闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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お待たせしました。24階層での話・後編です。


第15話

24階層。

パントリーの中心部には赤色の巨大な石英(クォーツ)の柱。そして壁、地面、天井を緑色の物体で覆われていた。石英(クォーツ)の柱には蛇のようなものが巻き付いており、それを囲むようにモンスターの群れがいた。それは、怪物祭(モンスターフィリア)の時に現れた、蛇型のモンスターだ。更に、モンスターの群れの中には冒険者のパーティーがいた。その中の1人らしき人物は、フードのついた白いローブに白い仮面と白ずくめの人物に首を絞められていた。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

パントリーに到着するなり、そんな光景を目にしたレフィーヤは魔法でモンスターを蹴散らし、俺は白ずくめの人物の腕を『スナイパークロス』で撃ち抜いた。

 

「レフィーヤ!?」

「ルルネさん!どうしてここに!?というか、これは一体!?」

「私達にもよくわからない」

「おい!アイズはどうした?」

「すまない。【剣姫】とは途中ではぐれてしまった」

 

ルルネと呼ばれたレフィーヤと知り合いらしい黒髪の犬人(シアンスロープ)の少女。状況から察するに、彼女たちがアイズと一緒にいたようだ。

 

「治療は必要かな?」

「いえ……大丈夫です」

 

俺は水色の髪で眼鏡をかけた女性に『聖女のタリスマン』を手に駆け寄り、声をかける。小人族(パルゥム)の女の子に支えられながら、傷口を押さえて立ち上がる彼女は拒絶した。

 

「……わかった」

『アアアアアアッ!』

 

咆哮のしたほうを向くと、蛇型のモンスターよりも更に巨大なモンスターがいた。そいつの尾らしき部分には白ずくめの人物が立っていた。

 

「全く忌々しい……もうお前らは生きて帰さん!覚悟することだな」

 

声音からして男性なのだろう。そいつは腕に刺さっていたボルトを引き抜く。すると、あっという間に傷が塞がっていった。

 

「何者だ?ここで何をしている」

「ここはプラントだ。パントリーにヴィスクムを寄生させ、ヴィオラスを生産させるためのな」

「モンスターがモンスターを生むなんて、聞いたことがないぞ!」

 

男の言葉に対して、犬人(シアンスロープ)の少女、ルルネが吠える。

彼女の言う通り、モンスターはモンスターを生まない。モンスターは基本的にダンジョンが生み出す。但し、バベルが完成し、蓋としての機能を成す以前に地上に進出したモンスターという例外を除けばの話ではあるが。

 

「そんなこと、何の為に……」

「決まっている!深層から地上へヴィオラスを運び、迷宮都市オラリオを滅ぼすため!全ては彼女の願いだ!ヴィオラスも私も、彼女の望むままに行動する。彼女は、私に永遠を与えてくれた!」

 

男はそう言うと仮面を取り払い、こちらに素顔を晒した。

そして、その顔を見たフィルヴィスは、驚きに目を見開いた。

 

「……オリヴァス・アクト……!」

「何故ここにいる……闇勢力(イヴィルス)のオリヴァス・アクトは、【27階層の悪夢】で死んだはずです!」

 

白髪鬼(ヴェンデッタ)】、オリヴァス・アクト。6年前、【27階層の悪夢】で他の冒険者を巻き添えに死んだはずの闇勢力(イヴィルス)の幹部。噂をすれば影がさすと極東の諺にもあるが……これは洒落にならないぞ。

ちらり、とフィルヴィスのほうを見ると、憎悪に顔を歪め、唇を噛んでいた。

 

「ああ、確かに私は死んだ。だが、彼女によって蘇ったのだ!」

 

オリヴァスはローブを脱ぎ捨てる。すると胸部が蠢き、何かの結晶のようなものが出てきた。……まさか、あれは!?

 

「魔石!?」

「あなたは、人とモンスターの混成体とでもいうのですか!?」

「そうだ!私は彼女の手で暗い死の淵から救われ、生まれ変わった!私には彼女の声が聞こえる!空が見たいと!空が欲しいと!地中に深く眠る彼女が空を見るには、この都市は邪魔だ!取り除かねばならない!」

 

レフィーヤたちの問いに対する返答、そして己の目的を嬉々としてオリヴァスは語る。しかし、生前もそうだったのか、それとも復活の代償なのか、その目は狂気に満ちていた。

……まあ、そんなことはどうでもいい。目の前にいるアレは死にぞこないの亡者だ。そして敵だ。ならば、何時も通り殺すだけだ。

 

「(姿と気配を消して近づくのは時間がかかる。かと言って魔法の類を使うのは駄目だな。魔力に反応した蛇型モンスターに狙われる。弓やボウガンでは射程距離が足りないから大弓……というか、さっきからペラペラペラペラと五月蝿いな)『罪の炎』」

 

ボォン!

