闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの 作:大豆万歳
24階層。
パントリーの中心部には赤色の巨大な
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」
パントリーに到着するなり、そんな光景を目にしたレフィーヤは魔法でモンスターを蹴散らし、俺は白ずくめの人物の腕を『スナイパークロス』で撃ち抜いた。
「レフィーヤ!?」
「ルルネさん!どうしてここに!?というか、これは一体!?」
「私達にもよくわからない」
「おい!アイズはどうした?」
「すまない。【剣姫】とは途中ではぐれてしまった」
ルルネと呼ばれたレフィーヤと知り合いらしい黒髪の
「治療は必要かな?」
「いえ……大丈夫です」
俺は水色の髪で眼鏡をかけた女性に『聖女のタリスマン』を手に駆け寄り、声をかける。
「……わかった」
『アアアアアアッ!』
咆哮のしたほうを向くと、蛇型のモンスターよりも更に巨大なモンスターがいた。そいつの尾らしき部分には白ずくめの人物が立っていた。
「全く忌々しい……もうお前らは生きて帰さん!覚悟することだな」
声音からして男性なのだろう。そいつは腕に刺さっていたボルトを引き抜く。すると、あっという間に傷が塞がっていった。
「何者だ?ここで何をしている」
「ここはプラントだ。パントリーにヴィスクムを寄生させ、ヴィオラスを生産させるためのな」
「モンスターがモンスターを生むなんて、聞いたことがないぞ!」
男の言葉に対して、
彼女の言う通り、モンスターはモンスターを生まない。モンスターは基本的にダンジョンが生み出す。但し、バベルが完成し、蓋としての機能を成す以前に地上に進出したモンスターという例外を除けばの話ではあるが。
「そんなこと、何の為に……」
「決まっている!深層から地上へヴィオラスを運び、迷宮都市オラリオを滅ぼすため!全ては彼女の願いだ!ヴィオラスも私も、彼女の望むままに行動する。彼女は、私に永遠を与えてくれた!」
男はそう言うと仮面を取り払い、こちらに素顔を晒した。
そして、その顔を見たフィルヴィスは、驚きに目を見開いた。
「……オリヴァス・アクト……!」
「何故ここにいる……
【
ちらり、とフィルヴィスのほうを見ると、憎悪に顔を歪め、唇を噛んでいた。
「ああ、確かに私は死んだ。だが、彼女によって蘇ったのだ!」
オリヴァスはローブを脱ぎ捨てる。すると胸部が蠢き、何かの結晶のようなものが出てきた。……まさか、あれは!?
「魔石!?」
「あなたは、人とモンスターの混成体とでもいうのですか!?」
「そうだ!私は彼女の手で暗い死の淵から救われ、生まれ変わった!私には彼女の声が聞こえる!空が見たいと!空が欲しいと!地中に深く眠る彼女が空を見るには、この都市は邪魔だ!取り除かねばならない!」
レフィーヤたちの問いに対する返答、そして己の目的を嬉々としてオリヴァスは語る。しかし、生前もそうだったのか、それとも復活の代償なのか、その目は狂気に満ちていた。
……まあ、そんなことはどうでもいい。目の前にいるアレは死にぞこないの亡者だ。そして敵だ。ならば、何時も通り殺すだけだ。
「(姿と気配を消して近づくのは時間がかかる。かと言って魔法の類を使うのは駄目だな。魔力に反応した蛇型モンスターに狙われる。弓やボウガンでは射程距離が足りないから大弓……というか、さっきからペラペラペラペラと五月蝿いな)『罪の炎』」
ボォン!
