「なあなあ!怪獣が街襲う映画見ようぜ!」
「いいね、最近そういうの見れてないから」
エースの提案に、エペルが乗った。
それにつられてなんだなんだと、デュース、ジャック、セベクも集まってくる。
クラスが違っても、なんだかんだと仲が良い。
「じゃ、金曜日の放課後、オンボロ寮に集合な!」
「えぇ~レポートあるのに。というか寮にテレビないよ?」
「プロジェクターとパソコン持ってくからいーじゃん
お菓子とコーラも奢ってやるからさ」
「まあ、それなら」
監督生の承諾も取って、一先ず解散となった。
(怪獣映画かぁ~この世界に来てから見たことないな。少し楽しみ)
少し浮かれた足取りで、監督生は次の授業へ向かった。
****
金曜日、浮かれた足取りのまま帰って、エースたちもやってきて、お菓子とコーラとクッション用意して、プロジェクターに宣伝が映れば気分は映画館。
そして今日は金曜日。
日本人たるもの、一度は金曜日の夜九時を楽しみにしたことがあるはず。
明日は土曜日、朝早くなくても良い。
隣にいるのは同級生でナイトキャップかぶって準備は万全。
これでテンション上がらないカレッジ生はいない。
しかもこれから見るのは男の子の夢とロマンとその他諸々が詰まった怪獣映画。
異世界の監督に、監督生の期待は増すばかり。
「今日はなんと最新作二本持ってきた!」
「あ、それ!購買でレンタルしてた奴じゃないか」
「よく借りれたな」
「エペルと2人で予約しといたんだぜ?」
「興味あったから。借りられて良かったよ」
「始まるぞ!!静かにしろ!!!」
「なんだかんだノリノリなのな、セベク。」
そして男子は夢中になった。
石造りの街を破壊していく爪、森を燃やす炎、太陽光で艶めく翼。
剣と盾と弓を持って戦う戦士たち。
描かれる友情、努力、勝利!
全てが男の子の夢!
二時間ほどの映画は光の速さで終わり、男の子たちは興奮の渦に巻き込まれた。
ただ一人を除いて。
「もう一本いってみよう!」
「そんなに楽しかったのか?監督生」
自分達の世界の映画を気に入ったようで良かった良かったとみんなホクホクした。
さてもう一本。今度の舞台は現代だ。
石造りの街は同じだが、電車やバスが走り、人も現代的だ。
監督生はなにやら胸を撫で下ろしていたのだが、誰の眼中にも入っていない。
セベクすらクッション抱えてわくわくしている。
そして始まる、破壊活動。
炎と牙による破壊は、前作と同じく人々を戦かせ男子を興奮させる。
そして真打ち、魔法使いの登場だ。
前回普通の人間が撃退したのにたいして今回は特殊能力モノだ。
華麗に箒で空を駆け、マジカルペンから魔法をガンガン放っていく。
オーバーブロッドしないのはご愛嬌。
シナリオもCGも悪くはないのだ悪くはただ監督生はエンドロールの間顔を上げられなかった。
「・・・両方、ドラゴンだったね」
「「「「「怪獣と言えばドラゴンだろ?」」」」」
心底真面目な顔に、監督生はさらに首の角度を深くした。
絶望としか言いようがない。
「なんか疲れちゃった。おやすみ」
のそのそと寝に入る監督生を、なんだなんだ、迫力に負けたか、ニホンもその程度なのかなとか冗談を飛ばしあい、一年'sの夜は更けていった。
****
「ヴィル先輩ー!!!!!!」
「なに?小ジャガ。アタシは暇じゃないのよ」
「映画研究会貸してください!!!」
「は?」
「あんな・・・あれは怪獣映画じゃない!
ただの良くできたファンタジーだ!!!!」
「落ち着いた?」
「はい」
ヴィルに貰った肌に優しいティッシュで鼻をかみ、もう一枚貰ったティッシュで涙をぬぐった。
「あんな・・・あんなのただの○ビットですよ!ヒックとなんとやらですよ!炎なゴブレットだ!せめて頭を増やせ!」
「はいはいはい。で、映画研究会を使ってなにするつもり?」
「ファンタジーを怪獣映画だと思ってるワンダーランドの坊やたちに日本の怪獣を見せたい!」
「・・・監督は?脚本は?演出は?役者は?怪獣ならCGも居るわよね?」
「あ」
「まったく考えなしだったのね」
「う・・・すいません。つい。でも、本物の怪獣を見せたいんです!それにこの世界なら著作権無効ってことで、そのまんまパクれるし」
「言いきったわね。じゃあ話しは覚えてるのね?」
「映像もBGMもパーフェクトに覚えてます!!再現するとなると・・・魔法でなんとかなりませんか?」
「そうね、やれる人材を私は知ってるわ」
「本当ですか!?というか協力してくれるんですか!」
「ちょうどネタに詰まってたから、のってあげる」
「やったー!!」
「でも人材は自分で口説いてきなさい」
****
「それで、イグニハイドを貸せと」
「はい!イデア先輩達に是非CGや音響はお任せいたしたく!」
「記憶を復元するって大変なの分かってる?
