き付けておいてください!」

「わかりました。それでは私と貴方、グレイさんで敵の意識を分散させましょう」

「応ッ!」

「え、いや、待っ──」

『よおおしっ、てめー等!アンドロメダが囮になるそうだ!心置きなく詠唱を始めろぉ!』

「──ボールスゥ!?後で覚えてらっしゃい!?」

 

囮役を買って出た俺とリューさん、泣く泣く囮役を課せられたアスフィの3人でゴライアスの注意を引きつける。

足元に貼り付く俺が狙われれば素早くリューさんが木刀で叩き、リューさんが狙われればアスフィの魔道具(アイテム)で爆撃、アスフィが狙われれば俺が足首あたりを叩いてを繰り返すことで、ゴライアスの注意を引きつける。

 

『────オオオオオッ!!』

「なに!?」

 

ふと、ゴライアスの狙いが俺達から外れた。次いで、誰かがこちらへ駆けてくる音が。

 

「ベル!?」

 

音の主はベルだった。

自慢の脚で拳を掻い潜り、懐に潜り込んだベルは左足めがけて大剣を振り上げ──叩きつけた。

 

「ふっ!」

 

鈍い打壊音の後に、ベルは堅実に一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)。ゴライアスの股下を抜けて後方に退避する。

 

「ベル、今のは危なかったぞ」

「グレイさん……」

「勇気と無謀は紙一重だ、覚えておくように」

「わかりました……」

 

移動を続けるベルと並走しながら戒めると、ベルが肩を縮める。

 

「俺は引き続きゴライアスの足を叩く、ベルはリューさんに付いてきてくれ」

「はい!」

 

リューさんのいる方向を指差すと、ベルは駆けていった。

 

「前衛、下がれぇ!でかいのをぶち込むぞ!」

 

魔道士達の詠唱が完了したのだろう、前線に号令が飛ぶと同時に俺達はゴライアスから離れた。

ちょうど包囲網の中心に誘導されていたモンスターが赤眼を見開いた次の瞬間、怒涛のような一斉射撃が火蓋を切る。

火炎弾、雷の槍、氷柱の雨、風の渦、一部『魔剣』の攻撃も加わった砲火が階層主を飲み込み、爆音を轟かせる。

やがて砲撃が止み、中心地の煙が薄れていく中……ゴライアスの片膝が地についた。

 

「ケリをつけろてめえ等ぁ!!たたみかけろおおおおっ!!」

 

冒険者達は歓声を上げ、巨人の息の根を止めようと一斉に前に出た。

頭を垂れるゴライアスに、多くの者が殺到した。

 

「……グレイさん?」

 

他の冒険者達と同様に、前へ出ようとしたベルを手で制する。

今までの経験が警鐘を鳴らしている、まだ終わりじゃない(・・・・・・・・)と。

リューさんも何かを感じ取ったのか、怪訝そうに瞳を細めている。

 

『────フゥゥゥ』

 

そして、俺の勘は的中してしまった。

傷つき、沈黙していたゴライアスが顔を上げた。顔面に負った傷はどこにもない。損傷した体皮からは赤い粒子が発散されていた。しかも、光の粒が立ち上る側から傷は見る見る内に癒えていき、完全になかったものになる。

ゴライアスは勢いよく立ち上がった。

 

「自己再生!?」

「全員逃げろぉ!!死ぬぞ!!」

 

アスフィの叫びと同時に、俺は前線に出た冒険者達に大声を飛ばす。

そうしている間にも再生したゴライアスは、近づいてきた前衛攻役(アタッカー)に、呆然と立ち尽くす魔道士(こうえい)達に狙いを定める。

巨大な両腕を振り上げ、拳を握りしめ、そして……足元へ振り下ろした。

大草原が、割れた。

凄まじい爆発を起こし、地割れと衝撃波を発生させる。放射状に広がる破壊の津波は前衛攻役(アタッカー)を飲み込み、魔法行使直後の魔道士達にまで及んだ。前衛壁役(ウォール)が、紙切れの如く吹き飛ぶ。

 

『オオオオオオオオッ!!』

 

2度目の召喚。ゴライアスの声に階層中のモンスターが応え、統率を失った冒険者達に襲いかかる。

俺はベルの正面に立ち、心臓のあたりを指差す。

 

