闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

34 / 68
第34話

グレイ・モナーク

Lv.1

力:H130→H148

耐久:H132→H150

器用:H128→H140

敏捷:H129→H145

魔力:H135→H155

《魔法》

【魔術】【奇跡】【呪術】

《スキル》

呪いの証(ダークリング)】【ソウルの秘術】【残り火】

 

テント内にて、今しがた更新を終えた【ステイタス】を、ヘスティア様から口頭で伝えられた。

上がったと言えば上がったが、そこまで伸びたわけでもないな。

 

「まぁ、グレイ君にしては上がったほうだと思うよ?」

「何ですか『にしては』って」

「いやぁ、今までのグレイ君の【ステイタス】の伸びとかを考えたら思っただけさ」

 

「それはそうとグレイ君」と言うと、ヘスティア様のツインテールが俺の腕に絡みついてきた。

 

「と~~~~っても重要な話があるから、地上に帰還したら覚悟しておいて……ね?」

 

「ね?」の部分でニッコリと笑顔になるヘスティア様だったが。威圧感が凄かった。

 

「……わかりました。じゃあ、俺は先に」

「うん」

 

【ステイタス】更新用の器具一式を片付けるヘスティア様に手を振り、俺は先に外へ出た。

 

『兎野郎がいるってどういうことだ!?聞いてねえぞ!?』

『聞かれなかったから言わなかったし、言ったら言ったでベートが騒ぐから言わなかったのー。はい、並んだ並んだー』

『おいこらっ、離せ馬鹿アマゾネス!?』

 

多くの者が天幕をたたみ始めている中、野営地の外れでは【ロキ・ファミリア】の主力構成員が集結し、隊列を組んでいた。

 

「あ、グレイさん!」

 

最後尾にいたレフィーヤに声をかけられ、振り返る。

 

「もう、行くのかい?」

「はい。先に出るパーティーに組み込まれたので」

 

迷路の道幅の都合上、『遠征』規模の大人数が17階層以上の層域をいっぺんに進むのは窮屈かつ困難だ。よって、帰還の際には2つの部隊に分ける。

その内、レフィーヤは前行するパーティーに編入され、俺達は後続の部隊に同行して地上に帰還する手筈になっている。

 

「そういえば。リヴェリア様からグレイさんに伝言を預かっているんです」

「伝言?」

「はい。『また機会があれば、貴公と古の魔法について語り合いたい』と」

「……わかった。じゃあ、また地上で」

「はい」

 

「それじゃあ」と言って軽く頭を下げると、彼女は仲間達とともに17階層へ続く洞窟に向かっていった。

後は、武器の整備を終えたヴェルフが道具一式を【ヘファイストス・ファミリア】の上級鍛冶師(ハイ・スミス)に返却し、テントをたたんで後続の部隊に同行する……筈だった。

 

「いたか!?」

「いいや」

「ベル様もヘスティア様も、どこにも見当たりません!」

「不味いぞ、このまま見つからないようじゃ【ロキ・ファミリア】の部隊に置いていかれる」

「もう、時間がありません……」

 

あくまで【ロキ・ファミリア】の後に付いていくだけであって、部隊に組み込まれているわけではない。待ってくれと呼びかけても聞いてもらえず、頃合いとなれば彼等は18階層を出発するだろう。刻一刻と、確実に刻限は迫っていた。

 

「ベルもヘスティア様も、今になっていなくなるなんて普通じゃない」

「ってことは……ベル達は何か厄介事に巻き込まれたのか?」

「ヘルメス様とアスフィ様に、協力を仰ぐのは……」

「駄目だな。どこをほっつき歩いているかわからない2人を探すなんて、余計に手間が増えるだけだ」

「覆面の冒険者様の居場所を知っている方は?」

「それこそ、ベルぐらいしか知らないだろう」

 

どうしたものかと手でこめかみを押さえると、俺達を呼ぶ声が聞こえた。

 

「み、みんなー!」

 

