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「この1年で、書店の売場が1万5千坪も消えた」 本の問屋トーハンの方からこの数字を聞いたとき、出版に20年携わってきた人間として、足元の床が抜け落ちるような感覚に襲われました。 1万5千坪。 ピンとこないかもしれませんが、そこにあったはずの「無数の物語」と「人生を変える出逢い」が、音もなくこの世界から消滅したということです。 もちろん、ネット書店は便利です。 品ぞろえは豊富で、ポチれば明日届く。効率は最強で僕も恩恵を受けてます。 でも、あえて言わせてください。 ネット書店の得意技は「正解への最短ルート」ですが、リアル書店の魔法は「予測不能なノイズ」にこそあるんです。 思い出してみてください。 書店のドアを開けた瞬間のあのインクと紙の匂い。 目的もなく棚をブラブラしているとき、表紙や帯、背表紙の言葉やデザインがふと目に入って立ち止まるあの瞬間を。 「あれ? こんな本、あったんだ」 AIのアルゴリズムは「あなたが意識しているもの」を教えてくれますが、リアル書店は「あなたが無意識に求めていたもの」を教えてくれるんです。 検索窓には打ち込めない、心の奥底にある渇きに、本の方から呼びかけてくる。 多くの成功者が語る「人生を変えた1冊」は、大抵そんなふうに計算できない偶然の出逢いから生まれています。 効率だけを求めて、この「ワクワクするノイズ」まで手放してしまっていいのでしょうか。 本屋から人が消えるのは、街の灯りが一つ消えるのと同じです。 出版社も、これから世に出る著者さんも、そして読者の未来も、少しずつ色を失ってしまう。 だから少しだけ遠回りをして、本屋さんに寄りませんか? 棚を散策する30分。 それは単なる買い物じゃなくて、あなたの心をチューニングする豊かな時間になるはずです。 もしそこで、素敵な出会いがあったら教えてください。 あなたのその「寄り道」が、あなたはもちろん、次の誰かの物語を守ることにも繋がっていきますから。