ビジュアル面での作り込みで少しでも皆さんの演技の手助けに

STAFF INTERVIEW

光野ひとみ
MITSUNO HITOMI

VISUAL

ビジュアル面での作り込みで少しでも皆さんの演技の手助けに
ヘアメイク:光野ひとみ

UPDATE:

——【推しの子】のヘアメイクに関してオファーがあった時の感想を教えてください。

たくさんのファンの方に愛されている作品なので責任重大だとプレッシャーを感じましたが、話し合いに参加する中でキャスト、スタッフの方々の本作にかける思いを耳にして「私も頑張ってみたい」と覚悟しました。これまでにもスミス監督とはミュージックビデオなどでご一緒させていただいていたので、お声がけいただけたこともとてもうれしかったです。オファーをいただいてからしっかりと原作を読み込み、芸能界を生きる人々の葛藤が鮮やかに描かれている点にグッときました。またアイが殺害されるシーンなど、作画としても美しく印象的な場面がたくさんありました。

——本作では皆さん、ウィッグではなく地毛を染めてそれぞれのキャラクターを演じています。プロデューサーや監督とはどのような話し合いがあったのでしょうか。

最初の打ち合わせで、プロデューサーの井元さん、そしてスミス監督から「横槍メンゴ先生の描かれたものをリスペクトしつつ、現実にいてもおかしくないキャラビジュを目指したい」という、非常に高い目標のお話がありました。役者の皆さんもプレッシャーを抱えていたと思いますし、キャラクターへの愛情や思い入れもとても強いものがありました。それぞれのイメージするキャラクターのビジュアル像と、リアリティを大切にするというバランスを同時に両立させるために、チームでディスカッションや試行錯誤を繰り返しました。もちろん髪の毛は伸びてくるものですし、色も褪色してくるので、今回のような長丁場の撮影でヘアスタイルをキープしていただくのは大変なことではありました。いろいろな苦労がありましたが、何と言っても役者さんのご協力が欠かせませんでした。家でもカラー用のシャンプーを使って日々のケアをしていただいたり、皆さんがいつもお世話になっている美容師さんにお願いをしてカラーリングしていただいたりと、そういったご協力あってこそ最後まで成し遂げることができました。

——各キャラクターについて詳しく教えてください。金髪であるアクアとルビーの髪色を決める上では、どのようなご苦労がありましたか。

アクアとルビーは双子なので、髪を同じ色にする必要がありました。しかもアクアとルビーは生まれながらの金髪というキャラクターなので、伸びてきた根元部分も黒色に見えてはいけないわけです。キャストさんには、ヘアカレンダーを作って「そろそろリタッチする時期だ」と定期的にリタッチしていただきました。色味を決めるまでにも、かなり苦労がありました。特に学校のシーンなどでは、アクアとルビーだけ黄色のような派手な金髪にすると2人の存在が浮いてしまったり、違和感のある世界になってしまう可能性があります。茶色でもなく、下品にもならない、ちょうどいい色を見つけるまでに時間をかけました。また肉眼で見ていい色味だったとしても、モニターを通すと暗く見えたりもするので、そこでまた調整が必要になったりもしました。アクア役の櫻井海音さんとルビー役の齊藤なぎささんには、それぞれいつも通っている美容師さんに薬剤や配合を共有してもらって、同じ色になるよう取り組んでいただきました。人によって髪の毛の質や色の出方も違うので、2人の色を合わせるというのも苦労した点です。幼少期のアクア役を演じた岩川晴さんは、櫻井海音さん。同じく幼少期のルビー役の斉藤柚奈さんには、齊藤なぎささんと同じ美容室に通っていただき、色を揃えていただきました。

——髪色に加え、アクアとルビーのヘアスタイルにはどのようなこだわりが込められているのでしょうか。

アクアの中には医者である吾郎がいます。復讐に捕らわれているため、ファッションにはそれほど気を遣っていないのではないかと想像しました。髪型もオシャレに決めているというよりは、「アクアっぽい」と感じるニュアンスを大切にしながら原作の髪型に近づけるようにしていきました。ルビーは、少し流れている前髪と顔周りのレイヤーカット、耳の上で束ねた結び方が特徴です。結ぶ位置は原作と同じになるようにしつつ、一番かわいく見えるポイントを探してその位置をキープするようにしていましたが、齊藤なぎささんがとてもよく似合ってくれました。どのキャラクターも髪型を作る上では、原作を読み込みつつ、それぞれの髪型の特徴がよくわかるコマをピックアップして確認するようにしていました。

