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SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の現状と対策、私たちができること

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の現状と対策、私たちができること SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)の目標11「住み続けられるまちづくりを」は、急速に進む都市化の中で、誰もが安全かつ快適に暮らせる環境を整えることを目的としています。

都市には多くのチャンスがある一方で、貧困や環境悪化、災害リスクといった深刻な課題も集中しています。この目標は、単に建物を建てることではなく、災害に強く、環境負荷が低く、すべての人が取り残されない社会システムを作ることが核心です。

この記事では、目標11が必要とされる背景や世界の現状、そして日本国内での具体的な取り組み事例について分かりやすく解説します。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」とは?

SDGsの目標11は、正式名称を「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」といいます。

簡単に言えば、災害に強く、環境に優しく、誰もが排除されずに安心して暮らせるまちを作るということです。
国連の報告によると、2050年には世界人口の約68%が都市部に居住すると予測されています。人口が都市に集中することで、インフラのパンクや環境汚染、格差の拡大が懸念されており、これらを解決するために目標11が設定されました。

参考:World Urbanization Prospects(国際連合)

具体的なターゲットの内容

目標11を達成するために、さらに細分化された10個の「ターゲット」が設定されています。これらは大きく分けると、以下の5つのカテゴリーに分類できます。

カテゴリー主な内容
住居と基本サービス安全で安価な住宅の確保、スラムの改善
交通と安全性公共交通機関の拡大、交通弱者への配慮、交通安全の改善
都市計画と参加包摂的で持続可能な都市計画、市民参加型のまちづくり
文化と環境文化遺産・自然遺産の保護、大気汚染の削減、廃棄物管理
防災と適応災害による死者数・被災者数の削減、気候変動への適応
スクロールできます

このように、単に「住む場所がある」だけでなく、移動手段や災害対策、文化的な豊かさまでを含んだ包括的な目標となっているのが特徴です。

都市化に伴う深刻な課題と現状

なぜ今、世界中で「まちづくり」の見直しが急務とされているのでしょうか。そこには、急速な都市化が引き起こす深刻なひずみが関係しています。

住宅不足とスラムの拡大

開発途上国を中心に、都市への急激な人口流入に対し、住宅供給やインフラ整備が追いついていません。その結果、多くの人々が「スラム」と呼ばれる劣悪な環境で暮らすことを余儀なくされています。

国連ハビタットのデータによると、世界で約10億人以上がスラムや不適切な住居で生活しており、2030年にはその数がさらに増加すると懸念されています。
安全な水やトイレが使えない環境は、感染症のリスクを高め、住民の健康や経済的自立を阻害する大きな要因となります。

参考:Urban Indicators Database(国連ハビタット)

自然災害への脆弱性と気候変動

気候変動の影響により、世界各地で台風、洪水、干ばつなどの自然災害が激甚化しています。都市部は人口や資産が集中しているため、一度災害が起きると甚大な被害が発生しやすい傾向にあります。

特に、海抜の低い沿岸部の都市や、地盤の弱い地域に無計画に広がった居住区はリスクが高く、早急な対策が必要です。
日本においても、毎年のように発生する豪雨災害への対策として、ハード面(堤防など)の整備だけでなく、ソフト面(ハザードマップの周知や避難計画)の強化が求められています。

日本国内での取り組み事例:課題解決へのアプローチ

日本は先進国ですが、少子高齢化や人口減少といった独自の課題を抱えています。SDGs目標11に関連して、国内で進められている特徴的な取り組みを見ていきましょう。

コンパクトシティ構想による効率化

地方都市を中心に進められているのが「コンパクトシティ」の形成です。
これは、住居や商業施設、病院などの生活機能を一定のエリアに集約し、行政コストの削減と利便性の向上を図る取り組みです。

例えば、富山市では公共交通機関を軸としたまちづくり(LRTネットワークの整備など)を推進しています。
車を運転できない高齢者でも自立して生活できる環境を整えることで、外出機会が増え、健康寿命の延伸や中心市街地の活性化にもつながっています。

空き家問題の解消とリノベーション

日本の大きな課題の一つに「空き家の増加」があります。総務省の2023年(令和5年)住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は過去最多の約900万戸に達しました。
参考:令和5年住宅・土地統計調査(総務省統計局)

これに対し、古民家をカフェや宿泊施設にリノベーションして観光資源化したり、自治体が「空き家バンク」を運営して移住者へ安価で提供したりする動きが活発です。
既存の資源を有効活用することは、新規建設による環境負荷を減らすだけでなく、地域の景観保全やコミュニティの再生にも寄与します。

日本の古民家再生:地方移住と観光の新たな可能性

先端技術で実現するスマートシティとMaaS

少子高齢化が進む中、限られたリソースで都市機能を維持・向上させるために、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの先端技術を活用した「スマートシティ」化が加速しています。

例えば、AIが人流データや交通状況をリアルタイムで解析し、信号機の制御を最適化して渋滞を解消したり、電力の需給バランスを自動調整する「スマートグリッド」でエネルギー効率を高めたりする取り組みです。
これにより、環境負荷を減らしながら、住民の利便性を向上させることが可能になります。

また、交通革命として注目されているのが「MaaS(Mobility as a Service)」です。
これは、電車、バス、タクシー、シェアサイクルなどの多様な移動手段を、IT技術を用いてシームレスに連携させる仕組みです。
スマホ一つでルート検索から予約、決済までを一括で行えるため、自家用車に頼らない移動が可能となり、高齢者の買い物難民対策や、地方の公共交通維持の切り札として期待されています。

私たちができるSDGs目標11へのアクション

政府や企業の取り組みだけでなく、私たち一人一人の行動も持続可能なまちづくりには欠かせません。日常生活の中で実践できるアクションを紹介します。

地域の防災活動への参加と備え

「住み続けられるまち」の基盤は安全です。自分自身の身を守ることはもちろん、地域コミュニティとの連携がいざという時の助けになります。

まずは、自分の住んでいる地域のハザードマップを確認し、避難経路や避難場所を把握することから始めましょう。
また、地域の避難訓練に参加したり、近所の人と挨拶を交わす関係を作っておいたりすることも、立派な防災活動の一つです。
「共助」の精神が、災害に強いレジリエントな地域社会を作ります。

地産地消と地元商店の利用

地域の経済を回すことも、まちの持続可能性を支える重要な要素です。
地元の野菜や製品を購入する「地産地消」は、輸送にかかるエネルギー(フードマイレージ)を削減し、環境負荷を低減します。

また、地元の商店街や個人店を利用することは、地域経済の活性化につながり、まちの多様性や魅力を維持する力になります。
週末に地元のマルシェに行ってみる、近所のイベントに参加してみるといった小さな行動が、まちの活気を生み出します。

日本の過疎地域における地域活性化の成功例:希望の灯りを見出す10の取り組み

まとめ

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」は、スラムの解消から先進国の高齢化対策まで、幅広い課題を含んでいます。

重要なのは、行政任せにするのではなく、そこに住む私たちが当事者意識を持つことです。
防災への備え、公共交通の利用、地域コミュニティへの参加など、身近な行動の積み重ねが、次世代へ引き継ぐことのできる「豊かなまち」を作ります。

まずは、自分の住むまちの課題を知り、今日からできる小さな一歩を踏み出してみましょう。

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