闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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ダンまちの劇場版タイトル聞いて熊のぬいぐるみと女神様のセットが出てくるのは俺だけじゃないはず。


第18話

訓練2日目。

 

「『大回復』。大丈夫か?レフィーヤ」

「……はい」

 

満身創痍で倒れている彼女の傷を治すと、上半身を起こした。

 

「はい、回復薬(ポーション)。それを飲んだら、少し休憩しようか?」

「いえ…………続きをお願いします!」

 

回復薬(ポーション)の入った試験管を受け取ると栓を外し、一気飲みして立ち上がる。

 

「よしわかった。それじゃあ、詠唱を始めて」

「はい!【解き放つ一条の】ッ!」

 

『ブルーフレイム』の刺突を回避する。

 

「──【光、聖木の弓幹。汝、弓の】ッ!」

 

『不遜なる者のメイス』による振り下ろしを避ける。

 

「【名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の──あぐっ!?」

 

詠唱を終えると同時に『ブルーフレイム』の柄頭でレフィーヤの頭を殴り、蹴りで壁に叩きつける。

 

「『大回復』。大丈夫か?」

「………はい」

回復薬(ポーション)は……しまった、さっきのが最後の1本だったか」

「大丈夫です、こんなこともあろうかと2、3本ほど持ってきましたから」

 

そう言ってポーチから試験管を取り出すと、さっきと同じように一気飲みする。

 

「続き、お願いします!」

「いいね、そのやる気に満ち溢れた眼。その眼に敬意を表して、次からは魔法も使って攻撃しよう」

「はい!」

「『雷の杭』」

「【解き放つ一条の光、聖木の】」

「『闇の刃』」

「【弓幹。汝、弓の名手なり】」

「『ソウルの矢』」

「【狙撃せよ、妖精の】ぐっ!」

「『フォース』」

「がっ!?」

 

『不遜なる者のメイス』で脇腹を殴りつけ、『フォース』で体勢を崩したところに踵落としを打ち込む。

 

「『ぬくもりの火』。さて、少し休憩にしようか。俺の精神力(マインド)がそろそろ切れそうだ」

「………はい………」

 

『呪術の火』を灯し、『ぬくもりの火』を設置する。レフィーヤは体を起こして壁にもたれ掛かり、俺は近くの石に腰掛ける。

 

「グレイさん」

「なんだい?」

「グレイさん……何処で戦い方を教わったんですか?」

「急だな。どうして?」

「何と言うか……最近冒険者になったとは思えないほど戦い慣れているような動きなんです」

「……冒険者になる前は訳あって世界中を旅していてね。その前は故郷で職業軍人をやっていたよ」

 

もっとも、その故郷も既に滅んでしまったがね。

 

「それじゃあ、魔法は旅の途中で身につけたんですか?」

「ああ。というか、身につけないと死ぬような地獄の日々だったものでね」

「そうだったんですか……(私達(冒険者)は『恩恵(ファルナ)』があるけれど、それなしでモンスターと1人で戦うのは地獄かもしれませんね)」

「本当に地獄だったよ……(特に待ち伏せ&数の暴力がきつかった。犬や鼠、骸骨その他諸々の群れに囲まれて袋叩きにされ、何度死んだことか)」

 

かたや15歳程度の少女。かたや永い年月を彷徨ってきた不死人。ここで2人の考えが違うのは、2人の生きた年月と潜った修羅場の数と質の違いであろう。

 

「さて、そろそろ再開しようか。構えて」

「はい!お願いします!」

 

 

 

 

訓練3日目の夜。【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)

 

「『呪術』……『呪術の火』を触媒とする魔法。それを灯すには火に対する畏敬の念が必要だってグレイさんは言っていたけど……」

 

訓練の間にとった休憩中、彼から聞いたそれを思い出していた。

 

「火……火か……」

 

試しに目を閉じて右手に意識を集中させてみる。

火と聞いて最初に浮かんだのは、とある鍛冶貴族の『魔剣』のような何もかもを焼き尽くす火。次に暖炉のように、ぬくもりを与える火。或いは、松明のように暗闇を照らす火。最後に、自分の主神である火の神ロキ。

 

「ん~…………ん?」

 

右手に違和感を感じ、目を開けてみる。すると、右手には火が灯っていた。

 

「っ!?」

 

袖口を確認してみるが、燃え広がっている様子はない。左手で触ってみるが、熱さを感じない。

 

「(嘘っ!?『呪術の火』が灯ってる!?まさか、これって『スキル』の影響!?)」

 

その日、彼女は『呪術の火』を灯すことに成功した喜びから中々寝付けなかったそうな。

 

 

 

 

訓練5日目。

 

「確か、【ロキ・ファミリア】の遠征は明後日だったかな?」

「はい」

「つまり、今日と明日で終わりか」

「はい!ですので、今まで以上にビシバシお願いします!」

「うん。それはそうと……」

 

何時もの場所で合流して日程を確認したところで、レフィーヤの隣の人物に視線を移す。

 

「どうして君がいるんだい?フィルヴィス・シャリア」

 

レフィーヤの隣にいたのは【白巫女(マイナデス)】フィルヴィス・シャリア。以前、24階層に向かう時にパーティーを組んだ。

 

「ウィリディスから、貴公と並行詠唱の訓練をしていると聞いてな。手合わせでも願おうと思い、同行させてもらった」

「そうか……」

 

