闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの 作:大豆万歳
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「あ、ヘスティア様」
「ん?おお、グレイ君!」
ギルドで魔石とドロップアイテムの換金を終え、ホームの入り口に着いたところでヘスティア様と会った。
「おやおや、今日も随分稼いだねー。まさか、グレイ君もサポーターを雇ったのかい?」
「いいえ?朝から晩までひたすらモンスターを狩りまくったらこんな額になっただけですよ」
「へー……Lv.1のグレイ君がソロでこんなに稼ぐって、他の冒険者が知ったら羨むだろうね」
「ヘスティア様も、この時間までバイトお疲れ様です」
「いやー、本当に疲れたよ。ヘファイストスの言いつけなのか、子供たちが遠慮なく顎で使ってくるからさ」
「今までぐーたらしていたツケが回って来たんですよ。ヘファイストス様も、ヘスティア様の性根を叩き直そうと思ってのことでしょうし」
「うー……そう言われると反論できないのが辛い……」
「ベル、ただい……あれ?」
教会の隠し部屋に入ると、ベルがテーブルの上に突っ伏していた。
「おーい、ベル」
「ベルくーん。もしもーし?」
ヘスティア様がベルの肩を揺するが、反応がない。
「ヘスティア様、ちょっとどいてください」
「ん?」
「【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが来ているよ」
「──っ!?」
俺が小声で耳打ちすると、ベルはがばっと体を起こして正座する。
「えっ!?ちょっ、あの、えっと、その、これは──」
「ベル君。残念だけど、ヴァレン某君は来てないよ」
「……ゑ?」
慌てふためくベルにヘスティア様は冷静に声をかける。ベルも頭が回転を始めたのか、周りを見て状況を確認する。
「しかし……
「こうすれば一発で起きると思って言っただけですよ」
「……まあ、いいさ。それよりベル君、どうしたんだい?テーブルに突っ伏したりなんかして?寝るんならベッドかソファーの上で寝ればいいじゃないか」
「え?僕、そんなに寝てました?」
「うん、思いっきり熟睡していたよ」
「本を読んでいたのか?……ということは、慣れないことをして、睡魔に襲われたってところか?」
「……多分。そう、だと思います……」
混乱しているのか、ベルはこめかみを押さえて頭を軽く揺する。
「はは、可愛いね。ベル君のお茶目な一面を見れて、おかげでボクの仕事疲れも吹き飛んだよ」
「お、お茶目って……」
「それじゃあ、俺は夕食の準備──の前に、ヘスティア様の着替えが先でしたね」
ヘスティア様がクローゼットに向かうのと同時に、俺とベルは部屋を出る。「着替え終わったよ」とヘスティア様が扉から顔を出すと、改めて夕食の準備にとりかかる。俺達男2人はキッチンで準備を行い。ヘスティア様は食器の類を棚から出す。
「ベル君、あの分厚い本はどうしたんだい?まさか、君が買ってきたとか?」
「いえ、知り合いの方に借りたんです。たまには読書をしてみては?って」
「ふーん、後でボクにも見せてくれよ。あんな古めかしい本、あまりお目にかかったことないんだ。食指が動く、ってね」
「本、大好きですもんね、神様」
「じゃあ、ヘスティア様が読み終わった後で俺が借りてもいいかい?」
「はい。いいですよ」
夕食の片付けを終えてからシャワーを順番に浴び、そして今日も俺とベルの【ステイタス】を更新することにした。以前と比べて、ここ数日の更新頻度は高くなっている。
入り口で会ったときはああ言っていたけど、ヘスティア様も【ヘファイストス・ファミリア】の支店のお勤めに慣れてきたようで、時間を割けるくらいには余裕が出てきたらしい。
まずはベルから、ということで上着を脱いだベルはベッドでうつ伏せになり、ヘスティア様は針を取り出して
「ん~……おお?……相変わらず絶好ちょ……う?」
「……神様?」
「どうかしましたか?」
途中から口も手も止まったヘスティア様を俺とベルは怪訝に思った。
呼びかけて暫く待っていると……。
「……魔法」
「え?」
「魔法が、発現した」
とんでもない答えが返ってきた。
「ええええええっ!?」
「危ない!」
衝撃的な内容に仰天したベルは、上半身を海老反りのように起き上がらせる。
伴って、ベルの腰に乗っかっていたヘスティア様は投げ出され、ベッドから墜落する。後頭部が床にぶつかる寸前で、なんとか俺が受け止める。
「かっ、神様ぁー!?ご、ごめんなさいっ、怪我はないですか!?」
「な、なんとかね……。グレイ君、ナイスタイミングだったよ」
ヘスティア様は起き上がるとベルの腰に乗っかり、【ステイタス】を書き写す。
「さ、次はグレイ君だよ」
「はい」
俺は鎧を脱いでうつ伏せになり、【ステイタス】更新が終わるのを待つ。
「……はい。こっちがベル君の【ステイタス】で、こっちがグレイ君の【ステイタス】だよ」
ベル・クラネル
Lv.1
力:B701→B737
耐久:G287→F355
器用:B715→B749
敏捷:B799→A817
魔力:I0
《魔法》
【ファイアボルト】
・速攻魔法
《スキル》
【】
グレイ・モナーク
Lv.1
力:I95→H101
耐久:I97→H104