魔法使う使わないは置いておいて」
「正直青い狸並のレア度だと思ってます!」
「狸?まあいいや。お試しして、拙者に響かぬクオリティの怪獣だったらなしだから」
「はんっ!ぜったい気に入りますよ!ワンダーランドの蜥蜴しか知らない先輩の度肝抜いてやります!」
「言うね~お手並み拝見」
****
「あら、早かったわね」
「イエーイ!技術班ゲットです!」
「イグニハイド、全面協力させていただきます」
「こんな頭の低いイデアは始めてみたわ。やるわね」
「ふふん!」
「そういえば、題名は?」
「ああ、拙者もまだ聞いてないでござる」
「題名はですね~」
****
一本のpvがナイトレイブンカレッジの映画研究会のサイトに投稿された。
ほんの数分の、映画の宣伝動画。
今度のコンテストにだすものの、宣伝。
怪獣映画とのことだった。
ヴィルのわりに随分普通なものをやるのだと誰もが思った。
誰もが侮っていたのだ。
そして、ヴィルの効果で映像を覗いた大勢のワンダーランドの住民が度肝を抜かれた。
なんだこれは、と。
映像は、多くの人物が会議をしている場面が二ヶ所ほどを行ったり来たり、移動中の廊下での会話の場面、そして報道番組の映像が少し。
異様なのは会議の遅さだけでなく、皆同じような服装という点だ。
ワンダーランドは非常にファッショナブルだ。
政治家だろうが公務員だろうが、お洒落さんなのだ。
なのに映像のなかの人々は皆同じ黒のスーツ。
あのヴィルすら個性を殺した服装をしている。
時折違う服も写るが、どうやら非常事態用の上着か軍人の制服のようだ。
個性がない、個々がない組織での会話劇が続けられる。
そして見慣れぬ武器の数々。
ワンダーランドにはもう随分長いこと戦争がないし、戦争を題材にする映画も少ない。
あっても魔法使いが戦う姿が多く、槍や剣からあまり進化は見られない。
異世界の軍事力を見せつけられ、なんとも言えない恐怖を感じる。
それだけでも不穏なのに、時折挟まれる報道番組。
住民が逃げ惑う映像、破壊つくされた街並みが映されるのにどこか現実味のないキャスターの声に、視聴者は緊迫していく。
そして最後の最後、停電した街に佇む、巨大なナニカの背中からアングルが流れていき、
あ、目があった
と思った瞬間画面はブラックアウトして題名が浮かび上がった。
たかが三文字、見慣れない三文字なのに、それがあのナニカを示すのだと誰もが理解した。
comming soonの後に浮かび上がった「現実対虚構」の文字と共に聞こえてくるナニカの鳴き声に、ワンダーランドの興奮は頂点に達した。
****
動画が上がる少し前
「外見はかなり違うけど、それは仕方ない!妥協したくないけど妥協!あーおじさんがほしい!!女性がほしい!!!」
監督生はキャスティングに苦労していた。
だってあの映画平均年齢高いから。
女性の活躍だって描きたいのに
でも映画研究会のなかでやる以上、学生、巻き込んでも教師まででやらねばならない。
「よし!覚悟は決めタァ!」
「アタシの知り合い引っ張らなくて本当にいいのね?」
「拙者のCGでも行けますぞ?なんならイグニハイドのアニメーション班でも」
「はい。カレッジ内で済ませます。イデア先輩、それでは特撮ではなくアニメなんです私の記憶だけではダメなんです実写にこそ!!意味が!!ある!!!」
「監督生氏・・・よくぞ言った」
「よろしい。で、アンタが望んだメンバーは集めたわよ」
監督生の前に、不承不承やってきた面子が並んでいる。
彼らは誰かとナニカをするのは苦手だ。
けれど事前にイデアの道具と監督生の記憶で再現された世界を見てしまったら、あそこに行きたいという思いがそう容易くは捨てられない。
あの炎に包まれた見慣れぬ街に佇む神の化身に会いたい。
誰よりも早く結末を知りたいと心が叫んでいる。
「取り敢えず、ここにいる人はみんな若いので、巨大不明生物特設災害対策本部の面々を演じて貰おうかと。さて、あとは、先に言っておくことがあります」
「全員注目!」
ヴィルの声でザワザワしていたのが静かになる。
なんだよと前を見れば、なぜか雰囲気の変わっている監督生にびくっとした。
「今回はお集まりいただきありがとうございます。
皆さんあらすじは読んでいますね?それでもやりますね?先に言っておきますが、撮影では、口調、仕草までトレースする勢いでやっていただきます。もし出来ない、従えないのなら帰れ。・・・と、言わざるを得えません」
後ろにヴィルとイデアを従えているとこもなんだか怖い。そのライトアップはなんなんだ、と誰もが思った。だが帰る人影は一つもなかった。
「では発表します。まず矢口はセベク!」
「若様を差し置いて!!!
