闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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お待たせしました、24階層での話・中編です。それと、タグを追加しました。
お気に入り600件ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


第14話

ダンジョン16階層。

 

「さっきの、並行詠唱ですよね?私もあれくらいできれば皆さんのお役に立てるのですが……」

「……」

「今訓練中なんですけど、何かコツでもあるんですか?」

「……」

 

無言で先へと進むフィルヴィスと、そんな彼女と何とか会話をしようと話しかけるレフィーヤ。

【ロキ・ファミリア】のホームからここまで、ずっとこれだ。終始無言。こちらが何を言っても返さず、表情も無愛想なまま。

 

「あの!私、フィルヴィスさんのことをもっと知りたいです!」

「……」

 

レフィーヤのその一言を聞いて、彼女が立ち止まって振り向いた。

 

「折角パーティーを組んでいるんですし──」

「……1つ言っておく。我々はパーティーではない。ただ同じ場所に向かっているだけだ。いいな」

 

それだけ言うと、彼女は再び進み始めた。

やっと口を開いたと思ったら、これまた冷たい態度で。

 

『…何か用か。誰かは知らんが、あまり私に関わらぬ方がいい。…そのほうが身のためだ』

 

だが、俺は知っている。ああいう態度をとる人間というのは、少なからず訳ありだということを。

お前もそうだったろ?……ルカティエル。

 

「やっと来たのかよ。おせーぞ」

 

到着した18階層入り口。先に進んでいたベートと合流した。ああ言っているが、入り口付近で我々が来るのを待つ辺り、悪いやつではないんだろうな。

 

「リヴィラに行くぞ。アイズが24階層の何処に行ったか、手がかりを掴めるかもしれねぇ……」

「ちょっと待った。フィルヴィスさん、今彼が指示を──」

 

彼の指示を無視して進むフィルヴィスの肩に俺が触れようとした瞬間──

 

「私に触れるな!」

「なっ!?」

 

彼女は振り向きざまに抜剣し、殺気に満ちた眼差しで俺を睨んできた。

俺は反射的に腰に下げている『黒鉄刀』に手を伸ばし、居合の構えをとる。

 

「ま、待ってくださいグレイさん!フィルヴィスさんも落ち着いてください!」

 

そこにレフィーヤが両腕を広げて割って入った。

 

「あの…その…エルフには他の種族との肌の接触を許さない風習があるんです……だからこれは反射的なことであって、別にグレイさんに殺意があるわけでは……」

「……そうか。そうと知らず、すまなかった」

 

俺は構えを解き、軽く頭を下げる。

 

「……少し頭を冷やしてくる。後で合流しよう」

 

彼女は短剣を鞘に収めると、そう言って何処かへ行ってしまった。

 

 

 

 

リヴィラの街。それはダンジョン内でもモンスターが産まれない、安全階層(セーフティポイント)に造られた水晶と岩に囲まれた宿場町。名前の由来は、初めて街を築き上げた女冒険者『リヴィラ・サンティーニ』を称えてつけられた。元々ギルドがここに拠点を設けようとして頓挫した計画を冒険者たちが勝手に引き継いで造り上げたらしい。だが、安全階層(セーフティポイント)といえどもここはダンジョンの中。異常事態(イレギュラー)が発生する度にこの街は壊され、そして冒険者の手で復活してを繰り返し、現リヴィラの街は334代目。つい1ヶ月前にもモンスターが暴れて壊滅しかけたらしい。俺たちがくぐった南門と、真逆の位置にある北門、そして東の湖側の断崖を除いて街は壁に取り囲まれている。いやはや、俺がダンジョンの壁で寝ていた1000年の間にこんな立派な街が出来ていたとはね。

 

「確かに、【剣姫】ならここに来たぞ。コレを預かってくれってな」

 

そう言うと眼帯を付けた大男──ボールス・エルダーは緑玉石(エメラルド)色のプロテクターを棚から取り出した。

あのプロテクター、ベルがエイナさんからもらったと言っていたな。

……今頃、ベルとリリルカは何をしているんだろうか?

俺たちがいるのはリヴィラの街にある換金場だ。その中で最も買取価格の高い店の主である彼は、この街に住む冒険者達のボスでもあるとのこと。

 

「あいつが24階層の何処に向かったか、手がかりを知らねえか?」

「う~ん、手がかりねぇ。ま、知らねぇこともねえが……」

 

そう言うと、いやらしい笑みを浮かべて親指と人差し指で輪を作るボールス。教える代わりに金を出せ、ということだろう。

 

ドン!

