闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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ミノタウロスvsグレイ戦&ソウル錬成回です


第20話

「……ごめん、もう1回お願い」

「だから!すぐ下の9階層に、ミノタウロスがいたんだよ!」

「お、俺も見たぞ!」

 

ダンジョン8階層。遠征に向かっていたアイズ達【ロキ・ファミリア】のメンバーが通過しようとしている十字路、その右手方向から表れた冒険者2名の様子が気になった【大切断(アマゾン)】ティオナ・ヒュリテ。彼らに一体何が起きたか訊ねたところ、冒頭に至る。

 

「もしかして、私達が逃がしたミノタウロスなんてことは……」

「んなわけねえだろ?1匹残らず仕留めた筈だ」

「それに、私達の討ち漏らしだったとしたらおかしいわ。あの遠征から1ヶ月経つのよ?そんなことがあったら、第三級以下の冒険者達の被害は馬鹿にならないわ。そんな噂、1つも耳にしたことがない」

「……申し訳ない。貴方がたが見たものを、僕達に詳しく聞かせてもらえないだろうか?」

「あ、ああ……」

 

毅然とした態度の小人族(パルゥム)──【ロキ・ファミリア】団長、フィン・ディムナに見上げられながら、相手の冒険者は順に語った。

いつも通りダンジョンに潜っていたら、ルームへと繋がる一本道の奥で、ミノタウロスと白髪の少年(・・・・・)の姿を一瞬捉えたこと。すぐに響いてきたその少年のものと思われる叫喚とミノタウロスの遠吠えに当てられて、急いでこの階層まで逃げてきたこと。そのミノタウロスは、冒険者の大剣を装備していたこと。

そしてもう1方の冒険者は、ルームを移動している最中にミノタウロスの襲撃を受けたこと。それから逃げる途中、全身鎧に青いサーコートを纏った(・・・・・・・・・・・・・・・)人物とすれ違ったこと。逃げるよう呼びかけても無視するその人物を置いて、この階層まで逃げてきたこと。そのミノタウロスは、冒険者の大斧を装備していたこと。

 

「大剣と大斧だぁ~?」

迷宮の武器庫(ランドフォーム)じゃなくて?」

「は、はい。間違いないです……」

「……今日までに、ミノタウロスの目撃情報は?」

「ないないっ、あってたまるか!」

「団長……」

「ああ、いよいよきな臭くなってきたね」

 

事情を聞き出した【ロキ・ファミリア】は自分達の討ち漏らしではないと確信するが、その一方で事に対する不審さを深める。

フィンを始めとした勘の良い者は、これが意地の悪い神の戯れ(・・・・)ではないかと察しかけていた。

少なくとも、神の何者かが関与しているものだと当たりをつけるが、そうする以外に状況を説明できない。

フィン達先遣隊は完全に進行を止めてしまっていた。

 

「その白髪の少年を見たのは9階層の何処?」

 

そんな中で、金髪の少女が1人動きを見せる。

 

「はっ?」

「あなたが見た冒険者が襲われていたのは、何処ですか?」

「う、動いてなければ……9階層の奥のほうのルームに……」

 

言い終わるより早く、アイズは走り出していた。冒険者がやって来た通路を、風のように疾走する。

 

「アイズ!?」

「何やってんだ、お前!」

「ちょっとあんた達、今は遠征中よ!?」

「……フィン」

「ああ、わかってる……隊はこのまま前進!当初の予定通り、最短距離で18階層まで進め!指揮はラウル、君が執るんだ!」

「はい!」

「僕はアイズ達の後を追う!リヴェリアは、ティオネと一緒にもう一方のミノタウロスの方に向かってくれ!」

「わかった」

 

指示を飛ばした団長(フィン)はアイズ達の後を追い、ラウルの指揮の下に先遣隊は進行を再開する。

 

「……さて、大斧を持ってるほうのミノタウロスは9階層の何処で見た?」

「こ、この先の階段から9階層に入って、東にずっと進んだところにあるルームだ……」

 

自分が今しがた通ってきた通路の奥を指差す冒険者にリヴェリアは礼を述べ、ティオネと共に走り出した。

 

 

 

 

『ヴォッ!』

「おっと」

 

大上段に振り下ろされる大斧。それを難なくグレイが回避すると、地面に亀裂が入る。ミノタウロスは地面にめり込んだ大斧を引き抜きながら、グレイを殺気に満ちた赤い目で睨みつける。

 

「うわー、おっかない、おっかない」

 

同じLv.1の冒険者であれば、恐怖で震える筈の光景を前にして、グレイは何時も通り冷静であった。

彼からすれば、目の前のミノタウロスは所詮デーモンもどき(・・・)。彼が今まで戦ったデーモンと比べれば、圧倒的に弱い。

それは個体による力もさることながら、戦う状況によるハンデもあった。例えば、狭い通路と見張り塔からの狙撃。狭い庭に2匹の犬。一歩足を踏み外せば溶岩で足を焼かれる等々……。

ところが、今回は溶岩も犬もない、広いルームで1対1の戦闘。となれば、心置きなく戦えるというものだ。

 

「フン!」

『ウッ!』

 

グレイの長大な黒い刀身を持つ剣──『黒騎士の大剣』による右からの斬り払い。それをミノタウロスは大斧の柄で防ぎ、受け止める。

 

「なるほど、良い筋力(パワー)だ。……だが」

『ヴゥ!?』

 

剣を両手で持ち、そのまま押し出すとミノタウロスは2、3歩後ずさる。

 

