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パワハラ・セクハラの対処法 行為者には自覚なし?

イメージ写真=ゲッティ
イメージ写真=ゲッティ

 職場の上司から人格を否定するようなことを言われたり、不必要に体を触られたり……。こうした行為はパワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)に当たる可能性がありますが、対処の仕方が分からずに、自分だけで抱え込んでしまう人もいます。どのような言動がハラスメントに該当するのか、専門家などに取材しました。【岩本桜】

パワハラとは

 まずは職場のパワハラから見ていきましょう。職場において①優越的な関係を背景とした言動であり②業務上必要かつ相当な範囲を超えて③労働者の就業環境が害される――という三つの条件を全て満たすものがパワハラと定められています。

 「優越的な関係」とは、強い立場にいる人と弱い立場の人との関係を指し、上司と部下、先輩と後輩といったような関係だけではありません。例えば仕事の知識・経験が豊富な同僚や部下が、上司や同僚に対して行う行為もパワハラに当たる可能性があります。

 一方、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲内で行われる適正な指示・指導であれば、パワハラには当たりません。

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セクハラとは

写真はイメージ=ゲッティ
写真はイメージ=ゲッティ

 職場のセクハラは、以下の通り定められています。

・職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇など不利益を受けること(例=経営者から性的な関係を要求されたが、拒否したら解雇された)。

・性的な言動が行われることで、職場環境が不快なものとなったため、労働者の能力発揮に大きな悪影響が生じること(例=上司が腰などをたびたび触るので「また触られるかも」と仕事が手に着かず、就業意欲が低下する)。

 セクハラは男性から女性だけでなく、女性から男性、同性同士でも成立します。

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行為者にハラスメントの自覚なし?

過去3年間にパワハラを受けた経験
過去3年間にパワハラを受けた経験

 厚生労働省が2020年10月、全国の20~64歳の労働者の男女8000人を対象に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、31・4%が過去3年間で「パワハラを1度以上経験した」と答えました。被害の内容は「精神的な攻撃」が最も多く、約半数を占めました。

 一方、過去3年間でセクハラを1度以上経験したのは10・2%で、「性的な冗談やからかい」が約半数を占めて最多でした。

過去3年間にセクハラを受けた経験
過去3年間にセクハラを受けた経験

 パワハラとセクハラの行為者には、それぞれどういった特徴があるのでしょうか?

 シニア産業カウンセラーの松崎優佳さんは「パワハラの行為者は、自身の言動をパワハラと認識していない事が多い」と指摘します。「自分の常識=世の中の常識」と考える傾向があり、本人に自覚が無いままパワハラを行うことがあるそうです。

 行為者とされる人に「あなたの行為はパワハラの恐れがある」と伝えても、「指導のつもりだった」「そんなつもりはなかった」と驚かれるケースも多いといいます。

 また、一般社団法人「職場のハラスメント研究所」(東京都)で代表理事を務める金子雅臣さんは、パワハラ行為者によく見られるケースとして「仕事ができる人」を挙げます。

 仕事で実績を積み、自分に自信がある人は、自己肯定感が強いため「なぜ言われた通りにできないのか」「自分の言った通りにやれば良い」と考えることがあるそうです。

 一方、セクハラ行為者について、金子さんは「これは男性の仕事」「女性はこうあるべきだ」といったように、性別役割を普通のことと認識しているケースが多いと指摘します。

 松崎さんは「客観性が低く主観性が高い人」が、セクハラの行為者になる傾向があるといいます。自身の言動を「コミュニケーションの一環だった」「自分に好意があるかと思った」と主観的に捉え、「こういう行為は相手を嫌な気持ちにさせるかもしれない」という客観性が欠けている傾向があるそうです。

指導とパワハラの違い

 パワハラ行為は許されませんが、時には部下などへの指導も必要です。指導のつもりが「パワハラ」と言われないために、何を意識すれば良いのでしょうか。両者の違いについて、金子さんは以下の点を挙げています。

・「業務上の指導」として説明できる発言か

・相手の人格や人権を傷つけない発言か

 一方、松崎さんは「どうすれば一番相手に伝わるかを念頭に置いて、声のトーンや言葉遣いを考えることが必要」と指摘します。また「強い口調で指示したのは、こういう理由があるから」といったように、自分の指導方法や内容について客観的に説明できるかどうかも重要といいます。

ハラスメントを受けた時の対応

イメージ写真=ゲッティ
イメージ写真=ゲッティ

 実際にハラスメントを受けた時、取るべき対応は以下の通りです。

・どんなことをされたか記録する

 ハラスメントが疑われる行為があった場合、「いつ・どこで・誰が・何を・何のためにしたのか」を、メモや録音などで記録しましょう。

 松崎さんは「どういうハラスメント行為を受けたか(客観的視点)」「自分はどう感じたか(主観的視点)」「どういう改善を望むか」――の3点を分けて記録することが大切といいます。

 例えば、上司から肩を抱きかかえられたとします。「上司から肩を抱かれて嫌だった」という記録では、第三者に当時の状況が伝わりづらく、相談を受けた側が客観的に判断しづらくなります。

 一方、「○月○日○時ごろ、オフィスで上司から仕事の指示を受けている途中、体を引き寄せられて両手で肩を抱かれた(客観的視点)」「その後恐怖で呼吸が乱れ、気分が悪くなり○分ほどトイレから出てこられないくらい不安だった(主観的視点)」――と客観性と主観性を分けて記録すれば、当時の状況が伝わりやすくなります。業務に支障が出ていることや改善案も併せて示すことで、自分の要望が伝わり、問題解決に役立ちます。

・周囲に相談する

 上司や友人などに相談しておくことで、トラブルに発展した際、相談内容を証言してくれたり、上司などが代わりに相談窓口へ状況を伝えてくれたりすることが期待できます。人事部や社内外の相談窓口も活用しましょう。

外部の相談窓口に相談する

職場のハラスメントに関連する相談機関一覧

日本産業カウンセラー協会

ハラスメントの相談を受けたら

イメージ写真=ゲッティ
イメージ写真=ゲッティ

 ハラスメントの相談を受けた時は、「あなたにも非があったんじゃない?」「若くて可愛いからしょうがないよ」など、相手を評価したり否定したりする発言は避けましょう。

 その時の状況を見ていないのに、相談者側にハラスメントを受ける要因があるような発言をすることで、相談者側は「私が悪かったんだ」と感じ、さらに相手を傷つけてしまう可能性があるからです。

 松崎さんは「まずは『よく相談してくれたね』と相手をねぎらってほしい。その後しっかり話を聞いて、本人が何を言いたくて、何を分かってほしいのか理解することが重要です」と強調します。

 一方、ハラスメントが疑われる行為を受けても、なかなか周囲に打ち明けられない方もいるでしょう。しかし、一人で抱え込むことで心身に支障を来す恐れがあるほか、仕事に悪影響が出るかもしれません。

 松崎さんは「理不尽な扱いを受けたり、仕事をしづらいと感じたりしたら、誰かに相談して自分らしく生きるための選択を取ってほしい」と呼びかけています。

※この記事は、厚労省のサイト「あかるい職場応援団」も参考にしました。

 金子雅臣さん

一般社団法人「職場のハラスメント研究所」(東京都)代表理事。元東京都職員で、労働相談に従事。2008年にハラスメント研究所を設立。

 松崎優佳さん

一般社団法人「日本産業カウンセラー協会」(東京都)シニア産業カウンセラー・公認心理師。同協会・東京支部のカウンセリングサービス担当部長として、カウンセリングを行う。

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