千葉県が筆頭株主の第三セクター鉄道「東葉高速鉄道」(八千代市)の経営について、県などの試算で資金ショートする時期が2033年度に早まる可能性があることが分かった。同鉄道は24年度末時点で、建設費などで借り入れた約2150億円の長期債務を抱える。物価高騰や老朽化に伴う設備の修繕費、金利上昇による返済額の増加で、運輸収入は好調にもかかわらず、経営が圧迫される状況が続いている。
4日の県議会一般質問で、茂呂剛議員(自民党)と秋葉就一議員(リベラル民主)の質問に、三神彰・総合企画部長が答えた。
県交通計画課によると、試算は県や船橋市、八千代市などで構成する東葉高速自立支援委員会がまとめた。運賃を改定せず、毎年0・3%ずつ金利が上昇する「高金利ケース」では、前年の調査に比べ2年早い33年に資金が底をつく。毎年0・2%ずつ金利が上昇する「基本ケース」では、前年調査から1年早い35年に資金がショートするという。
主な要因の一つが金利上昇だ。世界的なインフレによる金利上昇の流れで、日銀も25年1月に約17年ぶりに政策金利を0・5%に設定。市中の金利も上昇し、返済額も同委員会の試算では「基本ケース」で、元本と利子を合わせた元利償還金が28億円増加するとしている。
新型コロナ禍で落ち込んだ利用は元に戻りつつある。同鉄道の25年度上半期の運輸収入は前年度比4・7%増の約83億円で、運輸人員も同4・5%増の約2981万人と、コロナ禍前とほぼ同水準になった。ただ、県の担当者は「人口減の中で利用者が増え続けるわけではない」と指摘し、いずれ頭打ちになるとする。
一般質問では、22年10月に運賃全体で15・4%値下げした北総鉄道と比較し、通学定期値下げの検討を求める声も上がった。ただ、三神部長は「多額の長期債務を抱える会社の経営安定化が重要。沿線市と連携し経営改善を支援したい」と答え、値下げは困難との考えを示した。
(中田大貴、池田和弘)