 

「ぐあっ!」

 

左手に『呪術の火』を灯して詠唱すると、オリヴァスの眼前で炎が収束し弾け飛ぶ。爆風でオリヴァスは地面に落下するが、腐っても元冒険者、上手いこと着地して立ち上がる。……ちょっとずれたかな。

 

「おのれ!ヴィスクム!ヴィオラス!」

『オアアアアアアアッ!』

 

奴の声と共に地面が隆起し、蛇型のモンスター、ヴィスクムとヴィオラスの群れが現れ、襲いかかってきた。

 

「各自、迎撃を!」

 

眼鏡の少女の指示を受け、俺たちはモンスターを迎え撃つ。

俺は右手に『黒鉄刀』、左手に『狂戦士の刀剣』。そこに『刃の指輪』で斬れ味を、『封壊の指甲』で耐久力を上げてモンスターを片っ端から斬り刻む。

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ】」

 

ヴィオラスの群れと戦う俺たちの後方で、レフィーヤが詠唱を始める。

魔力に反応した数匹のヴィオラスが彼女に狙いをつけた。

 

「フンッ!」

 

俺は両手の刀で何匹か斬り刻むが、1匹だけ斬り損ねてしまった。

 

「【同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢】」

「【盾となれ、破邪の聖杯(さかずき)】──」

 

レフィーヤとヴィオラスの間にフィルヴィスが立ち──

 

「【ディオ・グレイル】!」

 

光の壁でレフィーヤを守った。

 

「【雨のごとく降り注ぎ、蛮族を焼き払え】」

 

彼女が詠唱を終えると、俺たちは一斉に下がる。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

放たれた火矢はヴィスクムとヴィオラスの群れを1匹残さず焼き払い、灰燼にした。だというのに、オリヴァスは不敵な笑みを浮かべている。

 

「これで終わりだと思ったか!?」

『オオオオオオッ!』

 

追加のヴィスクムが現れる。まったく、次から次へとキリがない。

 

「言ったはずだ!お前たちは生きて帰さんと!」

 

ボゴォン!

 

パントリーの壁が爆ぜ、中から2人の人影が出てきた。

 

「アイズさん!」

 

1人は金髪金目の剣士。【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだった。よく観ると、怪物祭(モンスターフィリア)の時に纏っていた風がない。魔法なしで戦っているのか。

 

「情けないな、レヴィス」

 

レヴィスと呼ばれた赤い髪の女性。アイズと戦っていた女性に対し、オリヴァスはそんな言葉をかける。

 

「あの小娘がアリアか?……連れて行け、ヴィスクム!持ち帰るのは死体でも構わん!」

「やめろ!手を出すな!」

 

アリア?彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタインのはずだが……っと、これはチャンスかな。

 

「手こずるお前に手を貸してやるのだ、感謝し──」

「『太陽の光の槍』」

 

ドォン!

 

『聖女のタリスマン』を右手に握り、極太の雷でヴィスクムの頭部を吹き飛ばす。

 

「馬鹿な!ヴィスクムが!」

「『浄火』」

 

ズブッ!

 

俺はオリヴァスに一気に近づき、詠唱と同時に『呪術の火』を灯した右手の貫手を奴の腹に突き出す。

 

「がっ……あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!?」

 

肉と臓物の焼け焦げる音と臭い、そしてオリヴァスの絶叫が響いた次の瞬間──

 

ボォン!

 

オリヴァスの腹が爆発し、上半身と下半身に分かれる。そして奴の体は灰になり、魔石だけが残っていた。

 

ブンッ!

 

「おっと」

 

レヴィスの振るった剣を回避し、2、3歩下がる。

 

「……やはり、足りないか……」

 

レヴィスは自身の左手を眺めながら呟くと、そのまま左手を握りしめて石英(クォーツ)の柱に叩きつける。

 

ビキビキビキ……

 

罅が蜘蛛の巣状に広がり、パントリーが揺れ始める。

 

「ここはもう持ちません!早く脱出を!」

 

眼鏡の少女がそう言うと、パーティーのメンバーが出口に向かって走り始めた。ベート、レフィーヤ、アイズの3名を除いて。

 

「っ!おい!早く脱出するぞ!」

 

天井から降り注ぐ岩盤を『タワーシールド』で防ぎながら俺は3人に、特に柱の前から一歩も動いていないアイズに呼びかける。

 

「アリア。59階層へ行け。そこでお前の知りたいことがわかるはずだ。……お前も勘付いているのだろう?」

「あなたは何を──」

「私は暫く力を溜めておく。次に会う時はお前を超える。楽しみにしていろ、アリア」

 

レヴィスはそう言うと、何処かへと行ってしまった。……って、今はそれどころじゃない!

 

「出口が塞がる前に脱出するぞ!早くしろ!死にたいのか!」

 

レヴィスが姿を消し、ここに留まる理由がなくなったからか、3人とも出口に向かって走り始める。

何にせよ、これで神ロキからの依頼も済んだ。さっさと地上に出て本拠地(ホーム)に……。

 

「あ」

 

なんてことだ。今の今まで忘れていた。俺は普段、ダンジョンから本拠地(ホーム)に帰るのは大抵夕飯時だ。だというのに、こんな夜遅くまで潜ってしまった。ヘスティア様とベル、凄く心配しているだろうな……。最悪、ありがたい説教があるかもしれないな。

 

「……今日は厄日だ」




次回から原作3巻です。さて、レフィーヤ魔改造計画を始めますか。……まだ未定ですけどね!
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