闇の王がファミリアに入ってもいいじゃない、『元』人間だもの   作:大豆万歳

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竜のウロコとロイエスのソウルのドロップ率が低くて辛い。


第8話

翌日。ギルドで魔石の換金を終えて、ホームに帰る途中の路地裏。

 

「2万と……6000ヴァリスか。まずまず、といったところだな」

 

今日の稼ぎの詰まった袋の中身の確認を終え、ソウルに変換して体内に収納する。

 

「さて、今日は『豊穣の女主人』で何を食べようか?いや、たまにはホームで何か作るという手も……」

 

これからの予定を考えながら、ちらりと背後に目線を送る。

 

「………」

 

物陰からこちらを覗く人影。本人は上手いこと隠れているつもりのようだが、隠れる瞬間に髪の毛が一瞬だけ見えた。

 

「(……今日もか(・・・・))」

 

俺は溜息を吐き、肩を落とす。

怪物祭り(モンスターフィリア)での事件が収まって以来、毎日のように尾行されている。

 

「(何が目的か知らないが……毎日尾行されるのも鬱陶しいな)」

 

俺は再度、背後の人物に視線を送ると路地裏を走る。

 

「!」

 

相手も俺を逃すまいと、付かず離れずの距離を保ちながら走り出す。

俺は十字路を右に左に曲がり、或いはそのまま直進してを何度か繰り返すと、『霧の指輪』と『静かに眠る竜印の指輪』を装備して身を隠す。

少しして、俺を尾行していた人物が姿を現す。

 

「……馬鹿な。確かにあの男はここを右折した筈だ。だというのに、何故姿が見えない?身を隠せるようなものは何処にも──」

「動くな」

 

突如として背後から声が響く。女性は振り向こうとするが、首元に突きつけられている刃を前に動きを止める。

 

「そのまま、ゆっくり、こちらを振り向け」

 

女性は大人しく指示に従い、後ろを振り向く。

 

「……さて、お嬢さんの名前は?所属している【ファミリア】は?」

 

俺は首元に当てていた『打刀』を納刀しながら女性の素性を問う。

女性の髪は黒。白い戦闘服に、腰には短剣と杖を下げている。耳の形からして、エルフだろう。

 

「……私は【白巫女(マイナデス)】フィルヴィス・シャリア。【ディオニュソス・ファミリア】所属の冒険者だ」

「そうか……それで、俺に一体何の用だ?」

怪物祭り(モンスターフィリア)の時に現れた極彩色のモンスターを倒したという噂を耳にしたが、それは本当か?」

「ああ」

「なら、そのモンスターが落とした魔石も持っているな?」

「……これのことか」

 

俺は腰のポーチから取り出すふりをして体内から極彩色の魔石を取り出すと、女性の目の前にかざす。

 

「……ならば、着いてきて欲しい。詳しい話は場所を変えて行いたい」

「了解した」

 

 

 

 

俺が案内されたのは、闘技場近くの路地裏。例のモンスターが現れた現場はこの通りを直進してすぐの場所だ。

 

「……ディオニュソス様、お連れしました」

「ああ、ありがとう。フィルヴィス」

 

そして、俺の案内された場所にいたのは1人の男性……いや、1柱の男神だった。

首のあたりまで伸びる柔らかそうな金髪。華奢な体は中背で、手足はすらりと長い。品の良い物腰は、さながら富国の王子といったところだ。

 

「キミが【ヘスティア・ファミリア】のグレイ・モナークか。はじめまして、私はディオニュソス」

「はじめまして。それで、【ディオニュソス・ファミリア】の主神さまが俺に何か御用でしょうか?」

 

差し出された右手を握手して返す。

 

「単刀直入に言おう。例の極彩色のモンスターの件だが、キミにも協力してもらえないだろうか?」

「……理由を、教えてください」

 

俺がそう尋ねると、ディオニュソスさまは懐から魔石を取り出す。それは俺があのモンスターから取ったのと同じ、極彩色の魔石だ。

 