 

「さっさと言え、クソ野郎」

「パ、パントリーに行ったらしいです」

 

ベートがカウンターを叩いて詰め寄ると、一転して敬語で話し始めた。たかる相手を間違えたばっかりに……哀れな。

 

「つるんでいた連中と街中のトラップアイテムを買い込んでいたらしいです」

「誰かと一緒だったのか?」

「へぇ。ただ、目深にフードを被ってやがったんで、何処の誰かまでは……」

 

揉み手をしながらボールスが話し終えると、ベートは何処かへ行った。……フィルヴィスを探しに行ったのか?

 

「【剣姫】といい、あいつといい、ロキ・ファミリアの奴はよ~」

 

ベートがいなくなるなり拳を握りしめて歯ぎしりするボールス。しょうがないさ、相手が悪い。

 

「おいエルフ!金やるから一発ぶん殴ってこい!」

「嫌です。というか、私もそのロキ・ファミリアの一員なんですけど……」

「……じゃあ鎧着たそこのお前!金やるから、その刀でアイツの髪を剃ってこい!」

「断る」

 

というか、俺まで巻き込まないでくれ。

 

「……お、フィルヴィスさんだ」

「え?」

「なに?」

 

俺の視線の先、フィルヴィスさんの姿が見えた。それに釣られて2人も同じ方向を向いた。

 

「まさかお前ら、あの死妖精(バンシー)とつるんでんのか?」

死妖精(バンシー)?彼女の2つ名は【白巫女(マイナデス)】じゃないのか?」

「そうか、知らねえのか。……じゃあ、6年前の【27階層の悪夢】は知ってるか?」

「6年前……ああ、それなら知り合いから聞いたことがある。大勢の冒険者が闇勢力(イヴィルス)の罠にかかって亡くなったと」

 

俺が【ディオニュソス・ファミリア】と協力すると約束した次の日だろうか。ギルドからの帰り道でシャラゴアから聞いたんだった。

 

「そうだ。闇勢力(イヴィルス)の連中は『混沌を求める』だの『革命を起こす』だのぬかしていたが、実際は我儘放題やりたいだけのイカれた連中だった。好き勝手やった挙げ句、ギルドに追い詰められた幹部の白髪鬼(ヴェンデッタ)は27階層に冒険者をおびき寄せて大規模な怪物進呈(パス・パレード)をしやがった。誰も彼も道連れにするためにな。おかげで闇勢力(イヴィルス)は壊滅したが、冒険者(こっち)の犠牲も尋常じゃなかった。あたりは地獄絵図だったそうだ。見渡す限り血塗れでな。フィルヴィス・シャリア(アイツ)はその時の生き残りだ。ここに戻ってきた時には酷え面しててな、まるで死人みてえだった」

 

ちらり、と彼女の方を見る。まさか、そんな過去があったとはね。

 

「その後復帰した奴のパーティーはどういうわけかことごとく全滅した。都合4度。毎回生き残ったのはアイツだけだ。それ故に呪われた冒険者、死を呼ぶ妖精バンシーなんて呼ばれてな。ここしばらくは1人でしか潜っていなかったようだが、まさかお前らと一緒とはな」

 

そうか、それであんな冷たい態度でこちらを突き放していたのか。自分とパーティーを組んだ者は死ぬから、俺達を死なせたくないから、パーティーを組んでいないと言ったのか。

 

「でも……みんな偶然じゃないですか!」

「かもしれねえな。だが、冒険者(俺達)は生きるか死ぬか、ギリギリのところで戦っているんだ。好き好んで不幸を背負った奴と行こうとは思わねえだろ。……忠告はしたぜ。アイツと組むのはやめておけ」

 

呪い、不幸か……俺のように死ねない存在(人の皮を被ったバケモノ)になるよりはまだマシな部類だと思うがね。

彼女がいた場所に視線を再度送ると、いなくなっていた。

 

「さて、フィルヴィスさんとベートを探しに行こうか」

「え?……あっ、いない!?ボールスさん、ありがとうございました」

「おう。……死ぬんじゃねえぞ」

 

 

 

 

「お、いたいた……が、少し話しかけづらいな」

「……」

 