——伝説のアイドル、アイについてもこだわりを教えてください。

“アイ”そのものが特別な存在なので、出来る限りナチュラルな形を目指しました。ダンスをしたり動いた時に髪の揺れが生まれるように、毛先を少しだけすいてもらいました。アイドルは、髪の揺れや動きまでダンスの一部だとよく言われています。アイ役の齋藤飛鳥さんは髪のさばき方がものすごくお上手で、ライブシーンにおいても毛先までしっかりと操ってくれました。伝説のアイドルであるアイを演じるのが齋藤さんで、本当によかった!と感じました。

——有馬かなについてはいかがでしょうか。

真っ赤な髪色にしてしまうとリアリティという面では違和感が出てしまうので、ブリーチはせずにほんのり赤を感じるようなカラーにしています。普段はあまり赤色として主張しないけれど、光が当たると赤に見えるという、いい着地点を見つけられたのではないかと感じています。スタイルとしては、丸みのある前下がりのボブで、前髪の重さで幼さを出しているのが特徴です。見た目の印象は前髪のボリュームですごく変わるものなんですが、少し厚めに切り揃えて、さらに襟足を首が見えるくらいまでカットをしたことで、かならしさがグッと増したように感じています。原菜乃華さんがスラッとしたきれいな首をしていることもあり、ご本人の魅力ともマッチしていました。

——あかねには、どのようなこだわりが込められていますか。

あかねの髪色は、黒髪にほんのりと青色を入れています。それによってシャープで凛とした雰囲気が生まれました。今回は皆さんに地毛を染めて演じていただきましたが、自然な雰囲気が出たり、ヘアメイクとしてもスタイルを作りやすいというだけでなく、役者さんにとっては演じる上でより気持ちが入りやすいという利点もあったように感じています。

——MEMちょは、根元の黒色も特徴的なヘアスタイルです。

MEMちょ役のあのさんには、撮影よりも早めに全体をブリーチしてもらって、そこから髪を伸ばすことで根元の黒色を出すようにしてもらいつつ、さらに黒マスカラで色付けをしています。黒色にする根元の長さは3センチくらいと決めて、髪が伸びてきたら黒の部分を残してまたブリーチをして、黒色3センチ幅をキープしていました。MEMちょに関しても、現実世界にいても「かわいい」と思えるような色として整えることを大切にしていました。金髪部分は、アクア&ルビーと差別化できるような色であり、さらにあのさんに似合う色を探りました。また顔周りのレイヤーカットと毛先の外ハネも、MEMちょらしさを出すポイントです。

——撮影現場では、原作者の赤坂アカ先生と横槍メンゴ先生にもお会いできたとのこと。お話して印象的だったことはありますか?

ライブシーンの撮影の時にお二人にお会いして、ご挨拶することができました。お二人から「どのキャラクターの髪色も違和感がなく、リアルに落とし込んでくださった。ありがとうございます」とおっしゃっていただきました。髪色に触れていただいたことに感激しましたし、その一言で「ここまで来られたんだ」と報われたような気がしました。「やった!よかった!」と涙が出るほどうれしかったです。

——各キャラクターに細部までこだわりを込めながら、長期間の撮影を走り抜けました。本作は、ご自身にとってどのような作品になりましたか。

アクア役の櫻井さんはメイクをしている時も原作を読んでいたりと、現場では常にスタッフやキャストの皆さん全員の原作愛を感じていました。寒い時期の地方ロケなどもありましたが、櫻井さんがいろいろな部署と交流を深めてみんなをまとめ、いつも穏やかな雰囲気で包んでくれたことも印象的です。原作を中心にたくさんディスカッションをして、みんながプレッシャーと戦いながら結束力を高めていけた実感があります。同じ方向を向いて走り続けたスタッフの皆さんとはまるで戦友のようになれた現場で、今でも「みんな元気にしているかな」と思ったりします。キャラクターのビジュアルにはさまざまな意見があると思いますが、現場で見ていても皆さんのお芝居がすばらしく、それぞれのキャラクターの感情がしっかりと映し出された作品になっていると思います。アイの殺害シーンでは、齋藤飛鳥さんのお芝居に圧倒され、モニターを見ながら泣いてしまいました。ルビーが闇堕ちするシーンでは、齊藤なぎささんが一生懸命に感情を作っていました。本当にすばらしかったです。他の役者さんのお芝居もここでは語りつくせないくらいでした。ヘアメイクとしては、ビジュアル面での作り込みが少しでも皆さんの演技の手助けになっていたとしたらとてもうれしいです。皆さんの奮闘に背中を押され、私自身もたくさんの学びがある、貴重な経験をさせていただきました。

PROFILE

光野ひとみ

光野ひとみ

MITSUNO HITOMI

2007年に独立、ヘアメイクアップアーティストとして活動を開始。広告・映画・ドラマを中心にジャンルを問わず幅広く活動中。多くの女優や俳優、アーティストのヘアメイクを担当する。

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