闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの 作:大豆万歳
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あれから1日経った日の夜、【ヘスティア・ファミリア】のホーム。
ダンジョンから帰還したベルは、思い切ってヘスティア様にサポーターの少女のことを話していた。
「ベル君。そのサポーター君は、本当に信用に足る人物かい?」
「え……」
話を黙って聞いていたヘスティア様は、ゆっくりとベルに問い返した。
「君の話を聞く限り、そのサポーター君はどうもきな臭いように思える。君がボクのナイフをなくした時も……ああ、別に責めているわけじゃないよ。その日にちょうど行動を共にしたっていう彼女に原因……彼女が盗んだんじゃないかって思えてならない。……そういえば、グレイ君は前に彼女に会ったよね。第1印象はどうだった?」
「そうですね……強いて言えば、笑顔の裏でよからぬことを企んでいる、って感じでしたね。1度、あの手の人間を信用して痛い目をみたことがありますので」
忘れもしない。昔、
俺の返答を聞くと、ヘスティア様は申し訳なさそうに眉を下げてベルと向き合う。
「ごめんね、こんなことを言って。でもボクはその娘のことを知らないから、どうしても客観的な口振りになってしまう。直接その娘と会った君とグレイ君のどちらが正しいか言われれば、どちらも正しいんだと思う。……でもボクは、グレイ君の経験のほうを支持する」
君の事が心配だから、と続けて、ヘスティア様は静かな神威を纏う。
「君の言う冒険者の男に疑われる何かを……いや後ろめたい何かを、彼女は隠し持っているんじゃないかい?」
君も勘付いているんじゃないか、とヘスティア様はベルの心の内を射抜くように告げる。
ヘスティア様に真っ直ぐ見つめられるベルは、しばし動きを止める。
「……神様、グレイさん。僕は──」
「……という事があってね」
「そうですか……ベルらしいですね」
「だな。ああなったら頑固だし、理屈では動かないだろうさ」
翌朝。西のメインストリートを外れた少し深い路地裏、【ミアハ・ファミリア】所有のお店。
ダンジョンに潜る前にアイテムを購入することにした俺は、この店に来た。ついでにミアハ様が薬の材料調達で不在、且つ客が来なくて暇だったという【ミアハ・ファミリア】唯一の構成員である少女ナァーザ・エリスイスと少しばかり世間話をしていた。
「さて、今日も
「グレイさん、たまには
そう言うと、彼女は下の棚から試験管を取り出した。
「いやいや、Lv.1の俺にはまだまだ早いさ」
数万ヴァリスで販売されているそれの購入をやんわりと、遠回しに断る。お互い貧乏【ファミリア】所属であるが故に、かたや隙あらば売り込み、かたや費用を抑えようとする俺達の取引は日常茶飯事であった。
「……じゃあ、
彼女の提案を聞き、俺はすぐさま頭の中で計算を始める。
俺が普段買っている
正直、回復手段は山ほどあるし、以前ミアハ様から無料で頂いたのが残っているが……万が一の備えは必要だな。
「わかった。それで買おう」
「ありがとうございます、グレイさん。今後も、うちをご贔屓に……」
「それじゃあ、また──っと、間違っても粗悪品を紛れさせているなんてことはしていないよね?」
「……失礼ですね、そんなことしませんよ……」
店を立ち去る前、俺が振り返ってそう問いかけると、ムッとした顔で彼女は返答した。
「そうか、それはすまなかった。じゃあ、また今度」
バイバイ、と手を振って別れを告げ、店を出る。
「……危なかった……」
おいおい。俺が完全に店から去るまで、その言葉は口にしないものだぞ?
「さて、今日も【ファミリア】の為に稼ぎ──あれ?」
西の大通りから
エイナさんは彼女に頭を下げたと思うと、何やら話し込んでいた。……何かあったんだろうか?
そう思って近づくと──
「あの、ヴァレンシュタイン氏!」
「……?」
「ベル君は……ベル・クラネルは、貴方に助けてもらったことを本当に感謝していました!」
「ベルがどうかしたのか?」
「わあっ!?グ、グレイさん!?」
【剣姫】がバベルへ向かうのと入れ替わりに、俺が彼女に質問すると、かなり驚かれた。
「ま、まだダンジョンに潜っていなかったんですか?」
「ああ。
「実は……」
俺が質問すると、彼女は詳しい経緯を話し始めた。
ベルが雇っているサポーターの少女が所属する【ソーマ・ファミリア】のこと。先程、その【ソーマ・ファミリア】の冒険者のパーティーがベルの雇っているサポーターの名を口にしてダンジョンに潜ったこと。そして、彼女の推測ではベルが厄介事に巻き込まれつつあることを。
「……なるほど、俺も行こう。……それでは」
「……お気をつけて!」
俺はダンジョンに入ると、ベル──ではなく、件の【ソーマ・ファミリア】の冒険者のパーティーを探すことにした。
「グウィンドリン様……ヨルシカ総長……暗月の名の下に、俺は再び剣を執ります」
俺はそう呟いて装備を変えて『霧の指輪』と『静かに眠る竜印の指輪』で姿を消し、ダンジョンを駆ける。
神罰を執行するために。
罪人に裁きを下すために。
次回以降の展開ですが。
A.フィルヴィス・レフィーヤ・ベートの3人パーティーにグレイが加入して、24階層へGO
B.パーティーに加入せず、そのまま原作3巻へGO
どっちにしようかな……