19階層に繋がる大樹に向かう橋の途中、フィルヴィスとベートを見つけたのだが、見つけるタイミングが悪かった。

仲間を見捨てて生き延びておきながらなぜ冒険者を続けられるんだと言うベートに対し、フィルヴィスは別行動をとろうと提案、そして、お前のその達観した態度が気に入らないと吐き捨てた彼は大樹のほうに向かってしまった。

 

「……グレイさん。ここは私に任せてください」

 

レフィーヤは意を決したのか、フィルヴィスに歩み寄った。

 

「アイズさん達、24階層のパントリーに向かったみたいです!直ぐに私達も──」

「よせ!私に構うな。私のことは聞いたのだろう」

「……はい。でも、私はこの先もフィルヴィスさんと一緒に行きたいです!」

「奴の言ったことを理解していないのか?」

「してます!でも私達はパーティーです!」

「パーティーなどではない!」

「パーティーです!」

「お前と組んだつもりはない!」

「組んでいます!」

 

フィルヴィスの過去を聞き、それでもパーティーを組んでいると言い張るレフィーヤと、それを否定するフィルヴィス。

 

『貴様も神々(やつら)のように人を縛るつもりか!』『否!闇の時代の到来こそが我ら人間を救う!貴様の語る理想など、妄言に過ぎん!』

 

この光景……ユリアの説得をしていた時を思い出すな。いやー、あれは文字通り命懸けだったな。

 

「一緒にいればわかることもあります!あなたは仲間を見捨てるような人じゃない。フィルヴィスさんの仲間もきっとそうです。あなたにだけは生き残って──」

「違う!私は仲間を殺した!同胞を救えず、私だけが生き残ってしまった!私は穢れている!」

「穢れてなんかいない!」

 

レフィーヤはそう言うとフィルヴィスの手を取り、顔を近づける。

 

「誰が何と言おうと、あなたは優しくて美しい人です!私なんかより、ずっと!」

 

レフィーヤのその一言が引き金になったのか、2人の間の空気が一気に弛緩した。

 

「…何故そんなことが言える。私とお前は今日会ったばかりではないか」

「そ…それはそうですが…だったら、これから良いとこ沢山見つけますから!」

 

頬を染めて顔を反らすフィルヴィスと、釣られて頬を染めるレフィーヤ。

 

「……ふふっ。お前は変わった奴だな。ウィリディス」

「フィルヴィスさん……」

「しかし共に行かないほうが良い。あの狼人(ウェアウルフ)にも、そう告げた」

「あー……そこは心配無用だと思うぞ」

 

俺がフィルヴィスの背後のほうを指差すと、彼女も釣られて振り向く。

 

「おいお前ら!さっさと行くぞ!」

 

そこには、先に19階層に向かったはずのベートが立っていた。

 

「お前。どうして……」

「バーカ。呪いだかなんだか知らねえが、そんなもんで俺がくたばるかってんだ。そこいらの雑魚と一緒にすんな。俺は死なねえ。てめぇがいてもいなくてもな。せいぜい足手まといになるんじゃねぇぞ、死妖精(バンシー)さんよ」

 

言動の悪さは変わらないが、節々から彼なりの優しさのようなものがにじみ出ている。

 

「……ああいう人なんです」

「……そうか」

「彼の言うとおりだ。なあに、安心したまえ。呪いも不幸も、降りかかる火の粉は俺が払うさ」

 

俺はレフィーヤとフィルヴィスの2人に親指を立てながらそう告げ、ベートのもとへ向かった。

 

「それはそうと、ベート・ローガ」

「……あんだよ?」

「君、中々面倒くさい性格をしているね」

「うっせえ!」

 

 

 

 

件の24階層に到着。

 

「さて、地図だと1番近いパントリーは──」

「待て」

 

地図を見ながら確認しようとする俺をベートは手で制すると、周囲の匂いを嗅ぎ始めた。

 

「……こっちだ、ついて来い」

「流石狼人(ウェアウルフ)。彼女の匂いを嗅ぎつけたのか?」

「ああ……だが、急がねえといけねえ」

「それは何故?」

「嫌な予感がする。団長(フィン)風に言うなら、親指が疼くってことだ」

 

「行くぞ」と言うなり駆け出すベートの後ろを、俺たちは着いて行った。いよいよきな臭くなってきたな……。




次回で24階層の話を終えて、次次回から原作3巻に突入……できるか不安です
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