主役並の役とは!!!」
「やれ」
「わ、わかった!!!」
「次、赤坂補佐官は悩んだんだけど、トレイ先輩で」
「わかった。もしかして、決め手は眼鏡か?」
「はい。かけなれてる感じがほしかったので」
「パタースン特使はなんとなくジャミル先輩」
「元々女性の役か。それにしては、かっこいいな」
「石原さ○みさんだからね!しかも可愛いんですよ!!本物見せたいな~」
「はい次志村秘書官は・・・んー、カリム先輩かな。」
「わかった!でもあんまり台詞ないのかぁ~」
「大丈夫、かっこいいから」
「おう!」
「はぐれ者の森さんはトレイン先生!
もさっとしてください!ぼさっと!」
「善処しよう」
「尾頭さんは・・・悩むな。ヴィル先輩で」
「演じたことのないタイプね。頑張るわ」
「理知的な女性なので、演技力が必要になると考えての人選です。」
「で、間准教授は学会の異端児なんで、フロイド先輩」
「えぇ~おじさんの役やだぁ」
「結構解析方面で重要ですよ。
あと老け薬飲んでやってもらいます」
「じゃあやる~面白そう~」
「さて安田さんはラギー先輩で」
「こんな地味な役で、浮きません?」
「浮きません。すでに日本人離れした面子しかいないんで。あとあのギャップはラギー先輩にしかだせない!」
「そ、そこまで言われると照れるというか」
「ジャックは袖原さんで・・・まあこんなところかな
あとは追々決めます」
「頑張るぜ、監督生」
「うん、ラギー先輩とジャックには特に頑張ってもらうよ」
「「え?」」
「この映画では、自衛隊を筆頭に警察、消防が多く登場します。つまりある程度鍛えられた肉体が過分に不可欠!幕僚長たち指揮官側だって制服着てるんだから細身の映画研究会の面々では映えない!そこで!!」
前に着き出されたラギーとジャックの前に、一束の紙が置かれた。
ズラリと名前と役職名、シーンが書かれている。
「サバナクローで適切と考えた奴等の名前です。何がなんでもスカウトしてきてください!私の記憶から作ったVR映像の持ち出しも許可します!」
「「り、了解!」」
「本日はここまで。役を引き受けてくださりありがとうございます。明日から早口の練習、セベクは声量の調整を開始します。解散!」
なんかヤバイとこ来ちゃった。
分厚い台本をもって、呼び出された面々は間違えたかなと思いながら寮に戻っていった。
****
「まさかこんな大きなコンテスト行くとは思わなかったわ」
「私もです」
監督生はヴィル率いる映画研究会の面々、そして出演してくれた友人達、サバナクローや技術のイグニハイドの寮生という大所帯で、ワンダーランド一デカイ映画コンテストの表彰式兼決勝に出席していた。
完成した映画は地区予選を勝ち抜き、ここまで来てしまった。
予選までは審査員による審査だったが、ここからは全国放送で、巨大な会場に詰めかけた人だけでなくワンダーランド全土から審査される。
VDC並の視聴率らしい。
他にも三組ほど名門校の映画研究会が並んでいる。
どの学校も、出演、監督からエキストラにいたるまで招待されているので大所帯だ。
もちろん、ロイヤルソードアカデミーも名を連ねている。
すでに三組の上映は終わり、残すはナイトレイブンカレッジのみ。
時刻は夕方、そろそろ視聴者が疲れてきて不利な時間帯だ。
くじ引きの結果だから仕方ないとは言え、歯痒い。
「大丈夫です、勝てます。日本のオタク四天王の一人が作ってるんですから」
「なにそのダサい称号は」
「ダサくないですよヴィル先輩!」
「は、始まるよ」
人が多いところなのに技術代表だからと生身で連れ出されたイデアの顔は普段より一層白く、髪は勢いをなくしていた。
「私の記憶とイデア先輩方の技術とヴィル先輩の指導の下作られたんです。ロイヤルソードアカデミーになんて負けません。」
「そうは言っても、あっちは王道で、しかもネージュ主演よ」
ヴィルは自分の出演した作品に、監督生の推す作品にクオリティについては自信はある。