「それを何処で?」

「1ヶ月前、私の【ファミリア】の団員が3人殺された。子供たちは、何かを見てしまったために口封じに殺されたのだろう。この魔石は3人が唯一残した手がかりだ。私の子供たちの死とあのモンスターは関わりがあると見ている。もちろん、私の【ファミリア】だけではない。【ロキ・ファミリア】とも協力して、今回の件にあたるつもりだ。彼女の【ファミリア】も、あのモンスターに遭遇したらしいからね」

 

【ロキ・ファミリア】もか。うちの主神(ヘスティア)さまとあちらの主神(ロキ)さまは仲が悪いことで有名だけど……【ディオニュソス・ファミリア】と協力するなら問題はないだろう。

 

「……わかりました。ただ、俺は朝から晩までダンジョンに潜ってますし、Lv.1ですのであまり期待しないでください」

「Lv.1……ね。ロキが言っていたよ『あんなLv.1がおってたまるか!』ってね」

 

俺の返答に神ディオニュソスは苦笑した。

「では、俺はこれで」と立ち去ろうとしたところで、神ディオニュソスに呼び止められる。

 

「これは私の個神的(こじんてき)な質問なんだが……キミは何の為にダンジョンに潜る?」

「そうですね。強いて言えば……失ったものを取り戻す術を求めて、ですかね。──それじゃあ、貴方がたに火の導きがあらんことを」

 

 

 

 

「(ロキの言う通り、あの男……グレイ・モナークに対して既視感を感じたな。何故だ?私と彼は初対面のはずだ。なら、私は彼と何時・何処で会った?先程から頭を揺すっても叩いても浮かんでこない……。ああ、もどかしい!いっそのこと彼の主神であるヘスティアに直接……いや、彼女も知らないという可能性も無いとは言い切れない。ならば──仕方ない。今は例のモンスターの件に集中しよう!彼に対して既視感を感じる理由は後回しだ!)」

 

 

 

 

更に2日後。【ヘファイストス・ファミリア】バベル支店。

 

「はぁー……」

「……」

 

羽ペンを持っていないほうの手で頭を抱え、嘆息する神ヘファイストスと頭を下げる俺。

 

「時間を過ぎても姿を見ないからどうしたのかと心配してたら。自棄酒呷って宿酔いって……怒るを通り越して呆れるわ」

 

神ヘファイストスの言う通り、ヘスティア様は今朝から宿酔いで寝込んでいる。そんなわけで、ベルは神様の看護を、俺はこうして遅刻(最悪の場合休み)の連絡に来たというわけだ。

ミアハ様は「少し疲れているようだ(・・・・・・・・・・)。僅かでもいい、構ってやれ」とか意味深な発言をしていたけど……何か自棄酒を呷る原因があったのか?

 

「えーと……それで、ヘスティア様の件なんですが……」

「……そうね。今日来れなかった分は、残業って形で働いてもらうわ。ホームに戻ったら、彼女(ヘスティア)にそう伝えておいてちょうだい」

「わかりました」

 

「それでは」と再度頭を下げると、俺は部屋を去っていった。次は、ベルが雇ったというサポーターの娘にも連絡しないとな。確か、犬人(シアンスロープ)で、栗色の髪にクリーム色のローブ。そして、大きなバックパックを背負っているんだったな。ああ、それと頭痛に効くお薬をミアハ様のところで買ってこよう。

 

 

 

 

『……まだここに籠もっていたのか。たまには外の空気を吸ってみないのか?』

『いやよ。だって……私の右眼(これ)を見ると皆が「醜顔」って笑ったり不気味がるんだもの』

『まあ、右眼に関してはどうしようもないが……ほら、眼帯(これ)で隠せば問題はないだろう?』

『これ……私の為にわざわざ作ってくれたの?』

『ああ。それと……隠れているのはわかっているぞ?ヘスティア』

『……バレた?』

『当たり前だ。いや、それはどうでもいいんだが。しばらくヘファイストスの右眼の代わりをやってくれないか?無二の神友なんだろう』

『うん!任せてよ!■■■!さ、ヘファイストスも、早く行こうよ』

『わかったわ。それと……ありがとう■■■。ヘスティア』




なぜ神々はグレイに会うと既視感を感じるのか?それは彼の正体に関する重大な秘密に直結しています。
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