そう言う彼女の雰囲気は、以前のような刺々しさは鳴りを潜め丸くなっていた。

まぁ、その方が俺としては接しやすくなってありがたいが……変わるの早すぎじゃないか?あのハゲ野郎(パッチ)よりはマシだが。

 

「じゃあ、まずは俺との手合わせから始めようか。レフィーヤとの訓練は、その後にしよう」

「わかった。ウィリディス、できるだけ離れてくれ」

「はい」

 

レフィーヤが離れると、フィルヴィスは短剣と杖を構える。

俺は左手に『魔女の黒枝』を、右手に『デーモンの爪痕』を持って構える。

 

「相手に一発でも撃ち込んだほうの勝ち。ということでいいかな?」

「ああ。……見せてくれ、古の魔法を」

「『降り注ぐソウル』」

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかずち)】【ディオ・テュルソス】!」

「『黒火球』」

「【盾となれ、破邪の聖杯(さかずき)】【ディオ・グレイル】!」

「『罪の炎』」

「くっ!」 

 

ガードの内側からの攻撃を避け、短剣を構えて接近してくる。

 

「『天の雷鳴』」

「ちっ!」

 

フィルヴィスは無作為に降り注ぐ雷を回避し、俺との距離を徐々に詰めていく。中々良い目をしているな。

 

「ふっ!」

「おっと」

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかずち)】」

「『沈黙の禁則』」

「【ディ──んぐっ!?(馬鹿な!詠唱ができない!?)」

「ふんっ!」

「がはっ!?」

 

『沈黙の禁則』で魔法を封じられて動揺した一瞬を突いて、『魔女の黒枝』で殴り飛ばす。

 

「俺の勝ち、だな」

「……そうだな」

「じゃあ、次はレフィーヤ」

「はい」

「ついでだ、君のアドバイスを少しいただけないかな?」

「アドバイス?私のか?」

「うん」

「しかし……」

 

ちら、とレフィーヤのほうを見るフィルヴィス。それに気づいたレフィーヤは「お願いします」と目で答える。

 

「……私でよければ」

「すまない。やっぱり、その道のプロの意見はありがたいからね」

「プロ……か。それなら、貴公の期待に答えよう」

 

「まずは……」と意見を話す彼女の顔は、とても楽しそうだった。

 

 

 

 

訓練最終日。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹】」

「『ファランの速剣』」

「【汝、弓の名手なり】」

「『深みのソウル』」

「【狙撃せよ、妖精の射手】」

「『炎の扇』」

「【穿て、必中の矢】」

「『白教の輪』」

 

『デーモンの爪痕』と『魔女の黒枝』、更に魔法を織り交ぜた攻撃を回避しながら詠唱を行うレフィーヤ。

 

「【アルクス・レイ】!」

「おっと」

 

回避した魔法は俺の横を通り過ぎ、ダンジョンの壁に激突した。

 

「凄いな、レフィーヤ。たった6日間でここまで成長するとは」

「いえいえ……皆さんのおかげです」

 

武器を仕舞って手を叩くと、彼女は照れくさそうに後頭部を掻く。

 

「さて、今日まで訓練を乗り切ったんだ。何か贈り物があってもいいだろう」

「そ、そんな、贈り物だなんて……」

 

俺は木箱を取り出し、手を突っ込んで探す。とうの彼女はというと、遠慮するように手を振る。

 

「まあまあ、そう言わずに……ん、これがいいかな」

 

俺は『叡智の杖』を取り出し、レフィーヤに手渡す。

 

「君が持っている杖より長くて扱いづらいかもしれないが、中々強力な杖だ。俺が保障する」

「い、いいんですか?これを私がいただいても」

「うん。他にも杖は持っているからね。それに、昨日フィルヴィスさんが魔法を託したのに、俺だけ何もしないのはアレだろう?」

「……わかりました。あの、早速これで魔法の試し射ちをしてもいいですか?」

「ああ。精神疲労(マインドダウン)にならない程度に、いくらでも射ちたまえ」

 

「それじゃあ」と言って俺たちは別れ、俺は地上へ、彼女は試し射ちのためダンジョンに残った。

 

 

 

 

「【アルクス・レイ】!」

 

グレイが去った後で、ダンジョンの壁に向かって魔法を射ち、杖の性能を比較するレフィーヤ。

 

「……凄い。これ、私がいままで使ってた杖の中で一番強力な杖……」

 

グレイから受け取った『叡智の杖』を見て感嘆の声をあげるレフィーヤ。

 

「(これがあれば、今回の遠征で皆さんの力に……)……あ。グレイさんから魔法を教わるの、忘れてた……」

 

肝心なことを忘れていたという事実が、喜びを一気に霧散させた。

 

「……それもこれも、あのヒューマンのせいです!」

 

「私は悪くない!」と、本人からすれば理不尽極まりない言葉が、ダンジョンに虚しく木霊した。

 

 

 

 

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「オッタル、そっちのミノタウロスはどうだ?」

「……上々だ。これなら、フレイヤ様もお喜びになるだろう。アレン、そっちの牛はどうだ?」

「お前に言われるまでもねえよ。何時でも出せる」

「……そうか……」




次回、ミノタウロスvsベル。その後でミノタウロスvsグレイをやります。
作中で使用した『沈黙の禁則』ですが、イメージとしては「舌が上顎に貼り付く」感じです。
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