野営地の外れの北東側、大木の下で手を振っている千草のもとに俺達は駆け寄る。

何があったか訊ねると、彼女は回復薬(ポーション)の散乱した場所へと案内することで答えた。

 

「あ、あと、さっき、クラネルさんが凄い慌てながら森の外に駆けていったのを見たよ」

「……もう事件に巻き込まれたと考えたほうがよさそうですね」

「モンスターがヘスティア様に何かやらかしたとは考えにくいな。となると人間の仕業か?」

「千草様、ベル様は森の外に駆けていったとおっしゃいましたが、具体的な方向は?」

「確か……中央樹のほうだと思う」

 

階層の中心部にそそり立つ巨大な樹を彼女は指差す。

 

「【ロキ・ファミリア】には置いていかれるが……ベルとヘスティア様が最優先だ、行くぞ」

「ヘスティア様はどうする?相手が神質(ひとじち)を盾に何をしでかすかわからん」

「そんな気を起こせなくなるくらいに徹底的に叩いて潰すだけだ」

 

俺達は現場から中央樹に向かって駆け出し、真東のところに人集りを見つけた。中心にはベルがいた。

 

「──いたぞ!」

 

「ヘスティア様はリリにお任せください」と言ったリリと途中で別れ、ヴェルフと桜花、命と千草の4人と並走する。

桜花と命は千草から短弓(ショートボウ)を受け取り、冒険者達を狙撃した。

 

「うおっ!?」

「何だ!?」

「【未完の新人(リトル・ルーキー)】の連れだ!どうしてここがわかった!?」

 

背後からの狙撃を、腐っても第三級冒険者というべきか振り向きざまに得物で打ち払う。

 

「構わねえ、予定通りだ!潰しちまえ!」

「鎧の野郎に気をつけろ!かなりやるぞ!」

「タケミカヅチ如きが粋がってんじゃねえぞおおおおお!!」

 

粗暴な鬨の声を上げ、襲い来る上級冒険者を『ドランの双槌』で迎撃する。

 

「森が騒がしいと思っていたら……こういうことでしたか」

「リューさん……!」

 

木の枝から冒険者を強襲したのは、覆面の冒険者──もとい、リューさんだった。

 

「酒場ではやりすぎだと言いましたが……訂正しましょう、グレイさん。あの時は徹底的に叩いておくべきでした」

 

リューさんを加えて冒険者達を片っ端から薙ぎ倒し、ベルのもとへ向かう。

 

「あああああああああッッ!!」

「がああッ!?」

 

ベルの回し蹴りが空を切った瞬間、何者か──モルドが絶叫とともに吹き飛ばされ、破砕音が鳴る。

 

「何だこりゃ?」

 

砕け散った破片の1つを拾い上げ、まじまじと見つめる。

 

「(ベルの蹴りでこいつが砕けるまで、モルドの姿は見えなかった。ということは、こいつには姿を見えなくする──『霧の指輪』或いは『見えない体』と同じ効果があるのか)」

 

一連の仕掛けを察し、ヘスティア様の居場所を吐かせようとモルドのもとに向かう。

 

「やーーーーーめーーーーーろーーーーーーっ!!」

 

その大声を聞いて誰もが動きを止め、声のもとへ顔を向ける。

そこにいたのは、俺達の探したヘスティア様だった。彼女は側にリリを従え、乱闘している俺達を見据えている。

 

「ベル君達、ボクはもうこの通り無事だ!無駄な喧嘩は止せ!君達も、これ以上いがみ合うんじゃない!」

 

大喝一声するヘスティア様に俺達は安堵し、武器を下ろす。

しかし怒りの形相を浮かべるモルドを始めとした上級冒険者達は、今更引けないとばかりに武器を構え直す。

しかし。

 

「──止めるんだ」

 

女神の静かな一言が、時を止めた。

モルド達は金縛りに遭ったように停止し、ベル達はその威圧感に言葉を失う。

超越存在(デウスデア)としての力の一端──神威をヘスティア様は解放した。

 

