闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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ベルvsミノタウロスからグレイvsミノタウロスの流れにしようと思っていたのですが、それだと尺が伸びそうなので、ベルがミノタウロスと戦っている頃にグレイもミノタウロスと戦っていたという流れに変更しました。
お気に入り800突破ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。


第19話

「グレイさん。これをお願いします」

「おう」

 

【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインとの訓練を終え、やる気に燃えているベルは、早くからダンジョンに潜る予定らしい。既に冒険者用のインナーとパンツを身に着けている。

 

「じゃあ神様、後片付けはやっておきましたから!」

魔石装置(火の元)だけお願いします!」

「あ……2人とも、ちょっと待って!」

 

軽鎧(ライトアーマー)の詰まったバックパックを持っていこうとするベルと、『物干し竿』と『タワーシールド』を背負った俺を、ヘスティア様が呼び止めた。俺たちは足を止め、ヘスティア様のほうに顔を向ける。

言葉に詰まっているようだが、何が…………なるほど、そういうことか。

ヘスティア様がちらりと見たものは、取っ手が卓上に転がる、壊れたマグカップだった。

 

「あー……そうだ、【ステイタス】を更新しておかないかい?2人共、ここ最近やってあげられなかっただろう?」

「ええっと……」

「やっておこうじゃないか。そこまで時間がかかるわけでもないんだ。なに、ダンジョンは逃げないさ」

 

俺のフォローにヘスティア様はサムズアップで答え、ベルも提案を呑んだのか眉を下げて笑う。

ヘスティア様がベルの背中に跨がり、針で神血(イコル)を指に滲ませ、【神聖文字(ヒエログリフ)】を刻んでいく。

 

「それにしても、1週間だったかな?よくもまぁあの【剣姫】のしごきに耐えたじゃないか。『耐久』の熟練度の伸びが、他のアビリティを差し置いて凄まじいことになってるよ?」

「……は、はははっ」

 

ベルの空笑いを呆れながら聞いて、【ステイタス】を更新していく。

案の定と言うべきか、作業が進むにつれヘスティア様の表情が不機嫌そうになっていく。実際、不機嫌なんだろう。

 

「ベル君。ちょっと掘り返すようで悪いんだけど、例の【剣姫】と何か……いかがわしいこと(・・・・・・・・)、してないよね?例えば……膝枕とか」

 

ぶっっ、とベルはうつ伏せの状態で吹き出した。げほげほとむせながら、耳を真っ赤にしていく。

ベルの反応から察したのか、ヘスティア様の心情を表すようにツインテールがウネウネと蠢く。

 

「あ、あの、神様!?【ステイタス】って、モンスター以外の戦闘でも強化されるものなんですか!その、訓練とか!」

 

ヘスティア様のツインテールが動きを止めたと思うと、ベルの肩に針がぶすりと刺さる。

(おとな)げない……。ベルもしくしくと泣き出している。

 

「ああ、強化されるよ。実戦や訓練がどうこうというより、真っ当な【経験値(エクセリア)】として体に蓄積されるかが肝なんだ。お遊びや、ただ作業しているだけじゃ評価されない。逆に訓練でも必死に打ち込めたなら、確かな糧として【経験値(エクセリア)】として認められるよ」

「それじゃあ……」

「しっかり身になったか否か、ってところだよ。ちゃんとした足跡(化石)を残せていたなら、後はボク達が発掘するからさ。……はい、終わりだよ」

 

全ての作業を終え【ステイタス】をじっくり俯瞰していたヘスティア様の口端が痙攣していた。おいおい、いったいどれだけ伸びたんだ?

 

「あっ……。神様、ごめんなさいっ、僕もう行きます!」

 

時計を見たベルは血相を変えて体を起こすと、器用にヘスティア様を脇に退かせて、そのまま荷物を持って扉へ直行した。

 

「ベ、ベル君っ、ちょっと【ステイタス】が……」

「ごめんなさい、帰ってから聞きます!行ってきます!」

 

慌てた表情でベルは部屋を後にした。

取り残された俺とヘスティア様。ヘスティア様は溜息をつくと、俺に【ステイタス】の書き写された用紙を見せてくる。どれどれ……

 

ベル・クラネル

Lv.1

力:S982

耐久:S900

器用:S988

敏捷:SS1049

魔力:B751

 

「おいおいおい、何だこの上昇量は……」

 

 

 

 

ダンジョン9階層

 

『グレイ君、これ(・・)は何か良くないことが起きる前触れかもしれない。それがベル君に起こるのかグレイ君に起こるのか、それとも両方か……。とにかく、急いでベル君達と合流してくれ』

 

あの後、俺の【ステイタス】更新を終えたヘスティア様は、割れたマグカップを指差しさながらそう言った。

 

「さて、ベルとリリは何処にいるのかな」

 

『ささやきの指輪』を装備し、目を閉じて意識を集中させる。

 

「……この辺りにはいないか、下の階層に行ったか、それとも範囲外に──む」

『……逃げ……』

『……ぎゃあああぁ……』

『……ヴォォォォ……』

 

俺が今立っているルーム、その右方向から複数の冒険者の逃げ惑う声、または断末魔が聞こえ、その後にモンスターの雄叫びが響いた。

 

──さぁ、私に見せてちょうだい?あなたの暗い魂(ダークソウル)

 

いきなり頭に響いてきた、聞き覚えのある蠱惑的なその声に、俺は兜の中で不敵に笑むことで応える。

 

「はぁっ……はぁっ……!?」

『ヴフゥ……』

 

少しして、通路の奥から血塗れの冒険者と雄叫びの主──牛頭の怪物(ミノタウロス)が姿を現す。

右手には身の丈ほどの大きさの大斧。こびりついている血は先程の断末魔の主のものだろう。

すると、俺の中で何かがドクンドクンと脈動する。これは……『錬成炉』に強大なソウルを近づけた時にでる反応と同じだ。まさか、あのミノタウロスはそれだけ強大なソウルを持っているということか?……素晴らしい。

 

『ヴウオオオオオオォォォォォォッ!』

 

こうしていると、城下不死街とデーモン遺跡で牛頭のデーモンと戦ったあの日を思い出す。相手の武器が大斧なのは女神様の指示か?それとも眷属の独断か?中々粋な計らいをするじゃないか。

俺は右手の武器を『黒騎士の大剣』に、左手の盾を『黒騎士の盾』に持ち変え、ミノタウロスと相対する。

 

「……女神様の戯れに付き合うのも、悪くないな……」

「おい、何やってんだ、あんた!さっさと逃げるぞ!」

 

ルームを突っ切り、他の通路の入り口に着いた冒険者が、俺に声を張り上げる。

 

「……」

 

俺はその声を無視し、ミノタウロスへ1歩近づく。

 

「……どうなっても知らねえからな!俺を恨むなんてことするなよ!」

 

冒険者はそれだけ言うと、このルームを去って行った。

 

「さあ、殺し合おうじゃないか!デーモンもどき!お前のソウルは、一体どんな武器になるのかな?」




次回、ミノタウロスとバトル&ソウル錬成します
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