闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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ハッピーバレンタイン(血涙)
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第11話

あれから1日経った日の夜、【ヘスティア・ファミリア】のホーム。

ダンジョンから帰還したベルは、思い切ってヘスティア様にサポーターの少女のことを話していた。

 

「ベル君。そのサポーター君は、本当に信用に足る人物かい?」

「え……」

 

話を黙って聞いていたヘスティア様は、ゆっくりとベルに問い返した。

 

「君の話を聞く限り、そのサポーター君はどうもきな臭いように思える。君がボクのナイフをなくした時も……ああ、別に責めているわけじゃないよ。その日にちょうど行動を共にしたっていう彼女に原因……彼女が盗んだんじゃないかって思えてならない。……そういえば、グレイ君は前に彼女に会ったよね。第1印象はどうだった?」

「そうですね……強いて言えば、笑顔の裏でよからぬことを企んでいる、って感じでしたね。1度、あの手の人間を信用して痛い目をみたことがありますので」

 

忘れもしない。昔、鉄板のパッチ(ハゲ野郎)に騙されて崖に突き落とされて死にかけたことを。そして、そのあと喉元に剣を突きつけたら魔が差したから許してくれと命乞いをしたことを。 

俺の返答を聞くと、ヘスティア様は申し訳なさそうに眉を下げてベルと向き合う。

 

「ごめんね、こんなことを言って。でもボクはその娘のことを知らないから、どうしても客観的な口振りになってしまう。直接その娘と会った君とグレイ君のどちらが正しいか言われれば、どちらも正しいんだと思う。……でもボクは、グレイ君の経験のほうを支持する」

 

君の事が心配だから、と続けて、ヘスティア様は静かな神威を纏う。

 

「君の言う冒険者の男に疑われる何かを……いや後ろめたい何かを、彼女は隠し持っているんじゃないかい?」

 

君も勘付いているんじゃないか、とヘスティア様はベルの心の内を射抜くように告げる。

ヘスティア様に真っ直ぐ見つめられるベルは、しばし動きを止める。

 

「……神様、グレイさん。僕は──」

 

 

 

 

「……という事があってね」

「そうですか……ベルらしいですね」

「だな。ああなったら頑固だし、理屈では動かないだろうさ」

 

翌朝。西のメインストリートを外れた少し深い路地裏、【ミアハ・ファミリア】所有のお店。

ダンジョンに潜る前にアイテムを購入することにした俺は、この店に来た。ついでにミアハ様が薬の材料調達で不在、且つ客が来なくて暇だったという【ミアハ・ファミリア】唯一の構成員である少女ナァーザ・エリスイスと少しばかり世間話をしていた。

 

「さて、今日も精神力回復特効薬(マジックポーション)を買うよ。お代は?」

「グレイさん、たまには回復薬(ポーション)とかも買ってみませんか?精神力回復特効薬(マジックポーション)だけじゃなくて、他のアイテムも常備しておいたほうが安全ですよ……?例えば……高等回復薬(ハイ・ポーション)とか」

 

そう言うと、彼女は下の棚から試験管を取り出した。

 

「いやいや、Lv.1の俺にはまだまだ早いさ」

 

数万ヴァリスで販売されているそれの購入をやんわりと、遠回しに断る。お互い貧乏【ファミリア】所属であるが故に、かたや隙あらば売り込み、かたや費用を抑えようとする俺達の取引は日常茶飯事であった。

 

「……じゃあ、回復薬(ポーション)2本と精神力回復特効薬(マジックポーション)。セットで9000ヴァリス……」

 

彼女の提案を聞き、俺はすぐさま頭の中で計算を始める。

俺が普段買っている精神力回復特効薬(マジックポーション)は1本8700ヴァリス。そして、【ミアハ・ファミリア】の回復薬(ポーション)は最低価格が500ヴァリス。普通ならこれ2本を加え買うと9700ヴァリスになるが、今回は700ヴァリス値引きになる。

正直、回復手段は山ほどあるし、以前ミアハ様から無料で頂いたのが残っているが……万が一の備えは必要だな。

 

「わかった。それで買おう」

「ありがとうございます、グレイさん。今後も、うちをご贔屓に……」

「それじゃあ、また──っと、間違っても粗悪品を紛れさせているなんてことはしていないよね?」

「……失礼ですね、そんなことしませんよ……」

 

店を立ち去る前、俺が振り返ってそう問いかけると、ムッとした顔で彼女は返答した。

 

「そうか、それはすまなかった。じゃあ、また今度」

 

バイバイ、と手を振って別れを告げ、店を出る。

 

「……危なかった……」

 

おいおい。俺が完全に店から去るまで、その言葉は口にしないものだぞ?

 

 

 

 

「さて、今日も【ファミリア】の為に稼ぎ──あれ?」

 

西の大通りから中央広場(セントラルパーク)に足を踏み入れたところだ。少し進んだところに、見知った2人の人物がいた。1人は俺とベルのアドバイザーをしているエイナ・チュールさん。もう1人は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインだ。

エイナさんは彼女に頭を下げたと思うと、何やら話し込んでいた。……何かあったんだろうか?

そう思って近づくと──

 

「あの、ヴァレンシュタイン氏!」

「……?」

「ベル君は……ベル・クラネルは、貴方に助けてもらったことを本当に感謝していました!」

「ベルがどうかしたのか?」

「わあっ!?グ、グレイさん!?」

 

【剣姫】がバベルへ向かうのと入れ替わりに、俺が彼女に質問すると、かなり驚かれた。

 

「ま、まだダンジョンに潜っていなかったんですか?」

「ああ。精神力回復特効薬(マジックポーション)を切らしたから、知り合いの【ファミリア】で補充をね。で……何があった?」

「実は……」

 

俺が質問すると、彼女は詳しい経緯を話し始めた。

ベルが雇っているサポーターの少女が所属する【ソーマ・ファミリア】のこと。先程、その【ソーマ・ファミリア】の冒険者のパーティーがベルの雇っているサポーターの名を口にしてダンジョンに潜ったこと。そして、彼女の推測ではベルが厄介事に巻き込まれつつあることを。

 

「……なるほど、俺も行こう。……それでは」

「……お気をつけて!」

 

 

 

 

俺はダンジョンに入ると、ベル──ではなく、件の【ソーマ・ファミリア】の冒険者のパーティーを探すことにした。

 

「グウィンドリン様……ヨルシカ総長……暗月の名の下に、俺は再び剣を執ります」

 

俺はそう呟いて装備を変えて『霧の指輪』と『静かに眠る竜印の指輪』で姿を消し、ダンジョンを駆ける。

神罰を執行するために。

罪人に裁きを下すために。




次回以降の展開ですが。
A.フィルヴィス・レフィーヤ・ベートの3人パーティーにグレイが加入して、24階層へGO
B.パーティーに加入せず、そのまま原作3巻へGO
どっちにしようかな……
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