しかし万人受けするかについては、少し悩ましかった。
「私たちに勝つならドラゴン一匹じゃなくて、名前の頭にキング着けて頭三つにしてから出直してこいって話です!」
監督生の作品に対する信頼に、ヴィルも気を取り直し、ハラハラしながらも見守るイデアと一緒に画面を見上げた。
もうすぐ日が落ちる。
****
「なんだこれは」
会場の誰かが呟いた。
なんだこれは、と。
これが怪獣映画なのか、と。
映画が始まる前に、異世界の世界観や作品を作った監督について説明があった。
著作権無視した作品であるとも。
会場はざわついたが、異世界なんてあるかわからない。
雰囲気作りなのだろうと誰もが笑い飛ばした。
あのヴィルにしてはちんけな前振りだなと。
しかし物語は観客を嘲笑うように展開していく。
臨場感溢れるカメラワークと世界に引きずりこむ音楽。
陸には上がれないと言われていた怪獣に見慣れぬ異国の街が破壊されていく。
国民が死んでいくというのに進まぬ会議、頷かないなトップ。
そして絶望の一手を進化と言う形で見せつける怪獣。
見慣れぬ兵器による攻撃も怪獣には傷をつけられないが、音だけでその兵器の威力はわかる。
並の魔法使いでは太刀打ちできない驚異的な兵器力をもつ国ですら怪獣には勝てないのか。
そして現れた希望、自分も参加しているような視点で行われる巨大不明生物特設災害対策本部の会議。
学生が演じているとは思えない早口と専門用語の数々。
ただの会話劇、なのになぜこんなにワクワクするのだろうか。
そして中盤の夜のシーン。
紫色の光が真っ暗な会場を照らし出す。
停電した街が燃やされ昼間のように明るくなる。
覚悟を決めた人たちの殉死、街の破壊。
忌むべきはずの怪獣は、それなのにどこか悲しそうに炎を吐く。
そして沈黙、静寂。
破壊活動の一時停止は、人々を一時の安堵と押し寄せる悲しみと抗えぬ虚しさで押し潰す。
仲間も減り、もはや立ち向かう術はないかのように見えた。
世界中がこの街を見捨てようとしている。
だがスクラップアンドビルドで立ち上がってきた国は抗うことを止めなかった。
持てるもの全てを使った総攻撃が開始され、国力の限りを注ぎ込んだ凍結作戦が実行された。
観客は固唾を飲んで見守った。
凍結された怪獣を背にしたセベクとジャミルの絵で終わった。
誰もが肩の力を抜いた、その瞬間。
グロテスクな怪獣の尻尾がアップになった。
会場に息を飲む音が、唾を飲み込む音がよく響いた。
「優勝はナイトレイブンカレッジ!!!!」
この日、ワンダーランドの映画史が書き変わった。
あと、しばらくカレッジではヤ○マ作戦のBGMが流行したとか。
****
「やりましたねイデア先輩!ヴィル先輩!」
「こんな形でロイヤルソードに勝つとは思わなかったけど、楽しかったわ。あれは続編あるの?」
「ないです!」
「監督生氏、アニメーション班が仕事が少ないと喚いてるんですが、何か作れない?イグニハイド全面降伏で従うから」
「ええ!?いいんですか?同じ監督の作品でやりたいアニメあるんですけどやります?死ぬ覚悟はあります?私の記憶を使っても死ぬと思いますよ?」
「愚問ですな!!イグニハイドの作画班を舐めないでいただきたい!」
その後死屍累々のイグニハイドが作画を、前回出演できなかった面々が何度もリテイクをかさね声を吹き込み出来上がった三本のアニメーション映画がワンダーランド映画史の神話になるのは、もう少し後のはなし。
「これ、完結編は私も知らんのですよ。
そろそろ公開だと思うのですが」
「イグニハイド寮総動員で監督生氏の世界に行く方法を見つけますぞ!!!!!」
なんとなくデデニーで大きい敵っていったらドラゴンのイメージあって、他のあんま居ないなーきっとツイステッドワンダーランドの映画界もこんなかな?と思って書きました!
配役について異論は認めます!人物多すぎてはしょりました!
ちなみに元祖ではなく作者の年齢的にシンの方ですごめんなさい!