「剣を引きなさい」

 

俺達の聞いたことのない口調、見たことのない顔で、ヘスティア様は諭すように告げる。

モルド達は呻き、後退る。

 

「……うあああああああ!?」

 

1人の冒険者が背を向けて逃亡した。彼の後を追うように1人また1人と走り出し、最後にモルドも退散した。

 

「──ベル君、無事かい!?」

「おわぁっ!?」

 

1歩も動けなかったベルは、ヘスティア様の体当たりをもらう。涙ぐむヘスティア様はポーチから高等回復薬(ハイ・ポーション)を取り出し、栓を抜いて顔に浴びせかける。

 

「ベル君~~、ごめんよぉ。ボクのせいでこんな事にぃ~~」

「い、いえ、元々は神様を守れなかった僕のせいですし、だから、その……な、泣かないでください」

 

胸に抱き着きながら泣きべそをかくヘスティア様に、ベルは幼子を慰めるように優しく抱き返した。

 

「大丈夫か、ベル?」

「グレイさん……」

「まぁ、わからないこともないけどよ──」

「お1人で行ってしまわないでください!リリ達に相談するなり、やりようはいくらでもあった筈です!」

「うん……ごめんね、リリ」

 

取り敢えず、1件落着か。さて、これから地上に帰還するまでどうしようか……と、考えていると。

 

「何だ、これ……」

 

足場が、階層全体が揺れ始めた。

 

「じ、地震?」

「いや、これは……」

「ダンジョンが、震えている?」

 

揺れは段々大きくなり、周囲の木々を揺らす。

 

「まずいですね……これは嫌な揺れだ」

 

リューさんの一言に、俺達は悟った。

異常事態(イレギュラー)が起きる、その前触れだと。

そこから階層の揺れは続いたまま、次の瞬間──ふっ、と。

頭上から降り注ぐ光に影が混ざり、周囲が薄暗くなった。

 

「……おい。なんだ、あれ」

 

空を見上げたヴェルフが、呆然と呟いた。

天井一面に生え渡り、18階層を照らす数多の水晶。その内の太陽の役割を果たす、中央部の白水晶の中で、巨大な黒い何かが蠢いていた。

バキリと水晶に亀裂が走る。それは水晶の内部をかきわけるように、その身を徐々に大きくしていく。

そして、ソレ(・・)は水晶を突き破り、この階層に生まれ落ちた。

 

「おいおい……ここは安全階層(セーフティポイント)だぞ……」

「いえ、それもそうですが……ありえません!あのモンスターはグレイ様と【剣姫】が倒した筈です!」

次産期間(インターバル)はまだ10日以上あるってのに……何でゴライアスが出てくるんだよ!」

『オオオオオオオオッッ!!』

 

階層全体をわななかせる産声が響く。

 

「……は、早く助けないと!」

 

ゴライアスの降り立った大草原。そこに広がる阿鼻叫喚を前に、ベルが飛び出そうとする。

 

「待ちなさい」

「っ!?」

 

そんなベルの手を、リューさんが掴んだ。

フードの奥で、睨み付けるようにベルを見据える。

 

「本当に、彼等を助けるつもりですか?このパーティーで?」

 

上級冒険者5名にも満たない臨時のパーティーと、黒いゴライアス、実力差は言うまでもない。何より、彼等が自分たちにしたことを忘れたわけではないだろうな。と、言外に告げられる。

だが、それでも。

 

「助けましょう」

 

ベルは間髪入れず決断した。

 

「貴方はパーティーのリーダー失格だ──だが、間違っていない」

 

彼女はそう言うとケープを翻し、1人いち早くゴライアスのもとへと向かっていった。

 

団長(ベル)が助けると言ったんだ、従うしかないだろう」

 

リューさんの後を追うように、俺はゴライアスのもとへ向かった。




次回、vs黒いゴライアスですが……ストームルーラーは使いません。あれ使うとほぼワンパンで倒せてしまいますので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。