「……ベル、スキルを使え。狙うのは(ませき)のある胸部(ここ)だ」

「グ、グレイさんは!?」

「リューさんとアスフィとともに、ゴライアスを押さえて時間を稼ぐ」

 

あのモンスターをここで止めなければ被害が拡大する。もう1度一斉射撃を行うためにも時間を稼ぐ必要がある。

既に駆け出しているリューさんを追うように、俺は駆け出した。

 

「っ!」

 

俺の体のすぐ横を、ゴライアスの指が通り過ぎる。

敵の攻撃を俺は冷静に回避し、『王の特大剣』で足首をひたすら叩く。リューさんもおなじように、木刀で巨人の足首を打つ。

 

「2人共、死にますよ!?」

「全員命がけで戦っている。俺達も相応の働きをしないとな」

 

敵の懐にあえて居座り攻撃し続けることで、自分を的にする行為。ゴライアスは鬱陶しい小蝿でも叩くように腕を振り回す。

 

「グレイさん、アンドロメダ、敵の(ませき)は狙えますか」

「無理だな。硬すぎて武器が貫通しない」

 

放たれた『咆哮(ハウル)』を回避し、合流するように並走する。各々の懐から回復薬(ポーション)を取り出し、素早く飲み干す。

 

「では、『魔法』は?」

「……私の詠唱はかなり時間がかかります。そのくせショボい。高い治癒能力を持つあのゴライアスとも相性最悪です、期待しないでください」

「俺のは通じなくはないかもしれないが、流れ弾が仲間に当たった時のリスクが大き過ぎる」

「……わかりました。やはり、魔道士達の援護が必要ですね」

「直撃したところでまた回復されるのがオチでしょうっ」

「なら相手の魔力が切れるまで殺し続けるだけだ」

 

加速し、再び巨人の懐に飛び込む。少しでもダメージを与え、魔力を消費させ、魔道士達の援護までの時間を稼ぐために。

 

「グレイさん!」

 

発光する右手を握りしめたベルが、ゴライアスに接近してくる。

 

「わかった!2人共、離れるぞ!デカイのがくるぞ!」

 

小竜(インファント・ドラゴン)を1撃で屠った情報を何処かで得たらしい、アスフィはすぐさま離脱。リューさんは一瞬躊躇う素振りを見せた後、直ぐに射線上から離脱した。

 

『────ッ!!』

「【ファイアボルト】!!」

 

強烈な魔力塊と、炎雷が同時に放たれた。

白い稲光とともに大炎雷は魔力塊を突き破り、ゴライアスの頭部を貫いた。右眼を含む僅かな部分を残し、巨人の顔面が8割方消失する。悲鳴を上げることを許さなかった魔法は階層の果てに炸裂し、絶壁を爆砕した。

狙いが逸れた。

胸部を狙った炎雷は、その威力もさることながら反動も凄まじかった。ベルの体はそれを制御できず後退してしまい、弾道が定まらなかった。

だが俺は知っている。頭部を失おうと、動いた者がいることを。頭部だけになりながらも、存命した者がいることを。

だから、巨人の首元から夥しい赤い粒子が発生するのも、想定の範囲内だ。

 

「ベル!逃げろ!」

 

巨人の明確な殺意にあたられて愕然と立ち尽くすベルに向かって叫ぶが、それも虚しくゴライアスの『咆哮(ハウル)』が放たれる。

未だ完治していない口腔が弾け飛び、牙の破片と血肉が魔力塊ごとベルの体に着弾する。

傷つき、吹き飛ばされ、足が地から離れるベルに向かってゴライアスは突き進み、拳を背中に溜める。

俺、リューさん、アスフィが救援に向かうが、間に合わない。そして、拳がベルに迫る中、()は現れた。

盾を持ち、ベルの後方から駆け出した冒険者、桜花は、ベルとゴライアスの間に割り込んだ。

ゴライアスの拳は桜花の構えた大盾にめりこみ、彼の体に食いこむ。後ろに立っていたベルもその攻撃に呑まれ、2人の体は宙を舞った。




死んだ敵が何らかの方法で復活して第2ラウンドが始まり、こちらの心をへし折りにくるのはよくあること
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