器用:I89→I94
敏捷:I85→I90
魔力:I96→H101
《魔法》
【魔術】【奇跡】【呪術】
《スキル》
【
「っっ……!」
「ほう……これはこれは……」
震える両手で用紙を持ちながら、必死に口の中で暴れる歓喜を噛み殺すベル。
瞳は宝石のように輝き、口元はにやけている。
「……魔法まで発現……これも……うーん、わからない」
ベルと対称的に、眉根を寄せるヘスティア様は顎に手を当てて何かを考え込んでいる。
「かっ、神様……グレイさん……魔法っ、魔法ですよ……!?僕、魔法を使えるようになりました……っ!」
「うん、わかっているから、取り敢えず落ち着こうか」
「だってグレイさん。魔法ですよ!?本の中の英雄が切り札と言わんばかりに放っていた、あの魔法が発現したんですよ!?」
「水を差すようで悪いけど、グレイ君の言うとおりだよ。それに、気になることもある。早速この魔法について考察しよう」
「はいっっ!」
深呼吸を何度かして、昂った全身を静めるベル。
「いいかい?かい摘んで話すけど、魔法っていうのはどれも『詠唱』を経てから発動するものなんだ。これくらいは知っているかな?」
ヘスティア様の問いに頷くベル。というか、前まで俺とパーティーを組んでダンジョンに潜っていたから見ているもんな。
「本題に入るね。ボクの友人に聞いた話だと、詠唱文は、魔法が発現した際【ステイタス】の魔法スロットに表示されるんだ。それを見て、君達は魔法のトリガーを得ることになる」
「あれ?でもこの用紙には『詠唱』が記載されてないですけど……」
「そう、そこなんだよ。おっと、
用紙には【ファイアボルト】と記載されているのみで、それらしき詠唱文は記されていない。唯一の情報は『速攻魔法』という説明のみ。
「ここからはボクの完全な推測だ。スロットに補足されている詳細情報、この文面からするとベル君の魔法は……『詠唱』が必要ないかもしれない」
「つまり、グレイさんの魔法と同じようなものであると?」
「今サラッと凄いことを耳にしたのは聞き流すけど。おそらく、そうだと思うよ」
「まぁ、明日ダンジョンで試し撃ちをすればわかる筈さ」というヘスティア様の鶴の一声で俺達は歯磨きを済ませ、消灯して寝ることにした。
ヘスティア様はベッドに、ベルはソファーに、俺は寝袋(お金を貯めて購入した)に潜り込んで眠りに……。
カサカサ……キィー、パタン
物音を聞いた俺は、寝返りをうつふりをしてソファーの方を向く。案の定、ソファーはもぬけの殻になっていた。
「やっぱり、ダンジョンに行ったんだろうな。……仕方ない、俺も行くか」
俺は寝袋から体を出し、装備を身に着けてバベルへ向かった。
「あ……」
「む……?」
「おや……」
「……」
ダンジョン5階層。
ベルが
1名は知っている。
「あなたは、
「お久しぶりです。アイズ・ヴァレンシュタイン」
「アイズ、彼は?」
「
「そうか、彼が……その節は、アイズ達が助かった。【ロキ・ファミリア】を代表して、礼を言いたい」
「いえいえ、こちらこそベルが危ないところを助けていただきましたから」
「ベル……その少年のことか?」
「ええ。……あの、『豊穣の女主人』で話題に上がったミノタウロスの……」
「……なるほど。
リヴェリアは合点がいったと理解を示す。
「……あの、そろそろベルをホームに連れて帰ってもいいでしょうか?あまり長居するとモンスターが湧くでしょうか──」
「待って」
俺がベルを連れて帰ろうと近づいたら、アイズ・ヴァレンシュタインが待ったをかけた。
「私、この子に償いをしたい」
「……言いようは他にあるだろう」
硬すぎる、と溜息をつくリヴェリアとは対照的に、アイズ・ヴァレンシュタイン氏は2、3度瞬きする。
「まあ、この場を助けるのは当然の礼儀として……アイズ、今から言うことをこの少年にしてやれ。償いなら、恐らくそれで十分だ」
「何?」
リヴェリアがアイズ・ヴァレンシュタイン氏になにやら耳打ちしている。
「……そんなことでいいの?」
「確証はないがな。だが、この場を守ってもやるんだ、これ以上尽くす義理もないだろう。……それに、お前のなら喜ばない男はいないさ」
「そう……なの?男の人ってよくわからない……」
「いずれ、お前にもわかる時が来るさ」とリヴェリアはアイズ・ヴァレンシュタインを母親のように見つめながら顔を凛々しく構え、俺の方に目配せした。
「私たちは戻る。残っていても邪魔になるだけだろう。けじめをつけたいのなら、2人きりで行え」
「うん。ありがとう、リヴェリア。……ええと……」
「ああ、自己紹介がまだだったか。俺はグレイ・モナーク。機会があれば、また会おう」
「はい」
俺とリヴェリアは相槌を打ってその場を後にする。
彼女がいるなら、モンスターの心配はないだろう。
「グレイ・モナークといったか。アイズ達から聞いたが、例のモンスターを倒す際に魔法を使ったそうじゃないか」
「ええ。それが、何か?」
「『望郷』、『ソウルの大剣』、『ソウルの槍』。私の記憶が正しければ、その魔法は遥か昔……『古代』より更に古い時代に存在したとされる『ソウルの魔術』に分類される魔法だが。それを何処で、誰から教わった?」
「……申し訳ないが、それには答えられない。訳ありの身の上なのでね」
「そうか……。貴公に『ソウルの魔術』を授けた人物がいるのなら、お会いしてみたかったが……残念だ」