レーダー照射とは 空自元幹部「火器管制用使用はロックオンを意味」

牧野愛博

 小泉進次郎防衛相は7日未明、沖縄本島南東の公海上空で6日午後、空母から発艦した中国軍のJ15戦闘機が、対領空侵犯措置(スクランブル)を実施していた航空自衛隊のF15自衛隊機に対し、2回にわたって断続的にレーダー照射を行ったことを明らかにした。レーダー照射はどのように行われるのか。中国側は何を意図しているのか。スクランブルの経験がある航空自衛隊元幹部に聞いた。

 元幹部によれば、戦闘機のレーダーには相手機を見つける捜索用と、ミサイルを誘導する火器管制用がある。捜索用は、首を振るように広い範囲に電波を当てるため、断続的に機体に照射する。火器管制用は、ずっと目標機に電波を当て続けることになり、周波数も変わる。艦船と異なり、航空機はレーダーの収容スペースが限られるため、同じレーダーを捜索用と火器管制用に切り替えて使用する。捜索用を自動的に火器管制用に切り替えることも可能という。

 今回、レーダー照射したJ15はロシア製スホイ33戦闘機を改造した第4.5世代戦闘機という。元幹部は「(J15が発艦した中国海軍の空母)遼寧のようなスキージャンプ型の空母からでは、フルに燃料や武装を備えた状態では発艦できないため、燃料を半分くらいにして発艦し、空中給油を受けるケースが多いようだ」と語る。

 J15の場合、数百キロ先から捜索用レーダーを出して相手を発見でき、さらに接近してから火器管制用レーダーに切り替えてロックオンする。J15が搭載する空対空中距離ミサイルPL12であれば、射程は数十キロだという。

 元幹部は「自衛隊の場合、戦闘機に対するスクランブルでは、爆撃機や偵察機よりも慎重に対応する」と語る。「戦闘機はミサイルや機関砲を備えているため、一歩間違えると武力行使の状況に陥るからだ」という。

 また、「戦闘機は機動性も極めて高いので、相手との距離をある程度取るほか、不意にレーダーの電波を相手に当てないなどの抑制的な行動を取る」とも語る。

 今回、小泉防衛相は記者会見を午前2時という異例の時間に行った。元幹部によれば、捜索用レーダーは中国軍も自衛隊も一般的に使用しているといい、「未明に緊急に会見している状況からみて、火器管制用レーダーが使われたのだと思う」と語る。「火器管制用レーダーの使用はロックオンを意味し、非常に危険な行為だ。拳銃の引き金に指をかけている状態だと言える」

 冷戦時代は、米ソが互いに威嚇行為として火器管制用レーダーを照射し合っていたという未確認情報もある。ただ、現代では非常に危険な行為として認定されている。

 元幹部も「火器管制用レーダーの使用はロックオンを意味し、国際ルールで危険な行為とされている。米軍や自衛隊ならやらない」と指摘する。

 最近は世論戦で、国際社会に訴えかけるのがひとつの戦略になっている。元幹部は今回のレーダー照射について、「中国がなぜ沈黙しているのかわからないが、国際世論に訴えるため、防衛省もいち早く記者会見を開いたのだろう」とする。

 一方、小泉氏はレーダーの種類を明確にしなかった。

 元幹部は「中国軍が使う捜索用や火器管制用のレーダーの周波数を知らなければ、空自機の警報は鳴らない。周波数の情報は偵察や同盟国からの提供で入手するが、相手も警戒して定期的に周波数帯を変える。自衛隊の能力を明かさないため、あえて明確に触れないのだろう」と語る。

 中国側の意図はどこにあるのか。J15や遼寧は沖縄本島の近くにいた。元幹部によれば、過去の例をみると、中国軍は太平洋への出口にあたる沖縄・宮古海峡付近や西太平洋海域で、5月と11月に演習を多く実施している。

 最近、100隻ほどの中国艦船が西太平洋の海域に出動しているというロイター通信などの報道があったが、昨年もこの時期に同規模の演習をしているという。

 元幹部は「訓練計画に基づいて実施している可能性がある。台湾への圧力や最近の日中対立もあり、デモンストレーションの意図も加えているのかもしれない」と指摘する。

 中国軍戦闘機は過去、スクランブルした空自機に異常接近するなど、非常に危険な行動を取っていた。ただ、元幹部によると、最近は、国際ルールをある程度勉強して、過去のような「野蛮な行動」はかなり減ったという。

 元幹部は「ミサイルを発射したわけではないので、対応措置としては回避行動を取るということだろう。(中国側は)戦闘にならないと確信し、最大限の圧力をかける狙いがあったのかもしれない」と指摘する。そのうえで、「状況的にみて、パイロットが勝手にやっているとは思えない」とみる。

 2013年の中国艦船による海自護衛艦などへのレーダー照射事件は、当時の艦長による判断だったとも言われている。元幹部は「今回、現場部隊が忖度(そんたく)したのか、上級司令部から指示が出ていたのかは不明だ。日中のホットラインが使えたらすぐ連絡すると思うが、きちんと機能していないようだ」と語った。

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島