「……それだけでは勝てんよ」

『ウオアァァァァァァッ!!』

 

たった一言。そのたった一言が、ミノタウロスの逆鱗に触れた。

怒り狂ったミノタウロスは、大斧を振り回す。力任せに、ただただ振り回す。目の前にいるあの獲物を、物言わぬ肉塊に変えるために。

ミノタウロス(モンスター)に人の言葉は通じない。モンスター(ミノタウロス)は人の言葉がわからない。だが、雰囲気でわかる。あれは挑発であると。自分をコケにしていると。

 

「あらら、もしかして怒っちゃった?」

 

嵐のように襲い来る刃を軽やかに避けながら、グレイはそんなことを口にする。

 

『アアアアアアァッ!!』

「ぬん!」

 

大斧による左からの薙ぎ払い、グレイは『黒騎士の盾』を構えて全身に力を込めることで防いだ。──次の瞬間。

 

『ッ!?』

 

大斧の刃が粉々に砕け、柄だけがミノタウロスの手に残った。

無理もない。碌に手入れもされず、ミノタウロスの筋力で振り回され、冒険者を屠り、ダンジョンの壁・床に何度も叩きつけられてしまえば、こうなるのは必然である。

 

『ヴヴォォォォォォォッ!!』

 

ミノタウロスは大斧からただの棒きれになった得物を投げ捨てると右の拳を握りしめ、虫でも潰すように叩きつける。

 

「フンッ!」

 

グレイはそれを『黒騎士の盾』で一瞬受け止め、そのまま左に受け流す。力の方向を変えられ、ミノタウロスがバランスを崩す。

追い打ちをかけるようにグレイはミノタウロスとの距離を詰め、剣を両手に持って上半身を捻り、力を溜める。

 

『ヴゥッ!!』

「おらぁ!」

 

体勢を立て直したミノタウロスが拳を振るうよりも、グレイの方が速かった。

黒い刀身はミノタウロスの厚い体皮、高密度の筋繊維、そして高硬度の骨を切断し、ミノタウロスを両断する。

 

『ヴゥモオォォォォォォ──!?』

 

ミノタウロスの断末魔が、ルームに響き渡る。

真っ二つになった体は地面に横たわり、傷口から灰と化していく。降り積もる灰の中には、魔石とドロップアイテムである角ともう1つ、小さな赤い炎が揺らめいていた。

 

「ほぅ、これがあのミノタウロスのソウルか」

 

俺は目の前にあるその炎を手に取り、体内から人の頭ほどの大きさをした灰色の球体──『錬成炉』を取り出す。

 

「さて、早速ソウル錬成を始めるか」

 

モンスターの気配が無いことを確認し、その場に座り込んで錬成炉を置き、中にソウルを入れる。すると、小さかった炎が大きくなっていく。

 

『ソウル錬成をしたいとは、君も物好きだね……』

 

俺が「ソウル錬成をやってみたい」と言った時、(ルドレス)は嬉しそうに微笑んでいた。

 

『……じゃあ、早速始めようか。まずは、錬成したいソウルをこれに入れてくれ』

 

俺は錬成炉に両手を入れる。

 

『次に、両手を入れるんだ。その時、雑念を捨てるんだ。そうしないと、錬成に失敗してしまうからね』

 

静かに目を閉じ、意識をソウルに向ける。

 

『では、目を閉じてソウルに意識を集中させるんだ。……イメージが流れ込んできたかい?そう、それがそのソウルで錬成できるものだよ』

 

頭の中に流れてきたイメージを掴むように両手を握り、手を引いていく。

 

『イメージを掴んだかい?なら、両手をゆっくり引いていくんだ。焦らないで、焦らないで……』

 

出てきた手を見ると、柄のようなものを握っていた。そのまま引いていくと、柄はどんどん伸びていく。柄を引き出していくこと数十秒後……

 

「……できた……」

 

俺が両手に握っているのは、大きく口を開けた牛の頭を思わせる刀身に、俺の背丈ほどの柄。黒ずんだ赤を基調とした色合いの片刃の大斧だった。

 

「さて、この大斧にはどんな名前をつけようか。立派な名前が良いな、うーむ……」

 

斧だから『アクス』か『アックス』は外せないな。あとはその前に何をつけるか……牛……牛……

 

「……オックス。猛牛の大斧(オックス・アックス)と名付けよう」

 

「我ながら良い名前が浮かんだな」と一人満足して『錬成炉』を収納し、早速猛牛の大斧(オックス・アックス)を背負って立ち上がる。

 

「さて、ベルとリリを探しに行くか」

 

そう思って振り返ったところ、【九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴと【怒蛇(ヨルムガンド)】ティオネ・ヒュリテが立っていた。

 

「すまないが、通してもらえないかな?同じ【ファミリア】のメンバーを探している途中でね」

「……件の少年は、この階層の奥のルームにいるそうだ。動いていなければ、の話だがな」

「それはご丁寧にどうも」

 

彼女の情報を基に向かおうとしたところ、ティオネとリヴェリアに挟まれる。

 

「あー……これはどういうことで?」

「貴公には訊きたいことが山程ある。我々も同行させもらう」

「……」

 

リヴェリアがそう言うと、ティオネが静かに身構える。力づくでも訊きだすつもりか。

 

「……ご自由に」

 

俺の返答を聞くと、俺の隣をリヴェリアが歩き、後ろからティオネがついてきた。




オックス・アックスの外見ですが、DQMJ2プロフェッショナルのタウラスの持ってる斧がモチーフです
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