「ぐあっ!」
左手に『呪術の火』を灯して詠唱すると、オリヴァスの眼前で炎が収束し弾け飛ぶ。爆風でオリヴァスは地面に落下するが、腐っても元冒険者、上手いこと着地して立ち上がる。……ちょっとずれたかな。
「おのれ!ヴィスクム!ヴィオラス!」
『オアアアアアアアッ!』
奴の声と共に地面が隆起し、蛇型のモンスター、ヴィスクムとヴィオラスの群れが現れ、襲いかかってきた。
「各自、迎撃を!」
眼鏡の少女の指示を受け、俺たちはモンスターを迎え撃つ。
俺は右手に『黒鉄刀』、左手に『狂戦士の刀剣』。そこに『刃の指輪』で斬れ味を、『封壊の指甲』で耐久力を上げてモンスターを片っ端から斬り刻む。
「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ】」
ヴィオラスの群れと戦う俺たちの後方で、レフィーヤが詠唱を始める。
魔力に反応した数匹のヴィオラスが彼女に狙いをつけた。
「フンッ!」
俺は両手の刀で何匹か斬り刻むが、1匹だけ斬り損ねてしまった。
「【同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢】」
「【盾となれ、破邪の
レフィーヤとヴィオラスの間にフィルヴィスが立ち──
「【ディオ・グレイル】!」
光の壁でレフィーヤを守った。
「【雨のごとく降り注ぎ、蛮族を焼き払え】」
彼女が詠唱を終えると、俺たちは一斉に下がる。
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」
放たれた火矢はヴィスクムとヴィオラスの群れを1匹残さず焼き払い、灰燼にした。だというのに、オリヴァスは不敵な笑みを浮かべている。
「これで終わりだと思ったか!?」
『オオオオオオッ!』
追加のヴィスクムが現れる。まったく、次から次へとキリがない。
「言ったはずだ!お前たちは生きて帰さんと!」
ボゴォン!
パントリーの壁が爆ぜ、中から2人の人影が出てきた。
「アイズさん!」
1人は金髪金目の剣士。【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだった。よく観ると、
「情けないな、レヴィス」
レヴィスと呼ばれた赤い髪の女性。アイズと戦っていた女性に対し、オリヴァスはそんな言葉をかける。
「あの小娘がアリアか?……連れて行け、ヴィスクム!持ち帰るのは死体でも構わん!」
「やめろ!手を出すな!」
アリア?彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタインのはずだが……っと、これはチャンスかな。
「手こずるお前に手を貸してやるのだ、感謝し──」
「『太陽の光の槍』」
ドォン!
『聖女のタリスマン』を右手に握り、極太の雷でヴィスクムの頭部を吹き飛ばす。
「馬鹿な!ヴィスクムが!」
「『浄火』」
ズブッ!
俺はオリヴァスに一気に近づき、詠唱と同時に『呪術の火』を灯した右手の貫手を奴の腹に突き出す。
「がっ……あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!?」
肉と臓物の焼け焦げる音と臭い、そしてオリヴァスの絶叫が響いた次の瞬間──
ボォン!
オリヴァスの腹が爆発し、上半身と下半身に分かれる。そして奴の体は灰になり、魔石だけが残っていた。
ブンッ!
「おっと」
レヴィスの振るった剣を回避し、2、3歩下がる。
「……やはり、足りないか……」
レヴィスは自身の左手を眺めながら呟くと、そのまま左手を握りしめて
ビキビキビキ……
罅が蜘蛛の巣状に広がり、パントリーが揺れ始める。
「ここはもう持ちません!早く脱出を!」
眼鏡の少女がそう言うと、パーティーのメンバーが出口に向かって走り始めた。ベート、レフィーヤ、アイズの3名を除いて。
「っ!おい!早く脱出するぞ!」
天井から降り注ぐ岩盤を『タワーシールド』で防ぎながら俺は3人に、特に柱の前から一歩も動いていないアイズに呼びかける。
「アリア。59階層へ行け。そこでお前の知りたいことがわかるはずだ。……お前も勘付いているのだろう?」
「あなたは何を──」
「私は暫く力を溜めておく。次に会う時はお前を超える。楽しみにしていろ、アリア」
レヴィスはそう言うと、何処かへと行ってしまった。……って、今はそれどころじゃない!
「出口が塞がる前に脱出するぞ!早くしろ!死にたいのか!」
レヴィスが姿を消し、ここに留まる理由がなくなったからか、3人とも出口に向かって走り始める。
何にせよ、これで神ロキからの依頼も済んだ。さっさと地上に出て
「あ」
なんてことだ。今の今まで忘れていた。俺は普段、ダンジョンから
「……今日は厄日だ」
次回から原作3巻です。さて、レフィーヤ魔改造計画を始めますか。……まだ未定ですけどね!