闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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第21話

「レフィーヤから聞いたぞ。貴公、『ソウルの魔術』のみならず『奇跡』と『呪術』も使えるそうだな」

「ああ」

「何処の誰から教わったか……」

「すまないが、教えられないな」

「……そうだろうな。わかっていたさ」

 

ベルがいるとされる9階層奥のルームまでの道中。俺はリヴェリアからの質問に答えている。

 

「貴公の倒したあのミノタウロスだが、間違いなく『強化種』だろう」

「ほー」

「それを相手にあそこまで冷静でいて、なおかつ討伐してのける……本当にLv.1か?」

「ああ。なんなら、ここで【ステイタス】を見せようか?」

「……いや、いい。次の質問だ。貴公、あのミノタウロスを倒したあとで座り込んでいたが、何をしていた?」

これ(・・)錬成して(つくって)いた」

 

背負っている猛牛の大斧(オックス・アックス)を指差し、答える。

 

「材料は何だ?ミノタウロスの角……は違うな、大きさが釣り合わない。魔石か?」

「いや、ミノタウロスの『ソウル』を使ったよ」

「……もしや、『ソウル錬成』か!?」

「そのとおり」

「馬鹿な!『ソウル錬成』は我々人類の四大禁忌(タブー)に数えられる所業だ!それを一切の躊躇いもなしに……」

「使えるものはなんでも使う。それだけだ」

「……いや、『ソウル錬成』という、遥か古代の(わざ)を現代で行った事自体ありえない!あれは存在を記す資料・伝承があるのみで、今までにそれを誰かが成し遂げたなど聞いたことが……」

「聞いたことはなくとも、ついさっきその目で目撃したじゃないか」

「むぅ……」

 

俺の返答を聞いて、リヴェリアは顎に手を当ててぶつくさ言い始めた。

 

「……」

 

ちらりと背後のティオネに視線を送ると、睨まれてしまった。なんでさ。

 

「では、次の──」

 

質問を口にしかけたところで、リヴェリアの目線が前方に向けられる。俺もつられてそちらを見ると──

 

「ベル!リリ!」

 

ベルを背負っているアイズと、リリを抱きかかえている【大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒュリテがこちらに向かって走っているのが見えた。

 

「グレイさん……」

「ベルとリリの容態は!?」

「2人とも疲労で眠っているだけなので、大丈夫ですよ」

 

アイズの報告を聞き、俺は胸を撫で下ろす。

 

「リヴェリア、この子達をバベルに届けてくるね」

「ああ」

「じゃあ、俺は一旦帰らせてもらう。団員の命が最優先なんでな。そちらの質問には、またの機会に」

「わかった。その言葉、忘れるなよ」

 

俺たち3人はそのまま地上へ向かって走り始めた。

 

「俺は主神(ヘスティア)さまを呼んでくる!ベルとリリはバベルの治療院に運んでくれ!」

「はい!」

「任せて!」

 

俺は【ヘスティア・ファミリア】本拠地(ホーム)の廃教会で俺達の帰りを待っているヘスティア様のもとへ向かい、アイズ達はバベルの治療院へ向かった。

 

 

 

 

「フレイヤ様。ただいま帰還いたしました」

「開いているわよ」

 

部屋の主の許可を得て、猪人(ボアズ)猫人(キャットピープル)が扉を開けて入室する。

 

「まずは……お疲れ様。そして、よくやったわ。オッタル、アレン」

 

女神(フレイヤ)からの労いの言葉を受け、2人の従者は頭を垂れる。

今回の件は、ベルの可能性とグレイの闘う姿を見たいという彼女のお願いから始まった。

ベルは彼の魂の輝きを曇らせる要因となっているミノタウロスへの恐怖(トラウマ)を克服させるために。上層の弱小モンスター相手では物足りなく感じているであろうグレイに、異常事態(イレギュラー)との遭遇(せんとう)という刺激を与えるために。

そして、彼女が2人に提示した条件は2つ。1つ、彼らにぶつけるモンスターはミノタウロスであること。1つ、彼らと直接接触してはならない。この2つを守るのなら、強化方針は任せるという命を受け、オッタルとアレンは今日まで中層に潜っていた。

ベルは恐怖(トラウマ)を克服させるという理由があったが、グレイの場合はミノタウロスでも足りないというのが本音であった。しかし、中層までのモンスターかつ、デーモンを彷彿とさせる人型のモンスターはそれしかいなかった。もちろん、人型であることのみを基準に選ぶのなら、あるモンスター(・・・・・・・)を除けばシルバーバックやオークなど他にも候補はある。だが、人型のデーモンとは角が生えていなければならない。これだけは譲れない、彼女のこだわりであった。

結果は、フレイヤが《神の鏡》越しに見ていたとおり。ベルはミノタウロスと激闘を繰り広げ、見事これを撃破。グレイはミノタウロスとの戦闘を楽しみ、見事撃破してのけた。

 

「(あの子(ベル)の魂の輝き、素敵だったわ……思わず気をやってしまうくらいに。それに……あの人(グレイ)の魂の輝きも相変わらず素晴らしかった)」

 

まぶたを閉じれば鮮明に浮かんでくる。2人の魂が輝いたあの瞬間を思い出しては熱っぽいため息をつき、疼く下腹部に手を当てる。

 

「フレイヤ様。貴女に1つ、質問がございます」

「おいオッタル、お前何を──」

「何かしら?オッタル」

 

止めようとする仲間(アレン)の言葉を遮り、フレイヤはオッタルの言葉に耳を傾ける。

 

「鎧を纏ったあの男……グレイ・モナークとは、何者なのですか?」

「そうね──」

 

オッタルの問いに対し、彼女は微笑みながら答える。

 

「──あの人こそは最強の英雄(かいぶつ)。立ちはだかり、牙をむく全てを打倒し、世界の理を作り変えた(いけにえ)。人ならざる身で人の身に余る偉業を成し遂げた代償に、世界から置き去りにされた怪物(えいゆう)よ」




次回から原作4巻開始です。
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